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グッド・ライ いちばん優しい嘘

今日はGWの最終日でしたが、3日から大切なお客さんが来ていたので、
最終日の今日まで映画館に行けませんでした。
まぁ観たいGW映画は粗方GW前に観ていたし、GW中は混雑してそうだから、
もし暇でも映画館には行かなかったかもしれませんけどね。
そもそもボクはGWなんて関係なく普通に仕事していたし…。

話しは変わって、4月中旬に封切られるもGW前の新作公開ラッシュで、
手が回らず後回しにしていた『グッド・ライ』でしたが、
先週末は観たい作品の封切りが少なかったので、漸く観に行けました。
まだ公開3週目だというのに、かなり小規模上映になっていましたが、
『シンデレラ』や『ワイルド・スピード』などハリウッド超大作、
『セッション』や『インヒアレント・ヴァイス』といったオスカー関連作、
『名探偵コナン』『ドラゴンボール』『クレヨンしんちゃん』などの劇場版アニメ、
『寄生獣』や『龍三と七人の子分たち』など注目の邦画が大激戦の中で、
スクリーンを確保することも儘ならなかったのだろうと思います。
ボクもそんな状況の中で本作をスルーしかけたわけですが、
上記の話題作と比較しても、本作は1、2を争う佳作だったので、
これをスルーしかけたかと思うとゾッとします。

やっぱりマイナー作品は、GWの時期に封切らない方がいいです。
本作もこれほどの佳作ならば、平常時に公開すれば少しは話題にもなるのに、
こんな時期に公開すれば、メジャー作品に埋没し、
話題に挙がるどころか気付かれないまま公開終了しちゃいます。
それでも映画館への総来場者数はかなり多いので、
平常時よりも興収はいいのかもしれませんが…。

ということで、今日は興収ランキング圏外の映画の感想です。

グッド・ライ いちばん優しい嘘
The Good Lie

2015年4月17日日本公開。
実話を基にフィリップ・ファラルドー監督が撮ったヒューマンドラマ。

カンザスシティーの職業紹介所勤務のキャリー(リース・ウィザースプーン)は、スーダンの内戦で両親を亡くしたマメール(アーノルド・オーチェン)らを空港で出迎える。これまで抜かりなく仕事をこなしてきた彼女の任務は、難民の彼らに勤め先を見つけることだった。だが、電話など見たこともなく、マクドナルドも知らない彼らの就職は困難を極める。(シネマトゥデイより)



前述のように強力なGW映画たちと封切りが重なったため、
宣伝すらまともにできていなかったように感じる本作。
同日公開だった『ワイルド・スピード』なんて何十回と予告編を観たけど、
映画館で本作の予告編を観たのは、たぶん一回だけだったと思います。
全米ボックスオフィスも13位スタートで、あまり注目作でもありませんでしたが、
それでも観てみたいなと思ったのは、フィリップ・ファラルドー監督作だったから。
ファラルドー監督の(日本で公開された)前作『ぼくたちのムッシュ・ラザール』は
第84回アカデミー賞外国語映画賞候補だったので観に行ったのですが、
素晴らしい作品だったので、彼の最新作である本作にも興味が湧きました。
前作が外国語映画賞の候補だったことでもわかるように、
彼はカナダの監督で、主にフランス語映画を撮っていましたが、
ノミネートでハリウッド(というかロン・ハワード)からお声が掛かったのか、
本作で英語映画に初挑戦しています。
しかし扱うテーマは『ぼくたちのムッシュ・ラザール』と同じで「難民」です。
前作はアルジェリア難民でしたが、本作はスーダン難民が描かれますが、
「難民を描くならこの監督だろう」と白羽の矢が立ったのかも。

本作の主演はオスカー女優リース・ウィザースプーンで、
難民を支援する職業紹介所の女性職員を演じています。
白人女性ソーシャルワーカーと黒人男性移民との交流を描く映画といえば、
昨年末に日本公開された『サンバ』が記憶に新しく、
本作もそんな感じの国籍・人種を超えた友情の物語かなと予想していましたが、
全く予想外な内容だったのは意外でした。
ポスターにもウィザースプーンの顔がデカデカと載っていて、
「私が主演」と言わんばかりですが、本作の実際の主人公は移民の黒人の方で、
彼女は脇役、…とまでは言わないまでも、出番は意外と少ないです。
たぶん無名の黒人俳優よりもオスカー女優推しで宣伝した方がいいという、
ハリウッド的な広報によってウィザースプーンを主演扱いしているだけです。
女性職員の出番が少ないんだからそれほど交流が描かれるはずもなく、
本作は真の主人公の移民の黒人を中心に、兄弟との絆を描いた物語です。

スーダン難民を扱った物語ですが、日本人には馴染みのない題材ですよね。
ハートフルなヒューマンドラマに違いないと思っていたボクも
全く予備知識のないまま観に行ってしまいましたが、
本作は主人公の移民青年マメールたちがまだスーダンにいた少年時代から、
尺を取って丁寧に描いているので、スーダン難民の状況が理解しやすいです。
難民なんてどこも似たようなものだろうと思っちゃいますが、
やっぱり国によって事情はかなり違うみたいで、
たぶんスーダン難民はかなり過酷な部類に入るのではないかと思います。
始めのテロップ説明によれば、1983年にスーダンで内戦が勃発し、
北軍が南部の村々を次々と襲撃し、数千人の子供が親を殺され、
13年後、その孤児たち3600人をアメリカが移民として受け入れ、
彼らは「スーダンのロストボーイズ」と呼ばれたそうです。
どうやら宗教戦争だったみたいで、イスラム政権から攻撃されたみたいですね。
孤児のひとりが聖書を抱えて逃げるのもそのためでしょう。

ボクは正直、移民の受け入れには反対で、
我が日本にも絶対に移民を受け入れてほしくないと思っています。
移民が差別されるのはもちろん、受け入れた国民も移民に職を奪われたりして、
イギリスやフランスなどを筆頭に、移民政策が上手くいく国なんてなく、
国民も移民も不幸になると思ってしまうからです。
なので本作に対しても、主人公たちが移民としてアメリカに渡り、
めでたしめでたしな話なら受け入れ難かったでしょうが、
本作はアメリカに渡った移民たちの苦しい現状も描かれているのでよかったです。
アメリカは移民の国だし、世界一移民するのに適した国ですが、
それでもこれほど苦しいのだから、他の国に移民したら悲惨ですよ。
日本など単一民族の国だと尚更悲惨なことになるはずで、
それがちゃんと感じ取れるのが本作の素晴らしいところです。
まぁスーダンほど過酷な状況なら、苦しくても移民した方が幸せな気もするけど…。
以下、ネタバレ注意です。

前述のように本作は主人公マメールたちの少年時代、
つまり内戦で孤児になり、移民が決まるまでのスーダンでの出来事が、
かなりの尺を使ってじっくり描かれています。
そしてこの序盤に描かれるスーダンでの出来事が、
本作のクライマックスといっても過言ではない展開だったりします。
とにかくマメールたち孤児の置かれた状況が想像を絶する過酷さで、
逆に涙も出ないほど辛い展開が描かれます。

南スーダンのバハル・アル・ガザール地方のある村に、
突如北軍の軍用ヘリが飛んで来て、機関銃で無差別攻撃を開始。
北軍の兵士も現れ、村人を片っ端から殺して略奪します。
両親を殺されたものの難を逃れたマメールと兄テオ、姉アビタルは、
村の友達サイモン、ガブリエル、ダニエルと一緒にエチオピアに避難することに。
子供6人だけでサバンナを何百キロも徒歩で移動するだけでも相当過酷です。
食糧調達も、なんとチーターが捕食したガゼルを奪って食べるんですよね。
しかし水分補給が困難で、友達サイモンが脱水症状で死んでしまい、
残った彼らは活きるために小便を回し飲んで渇きを凌ぎます。
そんな壮絶な旅を400キロ以上続け、エチオピアに近づきますが、
エチオピア方向から引き返してくる難民の大行列に遭遇。
どうやらエチオピア国境付近を兵士が見張っているみたいで、
そこから2000キロ以上も歩いてケニアに向かうことになります。

まぁここからの旅は大行列と一緒なので、距離は長いけど子供6人より楽かな。
そこで他の村の孤児ジェレマイヤとポールとも仲良くなります。
…が、やはり人数が多いと目立つのか、900キロ先の川に差し掛かったところで、
北軍の兵士から襲撃を受け、また友達ひとりを失ってしまいます。
マメールら孤児6人は川を渡って何とか逃げますが、
上流から死体が次々と流れてくる川の映像は何とも衝撃的で…。
また子供6人での旅になりますが、友達ダニエルが病気で衰弱。
一番年上の兄テオが彼を背負って歩き続けますが、
ある朝、茂みで寝ていたマメールが目を覚まして顔を上げると、
近くに北軍の兵士がいて見つかってしまうのです。
しかし兄テオが自ら囮になって投降し、弟マメールら5人を逃がします。
そのお蔭で5人は助かり、1200キロ以上歩いてケニアの国境に到着。
カクマ難民キャンプに保護されるのです。
しかし衰弱していたダニエルは治療を受けるも助からず、
結局、無事だったのはマメール、アビタル、ジェレマイヤ、ポールの4人です。

難民キャンプで生活すること13年、4人はアメリカに移民できることが決まります。
どうやら誰でもすぐに移民できるわけじゃなく、抽選か何かみたいですね。
4人は家族と認定されているようで、4人一緒に移民できますが、
キャンプで知り合った友達ジェームズは選考から漏れたみたいで…。
3600人も受け入れても、難民はまだまだ多いってことですね。
ボクも初めて知ったのですが難民を輸送する飛行機代は、
難民がアメリカで働いて期限以内に返さないといけないそうです。
人道目的のわりにはケチくさいな、と思ってしまいますが、
ちゃんと仕事に就かせるためなのかもしれないですね。
日本でも在日朝鮮人が仕事もしないで生活保護受けてる例が多いし、
アメリカも働いて税金納めないような移民はさすがに困るのでしょう。
2001年春、4人はJFK空港に降り立ちますが、
マメール、ジェレマイヤ、ポールはカンザスシティで受け入れなのに、
アビタルだけはボストンで受け入れとなり、
マメールは「家族は一緒にいるべきだ」とゴネますが、
どうやら女性移民はホームステイでの受け入れと決まってるみたいで、
姉とは一緒に住むことは出来ないみたいです。
可哀想だけど女性には何かと物騒だし、ホームステイで
誰かが面倒見てくれるのは、いい制度かもしれませんね。

マメールら3人を空港に迎えに来たのが職業紹介所の女性職員キャリー。
ようやくウィザースプーン登場ですが、ここまでけっこう長かったですね。
そしてここから、これまでの辛い展開とは一変して、
アフリカのド田舎から来た青年たちが大都会に来て
カルチャーショックを受けるというコメディタッチの展開が始まります。
とにかく世間知らずな3人で、キャンプにいた時も初めて白人を見て、
「皮が剥けたまま生まれてきたに違いない」とか言ってたし、
機内食も袋ごと食ってたし、マクドナルドも知らないみたいでしたから、
もう田舎者というレベルではない浮世離れっぷりです。
電話がかかってきても、ベルを警報だと誤解して受話器を取らないのは笑いました。
でもさすがに難民キャンプには電話くらいあったんじゃないかと思いますが…。
何が面白いのかわからないアメリカンジョークで大爆笑するのも面白かったですが、
ホントに全然面白くないジョークなのに、よほどスーダンに娯楽がなかったのか…。

そんな世間知らずではまともに面接も出来ず、就職先も決まりません。
彼氏の経営するワッフル屋からも断られたキャリーは、上司のジャックに相談し、
マメールとジェレマイヤにスーパー、ポールに組立工場を紹介してくれます。
なぜかジャックは牧場に住んでいて酪農しているみたいなので、
自分のところで雇ってあげたらいいのにね。
3人もスーダンで牛を飼っていたので酪農なら経験者なのに。
酪農と違ってスーパーの店員なんて未経験にもほどがあるマメールたちは、
犬の餌が売ってたり、賞味期限切れの商品が廃棄されることに驚愕します。
チーターからガゼル奪って食べたり、小便飲んだりしていた彼らにしてみたら、
アメリカの食生活なんて信じられないほど贅沢でしょうね。
でも喜ぶわけではなく、まだ食べられるものを廃棄することに対し、
ジェレマイヤは「間違った仕事だ」と店長に反発し、店を辞めてしまいます。
この気持ちはわからなくもないけど、食品廃棄は法律で定められているので、
国の在り方が問題なのであって、店長を責めるのは筋違いな気がします。
ジェレマイヤは敬虔なクリスチャンなので日曜学校で教えたりもしているみたいで、
倫理的に間違ったことが人一倍許せないのでしょう。
その反面、カプセルトイを集めるという妙な趣味がありますが、
カプセルの開け方がわからず、カプセルのまま飾っている間抜けなところも。
医者を目指すマメールは学校に通うため、警備員の仕事も掛け持ちしていて、
都会での生活はかなり大変そうです。

一方、手先が器用なので組立工場に紹介されたポールですが、
なんとシャワーヘッドを設計図もなしで組み立て、上司から驚かれます。
ボクが見ても複雑な構造だったのに、たぶんシャワーも使ったことがない彼が、
初見で組み立てられるなんて凄いというか、ちょっとあり得ないです。
スーパー組とは違って幸先のいいポールでしたが、やはり落とし穴があり、
あまりにテキパキに作業するので、ラインの同僚から「浮いてる」と言われます。
不真面目な同僚はもっと気楽に仕事したいのでポールに頑張られと嫌なのでしょう。
しかもこの同僚たちはマリファナや夜遊びなど悪い遊びをポールに教え、
彼もどんどん自堕落になり、マメールたちから心配されます。
どうもポールは単に不良になったわけではなく、
アビタルに会いたくて堪らなくてイライラしているみたいです。
ある日も工場を無断早退し、公衆電話からアビタルに電話しようとしますが、
うまく繋がらず公衆電話をぶん殴ってるところを警察の厄介になり…。
釈放後、マメールは軽率な行動を注意しますが、
ポールは「お前こそ兄弟の死を無駄にした」と言い放ち…。
マメールは自分を守るために囮になって北軍兵士に捕まった兄テオのことを
ずっと後悔していたので、その言葉に深く傷付きます。
しかしキャリーの上司ジャックに励まされて立ち直り、ポールとも和解。
それを見ていたキャリーはある行動に出るのです。

キャリーは移民局に乗り込み、アビタルをカンザスに移してほしいと要求。
しかし移民局は、スーダンはテロ支援国家なので難民の州移動は難しいと…。
どうやら同時多発テロ以降、在米スーダン難民の立場も変わったみたいです。
でも弁護士に相談して、受け入れ先さえあれば何とかなるかもしれないらしく、
なんとキャリーは自分の家を受け入れ先に申請するのです。
なんとも奇特なことですが、難民を支援する組織の彼女が、
特定の難民にだけ肩入れするのはどうなのかなとも思いますね。
でも姉アビタルと再会したマメールたちは大喜びで、ポールの非行も収まります。
キャリーのお蔭で兄弟4人が感動の再会をして、めでたしめでたし。

…と思ったら、本作はまだまだ終わりません。
ある日アビタルの元にカクマ難民キャンプから手紙が届き、
「ある男があなた方を探していた」という報せが…。
マメールはその男が兄テオかもしれないと考え、
ひとりケニアに飛び、再び難民キャンプを訪問します。
しかし男に関する手掛かりはないため、10万人いる難民に聞き回るしかなく…。
そこで友達のジェームズに再会します。
ジェームズはまだ移民できてないわけですが、マメールたちが移民してすぐに
同時多発テロが起こったため、アメリカの移民受け入れも中止されていたようです。
キャンプ中で聞き回るも有力な情報は得られず、途方に暮れるマメールでしたが、
なんとジェームズが男を見つけ出し、連れて来てくれます。
その男は、やはり兄のテオで、兄弟は十数年ぶりの感動の再会をします。
テオは北軍兵士に拷問されたみたいですが、なんとか生きていたみたいです。
でもリウマチ熱で心臓が弱っているみたいで…。

もちろんマメールは兄テオを姉アビタルたちが待つアメリカに連れ帰りたいですが、
移民受け入れは中止されているので、テオが移民になるのは困難です。
近隣の大使館に庇護を求め、友好国からのビザで入国するしかないけど、
テロ支援国家のスーダン人に対して簡単にビザがおりるはずもなく…。
キャンプに戻ったマメールは「ビザの手続きが上手くいった」とテオに報告し、
2人で空港に向かいます。
しかし出国ゲートの前で、マメールは「今から兄貴がマメールだ」と言って、
テオに身分証明書を渡して去ってしまうのです。
やっぱりビザの手続きは失敗したようで、まさかとは思ったけど、
マメールは自分が残り、兄を自分としてアメリカに帰すことにしたのです。
十数年前に自己犠牲で自分を守ってくれた兄に対する恩返しでしょう。
なるほど、本作のタイトルの「グッド・ライ」とはこのことだったのですね。
顔が似た兄弟だったのでよかったですね。
ただマメールは兄をアメリカに行かせたいと思っただけではなく、
自分自身もキャンプに残りたいと思っていたみたいです。
医者を目指している彼は医療テントで皆を助けたいと思ったのでしょう。
きっとアメリカにいても移民が医者になるのは難しいの思うし、
祖国の仲間のために祖国(ケニアだけど)で医療活動する方が、
きっと多くの人を助けられるので社会的にも価値のある選択だったと思います。

優しい嘘で兄を救ったマメールの行動には感動しましたが、
よく考えるとこれってけっこう怖いことですよね。
テロ支援国家から他人のフリをしてアメリカに入国しちゃえるってことで、
テオもマメールも悪人じゃないから美談で済んだものの、
もしテロリストが悪用したら、とんだ「バッド・ライ」になっちゃいます。
でも同時多発テロ後、アメリカの入国審査も厳しくなっているはずで、
ボクもアメリカに行ったことがないのであまり知らないんだけど、
実際は顔写真だけで入国できるなんてことはないんじゃないのかな?
生体認証なら兄弟でもさすがに誤魔化すのは無理なんじゃないの?
まぁ本作は「スーダンのロストボーイズ」から着想を受けて作られただけで、
別に実話を映画化したということでもないと思うので、
ある程度の嘘は、面白くなるなら問題ないかな。
面白くするための嘘もまた「グッド・ライ」ですね。

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