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マダム・マロリーと魔法のスパイス

『トイ・ストーリー4』の製作が発表されました。
当初、3作目で完結すると明言されていた『トイ・ストーリー』長編シリーズですが、
三作目は本当に名作で、完璧な有終の美を飾っていたので、
正直、前言撤回の続編製作には懸念を覚えてしまいます。
ただ好きなシリーズには違いなく、三作目終了後の短編も佳作揃いで、
やっぱりシリーズ再開は嬉しかったりも…。
それにディズニー・ピクサーは、ただ人気シリーズというだけで安易に続編は作らず、
あくまで内容本位で、ちゃんといいものが出来る確信があるときだけ製作するので、
きっと三作目にも勝るとも劣らない素晴らしい構想が出来ているんだと思います。
期待してしまいますが、公開は2017年になるみたいで、まだかなり先の話です。
その間にも『ファインディング・ニモ』の続編『ファインディング・ドリー』を含め、
3本ほどピクサー作品の公開が予定されているので、楽しみは尽きませんね。
とりあえずは、来月公開のディズニーアニメ『ベイマックス』に期待しましょう。
日本のアメコミヒーローチームを題材にした作品で、前評判も上々です。

ということで、今日はインドを題材にしたディズニー映画の感想です。

マダム・マロリーと魔法のスパイス
The Hundred-Foot Journey

2014年11月1日日本公開。
ヘレン・ミレン主演のヒューマンドラマ。

インドのムンバイでレストランを営むカダム家の次男として生まれたハッサン(マニシュ・ダヤル)は、名料理人の母から絶対味覚を受け継ぐ。だがある晩、彼らの店は選挙絡みの暴動により全焼し、母親まで失ってしまう。失意の父(オム・プリ)は子供たちを連れてヨーロッパに移住し、南フランスにある自然豊かな山間の小さな町にたどり着く。(シネマトゥデイより)



本作はドリームワークス製作のディズニー配給映画ですが、
ディズニー映画は先月公開の『ミリオンダラーアーム』に続き、
またしてもインドネタの作品になりましたね。
中国が日本を抜いて世界第二位の映画消費国となったため、
最近のハリウッドメジャー各社は中国市場を睨んで映画作りをしていますが、
ディズニーは更に先のインドに目を付けているような気がします。
まぁインドでのヒットを目論んでいるかどうかは別にしても、
インド絡みの映画が面白くなりがちなのは確かです。
マサラムービーの雰囲気が加味されて、とても楽しい作品になります。
本作もとても楽しくて面白い作品に仕上がっています。
なんだか児童向けファンタジー小説みたいな邦題が付いているのは残念ですが、
とても素敵な大人のコメディ映画です。
でも美味しそうな料理が沢山出てくるので、空腹時に観ると辛いかも。
お腹が鳴って恥ずかしい思いをしないように、何か食べてから観た方がいいですね。
以下、ネタバレ注意です。

こんな邦題だからヘレン・ミレン演じるマダム・マロリーが主人公なのかなと思ったら、
主人公はマニシュ・ダヤル演じるインド人青年ハッサンです。
ハッサンはムンバイでレストランを経営するカダム一家の次男で、
母譲りの料理の才能があり、レストランでも料理人として働いていますが、
ある選挙の時に暴徒化した落選候補支持者により、レストランは放火され、
逃げ遅れた母も亡くなってしまうのです。
いやー、コメディ映画とは思えない悲しい導入でどうなることかと思いました。
その後、カダム一家はヨーロッパに亡命し、ロンドンでレストランを始めるも、
ハッサン曰く「ロンドンの食材には命がない」らしく、
あまり満足のできる料理は作れなかったみたいで…。
イギリス料理はクソ不味いって話はよく聞くけど、なるほど、それが原因か。

とりあえず一家は新天地を求めて、ヨーロッパを車で旅することに。
ところがボロ車による長旅のせいで、スイスとフランスの国境付近の山道でエンコ。
立ち往生しているところをフランス人女性マルグリットに助けられ、
彼女の住む田舎町サン=タントナン=ノブル=ヴァルに行き、
彼女の家でとても美味しい食事まで御馳走になります。
さすがフランス料理はイギリス料理とは違って食材に命があり、
こんな田舎町の家庭料理でもプロのインド料理人を唸らせるほど美味いのか、
…と思ったら、マルグリットは普通の家庭の主婦ではなく、
町にあるミシュラン一つ星レストラン「ル・ソール・プリョルール」のスーシェフでした。
さすがにフランス料理の本場と言えども、あんな美味しそうな料理が、
普通の家庭で出てくるはずありませんね。

美味しい食材も豊富な土地で、町が気に入ったカダム一家のパパは、
元レストランだった居抜き物件を買い、レストラン「メゾン・ムンバイ」を経営することに。
なんだかアパート名みたいな変な店名だと思いましたが、
メゾンはフランス語で「家」とか「店」って意味らしいので普通ですね。
しかしなんとそこは「ル・ソール・プリョルール」の真向いで、
前入居者のレストランも競争に負けて撤退したみたいで、かなり無謀な出店です。
しかもハッサン曰く「フランス人はインド料理なんて食べない」そうで…。
フランス人が「我がフランスの料理は世界一ィィィ」と思っているのは間違いないけど、
別に普段はインド料理もフランス料理もマクドナルドも食べると思いますけどね。

むしろ脅威に感じるべきは高級フレンチ「ル・ソール・プリョルール」の方で、
目の前にリーズナブルな大衆レストランが出来たら大打撃でしょう。
オーナーのマダム・マロリーもかなり警戒しているみたいで、
「メゾン・ムンバイ」の開業前にメニューを調べ、使う食材を市場で買い占めるのです。
なんとか隣町まで買い出しに行き、無事開業することできましたが、
有名店のくせに、なんて姑息なことをするのか…。
意外と撤退したレストランも味で負けたのではなく、嫌がらせに屈しただけでは?
しかし満足に食材を調達できなかったのが功を奏したところもあり、
急きょインド料理に入手しやすいワインを使用したりすることで、
フランス人に馴染みやすい味になったかもしれませんね。

買占め工作にも負けず無事開業できたものの、初日お客さんは全く来ません。
そこでパパはインド流に店の前で通行人に対し呼び込みを始めるのです。
美人の娘にも呼び込みを手伝わせ、お客さんは徐々に増えていきます。
その状況が面白くないのはマダム・マロリーで、店の音楽がうるさいだの、
飼育されている鶏に予防接種してない疑いがあるだのと、クレームを付けます。
パパも彼女の妨害工作に憤慨していて、ふたりは火花バチバチですが、
ライバル店だけど料理人同士ハッサンとマルグリットは親しくなり、
ハッサンは彼女から5つの基本ソースなどフランス料理を教えてもらうのです。
そうしているうちに恋も芽生えちゃったりして…。
セップ茸を獲っている時に急にハッサンが彼女にキスするのですが、
あまりに急な展開でビンタでもされないかと思ったけど、彼女も満更じゃないようで…。
もうちょっとふたりが親密になる過程を丁寧に描けていたらよかったけど、
本作はロマコメというわけでもないし、そこは端折っても問題ないかな。

パパは妨害工作の仕返しに市場から鳩を買い占めてしまいます。
その日は「ル・ソール・プリョルール」に大臣が食事に来ることになっており、
鳩のロティを出すつもりだったマダム・マロリーは困ります。
結局、鶏で代用することにしますが、鳩くらい隣町で買えばいいのにね。
ハッサンはパパの行為を申し訳なく思い、お詫びの気持ちを込めて、
鳩のロティを作って、マダムの店に持って行くのですが、
それを一口食べた(舐めた)マダムは、不味いと言わんばかりに皿ごとゴミ箱に…。
本当は美味しかったけど、プライドが邪魔をして認められなかったようです。
人の行為を無下にするとは、まったくホントに意地悪婆さんです。
…というか、食べ物を粗末にしちゃダメ、鳩のロティが勿体なかったです。
あとでスタッフが美味しくいただいていることを信じています。

フランス建国記念日の夜、愛国心溢れる「ル・ソール・プリョルール」のシェフが、
「メゾン・ムンバイ」の塀に「フランスはフランス人のもの」とスプレーで落書き。
さらに店内に火炎瓶を投げ込み、放火します。
これは愛国心ではなく、単なる行き過ぎたライバル心の結果かもしれませんが、
移民政策が問題となっているフランスでは人種差別も激しいみたいですから、
フランス人シェフの移民に対する憎悪も込められていた気がしますね。
それにしても放火はやりすぎで、特に放火で母を亡くしているカダム一家には
あまりに酷すぎる仕打ちで、絶対に許すことはできません。
これにはさすがの意地悪婆さんマダム・マロリーも激怒し、シェフを呼び出します。
シェフとしてはマダムに褒めてもらえるくらいに思っていたかもしれませんが、
「放火はシェフの仕事じゃないでしょ」と怒られ、解雇されます。
はじめて彼女がいい人に思えましたが、本来なら解雇ではなく通報すべきですね。

マダム・マロリーはひとりで落書きを消し、その件が切欠で少し関係が改善されます。
そんなマダムに、ハッサンは「オムレツを作りたい」と申し出るのです。
オムレツ作りは「ル・ソール・プリョルール」の採用試験の方法です。
自分の店が暫く営業できないから、修業ついでに雇ってもらおうと思ったのかな?
でもハッサンも火事で両手を火傷しているので、自分で料理は出来ず、
自分のレシピでマダムに料理してもらうことになります。
オムレツなんてレシプより腕に左右される料理な気がするけど、それでいいのか?
料理にはうるさいマダムですが、そのオムレツ作りの手つきを見る限りでは、
自分自身はそれほど料理が得意ではないみたいですね。
母から受け継いだスパイスを駆使し、見事に美味しいオムレツを作り、
ハッサンは採用試験に合格しますが、当然パパは許しません。
しかしマダムが座り込みを行い、パパは結局折れることになります。

パパの他にもハッサンが「ル・ソール・プリョルール」で働くのを良く思わない人が…。
それは意外にもマルグリットでした。
シェフを目指すスーシェフの彼女は、ハッサンがライバルになると思ったのでしょう。
ライバル店で働いていた時は親しかったのに、同じ店で働く仲間になったら
逆にライバルになるんだから面白いものですね。
でも現シェフが誰かはわかりませんが、あの放火魔がシェフだった店なので、
なんだかシェフになるのも楽勝な大したことない店に思えますが、
それでもミシュラン一つ星ですからね。
ボクはミシュランから星をもらうような高級店で食事したことはないので、
正直「タイヤメーカーの格付けなんて…」と思っていますが、
レストランにしてみたらミシュランの星は一大事みたいで、
マダムも二つ星を取ることに必死で、ハッサンを雇ったのもそのためです。
そしてその念願叶い、ハッサンの作るインドのスパイスを使ったフランス料理で、
「ル・ソール・プリョルール」は二つ星を獲得するのです。
マルグリットはさぞ悔しかろうと思いましたが、意外にも一緒に喜んでくれて、
いつの間にか関係も改善されたみたいで…。
やっぱり本作はもう少しふたりの関係を丁寧に描くべきな気がします。
むしろマダムとパパの関係の推移の方がきちんと描かれてますからね。

ハッサンは星を取るシェフとして、パリの名店から引き抜きが殺到。
富や名声にあまり興味なさそうな彼なら「ル・ソール・プリョルール」に残るか、
あるいは「メゾン・ムンバイ」戻って店を盛りたてることに尽力するに違いない、
…と思いきや、意外にも引き抜きに応じてしまって…。
別に名声に惹かれたわけではなく、フランス料理に対する探究心が、
彼を駆り立てたのだと思われますが、家族や恋人よりも料理修行を選ぶなんて、
家族をやたら大事にするイメージがあるインド人としては少し不思議です。
しかも修業場所に選んだ二つ星の名店が、なんと分子料理の店で…。
液体窒素なんかも使ったりして科学で作る料理である分子料理ですが、
ボクはこんなものが伝統のあるフランス料理だとは到底思えないし、
美食に飽きた食通どもの悪ふざけが高じた、ただ斬新なだけの創作料理で、
まともなシェフの作るものではないと思っています。
そんな店にフランス料理の修業でハッサンが働くのは残念です。
それにパリなんて大都会では、ロンドン同様に命ある食材の調達は難しそう。
まぁ分子料理は素材が何かわからなくなるほど食材を分解したりするので、
食材本来の良さを引き立てるという考え方とは真逆の料理法だと思うから、
大都会向きの料理かもしれませんけどね。

分子料理にもインドのスパイスを取り入れることで、更に斬新な料理を生み出し、
一躍時の人となったハッサンですが、やはり方向性に疑問を持つように…。
マルグリットに電話して「君のセップ茸料理の味が忘れられない」と言うと、
彼女は「セップ茸は土地が一番大切だからね」と言います。
更に見習いのインド人料理人が食べていた愛妻弁当を分けてもらい、
久しぶりにインドの家庭料理を食べて感涙。
彼は家族のいるサン=タントナン=ノブル=ヴァルに帰ることを決意します。
やはりどこで作っても同じな工業製品同然の分子料理なんて、
故郷の伝統的な料理の味に勝てるはずないです。
ただどうせ帰るなら、「メゾン・ムンバイ」ではなく本当の故郷ムンバイじゃないか?
と思ったけど、やはりマルグリットの存在は大きかったのでしょうね。

彼はマリグリットと共同でマダム・マロリーから「ル・ソール・プリョルール」を譲り受け、
「この店で三ツ星を目指す」と宣言して、めでたしめでたしです。
まぁハッサンが分子料理から足を洗ってくれて、比較的ボクの望む結末には近いけど、
別に「ル・ソール・プリョルール」を譲り受けなくても、
「メゾン・ムンバイ」で三ツ星を目指せばいいんじゃないの?
ミシュランは日本でも星をばらまいており、もちろんフレンチレストランだけじゃなく、
日本料理店も星をもらってますが、それならインド料理だってもらえるはずです。
インド人のハッサンにはインド料理を取り入れたフランス料理よりも、
フランス料理を取り入れたインド料理のコックになってほしい気がします。
「ル・ソール・プリョルール」のシェフはフランス人マルグリットに任せて、
お互い切磋琢磨して三ツ星を目指す方がいいんじゃないかな?

ちょっと批判的とも取れる感想になっちゃいましたが、
本当に心温まり、お腹が空く、楽しい映画でした。
あー、タンドリーチキンが食べたい…。

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