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ヘラクレス

少し前に知人から「面白い海外ドラマない?」って聞かれたのですが、
ボクは海外映画はそこそこ観ている方なのでオススメできるけど、
海外ドラマはそれほど見ているわけではないので、
とりあえず今嵌っている『ブレイキング・バッド』を薦めました。
知人はレンタルDVDで見てくれたみたいなのですが、
「たしかに面白いけど、シーズン2でやめた」と…。
あんな面白いのになぜやめたのか聞くと「吹き替えがなかったから」と…。
ボクはずっと字幕で見ているので気付かなかったのですが、
シーズン2から吹き替え音声が収録されてなかったんですね。
しかしそんな些細なことで、あの面白いドラマを途中でやめられるものなのかと、
ちょっと驚いてしまいました。
洋画も日本でヒットするのは日本語吹替版があるものばかりだし、
字幕を嫌う日本人が多くなっていることに、洋画ファンとして危機感を覚えます。

ということで、今日は日本語吹替版も公開されている洋画の感想です。
吹替版の力もあって、きっと今週末ナンバー1のヒットになるんじゃないかな?

ヘラクレス
Hercules.jpg

2014年10月24日日本公開。
ドウェイン・ジョンソン主演のアクションファンタジー。

人間と全能の神ゼウスの間に誕生した、半神半人の男ヘラクレス(ドウェイン・ジョンソン)。神さえも恐れおののく並外れたパワーを誇りながらも、人間の心も兼ね備えた彼は、強さと優しさに満ちた者として名をはせていた。だが、わが子の命を奪ったことで罪の意識に押しつぶされそうになる。悩み苦しみ抜いた果てに、彼は12の試練を自らに課して救いを得ようとする。多頭の蛇ヒュドラ、不死身のライオン、巨大なイノシシであるエリュマントスといった魔物や悪を成敗していくヘラクレスだったが……。(シネマトゥデイより)



近年ギリシャ神話映画ブームだったハリウッドですが、
今年は空前のヘラクレス映画ブームです。
9月にはケラン・ラッツ主演の『ザ・ヘラクレス』が公開されたのは記憶に新しいですが、
残念ながら劇場公開は見送られたものの、ジョン・モリソンことジョン・ヘニガン主演の
『ヘラクレス 帝国の侵略』が11月にビデオリリースされます。
そんなヘラクレス映画ブームの中、大本命と言える作品が本作でしょう。
ヘラクレスを演じる主演俳優はザ・ロックことドウェイン・ジョンソンですが、
ケラン・ラッツはヘラクレスにしては線が細すぎると思ったので、
プロレスラー出身のマッチョ俳優を起用したのは正解です。
まだ見てないけど、ジョン・モリソンもプロレスラーなので言い線行ってそうかな。
さらに嬉しいのは、本作のヘラクレスが、パブリックイメージに非常に近いことです。
ドウェイン・ジョンソンといえば丸刈りがトレードマークでしたが、
本作ではヘラクレスに近づけるため、丸刈りを封印して長髪になっています。
(ウィッグだと思いますが、意外に似合いますね。)
さらにヘラクレスのトレードマークであるライオンのマントと棍棒も持っていて、
誰が見てもヘラクレスそのもののビジュアルに仕上がっています。
それだけでもギリシャ神話オタクのボクはテンション上がりまくりです。

予告編ではエリュマントスの大猪、ネメアのライオン、ケルベロス、
ヒュドラら怪物とのバトルシーンが使われていたので、
本作はてっきりファンタジーになるものだと思っていたのですが、
英雄アキレウスを描いた『トロイ』同様に、本作も神話を基にしながらも、
ファンタジー色を廃したアクション映画に仕上がっています。
もちろん予告編に使われているからには、怪物たちのシーンもあるのですが、
それはヘラクレスの甥イオラオスの誇張された回想だったり、幻覚だったりするので、
この世界には怪物は実在しないという設定のようです。
もちろんオリュンポスの神々も登場しませんから、
ヘラクレスも大神ゼウスの息子(半神)ではなく人間です。
そんなファンタジー皆無の世界観で、ギリシャ神話を描けるのかって思いますが、
本作はちゃんとヘラクレスの最重要エピソードである「十二の難業」を題材に、
見事にヘラクレスを描いているので感心しました。
先行した『ザ・ヘラクレス』は中途半端にファンタジーだったくせに、
全くギリシャ神話をヘラクレスも描けてませんでしたからね。

大神ゼウスと人間の女性アルクメネの間に生まれたヘラクレスですが、
ゼウスの妃ヘラから嫉妬され、幼い頃から命を狙われます。
成長したヘラクレスはヘラの怒りを鎮めるため、
アテネ君主エウリュテウス王のもとで「十二の難業」をすることになるのです。
「十二の難業」とはその名の通り、王から困難な業務が十二も与えられるのですが、
その中にレルネのヒュドラ退治、エリュマントスの大猪捕獲、
そしてネメアのライオン退治などがあります。
最も困難なのは、どんな武器も通用しない皮を持つネメアのライオンの退治で、
ヘラクレスは素手でッライオンをぶち殺し、その皮を剥いで着ているのです。
…という話が本作の冒頭でイオラオスから語られます。

イオラオスはマケドニア海岸で盗賊(?)に捕まっていましたが、
ヘラクレス叔父さんが助けに来る前に、盗賊にヘラクレスの凄さを誇張して話し、
ビビらせようという作戦です。
つまり「十二の難業」はイオラオスの創作なのですが、彼は各所で吹聴しているため、
その話を信じて、ヘラクレスを英雄視する人々も多いみたいです。
ただ完全に作り話かと言えばそうでもないようで、例えばヒュドラ退治だと、
大蛇の皮を被った盗賊を倒した話が誇張されて、怪物を倒した話になったみたいで、
ヘラクレスがエウリュテウス王の基で働いていたのは事実だし、
ヘラクレスがめちゃめちゃ強いのも事実です。
マケドニア海岸の盗賊程度なら作り話で怖気づかせる必要もなく、
簡単に倒しちゃえるでしょうね。

ちなみにイオラオスはヘラクレスの甥ですが、
『ザ・ヘラクレス』で悪者だったヘラクレスの兄イピクレスの子供になります。
神話でもヘラクレスの冒険に同行しており、特にヒュドラ退治では大活躍でした。
が、本作では口八丁でピンチを脱するウソップ的なキャラになっています。
本人はそれが嫌で、一緒に戦いたいと思っているのですが、
ヘラクレスが過保護なため、可愛い甥を危険な目に遭わせないようにしています。
神話だと、イオラオスを除けば単独行動が多い印象のヘラクレスですが、
本作では他の4人の英雄とパーティを組んでいます。
アウリュトリュコス、アタランテ、テュデウス、アムピアラオスの4人です。
正直、一匹狼のヘラクレスに仲間がいる設定は如何なものかと思いましたが、
紅一点アタランテの登場は嬉しかったです。
カリュドンの猪狩りやアルゴナウタイにも紅一点として参加した俊足の女英雄で、
ボクにとってはギリシャ神話のアイドル的存在だったのですが、
映画などではあまり登場する機会がなくて…。
ついにアタランテが脚光を浴びたのは嬉しいし、イメージもかなり近いです。

ただ他のメンバーについては、ちょっとどうかなと思いますね。
アウトリュコスは神話でもヘラクレスと関係があるため、まだいいとして、
テバイ攻め七将のテュデウスとアムピアラオスは縁も所縁もないし、
それならミノタウロス退治で有名なテセウスとか、
ヘラクレスとも面識のある有名な英雄を使ってほしかったかな。
とはいえテュデウスとアムピアラオスもめちゃめちゃ個性的でいいキャラでした。
テュデウスは死体の山で発見された狂人で、獣のように凶暴ですが
恩を受けたヘラクレスに対しては忠実な戦士です。
アムピアラオスは予言者で、自分の死さえも予言できてしまうので、
自分がいつ死ぬかもわかっているため、戦いでも防具は付けません。
予言者なんてファンタジーなキャラですが、本作はファンタジーではないため、
実は彼もただ自分を予言者と思い込んでいるだけの変人だったりします。

キャラ的にも個性派集団で面白いのですが、得意武器が各々違うのも面白いです。
主に口が武器のイオラオスを除く5人は、各々が一騎当千の猛者ですが、
ヘラクレスは棍棒、アウトリュコスは投げナイフ、アタランテは弓矢、
テュデウスは手斧二刀流、アムピアラオスは十字槍と戦い方が違います。
そんな多彩な武器で大軍相手に奮闘する姿は、
まるでオメガフォースのテレビゲームみたいで楽しいです。
ちょっと漫画的な印象はありますが、本作は神話から直に映画化したのではなく、
神話を基にしたアメコミを実写映画化したらしいので納得です。
以下、ネタバレ注意です。

誇張されたヘラクレスの英雄譚を聞きつけたトラキア君主コテュス王は、
娘ユージニア王女を遣わし、ヘラクレス一行に傭兵の依頼をします。
コテュス王曰く、ケンタウロスを従える魔術師レーソスがトラキアの民が虐殺しており、
討伐に向かったトラキア兵も全滅してしまったので、英雄に力を貸してほしいと。
大金を積まれ、依頼を受けたヘラクレスは、まず農民を兵士にするべく訓練します。
彼らのような英雄なら自分たち6人だけで戦いを挑みそうですが、意外と慎重ですね。
しかも「敵を倒すことよりも生き残ること」と、防御メインの戦術を訓練するのです。
神話の粗野なヘラクレスとは違って、ちょっとインテリな印象です。
しかし訓練の途中で、レーソス軍が蛮族ベッシ族の村を襲撃しているとの報告が…。
コテュス王は好機と考え、まだ訓練不足にも関わらず、出陣することになります。

ベッシ族の村に向かったヘラクレス率いるトラキア軍ですが、
村は荒廃しており、そこにレーソス軍の姿はすでになく…。
しかし村を調査していると、ただならぬ様子のベッシ族の大軍が現れ、
トラキア軍に襲い掛かってくるのです。
「助けに来たのに何故?」と思いますが、レーニエの妖術に操られていると考え、
トラキア軍は咄嗟に訓練した盾の陣形で迎え撃ちます。
ただやはり訓練不足がたたり、陣形は簡単に崩されてしまい…。
しかしヘラクレス一行の奮戦により、なんとかベッシ族に勝利するのです。
4頭引きの戦車で戦うヘラクレスが勇ましかったですね。
戦車を牽いているのはディオメデスの人食い馬(という設定)でしょうか。

ベッシ族には勝てたものの、その被害は甚大で、半数の兵を失いました。
また訓練を開始するのですが、兵に自信を付けさせるため特別な盾や鎧を支給します。
十二の難業で戦ったステュンパロスの鋼鉄の怪鳥の魂が入った盾と、
どんな刃物を通さないエリュマントスの大猪の皮で作った鎧です。
もちろんこれもイオラオスの作り話で、本当は普通の盾と鎧なのですが、
英雄譚を信じている兵士たちの士気は上がります。
でも大猪の皮の鎧については英雄譚を信じていないシタクレス将軍から、
「斬れないならどうやって皮を剥いだんだ?」と問われて、
イオラオスは苦し紛れに「何でも切れる剣でだよ」と答えますが、まさに矛盾ですよね。
よく兵士たちが信じてくれたものです。

そんな折、偵察隊から「ケンタウロスを見た」という報告が。
どうやらレーソス軍が国境のアスティカス山で野営しているらしく、
今度は訓練も万端なトラキア軍は、野営を強襲することにします。
ところがアスティカス山に到着すると、周りをケンタウロスに囲まれていて…。
どうやら強襲がバレていて、待ち伏せされていたようです。
ケンタウロスといえば、半人半馬の怪物ですが、本作には怪物は出ないので、
もちろん本当にケンタウロスなわけはありません。
単に目撃者が騎馬兵を逆光で見て、ケンタウロスと勘違いしただけです。
そんなことだろうとは思ってたけど、やっぱりでしたね。
むしろ本当にケンタウロスが登場するのを少し期待しちゃいましたよ。
なにしろ神話でもヘラクレスにとって、ケンタウロスは因縁の相手ですからね。

兵力3倍のレーソス軍とガチンコ勝負することになったトラキア軍ですが、
今度は訓練も完ぺきだったので、ちょっとやそっとで陣形は破れません。
怒涛のごとく迫りくるレーソスの騎馬隊を、どんどん倒していきます。
といってもやはり前線で主に敵を倒しているのはヘラクレスら5人だけで、
トラキア軍は後方の陣形の中から援護射撃をしている感じです。
まさに一騎当千ですが、これならヘラクレスたちだけでも大丈夫だったような…。
あまりの堅牢な陣形にレーソス軍の兵隊は諦めて退散しますが、
魔術師レーソスは撤退する部下を尻目に、単騎駆けで突撃してきます。
民を虐殺する悪い魔術師とは思えない、勇敢な行動ですが、
ヘラクレスに馬ごと投げ飛ばされて、トラキア軍に捕縛されるのです。
果敢に単騎駆けしたわりには、あっけない決着でした。

城に連行する途中でレーソスは「良き王は傭兵なんて雇わない」と言います。
その後の戦勝祝賀会でも、トラキア統一を喜ぶコテュス王に対し、
レーソスは「この国は民の物だ」と叫ぶのです。
何かおかしいと感じたヘラクレスがユージニア王女を問い詰めると、
実は暴君はコテュス王の方で、自分たちは反乱軍討伐に利用されたとわかります。
ベッシ族が襲ってきたのも、妖術で操られていたのではなく単なる反乱だったのですね。
事実を知ったヘラクレスはコテュス王も問い詰めますが、
「子殺しの分際で正義を語るな」と相手にされません。
ヘラクレスはアテネのエウリュステウス王に仕えていた当時、
謎の狂気に襲われて妻メガラと三人の子供を殺害していたのです。
ヘラクレスが妻子を殺害したのは神話でも描かれています。
神話ではヘラに操られて妻子を殺し、その罪を償うためにアポロンから神託を受け、
エウリュテウス王の奴隷として十二の難業をすることになったのです。
本作はそれをうまく脚色してあると思いましたし、
なんとこのヘラクレスの子殺しにも裏があったという驚きの展開になります。

ヘラクレスはトラキアを救おうと仲間に持ち掛けますが、
傭兵の仕事と割り切っているアウトリュコスは猛反対。
結局、コテュス王からギャラを受け取り、ひとり去ってしまいます。
どうやらヘラクレスはアウトリュコスに借りがあったみたいで、
あまり強制もできないみたいですが、借りって神話の牛泥棒の件かな?
その夜、ヘラクレスたち5人は城に侵入するのですが、
イオラオスが人質になってしまい、過保護なヘラクレスは捕えられます。

地下牢で、鎖で拘束されたヘラクレスの前に現れたのは、なんとエウリュステウス王。
ヘラクレスを食い殺させるために三匹の獰猛な番犬を連れて来ています。
どうやら彼はヘラクレスを殺すためにコテュス王と同盟を組んでいたみたいです。
エウリュステウス王は自分が与えた十二の難業での大活躍で、
民の人気者になったヘラクレスに嫉妬しており、
いつか自分の王位も脅かされるのではないかと心配し、
当時、ヘラクレスのワインに幻覚剤を盛って、その間に番犬に妻子を殺させます。
意識が混濁していたヘラクレスはその番犬が地獄の番犬ケルベロスに見えます。
「ケルベロスの正体見たり三匹の番犬」ですね。
意識を取り戻したヘラクレスは、自分が妻子を殺したと勘違いし、
民にも子殺しと思われ、アテネにはいられなくなってしまうのです。
ヘラクレスの子殺しはヘラによって狂った彼の仕業ではなく、
彼を貶めるための陰謀だったという意外なオチですね。
地下牢で三匹の番犬を見て、ヘラクレスもその真相に気が付きます。

ヘラクレスはぶちキレ、鎖の手枷をぶち抜き、襲ってくる番犬をぶち殺します。
(『ザ・ヘラクレス』でも似たシーンがあったけど偶然なのかな?)
ケルベロスを殺され、命乞いするエウリュステウス王もぶち殺しますが、
不意をつかれて後ろからシタクレス将軍に蛇腹鞭で攻撃されピンチに。
しかし将軍を刺し殺し、ピンチを救ったのは、なんと可愛い甥イオラオスでした。
ヘラクレスは投獄されていた仲間も救出し、ついでにレーソスも救出し、
城の広場に出ますが、そこにはコテュス王率いるトラキア軍が待ち伏せしており…。
奇しくもヘラクレスは自分が鍛えた鉄壁の軍隊と戦うことになるのです。
軍の猛攻にテュデウスは討死していまい、ヘラクレスたちも追い詰められますが、
窮地のヘラクレスは広場にあったトラキアの守護神ヘラの巨像を倒します。
その倒れた巨像が見事にコテュス王にジャストミート。
王を失った軍は投降し、ヘラクレスらも生還できて、めでたしめでたしです。
ある意味ヘラクレスがヘラに救われる展開で、ちょっと面白いですね。
でもラストの割には大暴れできなかったのは物足りなかったかも。
トラキア軍は善良な市民なので、一騎当千することはできないのもわかるけど…。

とはいえ、ギリシャ神話映画は駄作も多い中、本作は本当に大満足の出来で、
これならギリシャ神話ファンも納得の作品ではないでしょうか、
むしろ、ギリシャ神話ファンだからこそ楽しめる部分も多いかもしれません。
もしあまり知らないなら、ヘラクレスの物語、特に「十二の難業」だけでも
予習して観に行くことをオススメします。
それを知ってると知らないとでは、本作の楽しさに雲泥の差があるはずです。
むしろ洋画を観る上ではギリシャ神話は一般教養で、知っておいて損はありません。
(というか知らないと損をしています。)

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