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フルスロットル

今日も映画の感想です。

フルスロットル
Brick Mansions

2014年9月6日日本公開。
ポール・ウォーカー主演のアクション映画。

マフィアたちがはびこる無法地帯となっているデトロイトの一角。そこに潜り込み、マフィアの動向を探る潜入捜査官ダミアン(ポール・ウォーカー)は、彼らがデトロイト市民300万人をターゲットに中性子爆弾を起動させようとしている情報をつかむ。彼は、マフィアにさらわれた恋人を取り戻そうとする圧倒的身体能力を持つ男リノ(ダヴィッド・ベル)と協力し、10時間後に迫る中性子爆弾の起動を阻止することに。敵が次々と立ちはだかる中で爆弾と恋人を捜す二人だが、事態の裏には巨大な陰謀がうごめいていた。(シネマトゥデイより)



本作は昨年末に交通事故で急逝したポール・ウォーカーの主演作です。
『ワイルドスピード』シリーズでお馴染みの彼ですが、
大好きな俳優のひとりだったので非常にショックを受けました。
でも今年に入り『スティーラーズ』『ハリケーンアワー』と彼の出演作が公開され、
彼の出演作をコンスタントに3本も観る年なんて今までなかったので、
なんだかまだ生きているような錯覚に陥ります。
しかし、それも残りわずかで、来年公開予定の『ワイルドスピード7(仮題)』は、
クランクアップ前に事故が起きたので、一部を彼の弟が代役しているらしく、
フル出演した作品は本作が最後となります。
そう思うと、また急激に寂しい気持ちになるのですが、更に輪をかけて残念なのは、
実質遺作とも言える本作の評判が非常に悪いことです。
某全米批評サイトでも26%の支持しか得られず、全米初登場も5位に低迷…。
約3000万ドルの製作費に対し、2000万ドル程度の興収となってしまいました。
少しくらい追悼補正がかかってもよさそうなものですが、アメリカ人はシビアです。

そんなに出来が悪いのか、といえば全くそんなことはなく、
むしろ誰でも楽しめる娯楽映画だと思います。
なのになぜ評価が低いのかといえば、強力な比較対象があるからに違いないです。
その作品は10年前に製作された『アルティメット』ですが、本作はそれのリメイクです。
『アルティメット』はリュック・ベッソン製作・脚本で撮られたフランス映画ですが、
それは本作も同様で、制作もベッソン率いるヨーロッパコープであり、
いわばセルフリメイクのようなものなのですが、
大きく違うのは本作が仏加合作の英語映画だということです。
『アルティメット』はフランス語映画でしたから、英語リメイクということになりますね。
もちろん、それに伴いローカライズもされており、
舞台はパリからデトロイトに移されていたりするのですが、
その内容は9割ちかく同じで、かなり忠実なリメイクだと言えます。
しかしたかだか10年前の作品を忠実にリメイクしても目新しさはないし、
こんなに早くリメイクする必要があったのかと思われるのは当然です。

英語リメイクした意図はわかります。
『アルティメット』は大変好評で、某全米批評サイトでも支持率80%の高評価でした。
ところがなぜか本国フランスでは、かなり酷評されたようで、
(『ニューヨーク1997』やタイ映画『マッハ!!!!!!!!』のパクリと言われたそうな。)
フランス国内よりも海外で高い評価を受けた作品だったみたいです。
しかし一般的なアメリカ人客はアホなので、外国語映画は観ません。
世界最大の映画市場アメリカで勝負するためには英語映画であることが不可欠で、
この英語リメイクに踏み切ったものと思われます。
今では『LUCY』や『96時間』など、英語映画も多く手掛けるヨーロッパコープですが、
その転機となったのも『アルティメット』の結果を受けてのことだと思われます。
きっと「英語で撮っておけばよかった」と悔やんだのでしょうね。

英語じゃなかったのは悔やまれるが、内容には自信があったため、
言語だけ替えて、忠実なリメイクにした方がいいだろうと考えたのでしょう。
本作は所謂バディもので、ウォーカーともうひとりのW主演体制なのですが、
驚いたことにもうひとりの主演ダビッド・ベルは、
オリジナル版『アルティメット』でも同じ役を演じていて、
主演俳優まで替えない、忠実にもほどがあるリメイクとなっています。
というのも、『アルティメット』の最大の見所はパルクールを取り入れたアクションで、
ダビッド・ベルはパルクールの創設者であり先駆者であるため、
替えが利かない人物なので、代役は不可能だったのでしょう。
しかし『アルティメット』当時はバリバリだった彼も、10年も経てば衰えます。
いや、本作のアクションも凄かったので、そこまで衰えていないかもしれませんが、
現状維持ではオリジナルほどの目新しさもなく、インパクトの低減があるため、
アクションがパワーダウンしている印象は否めません。
だからリメイクはオリジナルを超えなくてはいけないのですが、
それはアクションに限らず、忠実なリメイクではダメなのです。

もうひとりの主演に人気俳優ウォーカーを起用したのは、パワーアップしたと言えます。
ダミアンという役を演じますが、オリジナル版のダミアンよりも華があるし、
心なしか扱いも大きくなっているような印象を受けます。
ただオリジナルのダミアンを演じたシリル・ラファエリはスタントマン出身で、
アクロバットなアクションを得意とするアクション俳優であり、
ベルほどではないが、パルクールも熟せます。
その点、ウォーカーはそこまでのアクション俳優ではありませんから、
彼のアクションシーンもかなりオーソドックスなスタイルになり、
パルクール映画である本作のパルクール含有量は確実に下がっています。
しかしそれは必ずしもデメリットであるとは言えません。
どのみちパルクールの目新しさは低減しているので、パルクール頼みだけではダメ。
その点、ウォーカーはパルクールこそできませんが、別の特技があります。
『ワイルドスピード』でも自分でカースタントを熟しちゃうほどのカーアクションです。
ウォーカーと言えばカーアクション、カーアクションのない彼の出演作は物足りないが、
本作はオリジナルにはなかったカーアクションを随所に付加しています。
それが忠実すぎるリメイクの本作に、ちょっとした新風を吹き込んでいます。
とはいえ、既視感を覆せるほどの新風ではありませんでしたが…。

本来、リメイク作品であれば、それがお客さんに伝わるように、
オリジナルのタイトルを流用する方がいいと思うのですが、
本作の邦題は『アルティメット』ではありません。
これでは日本にも沢山いる『アルティメット』ファンが気づかない可能性も…。
でも前述のような理由から、逆にリメイクだと気づかれたくないのかもしれませんね。
ウォーカー主演なので、まるでカーアクション映画のような邦題が付けられました。
(「フルスロットル」というのはアクセルべた踏みのことです。)
でも原題もオリジナルとはタイトルが違うのです。
これはリメイクと気づかれたくないからではなくて、舞台が違うからでしょう。
オリジナル『アルティメット』の原題は「Banlieue 13」で「13街区」という意味で、
本作の原題は「Brick Mansions」で、それぞれ舞台の名前になっています。
ブリックマンションはデトロイトにあるという設定で、そこは無法者たちの住処で、
警察も手が出せず、外壁で隔離されている場所なのですが、
マンションなんて聞くと、一棟の高層住宅のようなイメージを持ってしまい、
『ジャッジ・ドレッド』(2012)の高層住宅ピーチツリーのようなものを想像しますが、
ブリックマンションは何棟もの高層住宅が密集する団地みたいな感じですね。
オリジナルを知っていれば問題ないが、初見だと少し掴みにくい設定かもしれません。

2018年、デトロイトにある隔離された無法街区ブリックマンションで、
自分の生まれた街に薬物がに蔓延していることを憂う男リノは、
ブリックマンションの支配者トレメインからコカイン20キロを盗み、自室で廃棄します。
浴槽にコカインをぶちまけ、排水溝に流そうとするがなかなか流しきれず、
洗剤もぶちまけて使用不能にするのですが、そんな細かい演出までオリジナル通りで、
「ああ、これは忠実すぎるタイプのリメイクだな」と嫌な予感がしました。
同じ映画を二度見るのは退屈ですからね。
そこからはもう、オリジナルとの相違点を探すことに意識が向いてしまったので、
この感想もオリジナルとの比較が多くなるかもしれません。
オリジナル未鑑賞の人には何の事だかわからない文章になるかも…。

コカインを盗んだことで、トレメインの手下K2たちに襲撃されるリノですが、
得意のパルクールで、マンション内を縦横無尽に逃げ回るのです。
彼は肩幅がギリギリ抜けるかというくらいの細い窓でもスイスイと通り抜けますが、
窓から窓へと移動する姿に、彼はドアを使ったことがあるのかと思うほどです。
リノに逃げ切られ、トレメインから大目玉を食らうK2ですが、
リノを誘き出すため、彼の恋人ローラを拉致することを提案します。
オリジナル版ではローラは恋人ではなく妹という設定だったのですが、
その設定の変更も、リノ演じるベルが歳を取ってしまったので、
妹という設定はちょっと無理があると考えたのかもしれません。
ローラも類まれなる運動神経の持ち主で、アクションも熟しますが、
オリジナルはあの兄にしてこの妹ありって感じでよかったけど、
恋人となると、どんなカップルだよって印象になりますね。

ローラはK2に捕えられ、トルメインのアジトに連れて来られますが、
彼らが「これでリノを誘き出せる」と考えたのも束の間、天窓からリノが登場。
ローラをストーキングでもしているのかと思うほど素早い行動です。
リノはトルメインを人質にして、ローラと一緒にアジトから脱出し、
そのままブリックマンションの隔離のための外壁にある検問所に行き、
外壁の警備に当たる警察司令官にトルメインを引き渡すのです。
ところが司令官はトルメインから賄賂を貰っており、逆にリノを逮捕し拘留。
トルメインはローラを浚って悠々と帰っていきます。
怒ったリノはギロチンキックで司令官を殺害し、警官殺しで刑務所送りになります。
いやはや、何から何までオリジナル通りで…。

一方、もうひとりの主人公ダミアンは、デトロイト市警の警官で、
ブリックマンションに密輸される麻薬工場に潜入捜査中です。
ダミアンを演じるのはウォーカーですが、彼は潜入捜査官役が似合いますね。
変装でカラコンして毛染めもしているので、初めは「あれ?」と思っちゃいました。
ここはオリジナルでは裏カジノに潜入していたと思うので、変更点のひとつですが、
この後のトルメインを追う展開に繋げるにはコチラの方が自然なので、
本作には珍しいいい改良点だと思いました。
中国人が経営するコインランドリーの地下に麻薬工場があるというのも面白いです。
なんでも東南アジアではケシが自生していて材料費がタダなので、
麻薬の生産はボロ儲けなんだそうですが、それなら20キロくらい盗まれても…。
ダミアンの手引きで警官が突入し、麻薬元締めの男は車で逃走しますが、
得意のカーアクションで捕まえ、文字通り交番にぶち込みます。
まぁここはカーアクションとはいっても、カーチェイスのようなものではなく、
走行中の狭い車内で殴り合う、カー内アクションですけどね。

ダミアンは元締め逮捕の功績により、市長から新たなる潜入捜査を命じられます。
トルメイン一味に襲撃された警察車両から積荷の中性子爆弾が盗まれますが、
積荷を知らなかった彼らが開封してしまったため、起爆タイマーが作動したと…。
ブリックマンションに潜入し、爆弾に解除コードを打ち込んでくる任務です。
しかし、警察すら把握できていない場所だけに、精通した案内役が必要ということで、
警官殺しで拘留中の囚人リノを連れていくように言われます。
もひろんリノは爆弾のことなんて知らず、警察に協力するはずもないが、
ダミアンは囚人のふりをして刑務所に入り、リノの乗った護送車を奪って脱走。
そのまま2人でブリックマンションに向かうのです。

リノはダミアンが警官だと気付いており、ちょっとした小競り合いがありますが、
リノはローラ奪還、ダミアンは爆弾解除でトルメインに用があることで利害が一致。
協力することにして、2人でトルメインに会いに行くのです。
2人がトルメインのアジトを訪ねると、彼も予期せぬ爆弾の起動に困惑しており、
仕方ないのでロシア製ロケットに爆弾を括り付けて、
デトロイト市街地に向けてぶっ放すつもりだったみたいです。
そのロケットにはついでにローラも結び付けられており、
2人はロケット発射を阻止しなくてはならなくなります。
オリジナルだとローラは麻薬漬けにされて犬のように飼われていましたが、
あまりに刺激的すぎるためか、その演出はなくなりました。
彼女がチンピラの口にパンツを突っ込む印象的なシーンもカットされ残念です。

ダミアンがトルメインに爆弾を譲ってほしいと頼むと、
「市民1人10ドル、300万人だから3000万ドルで売ろう」と提案されます。
3000万ドル(30億円)と言われると大金ですが、
市民1人10ドルで助かると思えば意外と良心的なお値段です。
ところがダミアンがその提案を電話で市長に伝えると、
「財政難でそんな金ないよ」と膠もなく却下されてしまい…。
しかし爆発まで48分を切り、提案を受けるしかないので、ダミアンは勝手に承諾します。
もうすぐ口座に入金するので、先に解除だけさせてほしいと頼みますが、
さすがにそんなに甘くはなく、入金があるまで監禁されることになります。
オリジナルではどうやってそこから脱出したのか忘れましたが、
本作ではリノが仮病を使い体調不良を訴えて、見張り役を騙して脱走するという、
あまりに古典的でベタベタな方法で、ちょっと笑っちゃいました。

ロケットはあるビルの屋上に設置されていますが、監禁から脱走した2人は、
トルメインの手下の狙撃手からライフルを奪い、ダミアンが近くのビルから、
ロケットの発射装置を狙撃して遠隔発射を不可能にします。
それに気づいたトルメインは手動で発射させるため、屋上に向かいます。
オリジナルではこの展開はありません。
なぜならこの時点でトルメインに当たる一味の親玉は死んでいたからです。
というのも市長は親玉の口座に入金するどころか、彼の口座を凍結したため、
給料が貰えなくなった手下たちが反乱を起こしたからです。
本作では口座の預金残高がゼロになっても、手下はトルメインに従います。
金だけの繋がりではなく、カリスマ性があるためだと思いますが、
たしかにHIPHOP界の重鎮RZA演じるトルメインには凄味がありますね。
親玉の顛末は本作中最大の改変点だと思います。

トルメインを追って屋上に向かう2人の前に怪力の大男が立ちはだかります。
オリジナルでは「イエティ」と呼ばれ、ハゲのデブだったと思いますが、
本作では元WWFのプロレスラー、クルガンが演じており、かなり強そうです。
でも倒し方はオリジナルと同じで、コードでグルグル巻きにされて、
瓦礫で殴り倒されるという、冗談みたいに情けない結末で…。

2人が屋上に着いた時には、トルメインが手動でミサイル発射させようとしていました。
しかし急に思い留まり、ダミアンに解除してほしいと言い出すのです。
トルメイン曰く「俺は実業家だ。大量殺人はしない。」と…。
彼は端からミサイルを撃つつもりも、爆発させるつもりもなく、
本当に3000万ドル儲けたかっただけなのかもしれませんね。
2人は爆弾に解除コードを打ち込もうとしますが、リノがそのコードを見て、
「これってブリックマンションの郵便番号だよね。なんか臭うな。」と言い出し、
解除コードではなく、起爆コードではないかと疑うのです。
それを聞いたダミアンも躊躇し、打ち込めないままカウントダウン完了しますが、
リノの予想通り、爆弾は爆発することはなく…。

実はこの爆弾は、市長の再開発計画のために、
再開発地区にあるブリックマンションをグランドゼロにしちゃおうと、
意図的にトルメイン一味に盗ませ、ダミアンを潜入させて起爆するつもりだったのです。
それならタイマー起爆でもいいじゃないかと思いますが、オリジナルによれば、
確実に13街区(ブリックマンション)で爆発させたいのでダミアンを使ったみたいです。
その説明がないので、本作だけだと少し不可解な展開に感じるかも。
しかし問題はそんなことよりも、こんな大どんでん返しのある作品を
リメイクしちゃダメだろってことですよね。
オリジナルを観た人はそのオチもわかってるので、大どんでん返しが機能せず、
全くサプライズのない展開になってしまっています。
それでも違うオチかもと期待して観たいところですが、本作の冒頭で、
市長が再開発についての会議をするシーンがあり、このオチが予測できます。
冒頭のシーンはオリジナルではないはずなので、全く余計なことをするものです。

オリジナル同様に2人はその爆弾を持って、市長室を訪れて市長を問い詰め、
「ブリックマンションを爆破するつもりだった」と白状させます。
それが報道され、市長は爆破未遂で逮捕、失職することになります。
その時、2人と一緒にトルメイン率いるブリックマンションの住民も
大挙して市役所に襲撃を掛けるのですが、トルメインとは完全に和解したみたいです。
トルメインは失職した市長の代わりに市長に立候補までしちゃいます。
いやー、オリジナルに比べ、親玉の扱いがめちゃめちゃ善くなりましたが、
仮にも麻薬売買組織のボスで殺人もしている犯罪者なのに、
彼が市長なんかになったら、デトロイト全体がブリックマンション化しちゃいますよね。
まぁ展開としては面白いけどね。

オリジナル『アルティメット』は、続編『アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ』があります。
本作もせっかく英語リメイクまでしたので、シリーズ化も考えていたと思われますが、
ポール・ウォーカーが亡くなってしまったので、それも無理になってしまいました。
まぁここまで評判が悪いと、たとえウォーカーが存命だったとしても、
続編の企画は通らなかったと思いますけど…。
『アルティメット』鑑賞済みの人はあえて本作を観ることもないですが、
未鑑賞の人はきっと楽しめると思うのでオススメです。
あとポール・ウォーカーのファンは当然観るべきでしょう。
『ワイルドスピード7』で彼も見納め…、早く観たいような、名残惜しいような…。

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