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嗤う分身

ボクの職場の所長が、毎日のように館内放送を私物化し、
就業時間中に勝手に自分の好きな曲を掛けるのが辛いです。
特に「ザ・フォーク・クルセイダーズ」が好きみたいで、
毎日聴かされるのですが、ボクはそんなカビ臭い曲に全く興味ないし、
むしろ大嫌いなので、もうノイローゼ気味で仕事の効率もガタ落ち…。
直属の上司にはそれとなく「やめさせろ」と伝えているのですが、
所長は最っもお偉いさんなので、誰も文句が言えないみたいで…。
「帰って来たヨッパライ」のようなクソ寒いコミックソングや、
「イムジン河」のような朝鮮のプロパンガンダ曲、
「悲しくてやりきれない」のような気が滅入る曲を職場で流すことは、
ハラスメント行為に当たらないんですかね?
そこ以外は比較的いい人なんですけど…。

ということで、今日はカビ臭い昭和歌謡満載の外国映画の感想です。

嗤う分身
The Double

2014年11月12日日本公開。
ジェシー・アイゼンバーグ主演の不条理スリラー。

要領が悪く存在感の薄いサイモン・ジェームズ(ジェシー・アイゼンバーグ)は周囲からまともに相手にされず、向かいの部屋に住む職場の同僚ハナ(ミア・ワシコウスカ)を望遠鏡でのぞくパッとしない毎日を送っていた。そんなある日、彼と生き写しのような新人ジェームズ・サイモン(ジェシー・アイゼンバーグ)が入社してくるが、職場では誰もジェームズの存在に驚かない。容姿は同じでも性格は全然違うジェームズの登場により、サイモンは追い詰められていき……。(シネマトゥデイより)



本作はロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーの小説『分身』を、
イギリスが映画化した作品ですが、ボクは原作を読んだことがなかったためか、
ちょっと難解な印象を受けてしまいました。
いや、実際はストーリーもわかるし、それほど難しい主題でもないのかもしれないが、
ロシア文学原作、ドストエフスキー原作なんて言われると、
何か暗示的な主題でもあるのかと思って難解に感じちゃいますね。
たしかに、いわゆる分身ものなので、全く同じ外見の登場人物がいるし、
ちょっとややこしくて、混乱しがちなのは間違いないです。
それに近年では『俺俺』や『バイロケーション』なんかもそうでしたが、
分身ものは不条理な内容であることが多く、やはり難解になりがちです。
本作は比較的娯楽性の高い作品なので、よくわからないなりに楽しめましたが、
よくわかってないので感想を書くのは難しいです。

とにかく世界観からして非常に独特です。
レトロモダンな雰囲気で、そこが何処なのか、何時なのかもわかりません。
その世界観の中でも、否応なく気になってしまうのは、
全編で使われる挿入歌が、なぜか昭和歌謡ってことですよね。
ロシア文学原作のイギリス映画で、しかも日本人なんて全く登場しない世界観なのに、
なぜ昭和歌謡が使用されているのか、不思議を通り越してすでに不条理です。
主に主人公サイモンの行きつけのカフェのジュークボックスから流れていますが、
なぜかサイモンは昭和歌謡が好きみたいですね。
使われる昭和歌謡は坂本九の「上を向いて歩こう」を除けば、
「雨の赤坂」「草原の輝き」「さよならのあとで」「ブルー・シャトウ」と、
グループサウンズでお馴染みブルー・コメッツの60年代の歌ばかりです。
その偏りから、制作サイドが昭和歌謡に精通しているわけではない気がします。
それに不条理感を醸すためのシュールなボケとして使われているので、
あまりポジティブな印象で使っているわけではない気がしますね。
(たぶん変な曲だと思いながら使っているはず。)
しかも本編は昭和歌謡ばかりですが、なぜかエンドロールで流れる主題歌は、
韓国人歌手キム・ジョンミの韓国語の歌で…。
製作サイドは日本と韓国の区別もついてないのかも?
…いや、昭和歌謡ばかりで韓国人が火病らないように華を持たせたのかな?
以下、ネタバレ注意です。

主人公のサイモン・ジェームズは出勤途中でカバンが電車の扉に挟まり、
取れなくなってしまって、会社の入館に必要な社員証を紛失してしまいます。
会社の受付に事情を説明するが「入館許可書に記入しないと入れない」の一点張り。
サイモンはすでに勤続7年なので、顔パスでもいいくらいなのにと不満を感じます。
はじめはこの受付が、サイモンを舐めているから嫌がらせしてるのかと思いましたが、
もしかすると本当に彼のことを覚えていないのかもしれません。
というのも彼は異常に影が薄いのです。
人間からも相手にされませんが、ボタンを押してもエレベーターが動かないなど、
機械からも無視されるほど存在感がないんですよね。
電車で扉に挟まれたのもそのせいかもしれませんね。

それにしても彼の勤め先は、どうやら情報処理システムの会社みたいですが、
いったいどんな業務内容なのかまったくわかりません。
アナログなのかハイテクなのか微妙な謎の機械で作業して、とてもシュールです。
大佐と呼ばれる謎の人物が経営しているみたいで…。
サイモンは同僚に比べても仕事が早く、なかなかのやり手っぽいのですが、
影が薄いためか上司のパパドプロス氏からまったく評価されておらず、
彼の不良娘メラニーの世話係という意味不明な雑務を押し付けられています。
実力はあるのに要領が悪くて全く評価されないなんて可哀想な人ですが、
意外とこういう人って世の中に多いような気がします。

サイモンはコピー係(?)の女性社員ハナに片想いしていますが、
彼女はサイモンのアパートの向かいのアパートに住んでいるので、
夜な夜な望遠鏡で彼女の部屋を覗いたり、彼女の出したゴミを漁ったりと、
真面目な男かなと思ってたら、完全なストーカーですね。
でもハナにはもうひとりストーカーがおり、それは彼女の上の階に住む男でしたが、
その男は彼女に「気持ち悪い」と言われ、次の日に窓から飛び降り自殺します。
その自殺の瞬間をサイモンは望遠鏡で見ていて…。
うーん、ハナってストーキングしたくなるほど魅力的な女性だと思わないけど、
ボクがハナを演じるミア・ワシコウスカが好みじゃないだけなのかな?
たとえストーカーと言えども、自分の言い放った言葉で人が自殺したのに、
あまりショックを受けている様子でもないし、やはりあまり好きなタイプじゃないかも。

ある日、ある男が系列会社から転勤してきます。
名前はジェームズ・サイモンで、主人公サイモン・ジェームズと苗字と名前が逆で、
非常にややこしいですが、なんと顔もソックリで…。
…いや、まったく同じ顔で、サイモンは驚きます。
しかしなぜか同僚たちはそのことにまったく気が付いていないようです。
…いや、気付いていないというか、意に介していないみたいで、
サイモンが同僚ハリスに「ジェームズって誰かに似てると思わない?」と聞くと、
ハリスは「たしかに君はジェームズに似ているな。だから何?」って感じです。
せめて「ジェームズは君に似ているな。」と言ってほしかったところですが、
この発言からもわかるように、すでに転勤初日から新参者ジェームズの方が、
存在感の薄い古株サイモンよりも、同僚から認知されているみたいです。

ジェームズはサイモンと違ってとにかく目立ち、優秀な人材として評価されます。
でも実際はサイモンの方が遥かに仕事が出来るのですが、
ジェームズは社交的で要領がいいため、同僚や上司からウケがいいのです。
どこにもいますね、仕事もできないくせに愛想だけはよく、上司から可愛がられる奴。
仕事はできるのに自己主張しないため、評価されないサイモンとは正反対ですが、
サイモンの奥ゆかしさって、ちょっと日本人に通じるところがあると思います。
サイモンが昭和歌謡を好きなのは、彼が日本人っぽいことを暗示しているのかも、
…というのは、ちょっと考えすぎかな?

サイモンは目立つジェームズの登場でますます存在感が薄くなるし、
プレイボーイでいけ好かない奴だと思いますが、ちょっと話してみると、
そんなに悪い奴じゃなさそうだと感じ、親しくなるのです。
むしろこうなりたいと思う自分像が現れたようなもので、憧れすら芽生え、
憧れのジェームズの友達になれて嬉しいくらいです。
なんだかわかるようなわからないような、複雑な心境ですね。
ジェームズはサイモンに自分のふりをさせ仕事をさせ、
代わりに自分はサイモンのふりをして上司の娘の世話係をします。
(やっぱり同僚もジェームズとサイモンの見分けがつかないんですね。)
優秀なサイモンに自分の仕事をさせるので、ジェームズの成績は上がり、
彼はますます評価を高めるのです。

それだと一方的にジェームズばかりが得をして、サイモンにメリットがないですが、
プレイボーイのジェームズがハナとデートすることになった時には、
サイモンに自分のふりをしてデートに行っていいよと言ってくれるのです。
それで喜ぶサイモンもどうかと思いますが、やはりデートは上手くいかず、
途中でジェームズとバトンタッチすることに…。
その途端、デートは順調になり、ジェームズはハナをお持ち帰りし、
結局、憧れの女性までもジェームズに取られちゃったわけですね。
ちなみにジェームズの自宅は、ハナの上の階の自殺した男の部屋です。

ジェームズは憧れの女性どころか、サイモンの仕事まで奪います。
サイモンが大佐に見てもらおうと必死で書き上げた回帰分析のレポートを、
なんとジェームズが横取りし、自分が書いたものとして上司に提出します。
そのレポートの素晴らしい出来により、ジェームズは部長に昇進。
逆にサイモンは上司から「君も彼を見習いたまえ」と言われる始末で…。
さすがに頭にきたサイモンが、憎きジェームズの部屋を覗き見していると、
なんとジェームズは上司の娘メラニーを部屋に連れ込んでいて…。
それを見たサイモンは、すぐにハナに電話を掛け、
ジェームズのふりをして「会いたいから部屋に来てくれ」と伝えるのです。
ジェームズの浮気現場をハナに見せて、修羅場になればいいと考えたのですね。
しかし人を呪わば穴二つ、逆にサイモンが窮地に立たされることになります。

ハナはジェームズの浮気を疑い、彼の友達であるサイモンに真相を聞きますが、
サイモンは事実を告げることができず、誤魔化したのがバレて、
ハナから嫌われて「あなたは蛇よ」とめちゃめちゃ嫌われてしまうのです。
(ストーキングしていたこともバレて、なおさら嫌われます。)
なぜ事実を告げられないかと言えば、ジェームズが自分とメラニーのベッド写真を、
サイモンとメラニーの写真と偽り、上司に渡すと彼を脅しているからです。
そのせいでサイモンはジェームズの言いなりになるしかありません。
そんなもの「これは自分じゃない」と突っぱねればいいと思うのですが、
当のメラニーはジェームズをサイモンと思っているから無理なのかな。
しかし、その後、会社のデータベースからサイモンの記録が削除され、
いよいよ本当に存在しない人扱いを受けるようになり、ついにサイモンはぶち切れ、
同僚たちの前でジェームズを「偽物」と非難するのですが、つまみ出されて…。
ジェームズも代わりに仕事をさせていたサイモンが解雇されたら
仕事ができないのがバレて困るんじゃないかと思うのですが…。

サイモンは「僕は幽霊です」という遺書を残し、アパートの自室から
飛び降り自殺しようとするのですが、その時、向かいのアパートをふと見ると、
ハナが部屋で倒れているのを発見し、自殺はやめて彼女を慌てて病院に運びます。
彼女はジェームスの子を妊娠していましたが、ジェームズの浮気に悩み、
大量の睡眠薬を飲んで自殺を図りましたが、病院で一命を取り留めるも流産。
サイモンは彼女に感謝されるどころか「止めないからあなたが自殺してよ。」と言われ…。
心無い一言で、前にも一人自殺者を出しているのに、まったく懲りない女ですね。

そんな折、老人ホームに預けていた母が亡くなったと連絡があり、
サイモンが葬儀に行くと、ジェームズが彼のふりをして息子として参加しており…。
ジェームズがサイモンの立場を乗っ取ろうとしているように感じますが、
ジャームズの方が人気者で社会的地位も高いのに、
なぜ冴えないサイモンに取って代わろうとするのか不思議です。
激怒したサイモンはジェームズの顔面を殴打すると、なぜか自分の鼻から血が…。
どうやらお互いに相手が受けたダメージを自身も受けるようで、
やはりジェームズは単なる似た人物ではなく、サイモンから発生した怪異のようです。
それなら偽物である怪異が本物に取って代わろうとするのも頷けます。
ただ結局ドッペルゲンガーだったというのは、当たり前すぎるオチで、
もっと面白い真相を期待していたから、ちょっと拍子抜けしました。

サイモンは自分の受けたダメージをジェームズも受けることを確認し、
寝ているジェームズを手錠で拘束し、再び飛び降り自殺することにします。
自分が死ねば、当然ジェームズも死ぬので、道連れにしようと考えたのかな。
ところが落ちる途中でネット状の庇にバウンドし、重傷を負うものの自殺は未遂に。
サイモンはハナに見守られながら救急車で病院に搬送されることに。
これではジェームズも死なないから、計画失敗だなと思いましたが、
確信はないけど、どうもジェームズは死んだような印象を受けました。
計画失敗だと思ったけど、これが計画通りだったのかもしれませんね。
飛び降りで放っておけば死ぬ重傷を負いますが、自分は搬送されて助かるが、
人目に付かない場所で拘束されたジェームズはそのまま死ぬってことなのかも?
それでもなんだか違和感を覚える理屈ですが、
ダメージは共有するが、回復は共有しないって設定ならあり得ますね。
サイモンは搬送中、なぜか救急車に同乗している大佐に「君は特別だ」と言われ、
めでたしめでたし(?)です。

ちょっとややこしくて難解な気もした上に、ヒロインも微妙だった本作ですが、
けっこう楽しく観れたのは、意味不明ながら多用される昭和歌謡のインパクトと、
サイモンとジェームズを演じたジェシー・アイゼンバーグの好演のおかげかな。
まったく正反対のキャラを説得力を持って演じ分けられる
アイゼンバーグの演技力の高さはなかなかすごいです。
彼は『Batman v Superman: Dawn of Justice』でレックス・ルーサーを演じますが、
発表時はミスキャストにもほどがあると思ったけど、彼ならできるかもしれませんね。

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