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オオカミは嘘をつく

今日はオスカー候補とも噂される注目の映画『フューリー』の公開日で、
新しい映画好きのボクとしては、公開初日に観たいところでしたが、
来週月曜日の12月1日が映画の日なので、そこで観ることにしました。
毎月1日をファーストデイとして映画1100円で観れる映画館は多いですが、
12月1日はファーストデイではなく「映画の日」なので、1100円ではなく1000円です。
日本(神戸)で初めて映画が一般公開された記念日なので、
普段あまり映画を観ない人も、この日くらいは映画を観に行きましょう。
ボクも今日『フューリー』を観ちゃうと、映画の日に観るものがなくなるので、
『フューリー』は12月1日まで我慢することにしました。
まぁ今日観た映画を12月1日に観てもいいかもしれないけど、
今日観た映画はシネリーブル梅田で上映していたので、
金曜日は会員サービスデイで1000円で観られるんですよね。
それなら映画の日にしか1000円で観られない映画を12月1日に観た方がいいです。

ということで、今日はシネリーブル梅田で1000円で観た映画の感想です。

オオカミは嘘をつく
Big Bad Wolves

2014年11月22日日本公開。
イスラエル発のバイオレンススリラー。

イスラエルのとある森で、少女がむごたらしく暴行された果てに殺される事件が起きる。その容疑者として浮かび上がったのは、中学校で宗教学を教えているドロール(ロテム・ケイナン)。刑事のミッキ(リオル・アシュケナージ)が責任者として彼の尋問にあたるものの、証拠がなく釈放されてしまう。さらに行き過ぎた取り調べが何者かによって録画され、動画サイトにアップされてしまったことでミッキは交通課に異動になってしまう。しかし、ミッキはドロールが犯人だと思っていて……。(シネマトゥデイより)



本作はイスラエルで製作されたヘブライ語映画ですが、
イスラエル映画はなかなか日本で公開されないこともあり、
ボクも観るのは本作が生涯二本目となります。
一本目は第66回ゴールデングローブ賞で外国語映画賞を受賞した
アニメ映画『戦場でワルツを』でしたが、やはりそれくらいの賞を獲らないと、
日本で公開されるのは難しいでしょうね。
他にも劇場公開されずDVDスルーになった『ザ・マッドネス 狂乱の森』も鑑賞しました。
(ポルト国際映画祭で批評家賞を受賞したから、日本でもリリースされたのかな。)
その時は知らなかったのですが、イスラエルの映画産業はまだまだこれからで、
『ザ・マッドネス』がイスラエル発のホラー映画だったそうです。(本当か?)
アハロン・ケシャレスとナボット・パプシャドの監督コンビの処女作だったみたいですが、
本作もそのコンビによる第二回監督作品だったみたいです。

本作は第40回サターン賞のインターナショナル映画賞を受賞しており、
日本でDVDリリースされるには十分な実績ですが、
日本で劇場公開される実績としてはちょっと弱いかもしれません。
本作が日本で公開される運びになったのは、第18回釜山国際映画祭で、
日本でも大人気のクエンティン・タランティーノ監督が
「今年のベスト映画だ」と絶賛したことが話題になったからだと思われます。
前作『ザ・マッドネス』をそれほど面白いと思わなかったボクも、
あのタランティーノ監督が絶賛するなら観てみようと思いましたからね。
でもタランティーノ監督は毎年のように、その年のベスト10を発表してますが、
彼が本作を観た2013年のベスト10には、本作は入ってないんですよね…。
面白い映画を観たらすぐ大袈裟に絶賛しちゃう人なのか、
それとも釜山国際映画祭がベスト10発表後だっただけかな?

で、いざ観てみたのですが、なるほどタランティーノ監督の好きそうな
過激なバイオレンスとウィットに富んだユーモア満載のスリラー映画です。
ボクもバイオレンスとユーモアは大好きで演出的には素晴らしいと思いましたが、
ストーリーがちょっと意外性に欠けるかなと思ってしまいました。
「たぶんこうなるだろう」と思ったオチがズバリ的中してしまったので…。
しかしそれは本作に問題があるわけではなく、
例のごとく、ネタバレ同然の宣伝方法にあると思います。
本作に『オオカミは嘘をつく』なんて邦題を付けた奴は無粋すぎます。
以下、ネタバレ注意です。

ある日、廃屋で3人の少年少女が隠れん坊をするのですが、
ひとりの少女ミカが靴だけを残して姿を消してしまいます。
暴力警官ミッキは宗教学の教師ドロールを誘拐の疑いで捕まえ、
廃屋に連れ込み電話帳でぶん殴るなどして違法な尋問しますが、
ドロールは一貫して無実を主張します。
その日は仕方なく解放するしかなかったミッキですが、
その荒っぽい尋問の様子が目撃者によってYouTubeにアップされ、
彼は署長から停職処分を言い渡されるのです。
…が、実はこれは署長の粋な計らいで、警察にいたら違法な尋問が出来ないから、
警察を離れて好きなようにドロールを尋問してこい、という意味でした。
イスラエルって情勢的にアレだから、警官も暴力的な印象がありますが、
本作のように容疑者に対する暴力を是とする警官が多そうですよね。

そんな折、警察に「少女の居場所を教える」という匿名の電話があり、
警官が支持された林に行ってみると、椅子に拘束された少女ミカの遺体が…。
衣服は着ているもののパンツはズラされ、どうもレイプされたみたいです。
そして首が斬り落とされており、頭部は見つかりません。
これはR18指定も当然の、かなりショッキングな遺体ですね。
ミカの父親ギディも現場を見て愕然とします。
ただ娘がレイプされたり殺されたことも父親としてもちろんショックでしょうが、
それより何より、頭部が見つからないことに憤っているみたいです。
ギディはユダヤ人ですが、ユダヤ教は死者が審判の日に復活すると考えるので、
五体満足な状態で土葬すると決まっていると聞いたことがありますが、
だからギディが娘の頭部に固執するのかもしれません。

停職中の警官ミッキは、犬の散歩中の容疑者ドロールをスタンガンで気絶させ拉致。
別にドロールはどうでもいいけど、犬にまでスタンガンを使っちゃうのは可哀想でした。
ミッキはドロールを人気のない林に運び、自分の墓穴を掘らせ、
ロシアンルーレットで頭部の隠し場所を自白させようとします。
それでもドロールは「私はやってない」の一点張りです。
そこに2人の後を尾けていた被害者の父親ギディがやってきて、
2人をエンピでぶん殴り気絶させ拘束、自宅の地下室に閉じ込めるのです。
ギディはドロールを拷問し、娘の頭部の場所を自白させるために、
わざわざこの洞窟のような地下室のある家を購入したのですが、
家の周りはアラブ人の住居が多いらしく、治安が悪いのだとか。
イスラエルのユダヤ人とアラブ人は歴史的に険悪ですからね。
イスラエル映画らしい設定で興味深いです。

ギディはすぐにミッキを解放し、一緒にドロールを尋問することになります。
ドロールを拷問し自白させるという目的はギディもミッキも同じですからね。
でも拷問のやり方にはかなり温度差があって、
ギディの計画した拷問は暴力警官ミッキも躊躇してしまうほど過激なものでした。
被害者ミカは犯人に鎮静剤入りのお菓子を食べさせられ、眠ったところをレイプされ、
その後、手の指を折られて、足の爪を剥がされて、首をノコギリで斬られたそうで、
ギディは容疑者ドロールが自白しない場合は同じ目に遭わせようと計画しています。
もちろんレイプはしたくないので、指を折るところから始めるのですが、
まず最初の一本をミッキが折ることになるのです。
ミッキは躊躇しながらも素手でドロールの指を一本折りますが、
もう見ているだけで痛い映像でしたね。
次はギディの番となり、ギディはハンマーと取り出して…。
指を折るというか、指を砕く気満々で、更に痛々しい映像になる、
と思いきや、ギディのケータイが鳴り、彼は電話するために地下室を出て行きます。

地下室に残されたドロールはミッキに「私は無実だ」と助けてくれるように懇願。
ドロールから「私も娘を持つ父親なのに、少女を殺すはずない」と泣きつかれ、
自分も娘を持つ父親であるミッキも動揺するのです。
そしてギディが地下室に戻って来て、ドロールの指をハンマーで砕き始めると、
ミッキは堪らず「やりすぎだ」と制止してしまうのです。
ギディは怒り、ミッキをぶん殴って気絶させ、手錠で柱に拘束します。
その後、ギディはドロールの足の爪を剥がし始めます。
まぁ被害者の受けた拷問の順番通りとはいえ、爪を剥がされるなんて、
指を折られることに比べたら大したことなく、拷問の順番間違っているように思いますが、
更にこの後、鎮静剤入りのケーキをドロールに食べさせるのです。
順番通りにするなら、鎮静剤入りお菓子は最初に食べさせないと…。
それにしても、ギディは娘が殺されて頭部が見つからずに怒っているはずですが、
なんだかすごく楽しそうにケーキ作りをしていましたね。
お菓子作りなんて出来そうな感じのオッサンじゃないのに意外でした。
キッチンタイマーも顔に似合わず妙に可愛らしいデザインで、笑っちゃいます。

その後、家の呼び鈴が鳴り、ギディが玄関に行くと、彼の父親が訪れたみたいで…。
ギディはけっこう老けてますが、(60歳は確実に超えてると思いましたが、)
まだ45歳という設定だったみたいで、まだ両親ともに健在だったみたいです。
地下室で拘束されている2人は、訪問者に気付いてもらおうと物音を立てたため、
ギディの父親は息子が容疑者を拷問していることに気が付きます。
はじめは息子の行為に懸念を示した父親ですが、この子にしてこの親ありで、
息子が拷問を止めないとわかるや、「私も手伝おう」と言い出します。
しかも「火責めはもう試したか?」とかなりノリノリで、
自らバーナーを手にドロールの胸元を焼きます。
ドロールの皮膚が焦げる映像がリアルで、ボクもゾッとしましたが、
ギディの父親は「バーベキューのようないい匂い」と満足げで…。
ギディもかなりのサイコだと思ったけど、父親は更に上を行くサイコですね。

火責めにはドロールも耐えられず、頭部の隠し場所を自白します。
といっても、これは時間稼ぎのための嘘の隠し場所で、
ギディが探しに行っている間に脱出しようと、事前にミッキと相談していたことです。
案の定、嘘の隠し場所を聞いたギディは、その場所に頭部を探しに行きますが、
今はギディの父親もいて、彼がその間地下室で2人を見張るので、
せっかく相談した計画も実行できませんね。
と思いきや、父親は食後の常用薬を飲む時間になったため、
何か食べ物はないかと家探しをはじめ、例の鎮静剤入りケーキを発見。
鎮静剤が入っているとは知らずに食べてしまい、意識を失います。
その隙にミッキは隠し持っていた釘で手錠を外し、地下室を脱出。
一緒に逃げる約束だったドロールのことは「足手まとい」だと置いて行きます。
というか、ミッキ自身もまだドロールが犯人ではないという確信はないようです。
その後、嘘の隠し場所に行き、嘘だと気付いたギディは急いで地下室に戻り、
もう自白させるのは無理だと考え、ノコギリでドロールの首を斬り始め…。

ギディの自宅から脱出したミッキは、逃走中にアラブ人と出会い、
咄嗟にハンズアップするのですが、夜道でアラブ人に会うのは、
イスラエルのユダヤ人にとってはかなり恐ろしいことのようですね。
でもそのアラブ人はとても親切な人で、ミッキにiPhone4sを貸してくれます。
ミッキは同僚の警官に連絡を取り、ドロールが捕まっていることを通報しますが、
逆に同僚から、自分の娘が行方不明になっていると聞かされるのです。
ミッキは慌てて地下室に戻り、ドロールに娘の居場所を聞こうとしますが、
時すでに遅く、ドロールはギディに首を斬られて絶命してしまい…。
結局、被疑者死亡で真相は藪の中…。

…と思いきや、ミッキの同僚ラミがドロールの実家を家宅捜索し、
彼は何も発見することができなかったものの、実は実家には隠し部屋があり、
そこで死んでいるミッキの娘の映像が映され、本作は幕を閉じます。
つまりドロールは本当に少女ミカを殺した小児性愛殺人犯だったのです。
というのが本作のオチだったわけですが、普通なら予想外なオチで、
結末の読めない面白い作品になったかもしれません。
ロシアンルーレットや指砕き、更には火責めまで受けて自白しないドロールを見れば、
ひねくれ者でもない限り、「彼は本当に何も知らないんじゃないか」と思うし、
「他に犯人がいるに違いない」と普通は思うでしょうからね。
ボクもいつもならそう思うはずですが、本作はドロールが犯人と確信していたため、
全く予想通りのオチで、面白さも半減してしまいました。
その原因は、前述のように本作の宣伝方法にあります。

まず最大の問題点は邦題ですが、
劇中でドロールはギディからオオカミに例えられるのですが、
「オオカミは嘘をつく」なんて邦題は「ドロールは嘘つき」と言っているようなもの。
こんなものは無粋極まりないネタバレ邦題ですよ。
さらに「予想を裏切る衝撃のラストに(略)」というキャッチコピーも無粋。
こんなことを言われたら予想を裏切るオチであることが予想できてしまうので、
結局予想通りになってしまうけど、これは本作に限ったことではないが、
宣伝でどんでん返しを予告するのは、いい加減やめてほしいものです。

本作の主題は「暴力の是非」であり、それをちゃんと観客に伝えるためには、
容疑者は最後までグレーでないといけないはずです。
本当に犯人かわからないのに、復讐のために暴力に訴えていいのか、
もし容疑者が無実だったらどうするつもりだ、という善悪を揺さぶる内容なのに、
容疑者が犯人だとネタバレしちゃってたら、大抵の観客は容疑者に対する暴力も
自業自得だと思うし、ギディ親子の行為も正当化できてしまい、
暴力の是非なんて考える余地はありません。
ミッキがドロールを第一容疑者だと思った理由も一切描かれてないのは、
その理由によって観客にドロールが黒か白か先入観を持たせないためであり、
ゴダールをグレーな存在として描くための演出だったのに、
無粋な日本の配給会社がその意向を無視してネタバレ邦題付けるなんて、
作品の価値を下げるも同然の行為であり、深く反省してほしいです。

タランティーノ監督が絶賛するのも頷ける面白い映画でしたが、
ドロールが犯人と知ってしまった貴方にはオススメできません。

関連作の感想
ザ・マッドネス 狂乱の森

コメント

Re: タイトルなし

突飛すぎる説だとは思いますが、否定できるものではなく、
解釈のひとつとしてはありで、ミステリーとしては面白いです。

ただ、本作はミステリーではなくスリラーです。
ボクが無粋だと言っているのは、邦題が真相を示しているからではなく、
邦題が真相を仄めかしてしまっていることです。
正直ミステリーじゃないし、真相がどうだろうとどうでもよく、
邦題で「ドロールが犯人」と客に先入観を与えていることが無粋なのです。
客はドロールが犯人かどうかわからない状況で、
ミッキの暴力を見せられるというのがスリラーである本作の醍醐味。
仮にドロールが犯人じゃなかったという明確なオチだったとしても、
ボクは同じように無粋な邦題だと批判すると思います。

  • 2015/01/15(木) 23:27:46 |
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  • [ 編集 ]

Re: タイトルなし

ボクも端から本作をスリラーと決めつけて観ているわけではなく、
素直に観た上でスリラーと判断しただけです。
むしろこれをスリラーと感じない方が素直な見方とは思えません。
ただし、別に素直な見方をする必要もありません。

本作はイスラエル映画で、邦題は日本の配給会社が勝手に付けています。
(配給会社は配給権を買う時に邦題を付ける権利も買います。)
なのでイスラエル人監督がこの日本題を意図して付けたわけではなく、
監督がタイトルでネタバレを狙っていたなんてことはあり得ません。
映画には色々な楽しみ方があるのは同意するし、どう観るかは客の自由ですが、
この邦題は配給会社がその選択肢をひとつ潰していることが無粋なのです。

  • 2015/01/16(金) 22:21:22 |
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  • BLRPN #-
  • [ 編集 ]

最後の最後、死ぬ間際にメガネ男がうっすら笑ってるのが、本当のオチですね。

  • 2015/10/17(土) 00:51:59 |
  • URL |
  • 無記名 #-
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Re: タイトルなし

うーん、すみません。
メガネ男が誰なのか覚えてません。
登場人物のメガネ率高かった気がするけど…。

  • 2015/10/20(火) 18:53:34 |
  • URL |
  • BLRPN #-
  • [ 編集 ]

最後のシーンを見た時その警官の子なんだろうなとは思ったけど隠し部屋か隣の家の部屋かわからなかった。
警官の子供がいなくなったのはいつなんだろう。バレー教室からということはそんなに前じゃないとしたらもうあの教師は地下室だったんじゃないのかなと思ったり。もう一度見てみないとわからないかな。

  • 2016/09/04(日) 23:03:24 |
  • URL |
  • 無記名 #-
  • [ 編集 ]

無記名さんへ。

私も一昨年に劇場で一回観た切りなので、
ほとんど内容は忘れてしまったので、
もう一度観てみないとわからないです。
申し訳ないです。

  • 2016/09/06(火) 22:07:38 |
  • URL |
  • BLRPN #-
  • [ 編集 ]

サスペンスではないのですね^^;
確かに放題を見て、ドロールが犯人なんだろうな、と思って観ました。ドロール犯人容疑までの経過も無く、そのくせに全員が暴力的で残酷。。
最後のシーンでドロール犯人でいいんだよね…と確認してたらここにたどり着きました。タランティーノは好きだけど、これは浅過ぎて面白くなかった。

  • 2016/09/30(金) 12:40:45 |
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  • 無記名 #-
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