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誰よりも狙われた男

ついに海外ドラマ『ブレイキング・バッド』を見始めました。
非常に面白いと評判のドラマで前々から気になってはいたのですが、
今月ついに「ファイナルシーズン」がレンタルされたので、
これを機に「シーズン1」から一気見しちゃおうと思って見始めました。
といってもまだ「シーズン1」の1巻目(3話まで)を見ただけなのですが、
たしかにこれは面白そうな感じで、話題になるのもわかりますね。

著名人にもファンが多いらしく、あのオスカー俳優フィリップ・シーモア・ホフマンも、
このドラマが好きすぎて、出演を直談判したことがあるそうです。
しかし製作総指揮が無名俳優の起用にコダワったようで、
そんな大物の直談判もあっさり拒否したみたいで…。
ホフマン亡き今となっては、ちょっと残念だった気もしますが、
そういうコダワリが面白いドラマに繋がってるのかもしれません。
日本では漫画原作のドラマ『地獄先生ぬ~べ~』が、
キャストありきでキャラを改変(改悪)していると話題になっていますが、
日本のドラマは内容で勝負せず、キャストで売ろうと思っているからな…。

ということで、今日はフィリップ・シーモア・ホフマンを起用した映画の感想です。

誰よりも狙われた男
A Most Wanted Man

2014年10月17日日本公開。
フィリップ・シーモア・ホフマン最後の主演作となるスパイサスペンス。

ドイツ、ハンブルク。諜報(ちょうほう)機関でテロ対策チームの指揮を執るバッハマン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、イッサというイスラム過激派に関わりがあるといわれる若い密入国者をマークする。人権団体の弁護士アナベル(レイチェル・マクアダムス)を介して銀行家ブルー(ウィレム・デフォー)との接触をもくろむ彼を、あえて拘束せずに監視するバッハマン。イッサの動向を追い掛けることでテロ資金源となっている人物にたどり着こうと考える彼だったが、思いも寄らない出来事が次々と降り掛かってくる。(シネマトゥデイより)



2月に急逝した名優フィリップ・シーモア・ホフマンの最後の主演作である本作ですが、
まるでホフマンの遺作のように言われることもあるけど、
実際の遺作は『ハンガー・ゲーム3(仮題)』二部作になるみたいです。
日本での後編の公開はおそらく再来年になると思われますが、
少なくともあと二度は彼の雄姿をスクリーンで観ることができます。
でも『ハンガー・ゲーム』はライトノベル原作の少女向けファンタジーですから、
正直なところオスカーも受賞した名優の遺作に相応しいとは言えず、
第36回モスクワ国際映画祭にも出品された由緒正しき本作の方を
彼の遺作と考えたい気持ちもわからなくはないですね。

ワールドプレミアだったサンダンス映画祭は今年1月だったので、
当時はホフマンもまだ亡くなる前だったことになります。
そして9月に本国(製作国)イギリスで一般公開されましたが、その間に亡くなりました。
(享年46歳、薬物の過剰摂取で亡くなったわけですが、ホントに薬物は怖いです。)
本作の日本公開も彼の死後決まったのですが、たぶん彼が亡くなってなかったら、
日本での劇場公開は見送られていたと思います。
キャストが死ぬことがプロモーションになってしまうのはちょっと悲しいけど、
なかなか面白い作品なので劇場公開されたことは有難いです。
しかし急きょ適当に付けたのかもしれませんが、この邦題は意味不明ですね。
原題は『A Most Wanted Man(最重要指名手配者)』ですが、こんなダサい意訳に…。
しかも「誰よりも狙われた男」が指すのはホフマンではなく、
彼の役は狙っている側の人間のひとりです。
彼の最後の主演作が売りなら、彼の役柄を暗示する邦題にしたらいいのに…。

本作はなかなか面白いスパイ映画ではありますが、少々ポリティカルな内容で、
難しい、またはややこしいと感じる人もいるかもしれません。
現にボクも途中で頭がコンガラがって、意識が跳びかけました。
序盤から中盤にかけては明らかに説明不足で、状況を理解するのが難しいです。
終盤の、ホントに大詰めのところで、漸くいろんなことが理解できて楽しくなりますが、
ポリティカルな内容が苦手な人は、けっこう我慢が必要な作品かもしれません。
ボクなんてずっと「なんで?」「どういうこと?」って思いながら観てましたが、
終わってもわからないままの部分も沢山ありました。
以下、ネタバレ注意の感想ですが、なるべくわかりやすく書きます。

ホフマン演じるギュンターは、ドイツのテロ対策チームのリーダーです。
911テロの実行犯、モハメド・アタがハンブルクに潜伏して以降、
政府はハンブルクでのテロ撲滅に躍起になり、テロ対策チームもここで活動します。
でもこのチームは非合法な手段も使うため、その存在は公にされていません。
非合法な手段とは、拷問といった人道的に問題視されるようなことではなく、
テロリストと取引して、仲間にしちゃったりすることみたいです。
「テロリストとは交渉しない」というのが世界の風潮なので、
ドイツもそんな諜報機関の存在を公には出来ないのでしょうね。
まぁ日本も含めて、どこの国もテロリストと交渉してるでしょうけどね。
そうじゃないと人質になった邦人が解放されたりするはずないし。

このチームの場合は、「海老で鯛を釣る」というギュンターの意向が強いみたいで、
その方針は政府や国家安全保障局とぶつかることも多いみたいです。
ギュンターはテロリストを泳がせて、さらに大きなテロリストを捕まえたいのですが、
国家安全保障局員モアはテロリストは片っ端から捕まえたいみたいで、
泳がすのはもちろん、交渉して仲間にするなんて以ての外だと思っています。
泳がせてるうちに爆弾テロでも起こされた日には洒落にならないので、
どちらの手段が正しいとも言い難いところはありますね。
さらに国家安全保障局だけではなく、CIA諜報員マーサも首を突っ込んできます。
世界の警察気取りのCIAの他国での無作法な横槍にはほとほと呆れますが、
ギュンターもCIAは大嫌いみたいで、なんでもベイルートでの作戦で、
CIAに情報源を潰された(懐柔したテロリストを逮捕された)ことで失敗した経験があり、
CIAに強い不信感を持っています。
本作はそんなテロ対策チームのギュンター、国家安全保障局員モア、
CIA諜報員マーサのそれぞれの思惑による、政治的な駆け引きが描かれます。
なので3者の立場を把握しないと厳しいのですが、これがなかなか説明されません。
テロ対策チームが存在を公にされていないとわかるのも終盤だし、
モアに至っては実際どこの組織の人間なのかすらも語られません。
彼が国家安全保障局員というのもボクが勝手に解釈しただけです。
もっと早く、明確に立場を表明してくれたら、理解しやすく、楽しみやすかったのに…。

「海老で鯛を釣る」方針のギュンターの鯛にあたる得物は、
キプロスにあるアルカイダのフロント企業セブンフレンズ海運を支援していると目される
アブドゥラ博士という資産家のアラブ人です。
アブドゥラ博士という鯛を釣るための海老として目を付けたのが、
ドイツに不法入国したチェチェン人のムスリム青年、イッサ・カルポフです。
イッサの父はロシアの軍人で、不正で儲けた金をマネーロンダリングするため、
ハンブルクのブルー・フレール銀行に預金しています。
イッサは死んだ父の代わりに、その預金を引き出すためドイツに入国し、
トルコ人母子に世話になりながら、銀行家ブルーを探していたのでした。
ギャンターはイッサを懐柔し、1000万ユーロは下らない多額の預金を引き出し、
アブドゥラ博士に寄付させ、その金の流れを追う作戦を思いつきます。
しかしイッサとは直接接触せず、まずはイッサを釣るために、
ドイツ人女性弁護士アナベルを餌にしようと考えるのです。
アルカイダを釣るためにアブドゥラを餌にし、アブドゥラを釣るためにイッサを餌にし、
イッサを釣るためにアナベルを餌にするという、なんとも手の込んだ計画ですね。

ドイツ人女性弁護士アナベルもロクな弁護士ではありません。
ギャンター曰く「テロリスト御用達のソーシャルワーカー」で、
不法入国したアラブ人の世話や、市民権を取る手続きが主な仕事みたいです。
もちろん大人しくテロ対策チームに協力するはずありませんが、
ギャンターらチームは彼女を公園で拉致監禁し、「うん」と言うまで説得します。
結局、「イッサを保護する」ことを条件にアナベルは協力を了承するのです。
…が、なぜ彼女が単なる依頼人のひとりでしかないイッサにそこまで気を掛けるのか、
ちょっと理解に苦しみますよね。
特に恋愛感情もないようで、ただの親切としか思えないのが不可解です。
まぁイッサは祖国で逮捕され、ロシア人に酷い拷問を受けたらしいので、
その経緯を聞けば、ちょっと同情はしてしまうかもしれませんが…。
そもそもドイツ人の彼女がなぜテロリスト御用達のソーシャルワーカーなんてするのか。
「左翼弁護士だから」みたいな曖昧な理由しか語られず、モヤモヤします。

ギャンターに懐柔されたアナベルは、
預金をアブドゥラ博士に寄付するようにイッサに勧めます。
普通なら自分の預金を全額、簡単に寄付したりはしませんが、
イッサは「神がいるから金はいらない」と言ってるんですよね…。
イッサは預金を残した父のことを極度に恨んでおり、
そんな父の稼いだ汚い金はいらないと思っているのです。
なんでもロシアの軍人だった父はチェチェン人を虐殺しまくっていたそうで、
チェチェン人のイッサの母は、父にレイプされ、15歳で彼を生んで死んだとか…。
なんとも悲劇的な話ですが、ロシア人をこんなに悪く描いた本作を、
よくもモスクワ国際映画祭コンペ部門に出品したものですね。
そりゃ『私の男』にグラインプリを奪われても当然です。
まぁそれは置いといて、問題は「金はいらいない」というイッサが、
なぜドイツまできて銀行家ブルーを探したんだってことですよ。
百歩譲って祖国で拷問されたから亡命したかったのはわかりますが、
金もいらないのにブルーを探す必要は全くないはずです。
この預金は本作の展開上かなり重要なアイテムですが、そこがこんなに曖昧だと、
物語を理解する上で大きな妨げになってしまっている気がします。

イッサはアブドゥル博士を立派な宗教活動家だと思っており、
博士に寄付すれば、まともなイスラム系支援団体に配分されると考え、
父の汚い金をいいことに使えるチャンスだと考え、アナベルの提案を受けます。
アブドゥラ博士に寄付を申し出ると、案の定、彼は飛びつきます。
しかし彼が提示した寄付の配分先のリストは、どこも問題のない団体ばかりで、
アルカイダのフロント企業セブンフレンズ海運の名前がなく…。
それでもギャンターは、このリストの団体のどれかを直前で変えるはずと睨み、
内務大臣や国家安全保障局員モア、そしてCIAの承認も取り付けて、
この作戦を実行することにします。
案の定、銀行に寄付の受け渡しにやってきたアブドゥラ博士は、
署名の時に、配分先をセブンフレンズ海運へ変更を申し出るのです。
やっぱりギャンターの読み通り、アブドゥラ博士はアルカイダと繋がってたわけですね。

アブドゥラ博士のアルカイダとの繋がりが確定したため、
ギャンターはいよいよ確保に動きますが、彼は博士を逮捕するつもりはありません。
彼の狙いは更に上のセブンフレンズ海運やアルカイダなので、
博士のことも懐柔して、仲間に引き込むつもりなのです。
そのための取引材料として、博士が欲しがっているドイツ国籍も用意しています。
博士が銀行から出たところを、運転手に変装したギャンターがタクシーで拾い、
確保完了したと思いきや、彼のタクシーに複数の車が突っ込んできて…。
ボクも「テロリストに作戦がバレたのか?」と思ったのですが、
なんと突っ込んできた車は国家安全保障局員モアとCIAの手の者だったみたいで、
タクシーの後部座席から博士を引きずり出して逮捕してしまいます。
どうも彼らはギャンターの作戦通り、博士を仲間にする気はなかったみたいです。
内務大臣の承認を得た作戦を、そんなに簡単に反故できるのかと驚きましたが、
テロ対策チームは非公認だし、ドイツの大臣なんてCIAにとっては関係ないか…。
ギャンターはブチキレますが、どうすることもできません。

うーん、ボクもアルカイダに寄付している博士を仲間にしたり、
ましてや国籍まであげちゃうなんてあまり賛成できませんが、
仮にも博士とアルカイダの繋がりを証明したのはギャンターなのに、
手柄を全部横取りしちゃうのは酷すぎるなと思いました。
それについでにイッサまでパクられちゃいますが、
彼のテロリスト疑惑はかなりグレーだし、そこまでするのはやりすぎです。
「テロリストとは交渉しない」からテロリストとの取引は反故にしてもいいかもだけど、
「イッサを保護する」というドイツ人弁護士アナベスとの取引まで破っちゃってるし…。
まぁCIAマーサにしても「世界を平和にする」という思いは嘘じゃないだろうし、
手段は非情でも正義を執行していることに違いはないので、
何が正しいのか、なかなか難しいところですね。
しかし本作を観たテロリストが、「テロリストは人間扱いされない」と気付いて、
テロ活動から足を洗ってくれたらいいかな。(そんな軟弱なテロリストはいないか。)

ドイツはもちろん、ロシア連邦やイスラム世界の情勢が盛り込まれていたり、
いろんな組織のいろんな思惑の絡む物語で、ちょっとややこしいところもあるけど、
ホフマン大活躍の作品で、最後の主演作としては申し分ないかな。
しかし、こんなにいい俳優なのに、本当に惜しいですよね。
薬物とテロ活動は本当にダメ、絶対。

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