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劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス

今日の気になるニュース。
昨日夜、ついにアカデミー賞のノミネート作品が発表されました。
今日は主に作品賞のノミネートについて語りたいですが、
このノミネート結果は、小躍りしたいほど嬉しいものでした。
作品賞ノミネート作は『アメリカンスナイパー』 『6才のボクが、大人になるまで。』
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』 『Selma』
『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』 『博士と彼女のセオリー』
『グランド・ブダペスト・ホテル』 『セッション』の8作品に決まりました。
大々的に「オスカー最有力」と謳っていた『ゴーン・ガール』や『フューリー』は
見事に落選してしまいましたが、ボクが何より嬉しかったのは、
やはりノミネート確実と噂されていた抗日映画『Unbroken』が落選したことです。
似非人権家アンジェリーナ・ジョリー監督の悔しがる顔が目に浮かぶようです。

『6才のボクが、大人になるまで。』と『グランド・ブダペスト・ホテル』は鑑賞済みで、
正直作品賞オスカーに相応しい作品とは思いませんでしたが、
まだ日本公開されてない残る6作は面白そうなものばかりな気がします。
まだ日本公開日未定の『Selma』を除けば、他は4月までに公開されるので、
アカデミー賞の熱も冷めやらぬうちに楽しめそうなのもよかったです。
いやー、よかった、よかった。

さて、今日は今年初の日本映画の感想です。

劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス
サイコパス PSYCHO-PASS

2015年1月9日公開。
本広克行総監督によるテレビアニメの劇場版。

人間の精神を数値化するシビュラシステム管理下の2112年、新人監視官の常守朱と執行官の狡噛慎也は、ある大事件の黒幕・槙島聖護と出会う。狡噛は自らの信念を貫き槙島に復讐(ふくしゅう)を果たした後、姿をくらます。2116年、日本政府が輸出したシビュラシステムを内戦状態のSEAUn(東南アジア連合)が実験的に導入するが、SEAUnから日本へテロリストが送り込まれ……。(シネマトゥデイより)



フジテレビが深夜に放送していたテレビアニメ『PSYCHO-PASS』の劇場版です。
テレビアニメ版は2期まで放送されましたが、
ボクは2012年秋から放送された1期当時は存在をまだ知らなかったけど、
面白いという噂を聞き、全22話のだった1期を全11話に再構成し、
昨年夏から放送された『PSYCHO-PASS 新編集版』から見始めました。
『~新編集版』は第4話が佐世保女子高生殺害事件の影響で自粛されるという
ハプニングもありましたが、噂通り、なかなか面白いアニメでした。
(第4話の部分だけ1期のDVDをレンタルして補完できました。)

そして『~新編集版』が終了した昨年秋に2期がスタートし、
そのまま見続けたのですが、どうも『~新編集版』よりも劣る気がして…。
『~新編集版』は1話1時間だったのに2期は1話30分に戻ったことで
ストーリーが追いにくくなったとか、原因はいろいろ考えられますが、
つまらなくなった最大の原因は主人公の交代にあったような気がします。
厳密には交代というほどのことでもないのですが、
1期(新編集版)の主人公・狡噛慎也が1期の最後で失踪する展開となり、
2期の主人公は1期のヒロインである常守朱が単独で張ることになります。
ボクは男なので男が主人公の方が感情移入しやすいく、楽しみやすいんですよね。
更に常守も単独主人公に昇格したことで、主人公らしい性格に変化し、
1期の時のように可愛げがなくなってしまったのも残念です。

しかし、この劇場版では失踪した狡噛が再登場するということで、
また1期の面白さが戻ってくるのではと期待しました。
ところが、確かに狡噛は戻ってきたものの、面白さは戻ってこず、
コレじゃない感の半端ない残念な劇場版になっています。
正直2期にも劣るが、優劣以前にもはや別物のような作品で…。
テレビドラマで例えるなら『SPEC』の劇場版の失敗に近い感じで、
大スクリーンになるということで気合が入りすぎて、
大風呂敷を広げすぎ、本質を見失ってしまったような印象です。
残念なのは、ここまで広げてしまった大風呂敷は容易には畳めないため、
今後は更に広げるより道はなく、もうテレビドラマ3期は望めないことです。
1期の頃のような、面白い『PSYCHO-PASS』にはもう二度と会えません。

では『PSYCHO-PASS』の本質とは何かですが、刑事ドラマだと思います。
本作の総監督である本広克行は、ご存じ『踊る大捜査線』シリーズの監督ですが、
『踊る』シリーズは主演の不仲やヒロイン女優の事務所問題、出演者の死去などで、
シリーズ続行が困難な状況になり、劇場版4作目で事実上終了しました。
その失敗を踏まえ、次は出演者に左右されないアニメという舞台で、
『踊る』のような刑事ドラマを製作したのだと思われます。
『踊る』のような刑事ドラマとは、簡単に言えば色々な事件を捜査・解決しながら、
現場とキャリア・警察上層部との軋轢を描く、警察組織ものです。
1期時点の狡噛ら執行官が現場の所轄刑事、宜野座ら監視官がキャリア、
そしてシビュラシステムが警察上層部という構図になります。
執行官に甘い常守監視官は、さしずめ室井管理官的な立場でしょうか。
ただ『踊る』のようなアニメにするだけではなく、アニメという新しい媒体になったので、
その媒体の特性を活かし、実写では難しいSF的な要素を付加したと思われますが、
SF要素はあくまで付加的要素で、本質はやはり警察組織もの刑事ドラマです。

ところが大風呂敷を広げすぎた本作は、SF要素が極端に高まり、
『機動警察パトレイバー』どころか、『攻殻機動隊』や『アップルシード』のような
サイバーパンクSFの領域に足を踏み入れてしまっています。
サイボーグや戦闘ドローンとのバトルが描かれ、もはや刑事ドラマではなくなりました。
まぁもともと『PSYCH-PASS』のSF設定は秀逸だったので、
アニメファンにそれがウケ、人気作になったのは間違いなく、
そんなファンの意向に沿えば、こんな展開になるのも仕方がないけど、
所謂アニメファンではなく、『踊る』を経て本作に入ったボクとしては、
このサイバーパンク化は歓迎できるものではありません。
1期の頃の『踊る』くさい物語が懐かしく思えます。

しかしもし『PSYCHO-PASS』のSF要素が好きだったとしても、
本作も面白いと思えるかもかなり疑わしいです。
『PSYCHO-PASS』で最も人気のあるSF設定といえば、
執行官や監視官ら公安局が使う特殊なハイテク拳銃「ドミネーター」でしょう。
撃った犯人を北斗神拳のように内部から破壊するリーサル・エリミネーターや、
物質に対して凄まじい破壊力を見せるデストロイ・デコンポーザーなど、
映像的にも衝撃的で印象的な弾を撃ち分けられるかっこいい拳銃です。
しかし本作の主な舞台は、あろうことかドミネーターを使えない海外となり、
主な武器も普通の拳銃とかライフルという実弾兵器が主となります。
ドミネーターがない『PSYCHO-PASS』なんて、
ライトセイバーのない『スターウォーズ』みたいなもので魅力半減です。

そもそもドミネーターの有無に関わらず、海外に舞台を移すなんてのが最悪。
海外で殺人事件の捜査するならまだしも、紛争に巻き込まれる展開で、
刑事ドラマの「け」の字も感じられない物語になってしまいました。
そもそも本作のタイトルの由来を見失っているのではないでしょうか。
本作のタイトルはもちろん『PSYCHO-PASS(サイコパス)』ですが、
「PSYCHO-PASS」とは「人間の精神状態を科学的に分析し数値化したデータ」
と劇中では説明されていますが、もちろんそれは後付で、
精神病質者「Psychopath(サイコパス)」のモジリです。
それが本作の刑事ドラマとしての特徴でもあり、作中で扱う事件は、
死体で芸術作品を作るレザーフェイスのような女子高生など、
精神病質者による猟奇殺人事件で、当初はそれを捜査する刑事ドラマでした。
2期(1期の終盤くらい)から、その当初のコンセプトも忘れたみたいで、
それもボクが2期が劣るなと思った原因のひとつです。
そもそもPSYCHO-PASSという言葉自体、本作では使われません。
主に(微妙にニュアンスの異なる)犯罪係数や色相という言葉で代用されていますが、
もう製作サイドは「サイコパス」を忘れてしまいたいんじゃないかな?

そして本作ですが、もはや精神病質とは微塵も関係ありませんし、
精神病質の度合いを数値化したPSYCHO-PASSとの関係も非常に薄いです。
なぜなら本作の舞台は紛争地帯であり、登場する人物も、
軍人、傭兵、テロリスト(レジスタンス)など殺し合いを行う戦士ほとんどなので、
殺人犯になる危険性を示す犯罪係数が高いのは当たり前であり、
PSYCHO-PASSの測定に何の意味もないからです。
なので本作には新たに「敵味方識別コード」なる分析手段が用いられますが、
それが更にPSYCHO-PASSや犯罪係数の出番を奪っています。
PSYCHO-PASSが意味を成すのは平和な社会だけなので、
紛争地域なんかを舞台にしたら、ドミネーターどころか、
『PSYCHO-PASS』のほとんどのSF設定が意味を失ってしまいます。
だから本作はテレビアニメ版とは別物のような劇場版になるのです。
以下、ネタバレ注意です。

2116年、日本政府はSEAUn(東南アジア連合)にシビュラシステムを輸出します。
シビュラシステムは簡単にいえば国民の精神状態を監視する人工知能ですが、
それのおかげで日本の治安は保たれていますが、
シビュラを持たない日本以外の国は全て紛争状態になっているみたいです。
そんな状況では日本も経済が成り立つとは思えないのですが…。
ある日、日本にSEAUnからテロリストが密入国しますが、
公安局の偵察ドローン「ダンゴムシ」が彼らを発見。
常守監視官率いる公安局刑事課はすぐに出動し、テロリストを制圧、逮捕します。
テロリストのひとりに脳波モンタージュ「メモリースクープ」を行うと、
失踪した狡噛元執行官が映った映像が見つかり、
狡噛がSEAUnの反政府ゲリラでテロ活動を行っていることがわかります。
狡噛に心酔する常守は逃亡犯の捜査名目で単身SEAUnに飛びます。
お待ちかねの狡噛の登場ですが、彼は実際はテロ活動ではなく、
レジスタンス活動をしているのだけど、そんなことをしているなんて残念です。
いや、活動の内容ではなく、海外で活動していることが残念で、
てっきり国内で人知れずシビュラの体制転覆を謀っていると思っていたので、
レジスタンス活動するなら日本でしろよと思ったし、これではまるで、
彼が日本(シビュラ)から逃げたような印象を受け、彼らしくないです。

常守監視官はシビュラが試験運用されているシャンバラ・フロートで、
SEAUnの元首ハン議長と面会します。
ハン議長は日本政府の後ろ盾を得て元首になった元陸軍大将です。
その後、常守はハン議長の右腕である憲兵隊ニコラス大佐が指揮する
反政府ゲリラ鎮圧作戦に同行し、戦闘中に狡噛を発見し、単身後を追います。
そして狡噛とタイマンになるのですが、常守は互角以上に戦うんですよね。
たしかに序盤で彼女がドローン相手に戦闘訓練している描写はありましたが、
狡噛と互角に戦うまでになるなんて、いくらなんでも強くなりすぎでしょ。
あまりに完璧になる彼女に、1期当時の可愛げはなく、寂しくなりますね…。
てか、狡噛も単身で戦闘ヘリを撃墜するなど、強くなりすぎです。
つい先日まで公安局の執行官、つまり単なる刑事だったのに、
反政府ゲリラでどんな訓練を受けたら、短時間でそんな強くなれるのかと。
というか、そんな狡噛に現役刑事の常守が互角なんて、更に無茶苦茶です。

狡噛が日本に密入国したテロリストとは無関係だとわかり、
常守監視官は彼が反政府ゲリラに参加した理由を知るために
彼に同行し、反政府ゲリラのキャンプに行きます。
常守がゲリラを幇助していると考えた憲兵隊ニコラス大佐は、
常守諸共狡噛を始末するため、傭兵デスモンドに2人の暗殺を依頼。
デスモンドは傭兵部隊を率いて、ゲリラのキャンプを襲撃。
狡噛は常守をシャンバラに逃がし、傭兵部隊を迎え撃ちますが、
右腕、左脚が戦闘用義体になっているサイボーグ傭兵デスモンドは強すぎ、
憲兵隊に引き渡すために生け捕りにされてしまいます。
サイボーグ傭兵とか、もう『攻殻機動隊』の世界ですよね…。

一方、シャンバラに戻った常守も、当然憲兵隊に拘束されますが、
その前にダンゴムシを放ち、SEAUnのシビュラ不正運用の証拠を掴みます。
ニコラス大佐の犯罪係数は表向き正常値ですが、実際は重篤潜在犯レベルです。
それをサイマティック・スキャンに敵味方識別コードを組み込むことで、
自分の犯罪係数を計測されないようにしてあったのです。
まぁ重篤潜在犯レベルの数値かどうかは別にしても、
前線で戦闘を行う軍人の彼が正常値なんてことはあり得ず、
当たり前の結果で特に驚くべき展開でもなかったです。
ニコラス大佐ら憲兵隊は常守と狡噛を始末しようとしますが、
その瞬間、日本政府が貸与していた憲兵隊のドローンの指揮権が公安に移り、
ドローンの一斉掃射により憲兵隊は壊滅し、常守と狡噛は救われます。
どうやらシビュラは不正運用を把握していたけど、試験運用を成功させるため黙認し、
時が来たら憲兵隊を一斉摘発(というか始末)するつもりだったみたいです。
さらに宜野座ら執行官も日本から駆け付け、ニコラスをドミネーターでヒデブします。
ドミネーターって被弾すれば絶対即死なので決着が呆気ないですね。

狡噛は逃げたサイボーグ傭兵デスモンドを追い、再戦しますが、
殴り合いなら何度戦っても負けるだろうと思いきや、
元同僚の宜野座執行官が加勢して、2人がかりでデスモンドを倒します。
ところが宜野座は狡噛を日本に連行せず、あえて逃がしてしまうのです。
その気持ちはわからなくもないけど、ここでまた狡噛を失踪させたら、
物語が振り出しに戻ってしまう気がするので、あまり望まない展開でした。
まずないと思うけど、もしテレビアニメ3期が始まったとしても、
また狡噛不在でスタートしちゃうことになるしね。

一方、常守はハン議長にドミネーターを向け、彼の犯罪係数を計測。
すると数値ゼロと表示され、犯罪係数が計測できない免罪体質者だとわかります。
しかも単なる免罪体質者ではなく、公安局長と同様の全身義体(アンドロイド)であり、
SEAUnを支配するためシビュラが送り込んだ傀儡だったのです。
中盤で狡噛が「独裁者の犯罪係数は…」と話していた時から、
もうこのオチは読めちゃってましたね。
シビュラの正体を知る常守は、ハン議長に「元首は選挙で選ぶべき」と主張。
ハン議長はあっさり要求を飲み、ニコラス大佐のクーデターの責任を取る名目で辞任。
真実を何も知らないシャンバラ市民はどうせ再びハン議長に投票し、
再選するに決まっているから、あっさり常守の要求を飲んだわけで、
実際にハン議長は圧倒的支持率で再選するのですが、
そんなことは常守もわかっていたはずで、なぜそんな無意味な要求をしたのか…。
まるで前回の衆院選のような、結果のわかりきった無駄な選挙なのに…。
やっぱり常守はシビュラの意義にある程度共鳴してるんでしょうね。
シビュラが黒幕なディストピアSFなのに、シビュラに共鳴する人物が主人公では、
やっぱり物語が盛り上がらないような気がします。

まだ続編の製作はアナウンスされてませんが、いずれは作られると思うけど、
それはかなり先のことになりそうな予感がします。
なにしろ週末興行ランキング初登場4位と、ちょっと期待ハズレな成績でしたからね。
同じアニメ映画である『妖怪ウォッチ』や『ベイマックス』に負けるのは仕方がないが、
不人気刑事ドラマの劇場版『ST赤と白の捜査ファイル』に負けるようでは厳しく、
更なるシリーズ化のモチベーションも下がってしまったことでしょう。

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