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ボーグマン

現在開催中の第26回東京国際映画祭で
第一回サムライ“SAMURAI”賞を受賞した北野武監督の
受賞記念トークイベントでの発言が話題になっています。
簡単に言えば日本映画界に対して痛烈なダメ出しをしたのですが、
北野武監督の主な批判点は以下の2点です。
「アカデミー賞外国語映画部門の日本代表は日本アカデミー賞の推薦が必要。」
「日本アカデミー賞最優秀賞は大手(東宝、東映、松竹、たまに日活)の持ち回り。」
その発言に対し、世間では賛同する声が多いですが、
少しでも日本映画を知っていれば、如何にいい加減な発言かは一目瞭然です。

本年度のアカデミー賞外国語映画部門日本代表は、
東京テアトル配給の『そこのみにて光輝く』で、大手は関係ないです。
たしかに昨年度は、日本アカデミー賞も受賞した松竹の『舟を編む』が選ばれたけど、
2年前はスターサンズ、3年前も東京テアトルの作品が選ばれており、
ボクなんかはむしろあえて大手を除外しているのではないかと疑ってしまいます。
日本アカデミー賞の会員は大手の社員が多いため、大手が有利なのは事実ですが、
過去10年の最優秀作品賞の受賞回数を振り返ると、
松竹4回、東宝3回、東映1回、他2回で、もし持ち回りだったら東映が可哀想すぎます。
(そしておそらく本年度も松竹が受賞し、2年連続になるはずです。)

北野武作品が日本であまり評価されないのは、
別に映画会社の力関係のせいではなく、内容のせいでしょう。
『アウトレイジ』シリーズのような賞向きじゃないバイオレンス映画で
最優秀作品賞を受賞できるはずないし、日本代表に選ばれるはずないです。
むしろ北野武監督は海外で過大評価されすぎなんじゃないのかな?

ということで、今日は過去に北野武監督も『座頭市』で受賞した、
シッチェス映画祭最優秀作品賞受賞作の感想です。
本作はアカデミー賞外国語映画部門のオランダ代表にも選ばれました。

ボーグマン
Borgman.jpg

2014年10月25日日本公開。
第46回シッチェス映画祭グランプリに輝いたオランダ製スリラー。

森の中に潜んでいたボーグマンが、武装した男たちに追われて街に逃げ込んだ。高級住宅地で暮らす幸せな家庭に住み着いたボーグマンは、仲間を呼び寄せて住民たちをマインドコントロールしていく。(映画.comより)



本作は現在テアトル系映画館で開催中の特集上映
「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2014」の中の1本です。
今年は第46回シッチェス映画祭出品作の中から6本が選出され、上映されていますが、
期間中に6本全部観るのは無理っぽいので、半分の3本だけ観ることに。
その3本に何を選ぶかですが、やはりシッチェス映画祭グランプリ作品である
本作を選ばないわけにはいかないでしょう。
本作とグランプリを競ったコンペ部門には28作品がノミネートされ、
ボクは『009 RE:CYBORG』『オンリー・ゴッド』『記憶探偵と鍵のかかった少女』、
そして今回選出上映された『キョンシー』と本作の5作を観ることができましたが、
正直、グランプリで最も優れているはずの本作が最もイマイチだったように思えます。
本作は権威のある第66回カンヌ国際映画祭のパルムドール候補でもあったので、
その威光で受賞したのではないかと勘繰ってしまうほどです。
(まぁ『オンリー・ゴッド』もパルムドール候補だったのですが…。)
とはいえ、パルムドールを受賞した『アデル、ブルーは熱い色』よりは面白く、
国際映画祭のグランプリの選考基準って、本当にわからないものです。

何がイマイチだったかといえば、意味が全くわからないことです。
わからないというか、意味なんてもともとないと思われます。
気の毒なホームレスの男に一晩だけ離れを貸したら、
いつの間にか家も家族も取られてしまったという、
まさに「庇を貸して母屋を取られる」系のスリラーです。
ホームレスの男がただの人間ではないことは薄々わかるのですが、
男が何者なのか、そして彼の目的が何なのかが、
終ぞ明らかにならないまま終わっちゃうんですよね。
「庇を貸して母屋を取られる」系スリラーなんて別に珍しくもないですが、
男の正体と目的が気になって最後まで観ちゃうものの、
正体も目的も明らかにならないまま終わるんだから唖然とします。
観客を煙に巻いてやろうという、監督の悪意が感じられますね。
印象としては不条理スリラー『ファニーゲーム』に近いので、
それが好きな人は本作も気に入るかもしれませんが、
『ファニーゲーム』に比べるとインパクトが弱く、なんだか中途半端。
どうせやるならもっと徹底的に不条理にしないと退屈です。

あまり理解できたとは言えないので、感想を書くのも難しいですが、
以下、ネタバレ注意の感想です。

冒頭、牧師を含む武装した3人の男が、森に分け入り地面を尖った棒で突き刺します。
どうやら地下に誰かが潜んでいるみたいで、彼らはそいつを殺すつもりです。
地下に潜んでいた男カミエル・ボーグマンは、間一髪逃げ出し、
別の場所に潜んでいる仲間ルドウィッヒとパスカルにも声を掛け、人里に降ります。
ボクは理由はどうあれ、人を殺そうとするなんてとんでもないことなので、
この時点では牧師たちが悪者じゃないかと思いました。
でも物語が進むにつれて、カミエルたちが異常なことがわかり、
牧師たちは彼らを退治しようとしていたのだろうと思うようになりました。
でもこの冒頭のシーン以降、牧師たちは一切登場しません。

人里に降りたカミエルは目についた民家を訪ね、「風呂を貸してほしい」と頼みます。
しかし土まみれの見ず知らずの男を簡単に家に上げるはずなく、門前払いに…。
カミエルはまた別の家にアタックするのですが、今度はその家の主人リシャルトに、
「奥さんを知っている」と言って上がり込もうとするのです。
あまりにしつこいので、リシャルトはブチ切れ、カミエルをボコボコにして締め出します。
奥さんもカミエルのことは知らないと言っているし、彼も奥さんの名前を間違うので、
嘘を付いていると思うのですが、「マリナ」を「マリア」と間違っていただけなので、
もしかしたら本当は知り合いなのに、奥さんが嘘をついてるのかなとも思いました。
でもカミエルは「アントン」と偽名を名乗っていたので、
何かよからぬことを企んでいそうな気がしました。

奥さんマリナは旦那にボコボコにされたカミエルを気の毒に思い、
旦那の留守中に彼を家に上げ、風呂と食事を与え、一晩だけ離れを貸します。
しかし翌日、マリナがカミエルに出て行くように言いに行くと、
彼は「旦那の暴力がこの程度で許されると思うな。あと数日看病しろ。」と言って、
離れに居座り続けるのです。
それどころか勝手に母屋に入って来て、子供たちと遊んだりもします。
ある夜、マリナは家の中を2匹の大型ハウンド犬が徘徊していることに気づきます。
どうやらその犬はカミエルの仲間ルドウィッヒとパスカルだと思われ、
彼らが人間ではなさそうだということが薄々わかりましたね。
ただその犬が彼らなのかも最後まで明言されないので、
本当に人間ではない決定的な証拠にはなりませんが、
この後、カミエルは明らかに人間ではないことを行うのです。

カミエルは寝ているマリナに全裸で乗ることで、彼女に悪夢を見せることが出来ます。
旦那からDVを受ける悪夢ですが、マリナはそれが現実だと思い込み、
旦那を避けるようになり、逆にカミエルを信頼するようになります。
悪夢を見せるというよりも、洗脳しているという感じでしょうか。
カミエルは堂々と家に入ることが出来るように、庭師をこっそり殺害し、
新しい庭師として雇われるように計画します。
殺した元の庭師はカミエルの仲間ブレンダとイロンカが湖に沈めます。
どうやら彼らは5人組みたいですね。
旦那が新しい庭師の面接を行うのですが、カミエルが採用されるように、
仲間のルドウィッヒとパスカルがやって来た応募者を殺害するのです。
その応募者を林の中に放置するのですが、まだ息があったみたいで…。
その重傷の応募者を発見したのは、マリナの幼い娘イゾルテでしたが、
なんと彼女は虫の息の応募者を頭を岩で殴り、息の根を止めてしまいます。
どうやらカミエルに完全に洗脳されてしまっていたみたいです。
そしてカミエルはまんまと新しい庭師になり、客間に泊まり込むようになります。

彼らはイゾルテ以外の2人の子供にも洗脳を施すのですが、
どこかの穴蔵に連れて行き、手術みたいなことをして洗脳します。
そんなに簡単に洗脳できるなら、マリナや旦那も洗脳手術すればいいのに、
なぜかそうしないんですよね…。
でも旦那には手術しない代わりに、背中に×印のタトゥーを施します。
それが何を意味するのかも全くわかりません。
マリナにはいつも通り悪夢を見せ、旦那に恨みを持つように仕向け、
ついに彼女は「旦那を殺してほしい」とカミエルに頼むのです。
カミエルは庭で仲間とシュールなバレエの劇を行い、そこに家族を招待した後、
旦那のワインに毒を盛って殺害。
その後、マリナも毒殺し、庭の池に沈めて埋め立ててしまうのです。

これで邪魔者はいなくなり、家を占拠できたと思ったら、
カミエルは子供たちを連れて、そそくさと家を出て行ってしまいます。
牧師たちに地下の住処を潰されたため、新しい住処を探していたのかと思ったけど、
彼らの目的は家ではなかったみたいですね。
この感じだと目的は子供たちを洗脳して浚うことみたいですが、
それが目的ならわざわざ庭師として家族に取り入る必要もなかった気が…。
子供を浚うだけなら両親ももっと簡単に殺せたはずだし、
マリナが旦那を殺したいと思うように仕向ける必要もありません。
(しかも旦那殺害後にマリナも即殺すんだから全く意味不明です。)
一体、カミエルたちは何がしたかったのか、そして彼らは何者だったのか、
監督に問い詰めたいところですが、きっと監督も明確な答えは持ってないでしょう。
とにかく監督は客を煙に巻く不条理な作品を作りたかっただけだと思うし、
存在しない答えを求めていろいろ考察する客を見て、ほくそ笑んでいる気がします。

もし「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション」で数本しか観れないなら、
本作を選ぶくらいよりも他の5作品のどれかを観た方が有意義かもしれません。
ある意味、本作はグランプリだから仕方なく選ばれているとも言えるので、
ちゃんと内容を吟味して選ばれたであろう他の上映作の方が面白い可能性は高いです。
全て観ることが出来ないボクには断言できませんが…。

シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2014の感想
キョンシー
モーガン・ブラザーズ

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