ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

バンクーバーの朝日

フジテレビが大晦日に紅白の裏で、2008年に劇場公開したアニメ映画
『ONE PIECE THE MOVIE エピソードオブチョッパー』を放送するとか…。
映画ファンとしては大晦日なんて大事な時に映画を放送するなんて、
とても素晴らしい決断だと言いたいところですが、選択が悪すぎます。
たしかに『ONE PIECE』は人気があるし、長編劇場版も前二作は大ヒットしました。
しかし今回放送する作品は総興収が『映画 妖怪ウォッチ』の2日分程度の失敗作。
それもそのはず、一度テレビ放送されたものをリメイクした作品ですからね。
それをちょっとだけ新カットを追加して大晦日にぶつけてくるなんて、
諦め以外の何物でもなく、そんな消化試合に映画を登板させるなんて、
視聴者はもちろん、映画を舐めてるとしか思えず、不愉快極まりないです。
しかもこの作品には、みのもんたが声優として出演していますが、
わざわざそんな作品を選ぶ放送倫理的な問題もどう考えているのか。

どうしてもアニメ映画を大晦日に放送したいのなら、せめて地上波初登場を選ぶべき。
『ドラゴンボールZ 神と神』か『怪盗グルーのミニオン危機一髪』がよかったです。
フジテレビは本当にダメなテレビ局になっちゃいましたが、
大晦日までこの調子では来年にも終焉(してほしい)です。
まぁクイズ番組を放送するテレ朝もかなり終わってますが…。

ということで、今日はフジテレビ映画の感想です。
今年は例年になくフジテレビ映画が少なかったですが、本業が危うすぎて、
映画製作に力を注ぐ余裕がなかったのかもしれません。

バンクーバーの朝日
バンクーバーの朝日

2014年12月20日公開。
戦前、カナダに実在した日本人野球チームを題材に描いたドラマ。

1900年代初めのカナダ・バンクーバー。貧しい日本から新天地を目指してカナダにやって来た日本人たちは、想像を絶する激しい肉体労働や貧しさに加え、差別にも苦しんでいた。製材所で働くレジー笠原(妻夫木聡)やケイ北本(勝地涼)、漁業に携わるロイ永西(亀梨和也)らは野球チーム「バンクーバー朝日」に所属し、最初は白人チームにばかにされながらも、次第に現地の人々にも認められていく。(シネマトゥデイより)



うーん、『舟を編む』の監督の最新作だし、野球映画ということで、
かなり期待して観に行ったのですが、どうも期待ハズレだったかも…。
というか期待していたものとは違って、素直に楽しめなかった感じです。
なにを期待していたかといえば、弱小チームが斬新な戦略によって強くなる
『マネーゲーム』のようなスポ根でしたが、実際は移民差別がメインの物語で…。
『ヘルプ』や『それでも夜は明ける』のような公民権運動映画の、
日本人版を観ているような感じで、スポ根のような痛快さはほとんどありません。
鑑賞後感も非常に重たく、こんなはずじゃなかった…という思いに苛まれます。
人種差別を描いたスポーツ映画としては『しあわせの隠れ場所』や『インビクタス』、
『42 世界を変えた男』などが思い出され、それらはただ重たいだけでなく、
ちゃんとスポーツものとしての痛快さも兼ね備えていたのですが、
本作にはスポーツものとしての楽しさがないんですよね…。
というか、肝心の野球の描写が酷いです。

カナダで日本人移民のために作られた日本人チーム「朝日軍」は、
カナダ人リーグに参加させてもらうことになりますが、
カナダ人チームのデカい白人選手に力負けにて、万年最下位です。
カナダ人審判による不公平な判定で、ボールなのにストライクを取られたりもするが、
どうせ打てたとしても、威力がありすぎて、まともに前に飛ばすこともできません。
しかしある試合で打席に立った主人公レジーが、危険球を咄嗟にバットで防ぐと、
意図しないバントとなり、あわや出塁できそうになるのです。
そこでレジーは閃き、次の試合もバントで出塁し、盗塁を重ねて1点取ります。
白人選手はデカいので小回りが利かず、守備は牽制球が苦手なようで…。
チームメイトもレジーに倣い、バントで出塁して盗塁で点を取る戦術で、
朝日軍は連戦連勝のチームになるのです。
その戦術は「頭脳野球」と称され、地元紙からも賞賛されるのです。

機動力(盗塁)と小技(バント)を重視する戦術、スモールボールのようですが、
本作で描かれている頭脳野球は、バントと盗塁しかしない戦術です。
いくらなんでもこんな戦術で勝てるはずありません。
毎回ノーヒットで勝利していることになりますが、そんなことはあり得ません。
朝日軍は打てないからバントしているだけなので、
スクイズや犠牲フライもできないわけで、点が取れるとは思えません。
『もしドラ』並みの酷い戦術で、机上でも明白な空論です。
おそらく朝日軍がバントや盗塁を多用する頭脳野球が得意という史実から、
勝手にバントと盗塁しか出来ないチームと歪曲して描いたのでしょう。
実際の朝日軍は、長打力はなくても、それなりにヒットも打てたはず。
当時ほどではないにしても今の日本人だって外国人選手とは体格差があるけど、
日米野球やWBCを見ても全然敵わないどころか、
むしろ日本人チームが勝っちゃうこともありますからね。
それに本作の描き方だと、日本人選手の方が体力ありそうにも思えます。
なぜならこのリーグは職業野球ではないので、選手は本業を持っていますが、
製材所で肉体労働する姿を見ても、怠け者のカナダ人労働者と違って
日本人は頑張って働いているし、これでカナダ人より体力がないなんてあり得ません。

まぁ百歩譲ってバントや盗塁は効果的だったとして、それでチマチマ点を稼いでも、
相手に長打や連打でそれ以上の点を取られたら勝てません。
だからピッチャーが重要ですが、本作は投球に関してはほとんど触れません。
朝日軍は0-20なんてスコアで負けるようなチームでしたが、
バンド・盗塁重視の頭脳野球を始めた途端に、なぜか投手力も上がり、
2点で抑えることもあるのですが、投手力が上がった理由は説明されません。
ずっとエースのロイが投げていたので、特に補強されてもいないはずですが…。
しかもこのピッチャーは、優勝が決まる最後の試合でサヨナラヒットを打つんですよ。
誰も打てなかった白人から劇中で唯一ヒットを奪うのがピッチャーなんて滅茶苦茶です。
というように、とにかく野球の描写がいい加減で酷いです。
きっと野球を知らない人たちによって製作からだろうと思います。
上地雄輔や亀梨和也など、キャストだけ野球経験者を揃えてもダメです。
むしろまともな野球を描かないのなら無駄で、
それなら野球できなくてもまともな役者を起用した方がいいです。

仮にも野球が題材なのに、そんないい加減な野球描写では、
ドラマ部分にも説得力がなくなるのも当然ですが、
実際、本作の主題である当時のカナダの移民差別、日本人差別についても、
描き方が中途半端で、全く心に響きません。
それもそのはず、当時の日本人差別なんて今殊更描くべきことではないですから。
黒人差別は未だに根深い問題なので、公民権運動映画は意味があるでしょうが、
別に現在の日本人は、カナダ人から差別を受けているわけではないし、
そんなことを今更掘り返しても誰得です。
むしろ日加関係は極めて良好だので、中韓の抗日映画のように、
そもそもカナダ人を悪く描くことも出来ないし、するべきじゃないです。
なので公民権運動映画のような苛烈な差別描写は無理なので、
差別を主題にすること自体に無理があります。
憎たらしいカナダ人と同じくらい、親切なカナダ人も登場するし、
終盤でレジーの父がカナダ人警官に撃ち殺されなかったのも、
強制収容所の様子などが描かれないのも、カナダに配慮してのことでしょう。
そんな配慮をしていたら中途半端な演出になるのは当然です。

差別や迫害に遭いながらも頑張り、人々の希望になった野球チームの物語ですが、
黒人初のメジャーリーガーを描いた『42』と比べても、差別の受け方がかなり温いし、
むしろ日本人チームをリーグに参加させてくれるだけでも寛大だし、
その上、姑息にも思える頭脳野球を賞賛してくれるんですから、
カナダ人って日本人に対して優しいなって思っちゃいますよ。
むしろ日本人の方が「移民のくせに図々しい」と思えるくらいです。
日頃の鬱憤を野球の勝利で晴らすなんて、まるで韓国人みたいで見苦しいです。
スポーツに政治を持ち込むんじゃないよと思います。
(カナダ人はそれをわきまえているので、日本人チームでも賞賛します。)
ボクは安倍政権の移民政策にも断固反対ですが、移民は差別…、
いや区別されて当然ですし、ボクも移民や在日は日本人とは区別します。
本作の日本人移民は「カナダで三年働けば、日本で一生楽に暮らせる」と騙され、
一攫千金を夢見て海を渡ったわけですが、無知とはいえ自業自得。
よそ様の国で暮らすなら、多少の不便は我慢して当然だし、
本作ではその多少の不便程度の差別や迫害しか描かれていません。

そして本作の最大の問題点である誤魔化しは、
この日本人野球チームのメンバーは日本人ではないということを伏せていることです。
彼らは移民二世であり、日系カナダ人で、日本人としての意識などありません。
(カナダの国籍取得方式は出生地主義なので、彼らの国籍はもちろんカナダです。)
主人公の名前も、はじめは礼二かなと思ったけど、レジーだったし、
彼の妹はエミー、チームメイトもロイ、フランク、トムなど、完全に外国名で、
日本人として生きるより、カナダ人に同化したいと考えている人たちです。
しかしそれが明確に描かれているのはエミーだけで、
他の二世たちは出来れば日本に帰りたがっているように描かれたり、
日本人としてカナダ人に認められたいと願っているかのように描かれます。
本当はカナダ人になりたいだけだし、日本にも帰りたくないはずですが、
日本人客向けに、その移民二世の本心を誤魔化して描いてしまっているため、
本作は移民についてちゃんと描けているとは言えません。
主題であるはずの移民差別を描いた社会派ドラマとしても中途半端、
スポーツ映画としても中途半端では、感動的な作品になるはずもないです。

ただ、一点だけ素晴らしいかったのは美術ですね。
なんでも足利市にオープンセットを立てて撮影したそうですが、
本当にカナダでロケしたんじゃないかと思うほど、
当時のバンクーバーの日本人街や野球場の雰囲気が再現されています。
(もちろん本物を見たことはないので、印象だけですけど…。)
かなりいい出来で、日本映画にしては気合が入った美術だなと感心しました。
それだけに内容が伴わなかったのが、ますます残念ですが…。
あと、別に素晴らしくはないが、本上まなみや宮崎あおいなど人気俳優が、
「この役必要か?」と思うようなチョイ役で無意味に出演しているのも面白いです。
登場した時は「絶対何かの伏線だ」と思ったのに、別に大した絡みもなく、
クライマックスの試合でも単なる観客だったのは意外でしたね。

面白い野球映画を期待していたので、とても残念でしたが、
年明けからも『アゲイン 28年目の甲子園』『KANO 1931海の向こうの甲子園』と
立て続けに野球映画が公開されますが、そちらには期待したいです。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/1440-e295ff40
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad