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龍三と七人の子分たち

今月は16本の映画を鑑賞しましたが、
アニメ映画3本、実写映画3本と日本映画を6本も観ました。
これだけ日本映画を観た月は久々な気がします。
しかもどれもなかなか楽しめたので、日本映画も悪くないなと思いました。
日本語だし、文化的にも理解しやすいので気楽に観れるのもいいですね。
日本映画は避けがちでしたが、また観始めようかなとも思いますが、
観たい外国映画が多すぎて、どうしても後回しになっちゃいます。
少し気になる『王妃の館』を観に行った知人が「つまらなかった」って言ってたし、
やはり期待値としては外国映画の方が相対的に高いです。

ということで、今日は今月3本目の実写日本映画の感想です。

龍三と七人の子分たち
龍三と七人の子分たち

2015年4月25日公開。
北野武監督、藤竜也主演の任侠喜劇。

組長を引退したものの、ヤクザの性分が消えないために普通の老人として生きていけない龍三(藤竜也)。そんな毎日にいら立ちを募らせる中、彼はオレオレ詐欺にだまされてしまう。人々をだます若い連中を許すわけにいかないと、龍三はかつての子分たちを召集して世直しをすることに。年齢に関係なくまだまだいけるとオレオレ詐欺のグループを倒しに向かう彼らだが、行く先々でとんでもない騒動を引き起こしていく。(シネマトゥデイより)



「世界のキタノ」こと北野武の2年半ぶりの新作は、相変わらず任侠映画です。
が、いつもと違うのは今回は完全なコメディになっていることでしょう。
芸人出身の映画監督は何人かいますが、本職がお笑いのくせに、
コメディ映画に真っ向から取り組もうというやつは意外と少なく、
コメディ映画を撮るにしても、すぐシュールやナンセンスに逃げがちです。
その傾向は芸人監督の先駆けである北野武の影響もあると思われ、
彼のこれまでの監督作16作の中でも、コメディと呼べそうなのは
初期にビートたけし名義で撮った『みんな~やってるか!』くらいです。
たぶんその時の失敗からコメディを撮らなくなったのかも。
あと『HANA-BI』で金獅子賞、『座頭市』が銀獅子賞なんて
うっかり受賞しちゃったものだから、世界で評価され続けるために、
アート系やバイオレンス映画志向が強まった気がします。

でもフランス文化勲章コマンドールを受賞したことで満足したのか、
作風も大衆迎合の娯楽作品にシフトし始めた感じです。
世界で評価されるようなアート系作品というのは、得てして国内興行が厳しく、
北野武も自分の作品がヒットしないことに不満そうでしたからね。
娯楽性を高め比較的ヒットしたバイオレンス任侠映画『アウトレイジ』も、
続編『アウトレイジ・ビヨンド』ではバイオレンス描写を控え目にして
更なる大衆迎合を図り、前作を超えるヒットとなりました。
本作はその延長線上で、任侠映画ではあるけど、更にバイオレンス描写を控え、
代わりにコメディ要素を増やし、大衆迎合を推し進めた気がします。
内容的にも高齢社会の日本を風刺するコメディなので、
海外の評価を狙うのではなく国内向けに制作されていると思います。
「これならヒットするだろ」という監督の声が聞こえてきそうな感じです。

他人のフンドシで相撲を取った『座頭市』を除けば、
本作が北野武監督の作品の中で最もポピュラリティが強く、
老若男女、誰でも楽しめそうな作品に仕上がっていると思います。
ボクは(暦の上では)平日に観に行きましたが、満席の大盛況で、
これなら監督も満足の興行成績になるだろうと思ったけど、
封切られた先週末のランキングでは7位スタートなんですよね…。
それでも土日2日間で14万人以上動員しているので、
本来なら1位も狙える興収なのですが、先週末は相手が悪かったです。
大ヒット中の『名探偵コナン』などアニメ映画勢に加え、
ディズニー映画『シンデレラ』まで公開される群雄割拠のGW戦線では、
いくら連日満席でも、上映館数で劣る本作が上位になれるはずありません。
本作のような子供や学生の動員を期待しない作品は、
GW映画にしない方がチャートアクション的には有利なのに…。
この結果では監督のアニメ嫌い(というか僻み)が更に進行しそうですね。
以下、ネタバレ注意です。

かつては「鬼の龍三」と恐れられた元ヤクザの龍三でしたが、
引退した今は息子夫婦の家で肩身の狭い生活をしています。
ヤクザなんて大迷惑な輩が余生を謳歌できないのはいい気味ですが、
ヤクザから足を洗うというのならわかるけど、退職制度があるわけじゃなし、
高齢で引退というのはちょっとピンとこない話ですよね。
実際のヤクザは隠居しても大御所として悠々自適に暮らしてそうな気が…。
まぁ時代の流れで、組自体が存続できなくなったって感じかな?

ある日、龍三が一人で留守番をしていると、息子を名乗る男から
「会社の資金500万円を落としたから立て替えてほしい」と電話が。
もちろんこれはオレオレ詐欺でしたが、龍三は気付かず、
なんとか現金を掻き集めて、受け渡しの待ち合わせ場所に行きます。
しかし50万円しか集められなかったので、指詰めて詫びようとしますが、
(龍三は現役時代に小指と薬指を詰めているので中指を詰めようとします。)
詐欺グループの受け子は彼がヤクザだとわかりビビッて逃げ出すのです。
龍三はオレオレ詐欺だったと気付いて怒り、昔の仲間を集めて、
詐欺グループを壊滅させる…、という物語になるのかなと思ったら、
別に騙されたことに怒るわけでもなく、騙されたことにも気付いてないかも。
たまたま会った兄弟分のマサはオレオレ詐欺を疑いますが、
そんなマサを窘めるくらいなので、龍三は騙されやすい人みたいです。
まぁ昔堅気のヤクザは義理に厚いので、ある意味いいカモなのかも。
なお、そのオレオレ詐欺グループは京浜連合という半グレ組織の一部でした。

久しぶりにマサと再会した龍三は、他の兄弟分にも会いたいと思い、
ケチな寸借詐欺をしているモキチに会いに行きますが、
モキチは京浜連合のガキどもにカツアゲされている真っ最中で…。
このガキどもは詐欺の受け子と違ってヤクザにはビビらないみたいで、
むしろヤクザなんて時代遅れだと思っているみたいです。
ヤクザの唯一の利点は、半グレとか暴走族のような反社会組織に
好き勝手させないことだけなのに、それすら出来ない時代なんですね。
暴対法によりヤクザは存在自体が違法になりましたが、
半グレはヤクザではないため暴対法では取り締まれず厄介です。
龍三たちとガキどもは一触即発になりますが、
そこにマル暴の刑事が割って入り、事無きを得ます。
刑事を演じるのは北野武監督自身ですが、何気に一番ヤクザっぽい。
本人は今回出演する気はなかったらしいけど、プロデューサーから頼まれ、
仕方なく出演したんだそうですが、何気に一番おいしい役です。

龍三、マサ、モキチは他の兄弟分にも会いたいと手紙で招集を掛けます。
マック、イチゾウ、タカ、ヒデが呼びかけに応じ集まります。
みんな引退し、入院していたり老人ホームに入っていたりしていますが、
昔の癖が抜けないみたいで、それぞれ武器を持ち歩いています。
その武器がそれぞれ拳銃、仕込み杖、カミソリ、五寸釘と個性的ですが、
カミソリのタカと五寸釘のヒデは武器しか個性がないキャラで…。
「七人の侍」などにちなみ、どうしても7人にしたかったのでしょうが、
人数合わせ感が否めず、もう少し個性的なキャラにしてもいい気がします。
7人は新しい組「一龍会」を結成することにしますが、誰を親分にするか悩み、
現役時代の経歴を点数化して、最高点を親分、2番目を若頭にすることに。
殺人は10点、傷害は5点、懲役は1年当たり1点加算され、
最高点の龍三が親分に、次点のマサが組頭に決まります。
点数の内訳を聞いて、龍三も人を殺めた経験があるのが少し意外でした。
点数制なので後々逆転も可能ですが、本当のヤクザがこの制度を導入したら、
出世のための殺人や傷害事件が増えそうで怖いですね。

龍三ら7人は一人暮らししているマサの団地を溜まり場にしますが、
どうやらマサは生活保護で生活しているみたいです。
普通なら年金生活のはずだけど、やはりヤクザは掛け金払ってないのかな?
国民年金の支給額よりも生活保護費の方が高いですもんね。
さんざん国に迷惑かけておいて、老後は国に面倒見てもらえるなんて…。
マサの団地に浄水器と布団を老人に売りつける悪徳セールスマンが来ますが、
奥の部屋にタムロする龍三たちを見て、逃げ帰ります。
この悪徳セールスマンも京浜連合でしたが手広くやってますね。
一龍会を旗揚げし、昔世話になった榊会長に挨拶に行きますが、
会長は5年前に亡くなっていて、その息子が後を継ぎ、
ヤクザとは関わらない方針の健全な企業に生まれ変わっていました。
いや、全然健全な企業ではなく、老人相手に詐欺を行う悪徳企業で、
モキチは羽毛布団を売りつけられてしまいます。
(ケチなモキチだけが買ってしまったのが意外です。)
あの悪徳セールスマンの所属する悪徳企業だったようで、
やはり京浜連合のフロント企業のひとつみたいです。

龍三たちは京浜連合の徳永が借金取りをしている現場に遭遇し、
回収額の半分が貰えると聞いて自分たちも挑戦することに。
しかし人情に厚い龍三は、貧乏人から金を巻き上げることが出来ず、
「汚い商売しやがって」と京浜連合に激怒するのです。
今までオレオレ詐欺などでさんざん騙されそうになっていたのに、
このタイミングで京浜連合への怒りが込み上げるなんて意外ですね。
自分たちが騙されるよりも赤の他人を苦しめられることの方が嫌なのか。
それにしても借金取りの徳永は障害者を装って取り立てを行いますが、
その方が同情を誘って金を取りやすいと言ってるけど、
借金取りが障害者なら逆に侮られそうな気がしますけどね。
龍三たち一龍会は京浜連合の自社ビルに怒鳴り込みますが、
西会長が警察に通報し、追い出されてしまいます。
この件に関しては龍三たちに義があるのは間違いないけど、
マル暴としてはヤクザを取り締まることしかできないんですね。
西会長の前でマックが仁義を切るシーンがあるけど、
スティーブ・マックイーンにかぶれる彼がそんなことをするのは違和感があり、
その役目はいつも和服着ているイチゾウがするべきじゃないかと思いました。
でもお決まりの文句にツッコミを入れる下っ端との掛け合いは面白かったです。

一龍会は地道に京浜連合のシマを奪っていくことにして、シマを回りますが、
その途中である食品会社の前で食品偽装の抗議を行う市民グループに遭遇。
そのデモ隊のリーダー格の右翼風の男が兄弟分のヤスです。
どうも単なる市民グループではなく、右翼団体だったみたいですが、
その食品会社はコメに外国米を混ぜた商品を売っていたみたいなので、
外国嫌いな極右が怒りそうな食品偽装ですね。
龍三はヤスに協力し、息子の車を街宣車に改造し、会社に乗りつけます。
しかしその会社は息子が勤める会社だとわかり…。
息子の上司は街宣車を何とかしてほしいと京浜連合に泣きつきますが、
龍三は京浜連合が詐欺師だと上司にバラシて阻止します。
うーん、上司はもともと反社会組織の力で抗議活動をやめさせるつもりなので、
別に街宣車をなんとかしてくれるなら、詐欺師でも構わなかったのでは?
代わりに龍三が上司から金を受け取って依頼を受けますが、
後に街宣車は龍三が用意したものだとバレて、息子の荷担も疑われ…。
でも息子も会社からお咎めを受けた感じでもなさそうですね。
まぁもともと食品偽装なんてするようなロクでもない会社だし、
社員の背信行為を咎める筋合いはないかな。

龍三たちは会社から受け取った金を増やそうと競馬をしますが、
全部すってしまって、昔馴染みのママのいるクラブで残念会をします。
ママは京浜連合の西会長の女みたいですが、世間は狭いですね。
そのクラブではモキチの孫娘もホステスとして働いていますが、
ある日、何かと邪魔してくる一龍会にキレた西会長は、
部下にモキチの孫娘を拉致しろと命じます。
しかしその部下は彼女の恋人で、命令が聞けずモキチに相談。
モキチは単身で京浜連合のビルに侵入し、トイレで西会長を待ち伏せするが、
間違って女子トイレに入って捕まり、西会長にバットで撲殺されます。
子分を殺された龍三は葬式の日に復讐を決意し、
部下たちとモキチの遺体を連れて、京浜連合に殴り込みを掛けます。

戦争経験はないが元特攻志願兵を自称するヤスは、
龍三たちとは別行動をして、セスナでビルに突撃する計画でしたが、
飛行中にテンションが上がり、横須賀のアメリカ航空母艦に特攻します。
さすがは極右ですが、特攻は失敗し普通に着陸。
結局クライマックスの殴り込みには参加できませんでした。
ネタとしてはなかなか面白かったと思うけど、
最後は龍三と子分6人全員で大暴れしてほしかったので残念。
ヤスはまだしも、無意味にヤスに同行したタカなんて、
本当に見せ場がなくて気の毒でした。
兄弟分の敵討ちだし、仁義を重んじる侠としてはもう少し真面目に
復讐に取り組んでほしいですが、それは殴り込んだメンバーも同じで、
モキチの遺体を弾除けに使うだけではなく、マックもイチゾウもヒデも、
なぜかモキチの遺体ばかり攻撃するんですよね。
歳のせいで手元が狂うというネタなのかもしれないけど、
あまりに不真面目で笑えないし、復讐劇としての痛快感もないです。
少数精鋭のジジイたちがガキどもの集団をバッタバッタとなぎ倒す
和製『RED』のようなアクションを期待していただけに残念でした。

西会長がベンツで逃げ出しますが、龍三たちは金がなくタクシーで負えないので、
老人パスが使える路線バスに乗り込んで追いかけます。
結局バスジャックになるので老人パスなんて関係ないんですけどね。
ここでカーチェイスになるわけですが、日本でのカーチェイス撮影は難しいのか、
商店街をバスで突っ切るシーンとか、スピードも遅いし、なんかショボイです。
バスの老人パスネタは是非ものだったのかもしれないけど、
無理してカーチェイスなんてしなくてもいい気がしました。

逃げる西会長のベンツを市場の駐車場まで追い込み、バスと衝突させ、
西会長をぶっ殺そうとしますが周りを警察に包囲され、全員傷害罪で逮捕されます。
今回は西会長も一緒に逮捕され、本作は幕を降ろします。
喧嘩両成敗で一件落着かなと思いたいところですが、彼の罪状は詐欺で…。
モキチを殺してるんだから殺人罪で捕まってほしかったですね。
いやいや、オレオレ詐欺や押し売りで老人を騙す詐欺師の親玉が、
逆に老人にぶっ殺されるという痛快な展開を期待したので、
逮捕なんて甘い結末では物足りないです。

なかなか笑えるコメディだけど、ネタとネタを継いで作られたような感じだし、
クライマックスまでネタに走り過ぎでカタルシスが薄く、ドラマ性も弱いです。
気楽には見れるけど、もう少し見応えのある物語だと尚よかったかな。

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