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ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男

先月28日に、今いくよさんと今井雅之さんが亡くなりましたが、
先々月は愛川欽也や萩原流行も亡くなったりして、
最近よく有名人の訃報を聞くなって印象です。
とはいえ彼らのファンというわけでもないので、それほど感慨も湧かないけど、
先月「ひとつの時代が終わったな」と思うほど衝撃的だった訃報は、
BUDDHA BRANDのDEV LARGEが急逝したことです。
大きく報道された前述の人々に比べれば、知る人ぞ知る人ですが、
日本語ラップ界では重鎮中の重鎮で、伝説的な男です。
世が世なら、場所が場所なら、とんでもない人物になっていたと思います。
ボクも青春時代に日本語ラップに傾倒していたので、彼の大ファンだったから、
まるで青春時代の一部が欠けたような喪失感を覚えました。
でも本当にロクに報道もされず、それもなんだか寂しかったです。
(遺族の意向もあったみたいですけど。)

ということで、今日は訃報が世界中で報じられた伝説的な男の伝記の感想です。
生前DEV LARGEも彼をリスペクトしていると公言してましたね。

ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男
Get on Up

2015年5月30日日本公開。
ジェームス・ブラウンの伝記ドラマ。

親に捨てられ、劣悪な環境で育ったジェームス・ブラウン(チャドウィック・ボーズマン)。その後、窃盗の罪により刑務所に入れられてしまうも、無二の親友と出会い、出所後は音楽の世界へ進出。少しずつヒット曲も生み出し、ブラウンの名は次第に世間に広まっていく。一方で、妻や自分を捨てた母親との関係、親友のボビー・バード(ネルサン・エリス)との意見の食い違い、ミュージシャンらとの諸問題など、ブラウンには頭を悩ます事案が常につきまとい……。(シネマトゥデイより)



本作は2006年のクリスマスに他界したファンクの帝王、
ジェームス・ブラウンの半生を描いた伝記映画ですが、
主に幼少期から、全盛期の70年代前半までのことが描かれています。
ボクはJBのことをほとんど知らないに等しいですが、
初めて見たのが20年ほど前のカップ麺のCMで、
本作の表題曲でもある「Get on Up」のアホみたいな替え歌を唄う、
ド派手なオバサンみたいな黒人のオッサンの姿で、
そのイメージが鮮烈に焼き付いてしまっているため、
偉人というよりは変人な印象が強いです。
でもボクが好きなミュージシャンたちが、JBのことをリスペクトしており、
9年前の訃報の時も、かなり惜しむ声が聞かれたので、
その時はさすがに本当にすごい人だったんだなと実感しました。

本作で描かれるのは、落ち目になって日本でアホなCMに出演する前の彼で、
MJをはじめ、世界中のミュージシャンがリスペクトしていた全盛期の頃なので、
本当にすごかった頃の彼の姿です。
もちろん俳優が演じているので、本物のJBの姿とは言えないけど、
演じるのは、今実在の人物演じさせたらナンバー1の黒人俳優、
チャドウィック・ボーズマンがJBファンも唸らせる再現度で演じているので、
かなり本人に近い姿なのではないでしょうか。
特にライブシーンは「そりゃ伝説にもなるよ」と思ってしまうほどの
驚異的なパフォーマンスでしたからね。
ボクなんて件の「Get on Up」と「Get Up Offa That Thing」くらいしか
JBの曲は知りませんでしたが、本作で使われたどの曲も素晴らしいと思ったし。
もちろんボーズマンのパフォーマンスも素晴らしかったのでしょうが、
製作に携わったミック・ジャガーの選曲もよかったのでしょう。

音楽シーンは本当に素晴らしく、いつまでも観ていたい気分でしたが、
物語としては、ちょっとイマイチな気がします。
伝記なのでJB自身の波乱万丈な人生がベースだけど、
その波乱万丈さを詰め込もうとしすぎで、若干煩雑になってしまっている気が…。
いや、本当はこんなもんじゃないくらい波乱万丈な人生を
映画サイズに上手くまとめているのかもしれないけど、
メインプロットである親友ボビー・バードとの友情物語が、なんか薄いです。
幼少期の貧乏生活とか、母親のこととか、2人の妻とのこととか、
いろいろ詰め込みすぎて、ボビー・バードとの友情に焦点が合っていないです。
むしろマネージャーのベン・バートとの結束の方がよく描けていたくらいで…。
幼少期の見世物の目隠しボクシングや、ベトナム慰問のエピソードなんかは、
単体では衝撃的な話ではあるけど、本作のメインプロットとは全く関係ないし、
脇道に逸れすぎないで、もっとボビーとの関係を掘り下げた方が、
物語としてのまとまりがいいのではないかと思います。

あと、時代が前後しすぎで、特に前半は戸惑ってしまいました。
本作の冒頭は1993年のステージに向かうJBの姿から始まりますが、
すぐにJBがショットガンを持って保険講座に乱入する1988年に遡り、
またすぐ60年代のベトナム慰問シーンにジャンプ。
更にまたすぐ1939年の幼少期に移るのです。
どんどん遡っているとかと思いきや、今度はボビーと出会った1964年に飛び、
その後はある程度時系列通りに進みますが、時折過去のエピソードが挟まり…。
JBのことをよく知ってる人なら、そのエピソードがいつ頃か補完もできるだろうけど、
疎いボクには幼少期から時系列に描いてくれていた方が有難いです。
あとJBが急にカメラ目線で客に話しかけてくるようなメタ演出も少し戸惑います。
以下、ネタバレ注意です。

幼少期に母親に捨てられ、親戚の家で育ったJBでしたが、
17歳の時にスーツ泥棒で警察に捕まり、なんと13年も服役することに…。
しかし慰問に来たゴスペルグループ「ザ・ゴスペル・スターライターズ」のボビーが
JBの歌の才能に惚れ込み、ボビーの親が保証人となることで仮釈放。
ボビーの家に住みながら、教会でゴスペルを歌うことになります。
ボビーはJBに妹に手を出されたのに、全然怒らないんですよね。
まぁ交際を認めたのかもしれないけど、JBが他の女と結婚しても怒らないし…。
でもこの後の展開を見たら、彼はJBに全く逆らわないし、
妹の件もボビーらしいなと思えました。

JBとボビーは仲間数人とR&Bグループ「フェイマス・フレイムズ」を結成。
リトル・リチャードのライブに乱入したりしながら活動、キングレコードからスカウトされ、
「Please, Please, Please」でデビューすることになります。
ところがブッキング・エージェントのベンの意向で、
彼らの名義が「James Brown and His Famous Flames」にされてしまい…。
「安室奈美恵 with SUPER MONKEY'S」みたいなもんですね。
露骨に「JB以外必要ない」と言われ、仲間は気分を害し去ってしまうのです。
JBはその名義に賛成したみたいですが、本当は自分の名前だけになるところを
グループ名も残してほしいと食い下がったらしいので、
仲間たちがJBに当たるのは気の毒ではありますが、
「The Famous Flames」ならまだしも「His Famous Flames」はカチンとくるかな。
ただ、JBのフェイマス・フレイムズ時代の活動がほぼ描かれないので、
ここで仲間と決別しても、別に何の感慨もないんですよね…。
この時、ボビーも仲間と共に去ったと思ったけど、いつの間にか戻って来てました。

JBはライブ盤を出したいと考えますが、レコード会社から
製作費がスタジオ盤の7倍もかかるからダメと拒否されます。
ライブ盤なんてライブを録音するだけだから、むしろ手抜きと思ってたけど、
逆に製作費が何倍もかかるなんて意外でした。
JBはマネージャーのベンと相談し、自腹でライブ盤を作ることにします。
しかもなんとアポロシアターでのライブを録音するのです。
ところがアポロシアターでのライブにも手応えを感じますが、
ライブ後、楽屋に母親が訪れて…。
JBは「あんたは無用だ」と母親に100ドル渡して追い返します。
時系列が前後しまくる本作では、この時のエピソードが終盤に挿入されますが、
製作側としては、このエピソードがクライマックスに相応しいと思ったのでしょうが、
ボビーとの友情が軸なのだから、この構成はあまり意味がない気がします。

JBは興行師を通さないビジネスを提案したり、
ハーレムの子供たちをスタジオに招く慈善活動をしたりと、
画期的な試みでどんどんビッグになります。
キング牧師が暗殺された直後のライブでは、市長からの中止要求を拒否。
黒人客がステージに乱入し、白人警官がステージから突き落とすという
ちょっとヤバイ雰囲気でしたが、JBの見事なパフォーマンスにより事無きを得ます。
客はキング牧師が暗殺された怒りより、JBのパフォーマンスが見たいって感じで、
当時のJBの人気が窺えますが、たぶんここが頂点だった感じです。

その後、マネージャーのベンが死にますが、その影響なのか、
JBはレストラン経営など副業にいくつも手を出し、経済的に苦しくなり…。
そんな折、バックバンドのメンバーがギャラ未払いでストライキ。
ギャラよりも、ワンマンな上に練習が厳しいJBに、不満が溜まっているようです。
すぐ罰金を取ろうとするのもムカついたみたいですね。
ギャラ未払いは論外だけど、練習での罰金や厳しすぎる態度は、
音楽にストイックすぎるが故なのでしょうね。
結局、バンドメンバーは去ってしまいますが、やはりボビーだけ残ります。
ボビーも親友ならJBに注意してあげればいいものを、
彼がイエスマンだからJBがワンマンになる気がします。

パリ公演では「Get on Up」を歌いますが、知らない曲もよかったけど、
やっぱり知ってる曲のパフォーマンスシーンはテンション上がりますね。
合いの手のところはボビーが歌っているんですね。
映画的には最高の盛り上がりでしたが、そのパリ公演の後、
ボビーがソロレコードを出したいと言い、JBが激怒します。
どうも彼は自分が落ち目だと思っているようで、
ボビーにまで見捨てられるのかと焦り、「人の名声を笠に着て恥を知れ」と一喝。
さすがのイエスマンのボビーも愛想が尽き、JBと手を切る決断をします。
その後、独りになったJBはドラッグに溺れ、冒頭のショットガン事件を起こし、
警察とのカーチェイスの末に逮捕されてしまい、見事なまでの転落を経験します。
このJBの転落にボビーに見放されたことが影響しているなら
ボビーとの友情の重要性を描けていると言えるかもしれないけど、
ボビーが去った後に、JBの最初の妻の子供テディが交通事故で亡くなるので、
ドラッグに溺れたのもショットガン事件を起こしたのも、
息子の死が原因のような印象を受けるんですよね。
もちろん実際にJBがドラッグに手を出したのは複合的な要因があるでしょうが、
映画としては息子の死は無視してしまった方が、
ボビーとの友情物語に徹することができていい気がします。

1993年、JBは20年ぶりにボビーに会いに来て、コンサートのチケットを渡します。
ステージ上で客席にボビーを発見したJBは、「Try Me」を歌うのです。
「Try Me」は女性に向けたラブソングですが、
「俺のことを拒まないで」「おまえが必要だ」というような内容の歌詞で、
それをボビーに対して伝えたわけですね。
ボビーもその気持ちを汲み取り、和解したような感じで本作は終了します。
この締め方だと、やっぱりボビーとの友情が軸なのかなと思いますが、
前述のようにそれまでの二人の関係性の描き方が希薄なので、
いまいちカタルシスを感じにくいというか、あまり感動もできませんでした。
JBももう晩年なので、そのアフォーマンスにも全盛期のキレはないし、
ラストとしては少し盛り上がりに欠ける、尻つぼみな気がしました。

とはいえ全盛期のJBを再現したパフォーマンスは見応えがあったし、
JBのミュージシャンとしての素晴らしさは十二分に伝わる出来だったので、
ミュージシャンの伝記映画としては最高峰の出来栄えなんじゃないかな?
まぁ題材になった人物が最高峰のミュージシャンのひとりなので当たり前か。

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