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恐怖ノ黒鉄扉

現地時間12日まで開催されていた第47回シッチェス・カタロニア国際映画祭で、
役所広司が主演男優賞を受賞したみたいです。
世界三大ファンタスティック映画祭の中心的祭典での受賞は立派なものですが、
中島哲也監督の『渇き。』での演技が認められたみたいで…。
正直、『渇き。』は役所広司の演技も含めてイマイチな作品だと思ったので、
この受賞が喜ばしいことかどうかはちょっと微妙な感じです。
コンペ部門には『渇き。』の他にも、三池崇史監督の『喰い女』、
松本人志監督の『R100』が出品されていたみたいです。
他部門も含めれば日本映画が20本ちかく出品されていたので、
主演男優賞以外にも、いくつか受賞できるかもと期待していたのですが…。
ちなみにグランプリを受賞したのはハリウッド映画『I Origins』でした。
来年のシッチェス映画祭ファンタスティック・セレクションで上映されるかな?

ということで、今日は第46回シッチェス映画祭パノラマ部門に出品された映画の感想です。

恐怖ノ黒鉄扉
Bloody April Fools

2014年10月3日リリース。
シッチェス映画祭に出品されたスパニッシュ・ホラー。

9人の若者が、エイプリルフールのドライブ中、道に迷ってしまう。彼らは、偶然見つけた廃墟となったホステルでパーティーをしようと盛り上がる。地元の住人は、この廃墟のボイラー室で起こった事故の呪いで、毎年エイプリルフールにここで人が死ぬ、と忠告するが、彼らは無視してパーティーを始める。アルコールとセックスに溺れる9人だが、血塗られたエイプリルフールが幕を開ける。ボイラー室に秘められた忌まわしい呪いから、9人は逃れることが出来るのだろうか!?(公式サイトより)



シッチェス映画祭に出品された作品からセレクトして日本で特集上映する
「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション」が
今年もハロウィン目前の今月25日から開催されます。
関西ではシネ・リーブル梅田で一昨年から毎年開催されているのですが、
普通だとなかなか日本公開されないようなホラー映画が観れる有難い機会です。
今年は第46回シッチェス映画祭のグランプリ『ボーグマン』をはじめ、
清水崇監督の香港映画『キョンシー』など、6本が上映されるみたいで、
全部観たいけど、そんなに時間もないし、嬉しくも悩ましい今日この頃です。
そんな「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2014」を記念して、
一足早くDVDリリースされたのが本作です。
もちろんシッチェス映画祭の出品作からセレクトされた映画です。

一昨年は『恐怖ノ黒電話』、昨年は『恐怖ノ黒洋館』が上映されましたが、
今年上映される6本には『恐怖ノ黒○○』がないなと思っていたら、
まさかこうしてDVDリリースという形でお目見えするとは…。
ジャンル映画の上映機会減少を憂いての特集上映企画だったはずなのに、
DVDリリースしちゃったら意味ないような気がしますが、
劇場上映される6本はまだ観てないので何とも言えませんが、
本作も劇場上映されてもいいくらいの出来栄えのホラー映画だと思います。
上映時間が70分に満たない本作は劇場上映向きじゃないと判断したのかな?

もちろん遊び心で邦題を付けているだけなので、
本作は『恐怖ノ黒電話』、『恐怖ノ黒洋館』とは何の関係もありません。
正直かなり無理のあるネーミングで、内容にもあまり合っているとは言えません。
「黒鉄扉」と書いて「くろとびら」と読ませるのも、
黒から始まる漢字三文字にしようという無理やり感がありますよね。
スペイン語の原題は『Los Inocentes』ですが、これは本作が、
幼子殉教者の記念日(Dia del Inocente)に起こった物語だからでしょうね。
幼子殉教者の祝日はカトリックの祭日で、12月28日に行うのだそうですが、
全く知らない祝祭日だったのでちょっと調べてみたところ、
イエス・キリスト誕生の3日後、新しい王の誕生を恐れたユダヤの支配者が、
2歳以下の男の子を全て殺害するように命令したそうですが、
その時に虐殺された罪のない子供たちを供養する祭日だとか…。
しかし本作はなぜか『Bloody April Fools』という英題が付けられており、
『ブラッディ・バレンタイン』のエイプリルフール版のような印象を受けるタイトルに…。
これはどうやら本作の舞台であるスペインでは、幼子殉教者の記念日には
悪戯をするというエイプリルフールのような風習があるからだそうです。
ジョーク記事を流したり、飲み物に砂糖の代わりに塩を入れたり、
劇中に出てくるような人型の紙を誰かの背中にこっそり貼るという悪戯で遊ぶそうです。
凄惨な出来事に由来する日なのに、なぜそんな悪戯の日になったのか謎ですが、
やっぱり12月なのに「血の四月馬鹿」という英題は違和感がありますね。
まぁそれでも理由があるだけ「恐怖ノ黒鉄扉」よりはマシか。

本作の内容も『ブラッディ・バレンタイン』に近い、殺人鬼ものホラーです。
いや迷い込んだ若者が殺人鬼に殺される山小屋系ホラーにより近いかな。
悪戯の日の出来事なので、その殺人鬼の殺害方法がジョーク染みています。
ジョーク染みているというか、子供がやりそうな悪戯(イジメ)をエスカレートさせ、
殺害方法にしてしまったような感じでなかなか面白いです。
分別のない子供だったら本当にやっちゃいそうな行為もあって怖かったりも…。
でもこれが悪戯の日の物語だとわかった上で見ればその趣向は楽しめるけど、
知らなければ単なるクレイジーな殺人鬼でしかなく、面白味は減るかな。
殺害現場には例の人型の紙が残されていますが、それも元ネタがわからないと
何かの呪術のお札なのかなとか思っちゃうかもしれませんね。
やっぱり邦題でもエイプリルフールは匂わしておいた方がよかったかも。
例えば「恐怖ノ黒エイプリルフール」…、というのはさすがにないか…。
以下、ネタバレ注意です。

1998年12月28日。
12ヒルズ・ホステルで少年が死んでしまいます。
少年は「私が好きなら23時にボイラー室に来て」という女の子からの手紙を受け取り、
ボイラー室に行くのですが、それは悪ガキたちの悪戯で、彼は閉じ込められ、
500度もあるボイラー室の蒸気などで大火傷して死んでしまうのです。
悪ガキたちも幼子殉教者の記念日の風習に習っただけで、
ちょっとした悪戯のつもりで、殺意どころか火傷させるつもりもなかったでしょうね。
イジメと悪戯の線引きが曖昧な昨今、本当に起きそうな事件ですよね。

時は流れて2013年12月28日の夜。
バンに乗った男女9人が道に迷い、廃墟となっているホステルに泊まることに。
スキー帰りらしいけど、気温が高くてスキー場は閉鎖していたみたいですが、
たしかに彼らの恰好も12月とは思えない薄着でした。
きっと幼子殉職者の記念日を題材にしたかったけど、
諸々の都合で夏に撮影したから、冬なのに暑いという変な設定になったのでしょう。
男子5人、女子4人のグループでしたが、短い映画の割には登場人物が多く感じられ、
なんだか面倒くさい気持ちになりましたが、皆なかなかキャラ立ちしていて、
自然と個々の性格や関係性を把握することが出来ました。
きっとキャラ設定が巧みなのだろうと思います。
特にアメコミオタクのフレディが気に入りました。

実際には9人とも廃ホステルに泊まったわけではなく、
堅物そうな女の子イネスだけは拒否し、ひとりで帰ろうとバス停に向かいます。
ホラー映画でひとりで行動するなんて、死亡フラグ立ちまくりの行動ですが、
案の定、彼女が第一犠牲者になってしまいます。
彼女が薄暗いバス停でバスを待っていると、一台の車が目の前に停車し、
運転手の男から「町まで乗せていこうか?」と声を掛けられます。
堅物のイネスが見ず知らずの男の車に乗るはずなく、当然拒否します。
車が去った後、彼女の鞄がなぜか路上に置かれていて、鞄から不気味な笑い声が…。
彼女が恐る恐る鞄を開けると、笑い声を録音したカセットと毒蛇が入っていて、
毒蛇に噛まれた彼女は倒れこみ、そこをバスに撥ねられてしまうのです。
殺人鬼に殺されるのではなく、交通事故で死んでしまったのは意外でしたね。
まぁもしバスが轢かなくても、殺人鬼が仕掛けた毒蛇の毒が回って死んでたかな?

廃ホステルに忍び込み、バカ騒ぎする男女8人。
ジョルディとサンドラはバカ騒ぎを抜け出し、トイレでセックスを始めます。
ホステルなんだから部屋もベッドも沢山あるだろうに、なぜわざわざトイレで…。
いずれにせよ、ホラー映画でセックスするのも死亡フラグで、やはり二人は殺されます。
ジョルディは個室の穴から誰かが覗いているのに気付き、
覗き返しますが、案の定、目玉を突かれて絶命。
驚いたサンドラは慌てて逃げるが、床に撒いてあった石鹸で足を滑らせて頭を強打。
なんとも悪戯染みた幼稚な殺し方ですね。
と思ったら、頭蓋骨陥没しながらもサンドラはまだ生きていたのですが、
自分で傷口から指を刺し込み、脳みそを掻き回して絶命します。
他の犠牲者とは異質なかなりグロいゴア描写でしたが、
なんでも本作はバルセロナ映画学校出身の12人の共同監督作だったみたいで、
その中にゴア映画好きの監督がいて、彼がこのシーンを撮ったのかもね。
サンドラが脳みそを抉って死ぬところに遭遇した男子チノは、
ビビッて自分一人でバンに乗り込んで逃げようとしますが、
バンの中に大量の蜂がいて、蜂に刺し殺されてしまいます。
ひとりで逃げようとしたから蜂、…じゃなくてバチが当たったんですよ。

他の5人は何も知らずバカ騒ぎしていますが、突如停電に見舞われて…。
というか廃墟なのに今まで電気が付いていたことが変ですよね。
フレディは発電機のトラブルだろうと考えて、発電機を探しに行きますが、
外に出るドアを開けると、仕掛けてあったバケツが落ちてきてずぶ濡れになります。
なんとも幼稚なトラップですが、もちろんバケツの中身は水ではなくガソリンで…。
彼は殺人鬼が放った火に引火して焼死してしまうのです。
ホラー映画だと彼みたいなオタクタイプは生き残ることが多いので意外でしたが、
一番好きな面白キャラが中盤で犠牲になってしまったのも残念でした。

残された4人ですが、ここで急にチャラ男クリスティアンがカメラを持ち出し、
自分たちの状況を撮影し始めるのです。
ここから暫く本作の映像もPOV(主観映像)に切り替わるのですが、
きっと12人の監督の中にPOVが好きな人がいたんでしょうね。
12人のホラー監督がアイディアを持ち寄って制作していることで、
一本でいろんな趣向が楽しめるのも本作の面白いところです。
クリスティアンが撮影しながら他の仲間を探しに外へ出ると、怪しい木箱を発見。
その箱を開けると、ポヨヨーンとチノの首が跳び出すのです。
生首を使うなんて悪趣味ですが、これは悪戯の定番、ビックリ箱ですね。
近くには他の仲間の死体も散乱しており、4人は漸く状況を理解します。
驚いて物置小屋に逃げ込む彼らですが、そこでカメラのバッテリーが切れ、
POVも終了します。

物置小屋に逃げ込む前に、巨乳女子ララがトラバサミを踏んでしまい、
足が千切れるほどの大怪我を負ってしまうのです。
クリスティアンとララを小屋に待機させ、残る2人がバンを取りに行きますが、
その直後、殺人鬼によって小屋にガスが流し込まれます。
可燃性のガスで爆殺でもするのかなと思ったのですが、
どうもそのガスは笑気ガスだったみたいで、クリスティアンとララは大爆笑。
ララなんて足が捥げちゃってるのに大爆笑していますが、
笑気ガス(亜酸化窒素)には麻酔効果もあるから痛くないのかな?
でもパーティでも使われることがある笑気ガスではなかなか死ねないと思うのだけど、
彼らはそのまま死ぬんですが、窒息死しちゃったってことでしょうか?
あんな隙間だらけの小屋ではなかなか窒息できそうにないけど…。

バンを取りに行ったアレックスとエヴァですが、当然バンはもうありません。
あっても蜂だらけで使い物にならないでしょうけど。
小屋に戻った彼らはクリスティアンとララの死体を発見し、
ある場所に逃げ込むのですが、そこは15年前に少年が死んだボイラー室で…。
案の定、彼らは閉じ込められ、ボイラーが起動します。
灼熱の蒸気で焼き殺されそうになりますが、何とか天窓から脱出。
山道まで逃げたところでイネスがバス停で出会った車に出くわし、
運転手から「大丈夫か?乗せてやろうか?」と言われます。
アレックスもイネス同様に怪しいと感じますが、エヴァの意向で好意に甘えることに。
たしかに怪しい男ですが、彼は本当に単なる親切なオッサンのようです。

ところが2人が乗り込んだ後部座席にイネスの鞄が置いてあり、
その中には血の付いたカセットと拳銃が…。
アレックスは運転手がイネスを殺したと勘違いし、拳銃で運転手を撃とうとします。
驚いた運転手も自分のライフルを持ち出し、「拳銃を下ろしなさい」と説得。
エヴァからも「拳銃を下ろして」と言われ、アレックスは拳銃を手放そうとしますが、
どうやら拳銃の持ち手に接着剤が付いてあったみたいで…。
アレックスが一向に拳銃を手放せないため、撃ちあいになってしまい、
アレックスと運転手は相撃ちで死んでしまうのです。
うーん、殺人鬼がここまで計画していたと考えると、ちょっと無理があるような…。
アレックスはボイラー室で死んでいてもおかしくない状況だったわけだし…。

1人になったエヴァは徒歩で朝方まで歩き続け、ガソリンスタンドに到着します。
そこでオバサン店員に匿われて、紅茶を出してもらうのですが、紅茶には塩が…。
こんな状況で悪戯かましてくるのかと、エヴァは不審に思います。
しかもオバサンが15年前のボイラー室の話をし始め、
その時死んだ少年は息子だと言うのです。
どうやらオバサンは息子の復讐のため、毎年幼子殉教者の記念日に
ホステルで若者を殺しているみたいですね。
息子を閉じ込めた悪ガキは翌年に殺したみたいなので、
その後殺された人たちはとんだとばっちりです。
エヴァはオバサンに借りたジャケットにナイフが入っていることに気づき、
それでオバサンを刺しますが、ナイフはパーティグッツの偽物で…。
オバサンは「引っかかった」と不気味に笑うのです。
ネイルガンを持って追いかけてくるオバサンを、
エヴァは拾ったバールで反撃し、ネイルガンを奪って撃ち殺そうとしますが、
エヴァがオバサンを殺そうとしていると勘違いした警官に射殺されます。
結局ひとりも生存者がいない全滅オチですが、なかなかいい不条理感でした。
ただ夜が明けちゃってるんだから、悪戯の日は終わってるはずでは?

時間も短めでテンポもよく、なかなか楽しめるホラー映画でした。
この調子だと今年の「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション」も期待できそう。
たぶん6本中2~3本しか観れないでしょうが、何を観るか悩みますね。

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