ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

ザ・ヘラクレス

ボクはアメコミ映画や怪獣映画、カーアクション映画が大好きですが、
アメコミは読んでないし、昭和の怪獣映画もほとんど見てないし、
車についても詳しいわけではありません。
そんなボクが他人より多少詳しいと思えるものは、ギリシャ神話だけです。
10年ほど前にある事情から激嵌りして、ギリシャ神話オタクになったのですが、
今はそれほど接しているわけでもないので、当時より知識は抜けてきています。
でも依然としてギリシャ神話は好きで、ギリシャ神話を題材にした映画も好きです。
ギリシャ神話映画は好きなのですが、満足できる出来のものは少ないのも事実。
2年ほど前にハリウッドでギリシャ神話映画ブームの兆しがあったのですが、
駄作が続き、あっという間に鎮静化してしまい、非常に残念です。
全てのファンタジー物語のルーツはギリシャ神話にあるといっても過言ではなく、
ギリシャ神話は面白い物語の宝庫なので、もっと映画化してほしいです。
ちなみにボクのハンドルネームもギリシャ神話の英雄「ベレロポン」が元ネタですが、
ベレロポンの物語が、なぜ一度も映画化されていないのか…。

ということで、今日はギリシャ神話最大の英雄ヘラクレスの物語の感想です。

ザ・ヘラクレス
The Legend of Hercules

2014年9月6日公開。
レニー・ハーリン監督によるギリシャ神話アクション映画。

古代ギリシャ。オリンポスの神ゼウスの血を引く青年ヘラクレス(ケラン・ラッツ)は、姫ヘベと運命の出会いを果たす。だが政略結婚を図る兄に彼女を奪われた上に、戦地へと送られてしまう。仲間の戦士ソティリス(リアム・マッキンタイア)の力を借りて、地獄のような戦いを切り抜けるヘラクレス。圧政を強いる暴君アンピトリュオン王(スコット・アドキンス)への反乱に身を投じながらも、彼は兄からヘベを奪い返そうと奔走する。(シネマトゥデイより)



英雄アキレウスを題材にした『トロイ』、英雄テセウスを題材にした『インモータルズ』、
英雄ペルセウスを題材にした『タイタンの戦い』シリーズなど、
近年、ギリシャ神話の英雄たちを題材にした映画はありましたが、
なぜか最も有名な英雄であるヘラクレスを題材にした映画はありませんでした。
いや、ディズニーアニメ『ヘラクレス』はありましたが、実写映画は全くありません。
ヘラクレスの冒険は「12の功業」など、面白いエピソードが沢山あるのに、
なぜ映画化しないのか不思議でしたが、今年になって急に2本も公開となりました。
一本は来月日本公開の『ヘラクレス』、そしてもう一本が本作『ザ・ヘラクレス』です。

ついにヘラクレスが脚光を浴びたのは嬉しいのですが、
『ヘラクレス』と『ザ・ヘラクレス』って、ちょっとややこしくないですか?
来月公開の『ヘラクレス』は原題が「Hercules」なので原題通りですが、
本作『ザ・ヘラクレス』は原題が「The Legend of Hercules」なので、
邦題付けるなら「ヘラクレスの伝説」くらいの方が混同され難くていいと思います。
ただ本作の邦題を付けた人は、確実に混同されることを狙っています。
日本では約一月半違いで本作の方が先に公開となりますが、
全米公開もこちらの方が半年ほど早く、おそらく企画が立ち上がったのも先です。
サミット・エンターテインメント配給(日本では日活配給)の本作ですが、
当初は「Hercules: The Legend Begins」或は「Hercules 3D」と称されていましたが、
後からパラマウント配給の『Hercules』の製作が決まり、改題しました。
少しでも混同しないようにする配慮だと思われますが、いざ全米公開すると大コケ…。
一方、後発の『Hercules』は大ヒットしています。
そこで日本公開では、あえてややこしい邦題を付けて、
あわよくば後発『ヘラクレス』と誤認して本作を観てもらおうと考えたと思われます。
なかなかそんなオッチョコチョイな客はいないと思いますが、
宣伝規模も全然違うので、ある程度の便乗効果は見込めるはずです。

たとえ全米での成績が悪くても、内容に自信があれば便乗は必要ないはずで、
つまり本作は、あまり内容に自信が持てるような作品ではないということです。
後発の『ヘラクレス』は全米公開時の評判も上々で、大ヒットも当然ですが、
本作は全米公開時の評判がかなり悪く…。
本作は全米初登場は3位と、まずまずの滑り出しでしたが、
なんと翌週は13位と、10ランクも急落しているんですよね…。
某有名批評サイトでも驚異の支持率3%で、これでよく日本公開されたものです。
まぁギリシャ神話オタクのボクは、どんなに評価が悪かろうとも観に行きますけど。

…で、いざ観てみたのですが、正直そこまで悪い出来でもなかったです。
ギリシャ神話好き好き補正が掛かっているからかもしれませんが、
そこまで酷評されるような内容ではなく、王道のグラディエイター映画です。
とはいえ、これがヘラクレスかと言われると、違うとは思いますし、
なぜ酷評されてしまったのかもわかる気はします。
簡単に言えば、世界観のファンタジックさが中途半端なんですよね。
やっぱりギリシャ神話が題材ならファンタジー映画を期待する人が多いでしょうが、
本作はほとんどファンタジー要素、神話的要素がありません。
それなら逆に『トロイ』のように全くファンタジー要素を排して、
歴史スペクタクルのような切り口にすれば興味深い作品になりそうだけど、
微妙にファンタジー要素も残しているので、非常に中途半端な印象になります。
以下、ネタバレ注意です。

紀元前1200年、古代ギリシャ。
ティリンス王アンピトリュオンは侵略戦争に明け狂いますが、
王妃アルクメネは夫の暴政が我慢ならず、アルゴスの神官に相談することに。
神官に憑依した女神ヘラは、「あなたの子は救世主になる」と予言しますが、
アルクメネがこれ以上アンピトリュオンの子を産むことを拒むので、
「それなら私の夫ゼウスの子を産みなさい」と神託を与えるのです。
その夜、ゼウスが彼女の寝室に現れて…。
それからしばらく後、アルクメネは男の子を出産します。
アンピトリュオンから「アルケイデス」と名付けられますが、その子こそヘラクレスです。
ギリシャ神話では身持ちの堅い美女アルクメネに目を付けた好色のゼウスが、
夫アンピトリュオンに化けて彼女を抱き、ヘラクレスが生まれたため、
ゼウスの妻ヘラが嫉妬して、ヘラクレスに生涯嫌がらせをするのですが、
まさかヘラがあえてゼウスの浮気を容認、いや推奨するなんてね。
たしかにヘラクレスという名前は「ヘラの栄光」という意味で不思議でしたが、
それを元にした新解釈なのかもしれません。
ちなみに本作ではアルクメネの寝室に現れたゼウスですが、
もちろんアンピトリュオンに化けていませんが、何故か姿が見えません。
ハデスの兜でも被っているのかもしれませんが、本作では神々は姿を見せません。
オリュンポスの神々が存在するのは間違いないのに、一切登場しないというのも、
本作の中途半端な印象に一役買っているような気がします。

ヘラクレスにはイピクレスという兄弟がいます。
イピクレスはアンピトリュオンの実子で、本作では兄という設定ですが、
神話だとヘラクレスの弟、あるいは双子というのが一般的です。
ボクの印象だと粗暴で勇猛なヘラクレスに対し、聡明で臆病なイピクレスという、
真逆の印象があったのですが、本作のイピクレスは狡猾な男という印象です。
2人にはケイロンという教育係が付いているのですが、
神話のケイロンは多くの英雄の師であるケンタウロスですが、
本作のケイロンは人間で、アンピュトニオンに仕える老人です。
本作には神々も姿を現しませんが、どうやら幻想生物も全くいないみたいですね。
ヘラクレスと言えば、ケンタウロスをはじめ、ヒュドラ、オルトロス、ケルベロスなど、
怪物たちとの戦うエピソードが魅力なのに、なぜ怪物のいない世界観にしたのか…。
唯一、神話に登場する怪物としてはネメアの獅子が登場しますが、
これも普通のライオンになっています。
ネメアの獅子の皮は刃物を通さないので、ヘラクレスは絞め殺すしかないのですが、
本作のネメアの獅子は単なるライオンなのに、なぜかやはり絞め殺します。
その皮は剥ぎ取られ、ヘラクレスが身に着け、彼のトレードマークになるのですが、
なぜか本作ではイピクレスが皮を横取りしてしまいます。
ところが、なぜか終盤ではヘラクレスがライオンの皮らしきマントを着ており…。
もうどういう演出なのか理解に苦しみます。

本作のヘラクレスの最大の敵となるのは、
そんな怪物や女神ヘラではなく、義父アンピトリュオンです。
彼は次男ヘラクレスが自分の子ではないと薄々感じ、長男イピクレスばかり贔屓。
横暴で卑怯な暴君という描かれ方ですが、冒頭のアルゴス侵略では、
アルゴス王ガレヌスとタイマン勝負しているんですよね。
勝った方が相手の国を貰うという総取りルールでしたが、戦局も有利だったのに、
そんな勝負を持ち掛けるなんて、なかなかフェアな男じゃないですか。
しかも戦っている最中に、ゲレヌスが落とした剣を拾ってあげたり…。
こういう人物設定のブレも作品の中途半端な印象に繋がります。

20歳になったヘラクレスはクレタ王女ヘベと交際しています。
神話でもたしかにヘラクレスはヘベと結婚するのですが、
それは死後、神界に上がってからの話なので、本来のヘベは王女ではなく女神です。
しかもゼウスとヘラの娘であり、異母兄弟なんですよね。
まぁ神話上の人物設定が改変されるのはハリウッド映画では毎度のことなので、
いちいち目くじらを立てませんが、本作は神話通りの人物がひとりもいませんね。
それなら全くのオリジナルストーリーで作ればいいのに、
なぜわざわざギリシャ神話、ヘラクレスを題材にしちゃったのでしょう。

アンピトリュオンは長男イピクレスとクレタ王妃ヘベを政略結婚させることにしますが、
もちろんヘベと交際中のヘラクレスは納得できず、2人で駆け落ちします。
ところがすぐにイピクレスの追手に捕まってしまい…。
罰としてヘラクレスはヘリオポリス反乱鎮圧のエジプト遠征に駆り出されるのです。
遠征に行くのは若い隊長ソティリス率いる160人の部隊でしたが、
王の命令で直前に半数の80人にされてしまい…。
戦力大幅ダウンしたソティリス隊は、ホルスの山道で野営する際に、
敵大軍から襲撃を受けて、案の定全滅してしまうのです。
辛うじて生き残ったソティリスとヘラクレスは、敵司令官タラクに奴隷として売られます。
ヘラクレスと名乗ったので、ティリンス王子アルケイデスとは気づかなかったようです。
ギリシャには「アルケイデスは戦死した」と伝えられ、ヘベは悲しみます。
この山道での攻防ですが、実質20人の少数で敵大軍と戦う展開は、
『300』みたいでなかなか見応えがあったと思います。

奴隷となったヘラクレスとソティリスは闘技場のプロモーターに売られ、
連日見世物のファイトクラブをさせられ、負け知らずの活躍をします。
なんとか国に戻りたい2人は、ギリシャの剣闘士大会に出場したいと申し出、
大会の賞金が高額だと知ったプロモーターは、ソシリアの闘技場で、
同じく負け知らずの奴隷ハーフフェイスとフンババと戦い、
勝った方を大会に出場させると同意します。
2対2のタッグマッチですが、ソティリスは完全に足を引っ張ってますね。
実質ヘラクレス1人で敵タッグを倒しましたが、ソティリスは負傷してしまい…。
剣闘士大会は2対6の変則マッチですが、ヘラクレスは1人で出場することになり、
1人で6人の剣闘士を相手に戦うことになります。
まぁソティリスなんて足手まといで、むしろハンディになるかもしれないし、
山道での多勢に無勢に比べたら1対6でも大したことないかな。
対戦相手6人の中には女性剣闘士もいましたが、ヘラクレスは彼女だけは殺さず、
網に包んで動けなくしただけで、意外とフェミニストでした。

大会で勝利したヘラクレスは民衆の人気者になります。
その大会は教育係ケイロンも見ており、死んだはずの王子の帰還を喜びます。
ケイロンから母アルクメネが王アンピトリュオンに殺されたと聞き、
ヘラクレスは復讐を決意し、ソティリスと共に政権打倒に乗り出します。
ソティリスは遠征に行けなかった部下たちを脱走させ、
ヘラクレスは暴政に反旗を翻す英雄として民衆を扇動します。
その反乱の動きを察知した王は、各所から兵士を集めるのですが、
そこにはソティリス隊を襲撃したタラク司令官率いる傭兵部隊も…。
どうやら王がイピクレスの政略結婚に邪魔なヘラクレスを始末するため、
タラク隊を雇って襲撃させたみたいです。
でもその結果エジプト遠征に失敗し、民衆の王に対する不信感は募ったみたいだし、
たかがヘラクレスひとり暗殺するのに回りくどすぎる方法ですよね。

タラクは手始めにソティリスの妻を殺害し、子供を人質にして、
彼からヘラクレスの居場所を聞き出します。(ソティリスは本当に足を引っ張るね。)
イピクレスに捕まったヘラクレスは、民衆の前で公開処刑されることに…。
その公開処刑の場で、共謀者としてケイロンがイピクレスに殺されます。
神話ではケイロンは不死で、死にたくても死ねずに悩むくらいだったのにね。
しかし自分の教育係を殺しちゃうなんて、イピクレスも予想以上に非情な男です。
意外と最後は兄弟で和解するんじゃないかと思っていたのですが…。
石柱に鎖で繋がれて動けないヘラクレスは、「ゼウス、私に力を!」と叫びます。
すると人間業ではない怪力が発動し、石柱の付いた鎖をブンブン振り回し大暴れ。
その戦い方は、完全にギリシャ神話ゲーム『ゴッド・オブ・ウォー』で、
鎖の付いた斧を振り回す主人公クレイトスを意識していますね。
ボクは『ゴッド・オブ・ウォー』も大好きなので面白かったですが、
今まではずっと人間として戦っていたのに、窮地になった途端に神の力を得て、
人間離れしたスーパーパワーを発揮するのは如何なものかと思います。
思い出したように急にファンタジー映画になった感じだし、ご都合主義です。

ご都合主義は更に続き、民衆や脱走兵を扇動し蜂起したヘラクレスは、
城に乗り込むのですが、そこでタラクの部隊に包囲されてしまい万事休す…、
…と思いきや、またゼウスの力を借り、ヘラクレスの剣がゼウスの雷霆を受けて、
サンダーソードとなり、鞭のように一振りで大軍を退けてしまいます。
ここにきてどんどんファンタジーが加速しますね。
それならはじめからもっとファンタジー色を打ち出していれば、
もっと期待通りのギリシャ神話らしいファンタジー映画になったのに…。

そのサンダーソードで王アンピトリュオンもぶち殺せばいいのに、
なぜか普通にタイマン勝負を挑み、国総取りを賭けて普通に一騎打ちします。
普通の人間である王が、半神である英雄ヘラクレスと互角以上に戦うのは
ちょっとあり得ないと思いますが、そこにイピクレスもヘベを人質に乱入。
ヘラクレスは窮地に立たされるのです。
しかしイピクレスに後ろから抱かれて短剣を突き付けられているヘベが、
あえて自らを短剣で貫き、貫通した刃でイピクレスを刺し殺すのです。
その隙にヘラクレスは動揺した王をぶち殺し、戦いに勝利します。
短剣で貫かれ、死んだと思ったヘベですが、致命傷ではなかったみたいで、
その後2人は幸せに暮らしましたとさ。チャンチャン。

いやはや、これのどこがヘラクレスの物語なんだって感じですが、
本作を観た人が、これがヘラクレスなんだと誤解しないことを祈ります。
それでもボクは(その差異も含めて)意外と楽しめた方ですが、
ここまで評価が低いということは多くの人は全く面白くないのかもしれません。
それでもこれだけでヘラクレスの物語ってつまらないとは思わないでほしいです。
せめて来月公開のパラマウント配給『ヘラクレス』も観てから判断してください。
ボクも観てないのでその出来はわかりませんが、
本作よりはマシだろうという確信はあります。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/1362-5e61a409
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad