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フィフス・エステート 世界から狙われた男

『ヒックとドラゴン2』の日本でのビデオリリースがやっと決まりました。
昨年、世界で最もヒットしたアニメーション映画でしたが
日本でも昨年中に公開予定だったにも関わらず、結局公開未定のまま年を越し、
ビデオスルーになるかどうかもわからない状況だったので、
劇場公開の目は消えたものの、とりあえずビデオスルーが決まってよかったです。
アニー賞総なめで、ゴールデン・グローブ長編アニメ賞も受賞したし、
アカデミー長編アニメ賞も受賞すれば、アニメ映画の日本公開に後ろ向きな
20世紀フォックスも重い腰をあげざるを得ないだろうと思ってたけど、
オスカーは『ベイマックス』に取られ、どうなることかと思いましたが、
授賞式直後に日本ビデオリリースが決まりました。
もしかしたら、20世紀フォックスはオスカー受賞なら劇場公開、
受賞ならずならビデオスルーで、授賞式当日まで様子を見ていたのかも?

リリース日は7月3日でまだまだ先ですが、ぜひ多くの人に見てもらって、
日本にもドリームワークス・アニメーションのファンが沢山いることを、
20世紀フォックスに知らしめてやりましょう。
そして『ミスター・ピーボディ&シャーマン』も日本でリリースさせましょう。

ということで、今日はドリームワークス映画の感想です。

フィフス・エステート 世界から狙われた男
The Fifth Estate

2015年2月18日ビデオリリース。
内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者アサンジを題材にしたスリラー。

告発者を守り秘密、隠蔽情報を公開していった内部告発サイト"ウィキリークス"。その創設者であるジュリアン・アサンジとともに、カリスマ的な彼の魅力に囚われていく仲間たちは、世界的な新聞社やテレビ局などを上回る数々の秘密情報をウェブサイトで発信していく。そして、アメリカのペンタゴンをはじめ世界の目から追われながら、彼らが暴露する機密情報はあまりにも過激で危機なものになっていった…。謎に包まれた"ウィキリークス"を創った男、アサンジは英雄なのか?反逆者なのか?そして真実とは、一体何なのかー?(シネマトゥデイより)



一昨年に全米公開された本作は、日本では劇場公開されず、
先週水曜日にビデオでのリリースとなりましたが、ビデオスルーではなく、
昨年7月に配信にて日本でリリースされています。
たぶんディズニーは配信事業に力を入れようとしていると思われ、
同時期に『人生、サイコー!』、『ザ・マペッツ2』なども配信リリースされました。
(『ザ・マペッツ2』は超小規模劇場公開もされてますが。)
ディズニーは日本で劇場公開してもヒットの見込みがない作品を、
すぐにビデオスルーするのではなく、先に配信でリリースする方針なのでしょう。

その方針は悪くないけど、ボクは配信で映画は観ない(観れない)ので、
すんなりビデオスルーしてもらえた方が早く観れて、個人的には有難いです。
本作も配信リリースからビデオリリースまで7カ月も経っているし、
配信リリースを挟んだことで全米公開からは16カ月も経っています。
同時代性も映画の魅力のひとつなので、観るのが遅れれば遅れるほど、
魅力(楽しさ)もどんどん減退しちゃうものですからね。
特に本作のような時事ネタを扱った映画の場合は同時代性が重要で、
全米公開された時は「え、あの事件が早くも映画に?」って感じだったけど、
一年半も経過した今となっては「そういえばそんな事件があったな」って感じです。

まぁ全米公開時も全くヒットしてないから日本劇場公開が見送られたわけで、
同時代性があったとしても、あまり関心を持つ人はいなかったみたいです。
全米ボックスオフィス初登場8位でスタートし、2800万ドルの製作費に対し、
全米での最終興収は300万ドルほどで、かなり悲惨なコケ方をしています。
ボクが観た限りでは、それほど悪くない、というかなかなか面白いと思ったので、
そこまで酷い成績になってしまうのは不思議ですが、思い当たる節はあります。
本作はまず間違いなく『ソーシャル・ネットワーク』の大ヒットを受けて、
それと似たようなIT業界の変人列伝として企画されたと思われます。
でも『ソーシャル・ネットワーク』は先駆者として注目されたものの、
多くのお客さんはそれほどIT業界の人物に興味があるわけでもなく、
『ソーシャル・ネットワーク』の二番煎じと思われて無視されたのではないかと。
同時期に同じくIT業界変人列伝『スティーブ・ジョブズ』も公開されましたが、
そちらも初登場6位とやはりヒットすることはできませんでした。
超有名なジョブズの映画ですらヒットしないのに、
「誰?」なアサンジの映画でヒットできるはずないです。
まぁIT業界に疎いボクにはザッカーバーグも「誰?」でしたけどね。

ただ前述のように、ボクは本作を面白いと思いました。
個人的には駄作『スティーブ・ジョブズ』より面白かったのはもちろん、
アカデミー作品賞候補でもある『ソーシャル・ネットワーク』よりも楽しめました。
それは本作が2作品のようなIT業界の変人創設者の伝記映画だったのに対し、
本作は単なる伝記ではなく、スリラーとして描かれているからです。
ボクもIT業界の変人創設者たちの人生なんかには全く興味ありませんが、
変人自体よりも変人が起こした事件に焦点が当てられているので、
物語として楽しめるんですよね。
例えるならホリエモンには全く興味ないが、彼が起こした
プロ野球団や放送局の買収騒動には興味がある、って感じです。

本作で描かれる主な事件である通称ケーブルゲート事件は
2010年から内部告発サイト「ウィキリークス」で
米軍やアメリカ国防省の機密文書が大量に流出した事件です。
アメリカやいくつかの国にとっては外交上、危機的な状況になりかねない、
かなりヤバい流出事件ですが、日本にはそれほど影響がなかったのか、
それほど大問題としては報道されてませんでしたね。
ボクもその報道で「へぇ、内部告発サイトなんてあるんだ」と思ったくらいで、
特に注目していたわけではなく、本作を観て初めて、
これはかなりヤバい事件だったなと認識したくらいです。
なので事件についても、ウィキリークスについても、ほぼ知識ゼロで観ましたし、
もちろんウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジなんて全く知りません。

本作はアサンジが主人公ではなく、その相棒であるダニエル・ベルグの視点から、
変人アサンジのことを客観的に描いた内容となっています。
この構成は『ソーシャル・ネットワーク』を踏襲したのでしょうが、
変人が主人公よりも、常人が主人公の方が常人な客としても観やすいです。
そもそもダニエル・ベルグが書いた暴露本(?)が原作なのですが、
本作のラストに、ベネディクト・カンバーバッチ演じるアサンジが、
「嘘と偏見に満ちた最悪の本が原作のアンチ・ウィキリークス映画だ」と
本作のことを批難するというメタ演出がありますが、
実際にアサンジは本作には否定的で、なんとカンバーバッチに対し、
「出演しないでほしい」とメールを送ったそうです。
そういえばザッカーバーグも『ソーシャル・ネットワーク』に否定的でしたが、
嫌がっている人の伝記映画を製作するなんてハリウッド映画って凄いです。
日本映画ではまず無理なんじゃないかな?
以下、ネタバレ注意です。

2007年ベルリン、IT企業に勤めるダニエルはアサンジと出会います。
元ハッカーのアサンジは管理者さえも投稿者の身元が特定できないという
内部告発サイト「ウィキリークス」を創設しており、ケニアの汚職を暴き、
独裁者キバキ大統領の政権に大打撃を与えたらしいです。
ダニエルは感銘を受け、アサンジの世直し活動を手伝うことにします。
ある日ダニエルは、スイスの大銀行「ジュリアス・ベア銀行」が、
金持ちの顧客の脱税に加担しているという投稿の裏付け調査を任されます。
ボクはウィキリークスを見たことがなかったので、
投稿された告発文をそのまま載せてるのかと思ってましたが、
ちゃんと裏も取ってからプレスリリースにするニュースサイトなんですね。
ケーブルゲート事件当時の日本の報道では「とんでもないサイト」という
論調が多かったので、きっと下衆なサイトなのだろうと思わされたけど、
ケニアでの活動や銀行の不正を暴いて金持ちの豚どもを成敗するなんて、
超素晴らしい世直しサイトじゃないですか。
たしかに国家の機密文書は、ボクも見境なく流出させるべきではないと思うけど、
日本でも企業の不正の内部告発はどんどんやっちゃってほしいです。

告発文の投稿の裏を取り、ジュリアス・ベア銀行の不正を暴きますが、
報道の自由を高らかに謳うアメリカで、まさかの検閲に引っ掛かり、
ウィキリークスは法的措置によりサイト閉鎖の仮処分を受けます。
脱税していた豚の中には権力者も多かったから圧力が掛かったのでしょう。
しかし一度アップされたものを完全に抑え込むことは出来ず、ミラーサイトが乱立。
更にその報道の自由を阻害する仮処分に対し、
ガーディアンズ紙、NYタイムズ紙など大マスコミが批判し、
仮処分は撤回され、ウィキリークスは勝利を収めるのです。
うーん、これはめちゃめちゃ痛快な展開でしたね。
一度アップされたものは半永久的に残るというのはネットの怖さですが、
逆にこういう場合には利点にもなるんですね。
ある意味ライバルなのに大マスコミが支持に回ったのは意外な気がしましたが、
既存マスコミにとってもウィキリークスの告発は美味しいソースなのでしょう。

それを機に一気に有名になったウィキリークスは、
その後もチベット騒乱の実情、モンジュの火災事故の過小報告、
カルト教団サイエントロジーのヤバい文書など次々と告発。
更にジハードの訓練マニュアル、米軍内ギャング抗争、コソボの汚職、
コートジボワールの不法投棄など、世界中の不正や隠蔽を暴きます。
ウィキリークスには強い支持も集まりますが、「やりすぎ」との声も…。
英国国民党の党員名簿がウィキリークスから流出し、
党員にネオナチが何千人もいるという衝撃の事実が明らかになるけど、
名簿に載っている党員の住所や電話番号など個人情報まで
そのまま掲載するのは酷すぎるのではないかという意見も。
たしかにその通りで、党員にも家族がいるんだし、
それが半永久的に残ることになるんだからやりすぎかも…。
当時、共和党副大統領だったサラ・ペイリンのアカウントハッキングも、
たしかに興味はあるけど、特に大義は感じられないし…。
ダニエルも本当にこれでいいのか、少し考え始めます。

批判する人もいれば支持する人もおり、アイスランド銀行不正融資を告発では、
アイスランドの女性国会議員が熱烈に支持してくれ、どんどん支持の輪が膨らむ、
…と思った矢先、とんでもない事件が起きてしまうのです。
ケニア警察に暗殺部隊があることを告発したことで、
警察が400人を殺害したことを告発した人権連合の協力者が、
何者か(たぶん暗殺部隊)に暗殺されてしまい、
ウィキリークスの告発者の匿名性の保持に疑問が持たれることになります。
IT技術に疎いボクには1ミクロンも理解できませんでしたが、
なんでも投稿プラットフォームには凄い暗号技術が使われ、
絶対に追跡できないそうですが、所詮は人の作ったプログラムなので絶対はなく、
もっと優れた人ならきっとハッキングして身元を割り出すことも出来るのかも。
まぁ匿名性の保持が万全でも、その内容から誰が告発したかなんてのは、
往々にして予測できちゃうものですけどね。

告発者を守ることが使命だと思っているダニエルは
ウィキリークスのシステムやアサンジの運営に懸念を感じます。
アサンジもダニエルがまるで共同設立者のように振る舞い出したことに
不快感を持ち始め、2人の関係はギクシャクし始めます。
国務省が9.11同時多発テロの時のポケベル通信記録50万件を
秘密裏に収集・保存していたことを告発したあたりから、
2人はCIAやFBI、他国のスパイからも尾行されるようになり、
動きが取りにくく、ますます疎遠になっていきます。
そんな折、米軍内のある告白者から、
イラクでアパッチ(米軍)が民間人やロイター通信の記者を機関銃で銃撃する
衝撃映像が投稿され、「コラテラル・マーダー」と称され公表されるのですが、
いやー、しかしこの映像は本当に酷すぎますよね。
この特ダネにはダニエルもアサンジへの不信感を忘れ、
ウィキリークスの存在意義を再認識し、使命感に燃え上がります。

…が、それも束の間、実はアサンジは同じ告発者から
更に50万件もの米軍の機密文書や国務省の内部資料を受け取っていたのに、
ダニエルたちには隠していたのです。
しかもそれをそのまま掲載するつもりらしく、ダニエルは
「内容も把握できていないのに、人命を危険に晒すかも」と反対します。
それは当然の言い分ですが、アサンジも普通なら危なそうな人名を消して、
プレスリリースとして掲載するところでしょうが、50万件もありますからね。
早く告発するべきなのに読むだけでも大変で、内容なんて把握してられません。
そのまま掲載しちゃうのが手っ取り早いのもわかります。
でもやっぱりそれはマズすぎるでしょう。
機密文書の中にはカダフィの上級国防顧問で内通者のタレク・ハシールなど、
公表されたら確実に殺される情報提供者の名前も沢山載っています。
ダニエルにしてみたらサイトの告発者同様、同志みたいなもので、
彼らの名前だけでも消してあげたいと思うのは当然です。

全文掲載を目指すアサンジも折れ、内容を把握してから、
情報提供者の名前を消して公開することになり、
ガーディアン紙、NYタイムズ紙、シュピーゲル紙が編集に名乗りを上げ、
まずは6週後に9万件のアフガンとイラクの戦争日誌の公表することに。
ガーディアン紙の記者もダニエルと一緒にアサンジの説得に協力したけど、
大マスコミ3社にとっても、協力できたのはラッキーでしょうね。
でもダニエルと違い記者にとっては人命なんてどうでもよく、
ただ特ダネを自社の新聞で発表したいだけです。
記者は人名を消す作業を必死にしているダニエルに対し、
「どうせ文脈でばれるから無駄だ」と言い、ダニエルはその通りだと思い、
公表4日前にアサンジに公表の延期を直談判するのです。
そんなダニエルをアサンジは停職処分にして追い出します。
別に雇われているわけでもないので、停職も何もないのですが…。
ダニエルは一矢報いろうと、投稿プラットフォームをダウンさせ、
誰もウィキリークスに告発を投稿できなくするのです。
まぁそんなの直せば済む話なので、大したダメージもなさそうだし、
それで戦争日誌やその後公表予定の外交公電の公表が
阻止できるわけでもないから、あまり意味なさそうですけど…。

その後、戦争日誌は編集されて3社から同時配信。
更に5社で外交公電の連載も始まります。
外交公電は国や指導者の悪口が汚い言葉書かれたりするみたいで、
公表されたら外交上、かなりよろしくないことになるみたいですが、
政府は関係各国に公表前にお詫びして回ったみたいで、
ちょっと気まずいくらいで、意外とあまり問題にはなりませんでしたね。
同盟国である日本に対する悪口もかなりあったみたいですが、
まぁ日本政府が親方アメリカさんに抗議できるはずもないし、
日本でそれほど問題にならなかったのも当然かな。
翌年、5社の反対を無視し、アサンジは未編集の外交公電を全文公開。
その少し前に、なぜか強姦容疑で逮捕状が出されているみたいで、
アサンジはエクアドル大使館に逃げ込み保護されています。
機密文書の公表では逮捕できないから、別件逮捕する気だったのか。
なんか公権力はやり方が汚いですね。

でもこのケーブルゲート事件に関しては、ボクも賛成しかねます。
どうもこれは内部告発とは言えない気がするんですよね。
それは告発者である22歳の上等兵に、不正を告発したいという信念がなく、
ただ面白がって自分の組織の情報を流出させただけだからです。
例えるなら彼は田母神幕僚長ではなく、バカッターの若者的な輩です。
結局告発者は逮捕されますが、どうやらウィキリークスの暗号化を破られ
身元がばれたのではなく、自らチャットで告発者だと自慢していたみたいで…。
さすがの告発者想いのダニエルも守りようがないくらいの馬鹿ガキですが、
コイツに機密情報にアクセスされて持ち出される米軍や国務省って…。

アサンジ自身には興味ないって書きましたが、
彼が変人になったキッカケであり、白髪である理由とされる、
カルト教団「ファミリー」についてはもう少し知りたかったかも…。
何はともあれ、なかなか面白いスリラーでした。
ブログ運営する身としては、「第五の権力(フィフス・エステート)」という題材も
ちょっと興味深いものでした。
ウチも利権やシガラミで雁字搦めの「第四の権力」マスコミ(映画雑誌とか)には
書けないような映画評を書きたいと一応思っているので…。

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