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トラッシュ! この街が輝く日まで

今年もヒューマントラストシネマ渋谷では、
すでに「未体験ゾーンの映画たち」が始まっているそうですね。
ボクは関西在住なので、シネ・リーブル梅田で始まるのを待つしかないですが、
梅田では開催が2か月も遅れるなんてちょっと悲しい(悔しい)です。
2か月も待ったら、熱も冷めてくるし、ビデオリリース日にも近づくし、
劇場で観なくてもレンタル待てばいいやと思っちゃいます。
なので同時公開の場合に比べ、観る本数が少なくなるのは間違いないですが、
そうじゃなくても、今回のラインナップには疑問を感じずにはいられません。

今年で第四回を数える特集上映「未体験ゾーンの映画たち」ですが、
これは日本で洋画が劇場公開されにくくなってしまった昨今、
海外では評価が高い話題作なのに、日本では劇場公開が難しい作品を集め、
未公開になってしまう前に映画館での観賞機会を設けようと企画されたもの。
…だったはずです。
第一回では17本、第二回では20本、第三回では26本の作品が選出されましたが、
第四回となる今回は一気に49本もの作品が選出されました。
…いや、こんなものは選出したとは言えません。
あまりにも本数が増えすぎで、ロクに選ばず、手当たり次第に上映するだけです。
立ち上げ当初の「海外では評価が高い」という括りも薄くなり、
未公開になって当然と思えるような、明らかなB級作品まで上映されます。
公式コメントでも「つまらない作品もある」なんて開き直っちゃってるし、
例年なら運営を信用して、どれ観ても楽しめるだろうと安心して観に行ったけど、
そんな玉石混交状態では怖くて観に行けませんよ。
しかも選択肢が49本もあるんじゃ、玉がどれなのか見極めるのも困難です。
そして結局、全米3位の安牌『オキュラス/怨霊鏡』しか観に行かない予感です。
特集上映は量より質、上映作品選びの手を抜くんじゃないよ。

さて、今日も映画の感想です。

トラッシュ! この街が輝く日まで
Trash.jpg

2015年1月9日日本公開。
ブラジル・イギリス合作のアドベンチャー・スリラー・ドラマ。

ブラジル・リオデジャネイロ郊外でゴミ拾いをして暮らす3人の少年は、ある日ゴミ山で一つの財布を見つける。その財布には世界を揺るがすとんでもない秘密が隠されていたことから、警察も総力を挙げて捜索に乗り出す。少年たちは「正しいことをしたい」と財布に隠された謎を解明すべく、警察のしつこい追跡をかわし命懸けで真実を追い求めていくが……。(シネマトゥデイより)



まだ今年3本目ですが、今年になって初めて観てよかった思える
面白い作品に出合うことができました。
それが本作ですが、本作はブラジルとイギリスの合作映画で、
リオデジャネイロを舞台に、郊外のゴミ廃棄場でゴミ漁りをして生活する
14歳の少年たちが主人公にした物語です。
なんて言うと、貧困や児童労働の問題を描いた社会派作品だと思われそうですが、
実はそうではなく、かなり娯楽的な青春アドベンチャー映画だったりします。
邦題には「この街が輝く日まで」なんてサブタイトルが付いていますが、
そこからイメージされるような、希望云々を描いた感動作でもないです。
とにかくハラハラワクワクドキドキのとても楽しい作品です。
またポリティカルな面もありますが、子供たちの視点で描かれ、
政治とは全く縁のなさそうな彼らが政治的巨悪を倒す物語で、
子供たちが主人公のポリティカルスリラーという珍しい作品で興味深いです。
以下、ネタバレ注意です。

ある日、ストリートチルドレンのラファエロが、
いつものようにゴミ廃棄場でゴミ漁りをしていると、
ゴミ回収車が運んできた新しいゴミの中から財布を拾います。
財布の中には現金も入っていましたが、そんなに多くはなかったみたいで、
黒人の友達ガルドと一緒に食べようと鶏肉を一羽分買ったらなくなってしまいました。
現金の他には持ち主と思われるジョゼ・アンジェロの身分証と、
ジョゼの娘と思われる少女の写真、アニマル・ロトのカード、
6月17日に印が付いたカード型カレンダー、そして何かの鍵が入っています。
暫くすると警察を財布を捜しに来て、財布を見つけた者には賞金1000レアル出すと…。
警官に不信感を持っているラファエロは、この財布には賞金以上の価値があると考え、
警察に見つからないように下水に住む少年ラット財布を預けようとします。
ラットは下水に住んでいるからラットと呼ばれているだけで本名はガブリエルです。
ラファエロもガルドもラットも孤児で、ゴミ山や下水に住んでいるなんて可哀想ですが、
本人たちはそれが日常なので、そんなに辛そうにもしてませんね。
でもその健気さがブラジル社会の酷さを際立たせています。
リオデジャネイロなんて大都市なのに、底辺はこんな酷い有様なんて…。
でも前述のように本作はそんな社会問題を描いた社会派作品ではないです。

ラットは財布に入っていた鍵が、駅のコインロッカーの鍵だと気付き、
ラファエロとガルドと一緒にロッカーを開けに行きます。
すると中には手紙が一通だけ入っていて、財布の持ち主ジョゼが、
ゴヴァ刑務所に収監されている囚人ジョア・クレメントに宛てた手紙です。
ラファエロたちが教会のパソコンでクレメントについてググってみると、
どうやら弁護士で、反政府デモに参加して逮捕されたみたいです。
ロッカーにはピストルとかドラッグとか、もっとすごいものでも入ってると思ったのに、
手紙が一枚なんてなんだかちょっと拍子抜けでしたね。
しかも政治犯に宛てた手紙なんて、子供の彼らが興味を持つはずもなく、
もう財布を警察に渡して、賞金でゲーム(ドンキーコング)でも買おうかと相談します。
しかし警察に渡す前に、ラファエロが警察に連行、…いや拉致られるのです。
ゴンズ刑事は端からラファエロとガルドが財布をネコババしたと勘付いて、
財布を回収するため実力行使に打って出たのです。
しかしゴミ漁りで生活しているゴミ廃棄場の住人なんてかなりの人数がいるのに、
そこから少年2人が怪しいと睨むなんて、けっこう凄腕刑事です。
しかし惜しむらくは、彼は悪徳刑事で暴力刑事だと言うことです。

ガルドはラファエロが警察に捕まったとジュリアード神父に助けを求めます。
人道的な神父は、すぐに警察署に行き、ラファエロに会わせてほしいと頼みますが、
警察はここには未成年はいないと一点張りで、全く取り合ってくれません。
神父はすでにラファエロは警察に殺されたに違いないと諦めて帰宅します。
でも実際にこの警察署にはラファエロはいませんでした。
彼は連行途中で、拘束されたままパトカーの後部座席やトランクに入れられ、
そのパトカーを暴走させられるという拷問を受けていたのです。
暴走パトカーに閉じ込められる拷問なんて斬新すぎる拷問ですが、
シートベルトを付けていないので小さな彼は右に左に弾き飛ばされ、
全身を強打して血まみれになります。
こんな変な拷問を演出したのは、大人が少年を流血するほど殴るような拷問だと、
映画倫理的に問題があると考えて自粛したからなのかも。
まぁ暴走パトカーの方が、普通の暴力よりも痛々しい気もしますが…。
そんな拷問にも屈せず、財布のことを頑なに話さないラファエロ。
ゴンズ刑事は口を割らすのを諦め、部下に彼を始末するように命じて去ります。
しかし部下も悪徳警官とはいえ人の子、さすがに子供を殺すのは忍びないのか、
ボロ雑巾のようなラファエロを路上に放置して行ってしまい、彼は辛くも助かります。

翌日、発見されて教会に運び込まれたラファエロ。
治療をしてくれた神父からも財布を警察に渡した方がいいと助言されますが、
むしろ前日のことで、財布の価値(重要性)を再認識したラファエロは、
徹底的に財布について調べることにし、ガルド、ラットも協力してくれます。
ラファエロは拷問の時にゴンズ刑事がサントスという市長候補の議員の名前を
言っていたのを思い出し、サントス議員が財布を捜している張本人だと考え、
ラットと一緒にサントス議員の邸宅に侵入し、親切な庭師から、
財布の持ち主ジョゼはサントス議員の腹心だったが、
市長選の選挙資金と賄賂の帳簿を盗み姿を消した、という話を聞きます。

一方、ガルドはロッカーの手紙の宛て名であるクレメンテに話を聞くために、
クレメンテの孫と偽り刑務所に面会に行くのです。
財布の持ち主ジョゼはクレメンテの甥で、彼らは腐敗した社会を改革するため
活動をしているみたいで、クレメンテは逮捕されてしまったが、
ジョゼは汚職政治家サントスに近づき、政府や企業の汚職情報を探し、
ついに汚れた選挙資金と賄賂帳簿を手に入れたのでした。
ようやく話の全体像が掴めてきましたね。
手紙に同封された写真の裏に、そのカネと帳簿の隠し場所の暗号が書かれていて、
クレメンテの持つ聖書を参照することで暗号が解けるようになっています。
しかしその聖書は、クレメンテが収監された時に刑務所に取り上げられており、
看守に賄賂1000レアル払わなければ取り戻せません。

ラットは教会の金庫から1000レアルを拝借し、看守と取引。
聖書を手に入れて、スラム街の一角でラファエロと一緒に解読を始めます。
写真の暗号と照らすと、カウ、ライオン、ホース、ベアと4つの単語が浮かびます。
どれも動物で、動物といえば財布に入っていたアニマル・ロトですね。
動物の名前をアニマル・ロトと照らすと、今度は4つの二桁の数字が浮かびます。
2人もボクも何を示す数字かわかりませんでしたが、
それを見たガルドが即座に電話番号だと気づき、すぐに電話してみると、
聖フランシスコ墓地に繋がったため、墓地まで行ってみることに。
ところが墓地はあまりに広くて、彼らは行き詰ってしまいますが、
ラファエロは財布にあったカレンダーの印「6月17日」を思い出し、
6区画の17番の墓に何か秘密があるのではと考えます。
どんどん伏線(アイテム)が回収されて、どんどん秘密に迫っていく、
とてもワクワクさせられる展開ですね。
しかし17番の墓は、ジョゼの幼い娘ピアの埋葬されている墓で、
暗号がただ単に娘の墓の場所を記していただけなのかとラファエロは落胆。

ところがそこに埋葬されているはずのピア本人が現れるのです。
なんでも彼女は父ジョゼからこの墓地に隠れているように言われていたそうですが、
ジョゼ自身はその後警察に追われ、財布をゴミ収集車に放り込んですぐ捕まり、
拷問の末に死んでしまっています。
それはもう数日前の話になりますが、つまりピアは数日間も、
ずっとひとりで墓地に隠れていたことになりますよね。
たぶん10歳未満の幼い女の子なのに、その間の食事とかどうしてたのかな?
というか、絶対に帰らぬ父を待ち続けるなんて不憫すぎる子です。
それはさておき、ピア本人が生きているということは、
ピアの墓に埋葬されているものは一体何なのかということになります。
(ピアは真っ白いワンピース姿だったので、一瞬幽霊かと思っちゃいましたね。)
ラファエロはガルドとラットと一緒に再び墓を調べようとしますが、
そこにゴンズ刑事がやってきて、彼らに銃を突き付け、墓を暴くように命じるのです。
スラムに暗号メモをそのまま置いてきちゃったのが不味かったみたいで、
ゴンズ刑事もそのメモを見つけて、墓地の電話番号と気付いたようです。

墓を暴くと、棺の中から案の定、サントス議員の大量のカネと帳簿が出てきます。
用済みのラファエロたちは口封じのためにゴンズ刑事から撃ち殺されそうになるが、
ゴンズ刑事は背後にいた幽霊のようなピアに気付いていなかったみたいで、
背後から彼女に石でガツンとやられ倒れ、すかさずガルドたちにフルボッコ。
ラファエロは拳銃を奪い取り、逆にゴンズ刑事に突き付けますが、
やっぱり殺すのはよくないと思ったのか拳銃は下ろし、
カネと帳簿を持って、ついでにピアも連れてその場を去り、
ゴミ収集車に乗ってゴミ廃棄場に帰ります。
その後、ラットは神父に勝手に拝借した1000レアルを返し、ついでに帳簿も渡し、
神父がその帳簿を公開したことで、サントス議員の汚職や警察の所業が公に。
帳簿にはオリンピック協会への多額の賄賂も記されていましたが、
来年行われるリオ夏季五輪の招致にも、かなり賄賂を使っていたってことですね。
本作はフィクションだし、五輪招致に賄賂が使われたかどうかはわかりませんが、
こんなことをネタにしたら、ブラジル人は怒っちゃうんじゃないのかな?
いや、賄賂なんて当たり前の国すぎて、公然の事実だと思ってるのかも。

帳簿は有効に使われたわけですが、カネの方の使い方が…。
なんとラファエロとガルドは死ぬ思いをして見つけたカネを、
ゴミ山の上からばら撒いてしまうのです。
当然ゴミ廃棄場の住人たちは我先にと必死に拾いますが、
なんだか勿体ないというか、もっと有意義に使ってほしかったです。
まぁそんな汚いカネは資金洗浄しないとまともに使えないだろうから、
ラファエロたちが持ち続けても持ち腐れだったかもしれませんが…。
それにその拾った金でゴミ漁りで生活していた住人たちも、
その酷い生活から脱却する糸口を掴めたかもしれないし、
ここで育ったラファエロらは一応故郷に恩返ししたということになるのかな。
その後ラファエロは、ガルド、ラット、ピアと一緒に、ラットの故郷である漁村に行き、
魚を獲りながら幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
ただ、ピアがちゃんと父ジョゼの死を理解したのかだけは気になります。

底辺中の底辺であるストリートチルドレンの子たちが、
正義を全うするために絶対に勝ち目がなさそうな巨悪と戦い、
国を変えてしまうという物語で、超痛快で面白い作品でした。
もしかしたら2015年の映画ベスト10入りは確実かもと思えるくらいです。
…いや、ボクは子供が主人公の映画だとちょっと甘く判定しちゃうので、
話半分くらいに思ってくれた方がいいかも?

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