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スパイ・レジェンド

先週末の興収ランキングで、公開5週目の『ベイマックス』が3週連続1位に輝きました。
アメコミ映画ファンのボクは公開前から『ベイマックス』の大ヒットを願っていましたが、
『妖怪ウォッチ』と公開日が重なったので不利を受けるのではないかと懸念したけど、
公開3週目で順位を逆転し、総興収も64億円を突破し、
『妖怪ウォッチ』まであと4億円に迫り、総興収の逆転も見えてきました。
どちらも観たけど、やっぱりいい映画というのはちゃんと評価されるものですね。
内容よりも特典で釣ろうとしている『妖怪ウォッチ』に負けるはずないです。

でも先週末のランキングで10位以内に洋画は『ベイマックス』ともう一本だけで、
やっぱり洋画はいくらいい映画でも評価されにくいんだなと…。
『ベイマックス』と『妖怪ウォッチ』のアニメ対決だけでも明らかですが、
今は邦画よりも絶対に洋画の方が面白いのに、なかなか客が入りません。
面白くない邦画をチヤホヤすることは今後の邦画にとってもよくないです。

ということで、今日は人気のない洋画の感想です。

スパイ・レジェンド
The November Man

2015年1月17日日本公開。
ピアーズ・ブロナン主演のスパイ・アクション映画。

ザ・ノヴェンバー・マンというコードネームを持ち、さまざまなミッションを遂行してきた伝説的CIAエージェントのピーター・デベロー(ピアース・ブロスナン)。スイスで引退生活を送っていた彼だが、かつての仲間たちが何者かに殺害されているのを知って彼らを守ろうと動きだす。だが、元同僚で愛していた女性を殺され、その犯人が自分がかつて教育してきた現役エージェントであることを知る。彼と壮絶な戦闘を続けながら、事件の全体像をつかもうとするデベロー。やがて彼は、ロシア大統領選をめぐる陰謀の存在にたどり着く。(シネマトゥデイより)



本作は全米初登場6位と微妙な成績だったし、評判もイマイチだったのに加え、
なんか超B級くさい邦題だったので、あまり観る気はなかったのですが、
本作を上映するシネマート心斎橋にどうしても行く用事があり、観ることにしました。
シネマート心斎橋ってアメリカ村にあるくせに、ハリウッド映画はあまり上映せず、
いつも韓流映画とか華流映画ばかり上映しているので、
なかなか行く機会がないのですが、あまりに行く機会がなさ過ぎて、
昨年の1月に『スティーラーズ』を観に行って以来、約1年御無沙汰でした。
ところがふと気付くと会員カードの有効期限が最終利用日より1年間だったので、
このままでは少ないながらに貯まっていたポイントが失効しちゃうと焦り、
(韓流と華流以外なら)なんでもいいから観て有効期限を更新しようと思い、
現在上映中の作品の中で唯一マシそうな本作を選び観に行きました。
正直、全く期待していませんでしたが、これがなかなか面白く、
とても見応えのある骨太なスパイ映画だったので、観に行って正解でした。
有効期限も更新できたし、言うことなしです。

なかなか面白い作品なのに、なぜ米国で人気がなかったのか不思議ですが、
スパイ映画らしい陰謀渦巻くちょっと込み入った話が敬遠されたのかな?
それとも対イスラム・テロの時代に、冷戦ネタが時代錯誤と思われたのかな?
でも一番の不人気理由は、『007』シリーズと比較されてしまったからでしょうね。
本作の主演ピアーズ・ブロナンといえば、『007/ゴールデンアイ』から
『007/ダイ・アナザー・デイ』までの4作を務めた前ジェームズ・ボンドとしてお馴染み。
現ジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグにバトンタッチして、もう12年になりますが、
そんな彼がまたスパイ映画をするとなれば、比較されるのは当然です。
ボクが『007』シリーズを観始めた時にはボンドはすでにクレイグだったので、
ボンド時代のブロナンは知らず、比較できなかったのが本作を楽しめた要因かも。

当たり役と似た役をやっても、当たり役を上回れないのは当然なので、
似た役を受けたがらない役者は多いと聞きますが、
ブロナンは再びスパイ役をすることを望んでいたようです。
彼は本作の主演だけでなく製作にも携わっていますが、
本作自体が彼が再びスパイ役をするために自ら立ち上げた企画です。
これはどう考えても、彼がボンド役に未練があったとしか思えませんが、
実際に彼自身「ボンド役をもっと続けたかった」と認めているみたいです。
クレイグ主演の『007/慰めの報酬』のボンドガール役オルガ・キュリレンコを
わざわざヒロインにしたのも、ボンド役を奪ったクレイグへの嫉妬からかもね。
「降板さえなければオレのボンドガールなのに」みたいな。
何にしても、ブロナン主演、キュリレンコがヒロインのスパイ映画なんて、
『007』シリーズに負んぶに抱っこ状態で、まともに評価されるはずないです。
その実、ちゃんと面白い内容なだけに、ちょっと残念です。
以下、ネタバレ注意。

2008年、CIA諜報員デヴェローは、モンテネグロ米国大使の暗殺を阻止するため、
弟子のCIA狙撃手メイソンと任務に就きます。
大使の警護中、暗殺者らしき男を発見したデヴェローでしたが、
人混みだったため、待機していたメイソンに狙撃を待つように命令。
ところがメイソンは勝手に狙撃してしまい、暗殺者の撃った流れ弾で、
何の関係もない子供が死んでしまうのです。
そのことがあって、デヴェローはCIA引退を決意します。
劇中ではメイソンが命令を無視して狙撃したことで、子供が死んだような感じですが、
デヴェローが待つように命令しなければ、銃を抜く前に暗殺者を殺せたのでは?
それに暗殺者は、どう見ても大使ではなくデヴェローに対して発砲してたように見え、
正直この冒頭シーンは、なんだかよくわからない展開だと思っちゃいました。

5年後、CIAを引退してスイスでカフェのマスターをしているデヴェローのもとに、
かつての相棒ハンリーが訪れ、今一度、力を貸してほしいと言われます。
次期ロシア大統領候補フェドロフ議員が、裏で女殺し屋を雇って、
邪魔者を次々と始末しており、CIA女性諜報員ナタリアが潜入捜査しているが、
彼女の捜査が強引すぎてフェドロフに気付かれるのも時間の問題なので、
デヴェローにナタリアを救い出してほしいという依頼です。
次期大統領のくせにとんでもない野郎ですが、ロシアの大統領って
プーチンかその傀儡しかなれないので、次期大統領候補なんて変な感じがします。
ナタリアとはCIA時代に恋人以上の関係だったデヴェローはその依頼を承諾し、
モスクワで下院ビルのフェドロフの金庫から証拠を持ち出して
FSB(ロシア連邦保安庁)に追われているナタリアを車で回収します。
しかしデヴェローとは別に、ナタリア回収に動いていたCIAチームが、
上官ワインスタインの命令でデヴェローの車を狙撃し、ナタリアを殺害します。
どうやらデヴェローへの依頼はハンリーの独断で、CIAは知らなかったようで、
ナタリアは逃げ切れないと考え、口封じしたみたいです。

デヴェローは当然激怒し、CIAチームのワゴンを襲って皆殺しに…。
と思いきや、チームのひとりが例の弟子メイソンだったので、
彼だけは殺せず、その場を去るのです。
もちろん狙撃手のメイソンがナタリアを狙撃した張本人で、
それはデヴェローも気付いているはずで、最も憎むべき相手のはずなのに、
なぜメイソンだけ見逃してやったのか不思議ですよね。
愛する恋人よりも命令を聞かない弟子の方が大事なのか?
チームを全滅させられたCIAは、デヴェローの仲間としてハンリーを監禁します。

ナタリアが命懸けでフェドロフの金庫から盗んだ証拠は、
ミラ・フィリポアという謎の少女の写真でした。
どうやらフェドロフの性奴隷にされていた当時15歳の難民の少女で、
デヴェローもCIA、そしてフェドロフも現在行方不明のミラを探すことになります。
ミラは難民としてセルビアに来たみたいで、その時彼女を支援したのが
難民センターのアリスで、ミラの居場所を知ってそうな彼女の争奪戦が始まります。
アリスがフェドロフの雇った女殺し屋に始末されそうになっているところを、
デヴェローは救出し、CIAの追っ手も振り切って2人で逃げます。
なぜアリスがCIAよりも、こんな謎のオッサンを信頼するのか不思議でしたが、
実は彼女にはCIAを信用しない理由があるのです。

アリスの話では、現在のミラの居場所は知らないが、
ミラはチェチェン紛争で当時軍人だったフェドロフに両親を殺害され、
彼女はフェドロフに気に入られて性奴隷にされたみたいです。
しかもフェドロフはCIAとも通じていて、第二次チェチェン紛争の引き金となった、
チェチェン独立派武装勢力が起こしたとされるロシアのアパート爆破テロは、
実はオイル利権のためにチェチェンに進攻したかったフェドロフが、
CIAのある人物と共謀して行ったものであると言うのです。
本作はもちろんフィクションですが、第二次チェチェン紛争も、
それの引き金であるアパート爆破テロも史実です。
つまり本作は歴史フィクションになっているわけで、そこが面白いです。
実際に1999年のアパート爆破テロは、プーチンがチェチェン進攻の口実を作るため、
FSBを使って起こしてチェチェン武装勢力の仕業に見せかけた
ロシアの自作自演であるという陰謀説が囁かれていますが、目撃証言などもあり、
単なる噂とは言いきれない説です。
昨年のロシアのクリミア侵攻など見る限り、ボクもこの説は有力かと思います。
(CIAとの共謀は本作独自の新説だと思われます。)
そして劇中で第二次チェチェン紛争を企てたとされるフェドロフ次期大統領とは、
プーチンをモデルにしたキャラに違いないです。
そんな歴史フィクションとして本作は観ないと、王道スパイ映画にしか見えないので、
それほど楽しめないかもしれません。
多くのアメリカ人は国際情勢に疎い(興味がない)ので、
本作がアメリカで人気がない原因のひとつかもしれませんね。

狙撃手メイソンは、モンテネグロ米国大使暗殺阻止の時に、
デヴェローが指導報告書で自分を落第評価にしていたと知り、
彼を見返そうと躍起になり、彼とナタリアの間に12歳の娘がいることを突き止め、
彼の弱みとして上官ワインスタインに報告するのです。
家族を人質に取ろうなんて、めちゃめちゃ卑劣な野郎ですね。
しかもその子の母親は自分が殺しているのに、鬼畜の所業です。
まぁデヴェローもメイソンといい感じになっていた隣人サラを人質にして、
何も関係ない彼女の大腿動脈を切って病院送りにしちゃったりするので、
あまり善人とは言えませんけどね。
こういうところは、クールなジェームズ・ボンドとはかなり違います。
ボンドだったら女性を傷付けるようなことはしないだろうから。

フェドロフは欧州エネルギー会議に出席するためベオグラード入り。
デヴェローと別れ、単独行動中のアリスはコールガールに変装し、
フェドロフのホテルの部屋に行きます。
フェドロフを暗殺するつもりですが、なんと彼女自身がミラだったのです。
女好きのフェドロフはすっかり騙され、彼女を部屋に上げてしまいますが、
ベットインした途端に、彼女は鏡の破片をフェドロフの首に突き立て…、
…と思ったら、なぜか刺すのを躊躇うんですよね。
家族を殺し、15歳の自分をレイプした憎いジジイを殺せる最大の機会なのに…。
躊躇っているうちに、やっぱり形勢逆転され、一気にピンチになりますが、
そこにデヴェローが飛び込んで来て、彼女を救います。

しかし再びデヴェローを殺そうとする彼女を制止し、
「殺すのはコイツの悪事を公表してからだ」とビデオカメラを向け尋問します。
なかなか口を割らないフェドロフに対し、「お前の国のゲームをしよう」と、
リボルバーに一発だけ弾を込めてフェドロフを撃つロシアンルーレットをしますが、
これだと下手をすれば口を割らせる前に殺しちゃいますよね。
そうなれば悪事を公表もできなくなっちゃうのにね。
でもデヴェローの気にしている悪事と言うのは、ミラをレイプしたことや、
殺し屋を使って邪魔者を暗殺していることではないんですよね。
ぶっちゃけフェドロフ自身の悪事なんてどうでもよく、
アパート爆破テロの時に共謀したCIAは誰だったのかが知りたいのです。
デヴェローはCIAチーフのワインスタインが怪しいと決め込んでいましたが、
フェドロフが曰く、共謀したのは長年の相棒ハンリーだったと…。
なぜデヴェローがフェドロフのその告白をあっさり信じるのかといえば、
ミラもその時の状況を知っていて、彼女がハンリーで間違いないと言うからです。
それなら別にフェドロフはさっさと始末して、はじめからミラに聞けば済みましたね。
CIAがホテルに踏み込んできたので、デヴェローはフェドロフは殺さず、
ミラを連れて逃げますが、途中で元弟子メイソンとタイマン。
メイソンをぶっ倒して、彼にフェドロフの告白ビデオを渡し去ります。

しかしその頃ハンリーは、ワインスタインからCIAチームの指揮権を奪い、
メイソンの情報を元にデヴェローの娘を拉致して人質にして、
デヴェローに娘とミラの交換を要求します。
ハンリーがアパート爆破テロでフェドロフと共謀したのは、
次期大統領であるフェドロフの弱みを握り、大統領になった彼を自分の傀儡にして、
ロシア政府を自分の思い通りに動かそうと計画していたからです。
(傀儡にしたロシアをNATOに加盟させるという笑える計画も…。)
彼の頭の中では未だに冷戦が続いていて、それを終わらせたかったみたいですが、
中東や中国に比べたら、ロシアの脅威なんて今のアメリカは問題視してないし、
やっぱりちょっと時代錯誤な印象は否めないかな?
フェドロフの告白ビデオを見たメイソンはハンリーに従順なふりをしていますが、
ハンリーを裏切り、隙を付いてデヴェローの娘を解放します。
デヴェローも娘も彼に感謝したでしょうが、元を正せば娘が捕まったのは彼のせい。
最後の最後で仲間になったとはいえ、メイソンのことは好きになれません。

デヴェローとメイソンは2人でハンリーを倒し、デヴェローは娘を連れてミラと駅で合流。
ミラは彼を待っている間、フェドロフの告発記事を書いて時間を潰していましたが、
そこを例の女殺し屋に襲われるも、エンピでぶん殴って倒しちゃうんですよね。
この殺し屋はめちゃめちゃ強いに違いないと思っていたのに、
こんな情けないあっさりした最後だなんて意外でした。
ミラはその記事を殺し屋に殺されたNYタイムズの記者と連名で発表し、
フェドロフの悪事を国際刑事裁判所で証言し、大統領候補から失脚させます。
その後、クルーザーで休暇中のフェドロフは何者かに狙撃され死亡し、
悪者が全員死んで、めでたしめでたしです。
普通に考えれば、フェドロフを狙撃したのはメイソンだったでしょうね。
メイソンの汚名返上にもなるので、その辺は明らかにしておいた方がよかったかも。

スパイ映画としては王道すぎるというか、若干不出来で、
『007』シリーズと比較すると面白くないかもしれませんが、
第二次チェチェン紛争の陰謀論を描いた歴史フィクションとして、
なかなか面白いアクション・スリラーだったと思います。

ダニエル・クレイグがボンドを務める『007』シリーズ最新作
『007/スペクター(仮題)』も今年(11月)公開予定です。
これでクレイグも4作目で、ピアーズ・ブロナンに並びました。
クレイグには初代ボンド、ショーン・コネリーの記録も抜いてほしいです。
ちなみに本作も続編を作るそうですが、この人気と成績では厳しいんじゃないかな?

コメント

「傀儡にしたロシアをNATOに加盟させるという笑える計画」は、冷戦後の中東情勢に対して米ロシア一緒に戦うためのものだって、アメリカ人はちゃんといってましたよ。だから筋は通って立派にアクチュアルです。「時代錯誤」ではない。
今年2015年にチェコの大統領がやはりロシアはNATOに入るだろうと言っています。これ、フィクションじゃない、ほんとの話。

  • 2015/08/15(土) 03:02:12 |
  • URL |
  • 通りすがり #-
  • [ 編集 ]

通りすがりさんへ。

コメントありがとうございます。

筋が通っていようがいまいが、笑えることには変わりないです。
それにその一文は補足なので括弧で括ってるでしょ?
文法的にその後の「時代錯誤」がその補足を指していると思いますか?
ボクが時代錯誤だと言っているのは、ロシアがNATOに加盟することではなく、
未だに冷戦時代を引きずっているハンリーの考え方です。

  • 2015/08/15(土) 12:30:35 |
  • URL |
  • BLRPN #-
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