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プロジェクト・アルマナック

傑作ファウンドフッテージSFスリラー『クロニクル』で監督デビューし、
注目されて引っ張りダコになった若手監督ジョシュ・トランクが、
先日『スターウォーズ』のアンソロジー映画から降板することを発表しました。
降板理由については、いろいろ憶測も囁かれていましたが、
本人曰く、アメコミ映画『ファンタスティック・フォー』のリブートで疲弊したみたい。
アメコミ映画は熱狂的ファンの多く、大ヒット間違いなしですが、
それだけに期待されるし厳しい目にも晒されるので、プレッシャーも相当だろうし、
これが2作目のアラサー監督には酷な仕事だったかもしれません。
『スターウォーズ』ファンの熱狂度なんて、アメコミ映画ファン以上なので、
もうこれ以上のプレッシャーには耐えられないと判断したのかも。
彼はボクと同世代ですが『スターウォーズ』に嵌った世代でもないしね。
次は『クロニクル』同様、オリジナル作品を撮りたいと言ってますが、
アメコミ映画『スパイダーマン』のスピンオフ『ヴェノム』など、
他の超大作映画からも降りちゃう気なのかな?
正直『スターウォーズ』やアメコミ映画なんて誰が撮っても絶対ヒットするし、
才能ある若手監督があえてやるようなことでもないかもね。

ということで、今日は『クロニクル』の影響を受けた新人監督のデビュー作の感想です。
残念ながら彼は引っ張りダコにはならなそうかな。

プロジェクト・アルマナック
Project Almanac

2015年6月10日リリース。
ファウンドフッテージ形式のSFスリラー。

幼い頃のビデオ映像に現在の自分の姿を発見したデイヴィッドは、父の作業場から仲間とタイムマシンを発見し、過去へ戻ることに成功する。宝くじを当てて高級車を買ったり、いじめっ子へ仕返しをしたり、彼らは欲望を叶えるため好き放題に“過去"を変えていく。だが、その事が未来に連鎖的な影響を与え、“現在"にいたはずの仲間が消えてしまう。さらに、世界中で飛行機墜落事故や暴動など次々と異変が起こり始めて……。(シネマトゥデイより)



マイケル・ベイの映画製作会社プラチナム・デューンズが製作した本作。
全米初登場ランキングは『アメリカン・スナイパー』に次ぐ2位でしたが、
日本では劇場公開されず、ビデオスルーとなりました。
全米2位のヒット作くらい、ちゃんと劇場公開しろよ、と言いたいところですが、
本作は全米2位といっても、オープニング成績はたったの800万ドルで…。
興収が1000万ドルにも満たない作品が2位になること自体が奇跡で、
その週は周りがよほど弱かったのだろうと思われます。
まぁスーパーボウルが開催される週末だったので、
各社あまり力を入れない週なのは間違いないみたいですが…。
プラチナム・デューンズの作品としても過去二番目の低い成績で、
その成績が物語るように、あまり評判も良くなかったみたいなので、
日本で劇場公開が見送られるのも仕方がないかもしれません。

日本の宣伝(作品紹介)では、やたらマイケル・ベイ製作が強調されていますが、
前述のように彼の製作会社が製作しただけで、彼は直接関わってないかも。
監督のディーン・イスレイライトは本作が監督デビュー作みたいですが、
どうやら彼は同社製作の『ミュータント・タートルズ』の監督である
ジョナサン・リーベスマンの従兄弟らしいです。
縁故で監督に指名されたのかなって思っちゃいますね。
流行りのSF系ファウンドフッテージだし、そこそこ低予算なので、
監督デビュー作としては手頃な作品かもしれません。
ただ、この手の作品は傑作『クロニクル』と比較されがちなので、
あまりいい評価はもらいにくいです。
『クロニクル』と比較しなければ、もう少し評価されそうな作品な気がします。

とはいえ、ボクも『クロニクル』のことは度外視したとしても、
本作をよく出来た作品だと評価することは出来ません。
演出や映像など、褒められる点も多々ある内容だとは思いますが、
ストーリーの筋の通らなさが半端ではありません。
「ザ・ブラックリスト」に選出された脚本の映画化のはずなので、
脚本の出来は折り紙付きのはずなのに…。
タイムトラベルを題材にしたSF映画ですが、タイムパラドックスが酷すぎます。
いや、タイムパラドックスはタイムトラベルものの面白味のひとつなので、
タイムパラドックスが含まれること自体は問題ではありませんが、
作中に相容れないタイムパラドックスが複数起きているので、
本作のタイムトラベルの設定自体に一貫性がないのが問題です。
基本的には過去に戻った時点で元の世界から分岐する
パラレルワールド型のタイムトラベルの設定のはずが、
時折、それでは説明が付かないタイムパラドックスが生じます。
というか、時々によって都合のいい結果を使っているように思われ、
安易でご都合主義な印象を受けてしまいます。
それ以前に、設定に一貫性がないので「え、なんで?」と思うところも多く、
特に終盤は状況が理解し難くなっており、クライマックスなのに盛り上がれません。
以下、ネタバレ注意です。

2014年、高校生のデヴィッドは自身の発明品のビデオをMITに送り、
入学審査を受けて見事に合格しますが、が奨学金が思ったほど貰えず、
父が子供の頃に他界し、母が休職中の彼の家では授業料が払えません。
母は息子のために自宅を売る決意をしますが、デヴィッドは心苦しく…。
そんな時、屋根裏部屋から父のビデオカメラを発見します。
ビデオには自分の7歳の時の誕生会の時の映像が残っていましたが、
なんと背景の鏡の中に17歳現在の自分の姿が映り込んでいて…。
驚いたデヴィッドは妹クリスと、友達クインとアダムと共に、
その映像の謎を解明しようとします。
たまたま見た映像で身に覚えのない自分を発見しちゃうなんて、
なんだか『複製された男』みたいでワクワクする展開ですね。

映像を繰り返し見るうちに、どうやら映像の中の自分は、
家の地下室に向かおうとしているのではないかとわかり、
地下室は研究者だった父のラボで、今は開かずの間でしたが、
何か謎を解く手がかりがあると考え、4人は地下室を物色。
すると床下から謎の機械の一部と何かの設計図を発見し、
国防総省の機密部門DARPA(国防高等研究所)の「アルマナック・プロジェクト」で
開発中の時間転移装置、つまりタイムマシンの試作機の設計図のようです。
機械はタイムマシンの心臓部「熱磁気加速器ナビゲーションドライブ」らしいです。
なんだかアメリカがタイムマシンを開発していたと思うと色々怖いですね。
4人は当然タイムマシンを作ろうと考え、ホームセンターで材料集め。
面白いのはその材料にXbox360を使ったり、スマホで操作できるようにすることです。
そう簡単には完成せず、試行錯誤を繰り返しながらも、
徐々に完成に近づいていく過程もワクワクします。
前述のように本作の問題点はタイムトラベルの設定なので、
タイムマシンが完成するまでが本作の面白さのピークです。

完成には強力なバッテリーが必要になり、
デヴィッドはニッケル水素充電池を使用しようと思いつき、
近所のパーティに来ていた、憧れの女子ジェシーのHV車を勝手に拝借し、
ラジコンカーを使った短時間のタイムワープの実験をして、見事成功します。
勝手にマイカーのバッテリーを使われたジェシーもその現場を目撃し、
彼女もタイムマシン制作の仲間に加わることになります。
これで男子3人、女子2人の5人組になりますが、女子2人がやたらセクシーで、
マイケル・ベイ好みの女の子って感じがしますね。
ボクはジェシーよりもデヴィッドの妹クリスの方が好みでしたが、
本作はファウンドフッテージのため、撮影担当の登場人物が必要で、
その主な担当者がクリスだったので、彼女はあまり画面には登場せず…。
正直、ジェシーと撮影担当を代わってほしいと思ったというか、
むさ苦しいクインかアダムが撮影しろよと思っちゃいました。

ラジコンカーで無機物のタイムワープ実験は成功したので、
今度は生き物の実験を行うことになります。
デヴィッドはまず慎重にバクテリアやネズミで試そうとしますが、
ジェシーがノリノリですぐに人体実験することを提案。
5人で24時間前にタイムワープすることになるのです。
物語のテンポ的にはいいけど、いきなり自分たちで人体実験なんて、
こいつら根性ありすぎるというか、無謀すぎてあり得ないと思っちゃいました。
ラジコンカーも成功したとは言っても、ワープした時に壁にめり込んでたのに、
もしあれが人間だったら絶対死んでるのにね。

でも結局、5人はタイムワープを行い、特に問題なく成功します。
クインは『LOOPER/ルーパー』の真似をしようと思い、
24時間前の自分に会いに行くのですが、
過去の自分が消滅しかけたので慌てて逃げます。
『タイムコップ』のように過去の自分に未来は教えられない設定のようです。
元の時間に戻ってくると、町中に前にはなかった張り紙が…。
迷い犬の張り紙でしたが、どうやら現在に戻る時に、
どこかの飼い犬をタイムワープに巻き込んでしまい、
そのせいで歴史が変わってしまったみたいです。
これは過去を改変したことで元の世界が変化してしまう、
典型的なパラレルワールド型タイムトラベルの現象です。

成功した5人はタイムマシンを使って、人生を楽しくやり直そうと考えます。
クインは科学のテストで失敗し、留年しそうだったので、
過去に戻ってもう一度テストを受けようとします。
しかしテストの問題は受けたものと完全一致しているわけではなく、
合格するまで何度もタイムワープすることになるのです。
問題が変化するのは、やっぱりタイムワープするだけでも、
歴史が微妙に改変されるためなのは理解できるけど、
何度も戻れば、何人ものクインが教室に集まることになるはずだけど、
そうならないのはちょっと納得できません。
宝くじも買いますが、当選金は5000万ドルを超えるはずが、なぜか180万ドルで…。
どうやら6つの数字を選ぶ数字選択式宝くじだったみたいですが、
記入ミスか5つしか当たってなかったみたいです。
これもミスではなく、改変により結果が微妙に変化したのかも?

当選金でlマセラティを買ったりと豪遊する一方で、
バッテリー強化のためにニフッ化キセノンなる物質を買ってタイムマシンを強化。
往復3週間前しか戻れなかったところを往復4年前ほど戻れるように改良します。
はじめに3週間と聞いた時は、7歳の誕生日まで戻れないと思いましたが、
なるほど、タイムマシンもどんどんパワーアップするのですね。
ヒトラーを暗殺したいみたいなことも言ってたけど、
さすがにそこまで強化するのは無理そうかな。
5人は強化されたタイムマシンで3カ月前の音楽フェスを観に行きます。
フェスを満喫した彼らでしたが、デヴィッドもテンション上がっちゃって、
憧れのジェシーに告白しようとしますが、結局勇気が足りずに告白失敗。
ジェシーも告白を待っていたため、2人の関係は気まずくなってしまい…。
元の時間に戻った5人ですが、さすがに3カ月もタイムワープすると、
歴史もかなり干渉されていて、友達の人間関係などいろいろ変化していて、
彼らは戸惑いますが、デヴィッドはそれどころではなく、告白失敗を悔やみ、
禁止した単独ワープで自分だけフェスに戻り、今度はちゃんと告白するのです。
元の時間に戻るとちゃんと恋人同士になれていて喜びますが、
そのタイムワープが歴史に干渉し、とんでもないことが起こるのです。

元の歴史では起こっていなかった飛行機の墜落事故があったようで、
クインやアダムは「これは僕たちのせいかもしれない」と考えます。
自分たちがタイムワープでフェスに行ったことで、
連鎖反応(バタフライ効果)が起こり、飛行機事故が起きたと…。
アダムは「フェスに行ったことを取り消そう」と提案しますが、
デヴィッドは告白成功したことまでが取り消されると思い拒否します。
実際にフェスに行くのを取り消せば、フェスのことを忘れるらしいけど、
この設定は絶対に筋が通りません。
時間旅行者は歴史干渉による記憶の改変は受けないはずだからです。
もし受けるなら、タイムワープで戻る時の世界の変化も記憶できるはずだし、
迷い犬の張り紙や人間関係が変化していても戸惑うはずないからね。
ここからの展開は本当にメチャクチャになってしまいます。

墜落した飛行機のパイロットは、クリスの同級生サラの父親で、
彼はフライト当日に本当は息子(サラの弟)が出場する
バスケ部の地区大会決勝を観戦する予定でした。
バスケ部は本当なら決勝に進出していたはずですが、バスケ部キャプテンが、
デヴィッドらのタイムワープによる歴史干渉によって骨折してしまい、
バスケ部は決勝に進出できず、サラの父も観戦に来ずに出勤し、
操縦する飛行機が墜落してしまったそうです。
なぜキャプテンがタイムワープで骨折したのか、その因果関係が不明でした。
でもどうやらキャプテンはラジコンカーの実験の時の近所のパーティで、
タイムマシンの起動で周辺一帯が停電した時に事故って骨折したようです。
それなら確かに骨折はタイムワープの影響とも言えなくないけど、
フェスに行った事とは何も関係ない気がするのですが…。
というか、キャプテンが骨折した時点ではデヴィッドたちはタイムワープ経験前だし、
元の歴史でも彼は骨折して、バスケ部が負けて、飛行機が墜落しているはずでは?
なぜディヴィッドが単独ワープで戻って来た時点で墜落が起こるのか不可解です。
バタフライ効果は一見因果関係のないところで起こることなので、
絶対におかしいとは言い切れませんが、どうも釈然としません。

デヴィッドは「フェスを取り消さなくても、キャプテンの骨折を防げばいい」と考え、
また単独ワープでパーティの日に戻り、キャプテンを骨折事故から救います。
ところが元の時間に戻ってくると、骨折も墜落もなかったものの、
何故かアダムが事故って重体で入院していて…。
どうもアダムはバスケの決勝を観に行った後で交通事故に遭ったみたいです。
デヴィッドはアダムの事故も飛行機墜落も起きないようにするには、
どの時点にタイムワープして何をするべきか考えるのですが、
フェスに行ったことを取り消してフェスの記憶が消えるなら、
飛行機墜落をなかったことにしたなら飛行機墜落の記憶は消えるはずです。
デヴィッドはアダムを救うために単独ワープをしようとしますが、
ジェシーが止めに来たため、彼女も巻き込んでタイムワープ。
しかしワープ先で過去のジェシーと遭遇し、なぜか双方のジェシーが消滅します。
クインが過去のクインに会った時は過去のクインだけが消滅しそうでしたが、
過去のジェシーが消滅したら、当然現在のジェシーも消滅するってことか。

デヴィッドは全部なかったことにしなければいけないと考え、
タイムマシンが生み出されないようにしようと、父が設計図を地下室に隠した、
2004年の自分の7歳の誕生日にタイムワープします。
往復で4年しか戻れないはずのタイムマシンで、
いつの間に(片道とはいえ)10年戻れるようになっていたのか。
というか、10年前はまだ設計図とタイムマシンの心臓部しかなく、
タイムマシンはまだ生み出されていないので、
自分がが設計図を発見した日に戻って完成を阻止すれば十分なのでは?
デヴィッドは2004年の地下室で設計図と心臓部を焼却し、
タイムマシンをなかったことにしますが、それによって、
タイムマシンでここに来た自分の存在も消えてしまいます。
この日に父も事故死するはずで、デヴィッドがタイムマシンを作った
もともとの目的は父を事故から救いたいということだったけど、
結局なぜ父が死んだのかはよくわかりませんでしたね。
デヴィッドはここで父を助けたら歴史が変わると思って止めたのでしょうが、
そのわりには父に対して「息子にさよならを言うべきだ」と暗示してるし…。

改変された2004年。
もちろんこの歴史ではタイムマシンは存在せず、
デヴィッドもタイムマシンのことを知りません。
奨学金のために母が自宅を売却しようとしていたある日、
デヴィッドは父の遺したビデオカメラを見つけます。
しかしそのビデオカメラはもう一台あり、タイムワープしていたデヴィッドの映像が…。
デヴィッドが2004年に戻って消滅した時に残していたビデオカメラらしいです。
人間の記憶は過去を取り消せば一緒に消えるけど、
記録された映像、つまりデータは消えないってことなのかもしれませんが、
2014年から持ち込まれたビデオカメラ本体は消えるはずでは?
それにこのビデオカメラには、これでは撮影していないはずの、
クリスがスマホで撮った映像も記録されているし…。

その映像を見たデヴィッドは別の歴史の自分がタイムワープしていたことを知り、
ジェシーに「世界を変えよう」と話しかけて本作は幕を閉じます。
いやいや、設計図は焼失しているからタイムマシンは作れないはず。
よしんばビデオの映像である程度作り方がわかったとしても、
DARPAが作ったマシンの心臓部までは再現できないはず。
なにより、歴史に干渉するリスクを別の自分が映像を残して伝えてくれたのに、
頭いいくせにそこから何も学ばなかったのか、と。

『バタフライ・エフェクト』を『クロニクル』風にした作品というか、
ファウンドフッテージ版『バック・トゥ・ザ・フューチャー』というか、
物語は王道のタイムトラベルSFで、面白くないわけでもないのですが、
やはり歴史の改変で時間旅行者の記憶の改変が起こる場合と
起こらない場合のタイムトラベルの設定が混在し、
一貫してないことで評価はガタ落ちでした。
それを改め、筋が通る展開にしていれば面白いはずなのに勿体ないです。

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