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プリデスティネーション

映画配給会社プレシディオが「チラシネマキャンペーン」なるものを行うそうです。
これは同社が4週連続で配給する映画4本を封切り初日に観ると、
初日限定のチラシが貰えるというもので、更に4枚コンプして応募すると、
世界に200枚しかない「コンプリートチラシ」(画像不明)が当たるというものです。
対象作品は今月14日公開『ジェサベル』、同21日公開『クラウン』、
同28日公開『マッド・ガンズ』、来月4日公開『ミッシング・デイ』の4本です。
ボクはチラシを読むのが好きで、けっこう集めているため、
けっこう気になるキャンペーンではあるのですが、
初日に観に行こうにも最初の『ジュザベル』の関西公開日が未定で…。

公式サイトの劇場情報を観た限りでは、
シネリーブル梅田で公開されることは決まっているのですが、
全国の上映館のうち、シネリーブル梅田だけが公開日未定です。
出ました、非メジャー映画会社お得意の関西冷遇です。
まぁシネリーブル梅田は今週末から5週間かけて、
「未体験ゾーンの映画たち2015」があるので、スケジュールに余裕がなく、
期間がモロ被りのチラシネマの4作品にスクリーンを割けないのかも…。
いや、ヒューマントラストシネマ渋谷だって「REDBAND」始まってるはずだし、
シネリーブル梅田よりスクリーン数少ないから、そんなに余裕あるはずないよね。
梅田にはテアトル梅田もあるんだから、関西でも同時公開できるはず。
これはやっぱり関西冷遇に違いないです。
それにしても、4週連続で新作を封切るプレシディオはどうかしてます。
そんなことして自社配給作品同士で競合しちゃわないのかな?

ということで、今日はプレシデオ配給の映画の感想です。
同社は4作連続公開するよりも、この作品の宣伝に力を入れるべきです。

プリデスティネーション
Predestination.jpg

2015年2月28日日本公開。
ロバート・A・ハインラインの短編SF小説『輪廻の蛇』を映画化したSFスリラー。

1970年、ニューヨーク。とあるバーを訪れた青年ジョン(セーラ・スヌーク)は、バーテンダー(イーサン・ホーク)に自身が歩んだ人生を語る。それは女性として生まれて孤児院で育ち、付き合っていた流れ者との子を宿すも彼に去られ、さらに赤ん坊を何者かに誘拐されたという壮絶なものだった。それを機に男性として生きることを選んだジョンに、バーテンダーは未来からやって来た時空警察のエージェントだと明かす。驚く彼を自分の後継者に選んだバーテンダーは、装備を託すとともに宿敵である爆弾魔との対決に臨んでいく。(シネマトゥデイより)



2月最終週末は、観たい映画が沢山封切られたので、
それを全部観るわけにもいかず、当初は本作を観る予定はありませんでした。
だけど観る予定だったジャームズ・フランコ、ケイト・ハドソン共演のハリウッド映画
『パーフェクト・プラン』が関西ではユナイテッド・シネマ岸和田のみでの上映で、
兵庫県民のボクは梅田や難波までなら余裕で行くけど、泉南は厳しいので断念…。
代わりにコラボキャンペーンをしている本作を観に行くことにしました。
本作は梅田ブルク7やMOVIXあまがさき、109シネマズHAT神戸など、
関西でも6館で上映されており、選びたい放題です。
どちらもワーナーが配給協力している関係で、コラボを展開できるのですが、
本作はイーサン・ホーク主演のオーストラリア映画なので、
普通に考えたら本作よりも豪華共演のハリウッド映画『パーフェクト・プラン』の方が
人気がありそうだし、大きい規模で公開したいはずですよね。
それなのに本作の方が大規模公開されているということは、
単純に本作の方が面白いということなのでしょう。

たしかに本作は予想外に面白かったです。
もともと観るつもりがなく、期待してなかったのもありますが、
まさかここまで面白い作品だったとは、危うく見損ねるところでしたが、
『パーフェクト・プラン』が関西で冷遇されていたことに感謝したいほどです。
たしかにキャストは地味で、ヒロインなんて「誰?」って感じだし、
SF映画にしてはVFXもあまり凄くはありませんが、
脚本の素晴らしさが全ての欠点を補って余りあります。
オーストラリア映画なんて、イギリス映画やカナダ映画同様、
ハリウッドの二軍(草刈り場)だと思ってましたが、侮れませんね。
やっぱり映画は製作国は関係なく、脚本が最も大切なんだなと再認識しました。
まぁその脚本と監督を手掛けたスピエリッグ兄弟は、
今後ハリウッドから声がかかり、オーストラリアから離れそうな予感ですが。
以下、ネタバレ注意です。

主人公は米国政府の秘密組織「航時局」の捜査官です。
航時局は大惨事を未然に防ぐため、タイムトラベルする云わば時空警察です。
USFF(時標変界キット)という携帯型タイムマシンを使い、
大惨事が起こる前に飛び、大惨事を起こす犯人を捕まえたりします。
USFFは1981年に発明されたため、その時をゼロ地点とし、
過去と未来に±53年タイムトラベルすることが出来ます。
主人公の捜査官は1975年に起こった大規模爆破事件を担当していますが、
その事件は「フィズル・ボマー」という連続爆弾魔の犯行で、
ニューヨークで10ブロックが吹っ飛ばされ、約1万1000人の死者が出た大参事です。
実際にはそんな事件は起こっていないので、航時局が阻止してくれたのでしょう。
捜査官は爆弾魔を追い、爆破事件を阻止しようと頑張ります。
ここまでの概要だと、間々ある時空警察ものスリラーのような印象ですが、
本作はそんな一筋縄ではいかない、かなり捻られた展開になります。

捜査官は1970年にジャンプし、爆弾魔が仕掛けた爆弾の大爆発は解除しますが、
ごく小規模な爆発が起こり全身に大火傷を負って動けなくなります。
そこにある男が近づいてきて、USFFを手渡してくれたお蔭で、
捜査官は1992年にジャンプすることが出来、航時局で治療を受けます。
でも火傷が酷すぎて整形手術を受けるも元の顔には戻れず、まるで別人に。
度重なるジャンプの肉体的ダメージから、精神的にも限界が近い彼を、
航時局は引退させることにして、最後の任務を与えます。
もちろん爆弾魔を逮捕する任務だと思われましたが、
1970年にジャンプした彼は、なぜか酒場でバーテンダーとして働きます。
「え、バーテンになるのが最後の任務なの?」と不思議に感じましたが、
当時は爆弾魔が4件目の爆破事件を成功させていた頃で、
バーテンに化けて情報収集でもしているのかなと思いました。
ところが物語は爆弾魔とは関係なさそうな妙な展開になります。

酒場にジョンという男が飲みに来て、捜査官と何気ない世間話が始まりますが、
ジョンは、自分は「未婚の母」というペンネームで、女性を装って、
主婦向け雑誌の相談コーナーのライターをしていると話します。
捜査官はなぜそんなに女性の気持ちが理解できるのか質問すると、
ジョンは自分の生い立ちを教えてくれるのです。「私が少女の頃…」と。
彼は、いや彼女は性転換した元女性だったようです。
このジョンの回想が長々と続くのですが、爆弾魔を阻止する時空警察もののはずが、
なぜこんな脇道に時間を割くのかと疑問に思いました。
でもジョンの過去があまりにも壮絶で、それはそれで面白く、引き込まれます。

1945年、ある孤児院の玄関に生まれたばかりの女の子が捨てられます。
女の子はジェーンと名付けられますが、この子が後のジョンです。
少女になったジェーンは性的違和感を覚えるようになり、純潔の誓いを立てます。
その一方で運動神経抜群で学業も優秀でしたが、容姿にコンプレックスがあり、
鏡を見るのを拒み、自分の顔も忘れるほどです。
たしかに特に可愛い女の子ではないけどブスでもないと思いましたけどね。
彼女は宇宙に強い関心を持ちますが、卒院することになった時に、
宇宙開発組織スペースコープからスカウトされるのです。
でもNASAの職員でもなければ、宇宙飛行士訓練生でもなく、
なんと宇宙で宇宙飛行士相手に奉仕する慰安婦みたいな仕事です。
ボクはそんな仕事、聞いたことないし、あるわけないと思いましたが、
そういえば宇宙飛行士って宇宙ステーションに何カ月もいるけど、
その間の性的処理ってどうしてるんでしょうね?
慰安婦とはいえ、宇宙での仕事なのでジェーンは喜んで引き受けますが、
宇宙飛行士同様宇宙に行くので、厳しい耐久性テストがあります。
なんだかレトロモダンなコスプレで受けるテストもあり、面白いですね。
優秀なジェーンはテストも難なくクリアしますが、精密な身体検査の結果、
不適格と判断され、脱落して、スペースコープを去ることになります。

1963年、ジェーンは再就職のため大学のマナークラスに通いますが、
その放課後、イケメンで金持ちの男と出会い、意気投合し交際します。
彼女にとってはこれが初恋で、純潔の誓いも破り、男に処女も捧げますが、
ある日その男は「すぐ戻る」と言ったきり姿を消してしまい…。
ジェーンはその男の子供を妊娠していて、1964年に帝王切開で娘が誕生。
しかし無理な出産が祟り、彼女の女性器は使い物にならなくなってしまうのです。
ところが産婦人科医の話では、ジェーンは世にも稀な両性具有で、
未熟ながら男性器も持っていて、医者は女性器を失った代わりに、
男性器が使えるように勝手に再建してくれていました。
別に彼女は男になりたいわけじゃないのに、なんてお節介な医者…。
(スペースコープの精密検査も両性具有が問題視されたのでしょうね。)
同性愛で性転換を自ら受けるのはいいけど、強制的に性転換させられるなんて、
彼女の、いや彼のショックは計り知れませんが、更にショックなことは続き、
2週間後、新生児室から生まれたばかりの娘を誘拐されるのです。
彼女は自分を孕ませて素性もわからぬまま去った謎の男を恨むようになります。
その一方で元女性の利点を生かし、ペンネーム「未婚の母」を名乗り、
主婦向け雑誌の相談コーナーのライターを始めて今に至る。

…というのが酒場でジョンが捜査官に語った話しです。
うん、やっぱり一見すると爆弾魔の事件とは何の関係もなさそうですが、
もちろん(興味深いが)無駄な昔話に時間を割くはずはなく、
これが全て今後の展開に繋がる、見事なまでの伏線になっているのです。
本当に全く無駄なく張り巡らされた伏線で、その脚本には感心します。
もちろん観客としても「伏線に違いない」と思って観ているので、
正直、この後の展開は予想できるところもあるのですが、
例えオチがわかっていたとしても、オチに持って行く過程も緻密で、
ガシガシ回収される伏線に痛快感を通り越し、感動が込み上げます。

話し終えたジョンに、捜査官は「その憎い男を差し出す、殺してもお咎めなしだ」
「その見返りに俺の仕事を継いでもらう」と言うのです。
そして酒場の地下に連れて行き、航時局のことを説明します。
実はジェーンをスカウトした組織スペースコープが航時局だったみたいです。
なるほど、捜査官の最後の任務は、てっきり爆弾魔捜しだと思っていたけど、
後継者を探して、爆弾魔事件を引き継がせることだったんですね。
それは最後の任務に相応しく、納得の展開でした。
…が、この物語はやっぱりそんな一筋縄ではいきません。

捜査官はUSFFの実演のために、ジョンを連れて1963年にジャンプします。
捨てた男に復讐させるため、ジェーンと男が初めて出会った放課後に行きます。
ところが彼はふいにジェーンと遭遇してしまうのです。
そう、ジェーンが出会った男とは、ジャンプしてきたジョンだったのです。
ジョンは自分を捨てた男が自分だと気付き戸惑いますが、
女性時代の自分であるジェーンに恋をしてしまい、交際することに…。
相手が自分だったのなら意気投合するのも当然ですね。
まぁボクだったら自分みたいな性格の女は大嫌いになりそうですが…。

その様子を見届けた捜査官は再び1970年にジャンプし、
爆弾設置場所で爆弾魔と最後の対決に挑みますが、逃げられてしまいます。
爆弾は昔の自分が解除しますが、ごく小規模な爆発が起きて、
昔の自分が全身火傷を負い、動けなくなってしまったので、
捜査官は昔の自分が未来に帰れるようにUSFFを手渡してあげるのです。
これは冒頭のシーンですが、なるほど、あの時捜査官を救った謎の男は、
整形後の自分自身だったわけですね。
冒頭ではどちらの捜査官の顔も映らないアングルで撮られていたので、
これは何かあるとは予想していましたが、やっぱりでした。

その後、捜査官は1964年にジャンプ。
ジェーンが出産した年で、捜査官は新生児室に侵入し、彼女の娘を拉致します。
なんと誘拐犯は捜査官だったのですね。
これはもしやと思いましたが、捜査官は娘を連れて1945年にジャンプ。
案の定、孤児院の玄関に娘を置いて去るのです。
つまりジェーンの娘がジェーン自身だったわけで、
ジェーンと後のジェーンであるジョンの間に生まれた子がジェーンでありジョンです。
なるほど、捜査官がバーテンの時に「卵が先か、鶏が先か」という
因果性ジレンマのジョークを話してましたが、このことを暗示してたんですね。
そして捜査官は1963年に再びジャンプし、ジョンと再会します。
ジェーンと恋に落ちたジョンは「ハメやがったな」と怒りますが、
捜査官は「お前はジェーンと会って、自分がわかった」
「そろそろ俺のこともわかるだろ」と意味深な発言をするのです。
そう、捜査官は未来のジョンだったのです。
もっとも1970年の大火傷で整形し、顔は全くの別人になっていますが。

ジョンは約束通り捜査官の後を継ぐため、後の自分である捜査官と共に、
そのまま1985年にジャンプしますが、これによって1963年のジェーンは、
恋人が姿を消したと思うようになるわけです。
捜査官としては後継者を見つけたというよりも、過去の自分を捜査官にしないと、
歴史が変わってしまうので、それを阻止したということでしょう。
いわゆるループ状態になっているわけです。
これで安心して引退することになり、1975年で新たな生活を始めるため、
最後のジャンプを行い、USFFを機能停止させます。
ただ(元)捜査官は、爆弾魔が野放しなのは心残りなようで…。
そう、ここまでくれば想像に難くないですが、爆弾魔も彼です。

機能停止したはずのUSFFはエラーが発生し、まだ使用できるようになります。
捜査官は未来の自分がこの時代にやってきて、NY大爆破事件を起こすと気付き、
事件前日に爆弾が仕掛けられたコインランドリーに行き、
爆弾魔である未来の自分に会い、止めるように説得します。
爆弾魔はこれまでの爆破も大惨事を食い止めるためのものだと主張。
これまで兵器工場や化学工場を爆破したが、
放っておけばもっと被害者が出る事件に繋がるから、先に爆破したのだというのです。
つまりNYも爆破しないと、爆破の死者1万1000人以上に死者がでる
大参事が起こってしまうということだけど、これは何を指してるのかな?
もしかして911テロのことかなと思ったのですが、911の死者は数千人だった気が…。
まぁそれが発端で起こったイラク戦争とかを含めれば、1万1000人は超えそうかな。
捜査官は説得しても無駄だと諦め、未来の自分である爆弾魔を射殺し、
NY大爆破を阻止するのです。

たしかに爆弾魔のトロッコ問題的というか一殺多生的な発想は理解できるけど、
やはりあれほど爆弾魔を追い続けた捜査官が、爆弾魔になるとは考え難いです。
でも本作はそんな矛盾点もちゃんとフォローしてるんですよね。
ジャンプを繰り返すと肉体的・精神的にダメージが溜まり、
精神病や認知症を発症してしまうそうで、捜査官もその影響で、
過去の信念を忘れ、サイコな爆弾魔になってしまったのでしょう。
精神病の惧れについては序盤で描かれ、伏線も張ってありましたが、
いやー、本当に隙のない脚本で感心してしまいます。
…でも本当は、ちょっとだけツッコミどころがあるんですが、
ボクとしては本作を持ち上げたいので、そこはあえてツッコミません。
タイムパラドックスを描いているんだから、多少の矛盾は仕方ないけど、
本作はそれが最小限に抑えられているのが素晴らしいです。

自分から生まれ、自分と恋に落ち、自分を生み、自分を救って、自分に殺される。
タイムパラドックス映画の最終形を観た気がした傑作SFです。
前述の『パーフェクト・プラン』とのコラボキャンペーンは、
予告編を観てどちらの映画を観たいかツイッターで投票すると、
抽選でプレゼントがもらえるという企画でしたが、
もし本編を観て投票するなら本作がきっと圧勝だったでしょうね。
こんな傑作スリラーと比較されてしまう『パーフェクト・プラン』は気の毒です。
まぁボクは『パーフェクト・プラン』は観に行けずビデオリリース待ちだから、
もしかしたら本作を超える傑作の可能性もないとは言い切れないけど…。

コメント

リンクを貼らせていただきました!

突然ですみません。あおさぎと申します。
ブログ拝読しました。
プリデスティネーションについて自分もブログにしたためたのですが、細かい設定とか忘れてしまったところもあって、こちらのページを参考にさせていただいたのでリンクを貼らせていただきました。
不都合があれば削除いたしますので遠慮なくお知らせください。
どうぞよろしくお願いいたします。

  • 2015/03/11(水) 15:01:45 |
  • URL |
  • あおさぎ #-
  • [ 編集 ]

Re: リンクを貼らせていただきました!

不都合だなんて、とんでもないです。
むしろ参考にしていただけたなんて、とても光栄です。
ただ、細かい設定はボクもあってるかわからないまま書いてます。
この記事だと年代が不正確かもしれません。

ブログも拝見しました。まだ始められたばかりなのですね。
映画の感想を書くのは楽しいですが、意外と大変ですよね。
またちょくちょく読ましてもらいますので、よろしくお願いします。

  • 2015/03/11(水) 21:20:12 |
  • URL |
  • BLRPN #-
  • [ 編集 ]

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