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マザー

漫画『HUNTER×HUNTER』の作者・冨樫義博が
腰痛が悪化したそうで復帰の目途が立たない状況らしく、
新刊を楽しみに待っていたボクとしても残念です。
これまでの経緯を考えれば、本当に腰痛なのかはかなり疑わしいし、
もうこの漫画は未完のまま終わる気がします。
せっかく物語を作る才能があるのに、やる気がないのは勿体ないです。
彼はネーム同然のものを平然と掲載してしまえるので、
絵に対してはあまりコダワリがないように思えるのですが、
それなら漫画原作者になればいいんじゃないかな?
物語だけ考えて、あとは絵の上手い誰かに作画させればいいです。
漫画家なのに他人に漫画執筆を委ねるのはプライドが許さないのなら、
漫画を飛ばしてアニメ化、映画化しちゃってもいいかも。
それなら腰痛で絵が描けなくてもできるしね。

ということで、今日は絵が描けなくなった漫画家が撮った映画の感想です。

マザー
マザー

2014年2月27日公開。
漫画家・楳図かずお、初監督作。

数々のヒット作、名作を放ってきた漫画家・楳図かずお(片岡愛之助)のもとに、ある出版社から彼の半生を記した書籍の企画が舞い込んでくる。その担当編集者となって取材を重ねる若草さくら(舞羽美海)は、楳図の創作の原点が亡くなった母親イチエ(真行寺君枝)にあることを知る。やがて、別荘の窓に残された謎の手の跡、タクシーの隣席に存在しないはずの人影、楳図の周りに漂う紫煙、イチエの葬式の参列者の写真に写る彼女自身の姿と、調査を進める彼女と楳図の周囲で恐ろしい現象が頻発する。(シネマトゥデイより)



ホラー漫画の第一人者である漫画家・楳図かずおが、
御年77歳にして初めて撮った映画が本作です。
なんでも1995年から腱鞘炎で休筆していたらしいのですが、
筆が持てないのでメガホンを持ったのかもしれませんね。
約20年も腱鞘炎が長引いているようでは、今後の漫画家復帰も難しそうですが、
そもそも漫画家なんてハードな仕事を70歳超えても続けるのは厳しいのかも。
『釣りバカ日誌』の漫画家やまざき十三も71歳で映画監督デビューしましたが、
面白い物語が思いついても、自分で作画するのが面倒だが、
誰かに作画を任せるのも漫画家としての沽券に関わるので、
自分で映像化しちゃえばいいと思うのかもしれません。

他業種監督が簡単に撮れるほど、映画も甘くないとは思いますし、
やまざき十三の監督デビュー作『あさひるばん』も案の定失敗作でしたが、
本作は一風変わったホラー映画で、なかなかよかったと思います。
ちゃんと楳図かずおの独特のセンスが反映されていて、
タイトル前後の演出なんてホラー映画とは思えないスタイリッシュさです。
白髪の幽霊の外見や、怪奇現象が起こるときに紫のオーブが流れる演出なんかは、
ちょっと漫画チックすぎるような気もしましたが、ある意味斬新です。
特によかったのが音楽で、ふつうはオドロオドロしいBGMを使いそうな場面でも、
男性コーラスのオーケストラによるBGMが使われていて、とても盛り上がります。
ただホラー映画としては全然怖くなくなっちゃいますけどね。

なんだか楳図かずおの作風について、知ったようなことを書いていますが、
ボクは彼の漫画を読んだことはなくて…。
本作にもカメオ出演しているショコタンをはじめ、熱狂的ファンを持つ彼の漫画ですが、
あまり少女漫画は読まないし、その独特のタッチがちょっと苦手で…。
それに彼を初めて知ったのは彼が出演していたテレビ番組で、
その前衛的すぎる格好と奇抜すぎるキャラクターの印象が強すぎて…。
タレントとしては面白いと思うし、嫌いではないですが、
こんな異常なオッサンの漫画がまともなはずないと食わず嫌いしてしまったんですよね。
本作のヒロインも大好きだという彼の代表作『オロチ』は実写映画化されており、
Jホラーの巨匠・鶴田法男が撮っていたので観ましたが、
ホラーというよりはファンタジーで、あまり記憶に残っていません。
映画『オロチ』も熱狂的なファンの多い作品ですが、ボクはイマイチだったので、
やはり楳図かずお作品には感性が追い付くことがないのかなと思いましたが、
本作はなかなか面白くて、これがホントの楳図かずお作品なのだと感じました。
こんなに面白いなら、今度マンガ喫茶に行ったら『オロチ』も読んでみようと思います。

本作の主人公の漫画家の名前は楳図かずおですが、
本作は監督自身の自伝的ストーリーとなっています。
さすがに本人役で出演はせず、6代目片岡愛之助が主演を務めています。
トレードマークの赤白ボーダーの服は着ているものの、
テレビで見た本人ほど奇抜なキャラではないですね。
少し残念な気もしますが、そうじゃないと物語が成立しないかな。
『半沢直樹』で大ブレイクしたと言われている片岡愛之助ですが、
ボクは『半沢直樹』も見ていなかったので、彼の演技を見るのはほぼ初めてかも。
ブレイク後、初の主演作で楳図かずお役なんてイロモノを演じることになるとは、
本当にブレイクしたのかと思ってしまいますが…。
楳図かずお本人も電話先の親戚役で声の出演をしているみたいですが、
それもエンドロールで初めて気が付いた感じです。

本作は監督の自伝的ストーリーですが、どこまでが本当なのか判別は難しいです。
たぶん主人公の出身や生い立ちや経歴はかなり忠実だろうと思いますが、
判断が難しいのは家族の設定ですよね。
特に母イチエの設定はどこまでは本当なのか…。
本作はタイトルの通り、亡き母を題材に描いた物語なのですが、
たぶん本作の主人公を見る限り、彼は母親を愛していたと思うのですが、
そんな最愛の母親を自伝的ストーリーで怨霊として描いてしまうあたりに、
監督の母親に対する複雑な心境を垣間見れます。
ボクも母親のことはとても大切に思っていますが、
そんな愛憎入り混じる割り切れない想いに共感を覚えるんですよね。
まぁ監督の場合は、本作とも関係浅からぬ代表作「ママがこわい」や「洗礼」など、
母親の恐ろしさを題材に描く趣向が多いみたいなので、本人の母への想いは別に、
自伝的ストーリーになってもそれは変わらなかっただけかもしれませんが…。
以下、ネタバレ注意です。

ある日、楳図かずおの家(まことちゃんハウス?)に、
新人編集者の若草さくらが訪れます。
楳図の大ファンである彼女から自叙伝を出版したいと依頼され、快諾します。
自叙伝のためにインタビューを受けるのですが、ここで語られていることは事実かな。
楳図は高野山の麓の五條市出身らしく、幼少期は曽爾村というところで暮らしたそうな。
その頃、教師をしていた父から「おかめが沼」という怖い民話を聞かされて、
後にそれを漫画にした『へび少女』が彼の出世作だそうです。
「おかめが沼」の説明シーンで漫画『へび少女』の映像が使われていますが、
ボクの想像とは違う、意外と普通のタッチでちょっと驚きました。
楳図の絵と言えば、恐怖に戦慄する少女のアップが思い浮かびますが、
普段からあんな怖い絵ではないんですね。

彼が絵を描き始めたのは、なんと生後7か月かららしくて、
母から鉛筆を持たされて、円を描いたのが初めてだったらしいです。
7カ月から絵を描いていれば、そりゃ腱鞘炎にもなるでしょうね。
この母がちょっと変わった人のようで、楳図の本当の誕生日は
子の年、子の月、子の日、子の刻(いつ?)だったらしいのですが、
母が自分の誕生日にして役場に提出してしまったらしいです。
その目的はよくわからず、劇中でもついぞ説明はされず、気になりますね。
そんな母は父の死後、入院するのですが、その時よく夢の話を語ったそうで、
「今日は自分の葬式に行った」「実家に行った」「五條の親戚にお礼参りした」など、
夢の中でいろんなところに行っていたみたいで…。
最期に「次はお前のところに行くよ」と言い、亡くなったそうですが、
その手にはなぜか長い黒髪を握りしめていたそうです。

その話を聞いたさくらは、楳図の創作活動には母イチエの影響が大きいと考え、
彼女のことを調べるために楳図が育った曽爾村へと取材に行きます。
その間、楳図はお留守番になるわけですが、楳図が主人公だと思っていたので、
さくらがひとりで取材に行き、彼女を追う展開になったのは意外でした。
彼女はちょっと不思議なところがあって、曽爾村に着くなり、
何かを感じ取ったのか、右手で宙を指すのです。
何か見えたようですが、その行動に何の意味があるのかわかりませんでしたが、
なんだか不気味で、彼女は人間じゃないかもしれないなんて思いましたが、
別にそんなことはないようで、ちょっと霊感の強い普通の女性だったみたいです。

タイチ村(?)というところにイチエの姪が住んでいるとわかり、
さくらは白タクを拾って向かうのですが、途中で謎のエンコ…。
そこから歩いて村に向かう途中の山道に滝があり、そこで美女の幻を見ます。
美女は滝で水浴びをしているところを渡りの猟師に強姦されますが、
猟師の持ていた猟銃で反撃し、猟師は右手を大怪我するという幻で…。
その後、村で姪の息子からイチエの話を聞くと、
イチエも猟師から強姦されたことがあり、どうも滝の美女はイチエだったみたいです。
強姦以後、イチエは男狂いになったと噂されていたそうですが、
たぶんフィクションだとは思うけど、自分の母親が強姦され男狂いになるなんて物語を、
自伝としてまるで事実だったかのように、よく撮れるものだなと思いました。
しかも楳図の本当の父は強姦魔である猟師だったという展開で…。

翌日、姪の孫しょう子からイチエの葬式の時の写真を見せてもらうのですが、
なんとそこにはイチエの姿も写っていて…。
どうやらイチエの入院中の「葬式に行った」という夢の話は本当だったみたいです。
しょう子の案内で今は廃墟のイチエの実家に行くのですが、
そこにハンディカムを回しながら入ったさくらですが、2階から少女の泣き声が聞こえ、
おそるおそる2階に上がると、そこには目から血を流す少女が…。
ここのシーンはPOVで撮られており、臨場感があってなかなか怖かったです。
少女が襲い掛かってきたので、さくらはしょう子と一緒に一目散に逃げますが、
しょう子が急にイチエに変わり、さくらは錯乱して病院に担ぎ込まれます。
しょう子も遺体となって発見されますが、彼女の父も家で死んでいたみたいで…。
「実家に行った」という夢の話も本当で、目から血の少女もイチエだったのでしょう。

当然「親戚にお礼参りした」という夢の話も本当で、
この後、しょう子らも含めて楳図の親類縁者が次々と怪死していきます。
「お礼参り」というのは世話になったお礼をするわけではなく、
報復行為の俗語の方の意味だったみたいですね。(こっちの意味の方が一般的か。)
強姦事件のこともあり、彼女は親族からあまりいい扱いを受けてなかったみたいです。
自分の親類縁者しか襲わないというのが『ハロウィン』のブギーマンみたいですが、
イチエの方が殺す動機が明確なのがいいです。
でも楳図のイトコなんて、イチエとそれほど接点があったとは思えませんが、
ただお通夜で笑っていたことで恨みを買ったみたいです。
お通夜は楽しく過ごすもので、別に彼女の死を喜んでいたわけではないはずですが、
ボクも個人的にお通夜で楽しそうにしていることに違和感を覚えるタイプなので、
それを恨むイチエの卑屈さもちょっと理解できてしまいます。

イチエの死に際に「おまえのところだよ」と言われていた楳図も当然ビビります。
楳図の弟ミツグはお祓いをするのですが、イチエには効果はなく、
頭を握り割られてしまいますが、後日談によれば、どうやら死ななかったみたいです。
さすがの監督も兄弟まで殺すのは忍びなかったのかもしれませんね。
さくらが病院に担ぎ込まれたと聞き、楳図も駆け付けるのですが、
医者(心理学者)から、事件を起こしているのは母親の怨霊ではなく、
楳図の想像力から生まれた母が具現化しているのだと言われます。
たしかに母の霊であれば、愛する息子まで殺そうとはしないはずなので、
楳図の母に対する恐れが具現化したと考える方が自然な気もします。
イマジネーションで勝負するクリエーターらしい発想の展開ですね。
まぁ実際は怨霊か想像の産物かは明言されていませんが…。

弟ミツグが襲われ、ついに楳図のもとにイチエが現れますが、
彼は手のひらにイチエが嫌いな蜘蛛の絵を描いており、それを見せて撃退します。
イチエと対決する覚悟を決めた楳図は、さくらと一緒に野迫川村の廃校に行きます。
そこはイチエと教師の父が初めて出会った思い出の場所です。
イチエは蜘蛛以外にも楳図が描く美しい女性の絵を怖がるそうで、
沢山コピーしてお札のように教室中に貼り付け、イチエを迎え撃ちます。
この絵の美女は監督の代表作のひとつ「洗礼」のヒロインらしいのですが、
本作のヒロインの名前もその漫画のヒロインから取られているそうです。
たしかに綺麗だけど、どこか不気味な印象を受ける絵で、
これが暗い教室に貼り巡らされていたらイチエじゃなくてもビビリますね。
イチエが教室に現れ、その絵の効果は確かにありましたが、
すぐに廊下に逃げ出しちゃったので、倒すことは出来ませんでした。

戦いは廊下に移り、へびのように迫りくるイチエに対し、
楳図はナタで応戦するのですが、たとえ怨霊でも母を斬りつけることはできず、
彼は倒れこみ「あなたの好きにしてください」と観念するのですが、
さくらが楳図に覆いかぶさるイチエに背後から斬りかかるのです。
ところがその瞬間、崖崩れが発生して校舎の一部が倒壊し、
さくらがバランスを崩して崖から落ちそうになるのです。
するとなんとイチエが彼女の髪を鷲掴みにして引き上げてくれ、
その反動でイチエが崖に落ちてしまうのです。
なぜイチエがさくらを助けるのかイマイチ理解できませんでしたが、
さくらを殺そうと思えば実家の時でもできたはずなので、
親類縁者以外は殺さないというポリシーでもあったのかな?
でも、ミツグの雇った祈祷師は殺していたような気がするので…。
イチエはもともと愛する息子である楳図を殺すつもりはなく、
息子がさくらに好意を寄せていると知って、彼女を助けたのかもしれませんね。
母を怨霊として描いていた監督も、最後は母をいい人として締めたかったのかも。
でも楳図かずおが女性を好きになるなんて、ちょっと意外な展開ですよね。
たしか結婚もしてなかったと思うので、ソッチ系かと思っていたので…。

以上で本作は幕を下ろしますが、エンドロールは最後まで観るべきです。
ショコタンの主題歌でも聴きながら、最後の最後まで楽しみましょう。

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