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薄氷の殺人

今日の気になるニュース。
ブロードウェイ・ミュージカル『アニー』をアフロアメリカン映画として映画化した、
クワベンジャネ・ウォレス、ジェニミー・フォックス主演の『ANNIE/アニー』が、
来週末に日本でも劇場公開となり、ボクも楽しみにしていますが、
その宣伝映像「『Tomorrow』アラウンド・ザ・ワールド・クリップ」が公開しれました。
これはテーマソング「Tomorrow」をベルギー、ドイツ、スペイン、フランス、オランダ、
そして日本の歌手が母国語でマイクリレーするというミュージッククリップです。
(『アナと雪の女王』の時も似たようなことが行われていましたね。)
なかなか企画としては面白いけど、参加している日本人歌手が「誰?」って感じで…。
なんでも「E-girls」のグループ内ユニット「Flower」の鷲尾伶菜って子らしいけど、
こんな企画に(しかもトリで)参加するほど有名な歌手なの?

どうやら日本語吹替版主題歌を「Flower」が担当しているみたいで、
その関係で参加しているのでしょうが、てっきり日本語吹替版版主題歌は
予告編でもその美声を披露していた平井堅が担当すると思ってました。
LDHのアイドルグループなんかに「Tommorrow」を歌わせるより、
正真正銘の歌手である平井堅の「Tommorrow」の方が皆聴きたいと思うのに、
何かの圧力がかかって主題歌を差し替えたとしか思えません。
なにしろレコード大賞受賞まで思いのままにできるLDHですからね。
映画のタイアップを横取りするくらい造作もないでしょう。
ただ、件のクリップで歌っている鷲尾伶菜は、可愛いし上手かったです。

さて、今日も映画の感想です。

薄氷の殺人
Black Coal, Thin Ice

2015年1月10日日本公開。
第64回ベルリン国際映画祭で金熊賞受賞したスリラー。

中国・華北地方で切断された死体の断片が次々に発見され、刑事ジャン(リャオ・ファン)が捜査に当たるが、容疑者の兄弟が逮捕時に射殺されたため詳細は誰にもわからなくなってしまう。5年後、しがない警備員となっていたジャンは以前の事件と手口が類似した猟奇殺人が発生したことを知り、独自に調査を開始。やがて、被害者たちはいずれもウー(グイ・ルンメイ)という未亡人と近しい関係だったことを突き止めるが……。(シネマトゥデイより)



中国映画なんて好き好んでは観ないのですが、金熊賞受賞作品となれば話は別で、
映画ファンを自負する以上は観ておかなければならない作品のひとつになります。
本作は昨年開催された第64回ベルリン国際映画祭で金熊賞、
つまり最優秀作品賞を受賞した中国映画です。
ついでに銀熊賞(男優賞)も受賞し、二冠達成しています。

昨年のベルリンのコンペ部門といえば、日本からは『小さいおうち』が出品され、
本作と争ったわけですが、残念ながら本作に負けてしまいましたね。
でも『小さいおうち』も銀熊賞(女優賞)を受賞しています。
敗れたものの『小さいおうち』はそれなりに面白い作品だったので、
それに勝った作品であれば、なかなか期待できそうだと思いました。
実際、本作はなかなか面白い作品だったと思います。
その上で、本作の魅力のひとつは主演女優の演技だったりしますが、
彼女を敗って銀熊賞(女優賞)を受賞した『小さいおうち』の黒木華は
想像以上に凄いんじゃないかなんて思っちゃいましたね。

その第64回ベルリン国際映画祭のコンペ部門で本作は、
『6才のボクが、大人になるまで。』と『グランド・ブタペスト・ホテル』という、
ゴールデングローブ賞の最優秀作品賞に輝いた両作品も降しています。
ハリウッド映画ファンのボクとしては、これはかなり凄いことで感心します。
それに、実際にGG賞の両作品よりも面白いと思いました。
もっと言えば、三大映画祭の最高賞受賞作で、ちゃんと面白い作品も珍しいです。
ボクは中国が嫌いなので、中国映画なんて正直褒めたくないけど、
映画ファンとして、面白いものを面白くないとはいえません。
以下、ネタバレ注意です。

1999年、華北の石炭工場で、石炭に混ざって人間の腕が発見されます。
更に6都市15か所の工場で、他の人体のパーツも発見され、
バラバラ殺人事件として捜査が始まります。
そのバラバラ死体は裸の女のものなんじゃないかなんて噂もありましたが、
あるパーツと一緒に身分証明書も見つかり、炭鉱工場の計量員である
リアン・ジーシュンという男のものだと判明するのです。
ジャン刑事はパーツが点在する15か所の工場から見つかったことから、
各工場に石炭を運ぶトラック運転手の兄弟リウとファーシンが怪しいと考え、
逮捕しようとしますが、拳銃を発砲してきて同僚の刑事が2人殉職したため、
ジャン刑事は彼らを射殺するしかなく…。
どうやら事件は被疑者死亡で解決となったみたいですが、
ジャン刑事は被疑者と同僚が死んだ責任を取らされ、工場の保安課に異動に…。
まぁあんな逮捕の仕方は杜撰すぎなので、左遷されるのは当然ですね。
でも石炭工場の保安課なんて、普通は工場に雇われた警備員がやるんじゃないの?
なんで警察官が配属されるのか不思議ですが、共産主義の中国は、
石炭工場も国営で、従業員は全員公務員ってことなのかな?

それから5年後の2004年、ある店のラーメンから人間の目玉が発見され、
またバラバラ殺人事件が起こったみたいです。
その少し前、2001年にも野外スケート場でバラバラ殺人事件が起こっていて、
ワン刑事はそれら事件を捜査し、被害者らの知り合いだったと思われる
クリーニング店の女性店員ウーが浮上し、彼女を張り込みます。
ウーはなんと、1999年のバラバラ殺人の被害者リアンの妻でもあり、
すでに彼女の周りで3人死んでおり、ワン刑事曰く「関わると死ぬ女」です。
一方、保安課の仕事に不満なジャンは、勝手に友達ワン刑事の事件に首を突っ込み、
クリーニング店の客になりすましてウーに接近したり、彼女を尾行したりするのです。
ジャンは事件を解決したいなんていう殊勝な男ではなく、単なる暇潰しでしょうね。
それにウーはかなり美人な未亡人なので、女癖の悪いジャンもそこに惹かれたのかも。
彼のやってることも捜査というよりも単なるストーキングですしね。
あまりに露骨に付きまとわれ、ウーも彼に「私につきまとわないで」と伝えますが、
それでもしつこくつきまとい続けるんだから、かなりの粘着野郎です。
ウーも警察に通報すればいいのに、彼女は店主からもセクハラされたりしてるので、
こういう変態野郎に慣れてしまっているのかもしれません。美人も大変です。

ある夜の帰宅中も、ジャンにつきまとわれますが、
ジャンから野外スケート場に誘われて、なぜか快諾するのです。
野外スケート場と言えば、2人目の被害者が殺された場所で、
ジャンは鎌をかけたつもりでしょうが、まさか快諾されるとは予想外だったでしょうね。
ボクも彼女が殺人事件に関わっていたとしても、なぜ殺害現場に誘われて受けるのか、
全然わかりませんでしたが、単にスケートがめちゃめちゃ好きなだけかな?
夜の野外スケート場でデートする2人ですが、ウーは人気のないコースに入り、
誘われるようにジャンもついて行きます。
暗がりに誘い込まれたジャンは、ウーを押し倒してキス。
それがキッカケで2人は急激に親しくなるのです。
先日までウーはジャンのことをストーカーとしか思ってなかったはずなのに、
彼女の心境が全く理解できない不可解な展開です。
まだイケメンならわかるけど、ジャンなんて外見も小汚いオッサンなのに…。

別の日には2人で映画館デートをします。
ちょっと面白いのは、そこで3D映画を鑑賞することです。
今や3D映画を好きなのは世界で中国人だけだと言われていますが、
それを目の当たりにしたような感じです。
しかも国産の3D映画のようでしたが、3D映画なんて自国で好き好んで作るのも、
中国人向けに3D版を製作しているハリウッドと、中国だけですね。
(日本もアニメ作品で年に1本くらいは3D映画を製作してますけどね。)
ただ明らかにおかしいのは、本作の舞台が2004年ということです。
『アバター』が公開されたのは2009年なので、それ以前に3D映画は普及してません。
(というか、現行のようなデジタル3D映画はまだ存在もしてません。)
もしかしてあれは3D映画ではなく、ただサングラスで観る変な映画なのかな?

そんなウーとジャンの映画デート中も張り込みを続けるワン刑事は、
自分の他にも2人を尾行している男がいることに気付きます。
首からスケート靴を下げている、見るからに不審な男です。
ワン刑事は男に職質し、とりあえず署に連行することにしますが、
男はワン刑事をスケート靴のエッジで撲殺、…いや斬殺します。
スケート靴って凶器にするとかなりエグくて、ちょっと面白い演出ですね。
しかしこの男が何者なのか、気になるところです。
ボクも一連のバラバラ殺人はウーの犯行だと予想していたので、
こんな真犯人ぽい奴が現れるのは意外な展開でした。

(ちょっとこの辺りの展開が理解できなかったのですが)
ある日ジャンは、陸橋から貨物列車にバラバラ死体を投げ落としている男を発見。
どうやらその死体はバラバラにされたワン刑事の死体のようです。
それを見てジャンはその男が1999年の被害者リアンだと考えます。
計量員であるリアンは計量台で働いているため、
各地の工場に石炭を運ぶトラックに死体を積むことができたと推理したのです。
それを受けて警察は妻ウーに事情聴取すると、彼女も意外とあっさり認めます。
当時、夫リアンは強盗殺人を犯してしまいますが捕まるのを恐れて、
死体と入れ替わり、自分が死んだように偽装したのだそうです。
そんなのバレないはずないと思っちゃいましたが、劇中の説明だと、
1999年当時はまだDNA検査が普及していなかったとのこと。
16年前なんて結構最近だし、もうDNA検査は普及している気がするけど、
中国の科学捜査が遅れているのか、ボクの思い違いか…。
とにかく、バラバラ殺人の犯人は被害者リアンだったわけで、
それならあの被疑者だったトラックの運転手兄弟は一体何だったんでしょうね。
まぁ拳銃なんて持っていたくらいだから真っ当な人間ではないでしょうが…。

死体を入れ替わり、自分の死を偽装することに成功したリアンですが、
当然元の生活に戻ることはできず、ずっと妻ウーの周辺をうろついており、
妻に近づく男を始末して、バラバラにして遺棄していたみたいですね。
ウーが野外スケート場の誘いに乗って、ジャンを暗がりに誘い込んだのも、
尾けている夫にストーカーのジャンを殺させようとしたってことですね。
その時はワン刑事も2人を尾行していたので、実行しなかったみたいですが。
夫リアンの犯行を認めたウーは、警察に協力して夫を誘き出し、
待機していた警察に引き渡そうとしますが、リアンが逃走を謀ったため、やむなく射殺。
なんだか本作の警察って逮捕が下手クソすぎませんかね?
被疑者殺しまくりで、まともに犯人を無傷で逮捕することできないんですかね?
やはり今回も被疑者死亡で事件は幕を閉じます。

…と思いきや、これで完全解決ではありません。
あのバラバラ死体がリアンじゃないとしたら、一体誰だったのか謎が残ります。
普通に考えれば、強盗殺人でリアンが殺した男だったはずですが、
ジャンはそう単純には考えず、まだウーが何か隠していると推理します。
彼は1999年の事件の前に、ウーがクリーニング店の客と揉め、
その客が失踪したという話を思い出し、その客が犠牲者だと考えます。
客が店に預けたままの上着にジャオという男の名刺が入っていたため、
ジャンはジャオに会いに行き、上着の持ち主に心当たりはないか訊きます。
するとジャオはナイトクラブ「白日烟火(白昼の花火)」に案内してくれ、
そこのママが上着の持ち主リーの妻だったみたいです。
リーは愛人を作って出て行ったまま帰って来ないらしくて、
ジャンはその愛人こそがウーではないかと考えます。

ジャンがウーを問い詰めると、彼女はついに白状します。
リーがクリーニング店に預けた革の上着をウーにダメにしてしまうが、
2万8000元もする上等な上着なので彼女は賠償できません。
するとリーから体で払うことを要求されたウーは自宅で彼を殺害し、
夫リアンがその死体をバラバラにして各石炭工場に遺棄したそうです。
その話を聞いたジャンは、ウーを抱きます。
てっきり弱みを握って、自分の女にでもするのかと思いましたが、
その翌日、警察に報せたみたいで、彼女は逮捕されちゃいます。
ちょっとジャンの心境が理解できませんが、一回抱いたら満足したのかな?
その後、ジャンは5年前に別れた元妻のいるダンスホールに行き、
元妻の前で意味不明な変なダンスをノリノリで踊ります。
ジャンという男は何を考えているのか、イマイチよくわからない奴です。
イマイチ理解できないキャラなのに、ジャンを演じるリャオ・ファンは、
この役で銀熊賞(男優賞)を受賞してるんだから不思議です。

逮捕されたウーは実況見分で殺害現場の元自宅に連れて来られます。
すると元自宅の近くのビルの屋上で、ロケット花火や打ち上げ花火などが乱射され、
警察は早々に退散しなくてはならなくなり、消防も出動する事態になります。
そこで本作は幕を降ろすのですが、この花火はどういうオチなんですかね?
何となくジャンがナイトクラブ「白日烟火(白昼の花火)」に絡めて、
ウーに見せるために打ち上げているような気がしますが、
劇中では誰が打ち上げているのか明らかにされないまま終わります。
ボクはジャンの仕業だと思っているものの、ジャンは今回の事件を解決した手柄で、
つまらない保安課から元の刑事課に戻れるかもしれない状況なので、
そんな消防沙汰のつまらない騒ぎを起こす意味がありませんし…。

ラストに大きな謎を残して終わっちゃいましたが、
概ね面白いクライム・スリラーだったので満足しました。
中国映画なのは少し悔しいけど、金熊賞も納得の出来です。
来月には第65回ベルリン国際映画祭が開催されますが、
今年はどんな結果になるのか楽しみです。

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