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ビッグ・アイズ

絵が描ける人って羨ましいですよね。
ボクも学生時代は下手ながらよく描いていたのですが、
今になって、ちゃんと絵の勉強がしたくなりました。
観た映画の感想を文字だけではなく、イラストでも表現できたらいいな、と。
でもボクの拙い画力では、それも夢のまた夢ですが、
勢い余って、水彩色鉛筆というものを買ってしまいました。
まだ使い方がよくわからず、未開封のままですが…。

ということで、今日は絵描きの物語の感想です。

ビッグ・アイズ
Big Eyes

2015年1月23日日本公開。
ティム・バートン監督による伝記コメディドラマ。

1950年代から1960年代にかけて、哀愁漂う大きな目の子供を描いた絵画「BIG EYES」シリーズが世界中で人気を博す。作者のウォルター・キーン(クリストフ・ヴァルツ)は一躍アート界で有名人になるものの、何と実際に制作していたのは内気な性格の妻マーガレット(エイミー・アダムス)だった。自身の感情を唯一表現できるBIG EYESを守るため、マーガレットは自分が描いたという事実の公表を考え……。(シネマトゥデイより)



主人公マーガレットを演じたエイミー・アダムスは、
本作でゴールデン・グローブ賞の主演女優賞(コメディ部門)を受賞していますが、
それほど評価されているのに、アカデミー賞の方では
主演女優賞にノミネートすらされないなんて、ちょっと不可解ですが、
GG賞の主演女優賞(コメディ部門)のノミネート作は、
全てアカデミー賞の主演女優賞のノミネートから外れているので、
やっぱりアカデミー賞はコメディ映画には不利ということでしょう。
というかコメディとヒューマンドラマを比べることなんて不可能なことの表れで、
GG賞みたいにドラマ部門とコメディ部門を分けるのは正しいかもしれません。
しかしエイミー・アダムスは二年連続でGG賞主演女優賞(コメディ部門)受賞となり、
いやはや、本当にすごいですね。
アカデミー賞でも過去5回もノミネートされているのに、
一度もオスカーは受賞していないのが不思議というか意外ですが、
アメリカ人より外国人ウケするタイプなのかもしれません。
ボクも彼女は大好きな女優のひとりです。

ただ本作の場合は、エイミー・アダムスの主演作だから観たのではなく、
ティム・バートン監督が撮っていることに惹かれて観に行きました。
もちろん好きな監督のひとりですが、彼はどちらかといえばファンタジーとか、
ヒーロー映画とか、コマ撮りアニメ映画とか、子供向けが得意な印象で、
本作のような大人向けの、しかも伝記映画なんて、あまり撮る柄じゃないので、
ちょっとした新境地で、どんな作品になるのか楽しみでもあり不安でもあり…。
(伝記映画はこれが二作目だそうですが、一作目は未鑑賞なので。)
いざ観てみたら十分面白い作品だったので安心しましたが、
正直なところこの題材であれば、この手の作品が得意な映画監督が撮れば、
もっと面白くなるんじゃないかとも思ったりも…。
ティム・バートン監督でも悪くはないのですが、どうしても彼が撮ると、
ファンタジー色が強くなって、伝記映画なのに嘘臭く感じてしまいます。
まぁそれは彼に対する先入観のせいかもしれませんが…。
もともとは本作の脚本家が監督も兼任する予定だったみたいで、
それならティム・バートンがメガホンを取った方が客は呼べそうですが、
彼の監督作でジョニデやヘレナ・ボトムズカーターがいないと少し物足りない気も…。

1950年~60年代、ウォルター・キーンのポップアート「BIG EYES」シリーズは
世界中で大ブームになり、ウォルターも美術界の寵児として脚光を浴びるが、
実はその絵は彼の妻マーガレットが描いていたものだった。
…という実際にあった話を基にした物語ですが、かれこれ半世紀以上も前で、
ボクも全く知らなかった話で「BIG EYES」という絵も見たことあるような無いような?
まるで魚眼レンズで覗いたような、やたら目の大きな子供が描かれた絵で、
正直ちょっと不気味な印象で、もし家に飾ってあったら視線を感じそうで怖いです。
風変りなのは面白いけど、あまり好きな画風ではないかな。
これが大ブームになったというのだから、芸術とはわからないものです。
その可笑しな社会現象だけでも十分興味深い物語になりそうだけど、
そこに今流行りのゴーストライター・ネタまで加わり、
半世紀前の話なのにタイムリーで更に興味深いですよね。
以下、ネタバレ注意です。

1958年、マーガレットはダメ夫に耐えかねて、幼い娘ジェーンと一緒に家出し、
サンフランシスコのノースビーチで生活を始めます。
田舎者の専業主婦だった彼女は仕事探しに苦労しますが、
美大卒で絵は得意だったので、公園で似顔絵を描いて小銭を稼いでいます。
その似顔絵も目がやたら大きくて、お世辞にも似てるとは言えませんね。
ある日、1ドルで似顔絵を描いていると、隣の露店で自作の風景画を売っていた男が
「小銭で買える絵じゃない。安売りしないで。」と褒めてくれます。
その男はパリの美術学校で絵を学んだと言う風景画家ウォルター・キーンで、
不動産業を営んでおり、けっこう裕福らしいです。
2人はすぐに親しくなり、マーガレットはそんなウォルターにぞっこんです。
そんな折、元夫から娘ジェーンの親権を取られそうになりますが、
シングルマザーだと不利なので、ウォルターは「結婚しよう」と言ってくれます。
マーガレットは結婚して夫の姓になったので、絵のサインも「キーン」と書くように。

ウォルターは自分と妻の絵を画廊に持ち込みますが、オーナーから
自分の風景画は「流行遅れ」、妻のBIG EYESは「芸術じゃない」と言われ、
画廊では取り扱ってもらえません。
そこで彼はナイトクラブの廊下の壁を賃貸し、そこに絵を展示して売りますが、
ナイトクラブの客が絵に興味あるはずもなく、なかなか売れません。
それが原因でナイトクラブの店主とケンカになり、店で大暴れ。
それがゴシップ紙の記事になってしまうのですが、災い転じて福となすで、
ケンカの原因となったBIG EYESが注目を浴び、客が押し寄せ完売するのです。
しかしウォルターは、BIG EYESを自分の作品だと偽って販売するのです。
女流画家の作品では軽く見られて売れないと考えたみたいですが、
まだ男尊女卑の時代だからそんなこともあるのかもしれません。
言われてみれば確かに、あまり女性画家って知らないですよね。

BIG EYESが金になると知ったウォルターは、
「僕が売るから君はどんどん描いてくれ」とマーガレットに言います。
言われるがままに、どんどん新作を描きまくる彼女ですが、
ある日、自分の作品が夫の作品として売られていることに気づきショックを受けます。
しかし夫の売り込みのおかげでBIG EYESが売れているのは間違いなく、
生活のために仕方なく夫の作品として売ることを妥協します。
ウォルターは不動産業でかなり儲けてそうだったのに、
なぜそんなに必死に絵で稼ごうとするんですかね?

イタリアの実業家オリベッティが気に入り、顧客になったことで、
BIG EYESは5000ドルで売れるようになります。
1960年、ウォルターは画廊をオープンし、BIG EYESを売りまくります。
マーガレットも罪の意識を感じながらも、描き続けるのです。
ある時、画廊の客から画法について質問されますが、
実際に描いていないウォルターはシドロモドロ…。
特に「なぜ子供ばかり描くのか」という質問にはお手上げで…。
そもそもBIG EYESはマーガレットが娘ジェーンをモデルに描いているのですが、
大の男が少女の絵ばっかり描いてるなんて気持ち悪いですもんね。
そういう趣味の人じゃないかと軽蔑されても仕方がないです。
そこでウォルターは「戦場で会った戦災孤児を描いている」と作り話を考え、
その話が感動的だとして、さらに人気が高まるのです。
上手い作り話ですが、戦災孤児を商売に利用するなんて不謹慎すぎる嘘です。

でも庶民には高くてなかなか買えず、画廊の客も無料のチラシばかり持ち帰るので、
ウォルターはチラシを10セントで売ることにしたら、これがまたバカ売れ。
絵を描かずともコピーでも売れると味を占め、
スーパーマーケットなどでもコピーを販売し始めるのです。
画家や芸術関係者からは邪道だと非難されますが、
庶民にも手が届くようになったことで、ブームは加速します。
今では普通に名画のコピーが売られていますが、その走りかな?
目を大きく見せるメイクも流行るほどで、もう異常な社会現象です。

自分の作品が全て夫の作品になることに、マーガレットも我慢できなくなり、
自分の作品も発表したいと、自画像と描き始めるのです。
当然、ウォルターは自画像まで自分の作品として売ることはできず、
妻が彼女名義の絵を画廊で売ることも認めるのです。
マーガレットは律儀に自分名義の絵は画風を変えるんですよね。
大きな目の子供ではなく、大人の女性をモダンなタッチで描きます。
サインも「MDH」と書いて、BIG EYESと差別化します。
ボクとしてはBIG EYESよりもコチラの絵の方が魅力的な気がしますが、
やはり女流画家の作品では売れないみたいで…。
結局、絵なんて絵自体の出来よりも誰が描いたかで価値が決まるんですね。
でもウォルターみたいな見るからに軽薄そうな男が描いたとされるBIG EYESが
あんなに人気があるのは不思議ですけどね。

1964年、彼らはウッドサイドの大豪邸に引っ越します。
マーガレットはアトリエの片隅でウォルターが昔描いた風景画を発見。
しかしそこには「キーン」ではなく「S・シニーク」というサインが…。
彼女は夫が自分と知り合う前から人の作品を自分の作品にしていたと気づき、
自分も会った時から利用されていたのだと考え、怒ります。
ウォルターを問い詰めると、パリ時代に風景(シーン)ばかり描いていたので、
シニークというニックネームだったと、かなり苦しい言い訳で…。
実際にはウォルターはそもそもパリに住んだこともないみたいです。
もう夫を信じられなくなり、家庭内別居状態になります。

でもマーガレットはウォルターに「喋れば殺すぞ」と脅されて、
BIG EYESを描き続けるんですよね…。
化けの皮が完全に剥がれたウォルターの最低さも相当ですが、むしろイラつくのは、
絶対的優位な立場にいながら、いつまでも夫に言いなりなマーガレットですよ。
彼女がBIG EYESを描かなくなったら困るのは彼女よりウォルターなのに、
なぜそんなに卑屈に振る舞うのか、不思議というかイライラします。
百歩譲って彼女は自分だけなら我慢すればいいかもしれないが、
ウォルターは娘ジェーンに対しても全くいい父親じゃないですからね。
ウォルターが前妻の娘リリーを家に連れてきた時に、
マーガレットはその子の存在を聞かされてなくて夫を問い詰めますが、
その時「僕だってジェーンを我慢してるんだ」なんて悪びれずいうような男です。
普通ならその発言だけで即離婚でしょ。
マーガレットは自分には生活力がないと思っていて離婚できないみたいですが、
たしかに母子家庭には厳しい時代だったかもしれないけど、
マーガレットだったらなんとかなるでしょ。
…と思ってしまうのはエイミー・アダムス演じる本作のマーガレットが美人で、
離婚しても男に不自由しなさそうに見えるからかな?

ウォルターは1964年のNY万博で、大傑作を発表しようと考え、
マーガレットにBIG EYESの大作を製作させます。
かなり大きなサイズで、大きな目の子供が沢山描かれた絵になります。
しかしそのウォルターの自称傑作を、NYタイムズの批評家が
「最低でグロテクスで悪趣味」と酷評し、パビリオンから絵は撤去。
批評家から低俗な画家と罵られたウォルターは、
「低俗な絵を描いて、よくも俺に恥をかかせたな」とマーガレットに怒りを向け、
彼女と娘ジェーンに火のついたマッチを投げつけてくるのです。
いやー、ここまで最低な人間はなかなかお目にかかれません。
ウォルターを演じているクリストフ・ヴァルツのことも嫌いになりそうなくらいです。
さすがのジェーンも離婚を決意し、ジェーンを連れてハワイに逃げますが、
そこまでされたら、逃げるのはハワイではなく警察署でしょ。

一年後、ホノルルで娘と2人で暮らしているマーガレットのもとに
ウォルターから、BIG EYESをあと100枚描いて送れば離婚に応じると電話が。
そこで彼女はBIG EYESを描いて「MDH」とサインして送ります。
そんなの「S・シニーク」同様、上からサインを書き換えられて終わりなのに、
たいした抵抗にもなってないと思うのですが…。
ある日、マーガレットの家に宗教の勧誘がやって来ます。
何を思ったのか、彼女はその宗教に入信してしまうんですよね。
その宗教は「エホバの証人」で、たしかキリスト教の中でも異質な新興宗教ですよね。
マーガレットはメソジスト(プロテスタント)なので、エホバの証人は嫌いなはずですが、
カトリックの教会に告解にも行ってたし、キリスト教なら何でもいいのか。
マーガレットはエホバの証人の青い本を読んだのがキッカケか、
急に真実を公開しようと思い立ち、ビッグ・ロロのラジオ番組に出演。
ビッグ・ロロから「あなたの夫は世界一売れている画家ですよね」と言われ、
「いいえ、彼は夫でもなければ画家でもありません」と、
BIG EYESを書いたのは自分であると告白します。
そのニュースは瞬く間に広まるも、ウォルターが頑なに否定するため、
マーガレットはウォルターを名誉棄損で訴えることになるのです。

裁判では、ウォルターは審理無効にするためか、
被告と弁護士の一人二役の茶番を繰り広げますが、
裁判長から「ここでBIG EYESを描いてみなさい」と言われて、お手上げ。
ウォルターは「肩が痛くて描けない」と子供のような言い訳をしますが、
マーガレットは見事にBIG EYESを描いて勝訴し、めでたしめでたしです。
その後、ウォルターは2000年に無一文で他界し、
マーガレットは今も存命で絵を描き続けているそうです。
劇中でマーガレットとウォルターがお絵かきデートしているシーンで、
背後のベンチで本を読んでいた女性がマーガレット本人だそうです。
ウォルターのことがめちゃめちゃ悪く描かれている本作ですが、
死人に口なしで、存命中のマーガレットの見解だけが反映された作品なので、
ちょっとフェアじゃないかもしれませんね。

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