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プロミスト・ランド

久しぶりのブログ更新になります。
先週末に封切られた映画は、あまり観たいものがなく、実際に観なかったため、
今週は一本も感想記事を書くことができず、丸一週間ほど更新が開きました。
更新間隔を開けるのは嫌なので、普通ならビデオの感想でも書いて繋ぐところですが、
どうも夏バテみたいで、更新する意欲がわかず、放置してました。
映画館に行かなかった分、家にいる時間が長かったので、
新作ビデオも4~5本鑑賞しており、そのうち一本は執筆していたのですが、
夏バテのせいか途中でダウンして断念…。
やはり劇場映画に比べると、ビデオ映画は執筆のモチベーションも上がり難く、
無理を押してまで感想を書こうとは思えなくなりますね。

気候も少し涼しくなって、夏バテも回復してきたし、
今週末は観たい映画が数本封切られたので更新を再開しますので、
またお付き合いください。

ということで、今日は9日ぶりに観た劇場映画の感想です。

プロミスト・ランド
Promised Land

2014年8月22日日本公開。
マット・デイモン主演の社会派ドラマ。

寂れた田舎町のマッキンリーを訪れた大手エネルギー会社の幹部候補スティーヴ(マット・デイモン)。そこには良質のシェールガスが埋蔵されており、不況に苦しむ農場主たちから安値で採掘権を買収する交渉のため同地に来たのだった。住民を簡単に説得できるともくろんでいたスティーヴだったが、思いも寄らぬ障壁が立ちはだかり……。(シネマトゥデイより)



全米で2012年末に公開された本作ですが、1年半以上を経て漸く日本公開です。
全米公開時には公開日未定ながらも日本公開も決まっていたみたいで、
2013年中には観れるものと思っていたのですが、ズルズル公開日が延びました。
全米初登場10位だったことを思えば、日本公開されるだけでも奇跡かもしれませんが、
権威あるナショナル・ボード・オブ・レビュー賞でトップ10に選ばれ、
ベルリン国際映画祭では銀熊賞(特別表彰)を受賞した由緒ある作品で、
これだけのお墨付きがあれば作品の出来は間違いなく、公開しない手はないでしょう。
人気俳優マット・デイモン主演というだけでも公開に値すると思いますが、
更に本作はもともとデイモンの監督デビュー作として企画がスタートしており、
残念ながらスケジュールの都合でメガホンを取るのは断念したそうですが、
アカデミー脚本賞などを受賞した『グッド・ウィル・ハンティング』でタッグを組み、
信頼しているガス・ヴァン・サンド監督にメガホンを預けています。
それだけでもデイモンの脚本に対する自信や本作に掛ける意気込みが
相当なものだったことは窺い知れますし、事実、なかなか面白い作品です。

だから日本でもさっさと公開してくれればいいと思ったのですが、
センシティブな社会問題を含む内容なだけに、
当時の日本ではまだ公開するのに躊躇されたのかもしれません。
本作は、新しい天然ガス資源として重要視されるシェールガスの埋蔵地へ赴き、
不況にあえぐ農場主たちから掘削権を手に入れるエネルギー会社の幹部候補が、
ある日訪れた田舎町での買収中に自分自身の信念を揺るがす出来事に遭遇する、
というようなエネルギー開発に伴う環境問題を含む内容です。
全米公開時にも、エネルギー会社や一部住民からかなり批判されたようですが、
東日本大震災での福島県の原発事故を経験した日本でも、
エネルギー開発に伴う環境汚染のリスクは身をもって味わっているため、
本作のようなセンシティブな作品は政治的に公開し難い状況だったのかも。
そして事故から3年半以上経ち、そろそろ公開しても大丈夫という判断が下ったのかも。

まぁ原子力発電とシェールガスでは全く違うかもしれませんが、
地下水汚染などで土地が死ぬリスクは同じようなものだし、
汚染された地下水を遮断する凍土壁計画も未だ上手くいかない状況で、
日本のエネルギー会社(電力会社)としても本作はまだ煙たい存在なはずで、
その圧力か、せっかく公開された本作ですが、かなり小規模公開で…。
もちろんマスコミもほとんど宣伝してくれず、客入りも悲惨で、
ボクの観た公開初日でも5~6人しかお客はいませんでした。
マット・デイモンの主演作と言うだけでも、半数くらいは埋まるはずなのに…。
なかなか面白い作品なだけに、人目に触れにくい現状は残念です。

まぁいくら公開規模が大きかろうが、いくら宣伝されようが、
社会派ドラマというだけで倦厭されちゃうことはあると思います。
しかし本作は、そこまでゴリゴリの社会派ドラマではなく、
環境問題を訴えるような内容ではありません。
あくまで「信念」について描かれたヒューマンドラマであり、
それを描く手段として、流行のシェールガス革命が取り入れられただけです。
実際、エネルギー問題なら題材は何でもよかったみたいで、
初期の企画では風力発電のための土地買収の物語だったみたいです。
でも第83回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞候補にもなった
アメリカのドキュメンタリー映画『ガスランド』の影響か、
天然ガス掘削による環境汚染に書き変えられたみたいです。
風力発電ならそれほど環境汚染もないはずなので、本作の主題は環境問題ではなく、
エネルギー会社が利益のために農場を買収することの是非と、
買収する社員の倫理観との葛藤を描いた信念の物語なわけです。
なので社会派作品が苦手な人でもちゃんと楽しめるヒューマンドラマになっています。
正直ボクとしてはそこが不満点でもあり、
もっと環境問題に踏み込む展開でもよかったかと思うのですが…。
以下、ネタバレ注意です。

農場以外は何もない田舎町マッキンリーに、
大手エネルギー会社「グローバル社」の幹部候補スティーヴが訪れます。
同社はマッキンリーに良質なシェールガスが埋まっていることに目を付け、
彼は農場主たちから採掘権を含む土地リース契約を結ぶため、各戸営業を行います。
田舎者の農場主らを言葉巧みに騙し、相場よりも安価で契約を取り付けているので、
あまり誠実とは言えないスティーヴですが、彼自身に悪気はないみたいです。
エネルギーを石炭や石油に頼ることや、石油の海外依存にも懸念を持っているし、
契約すれば農場主の収入も上がるし、何もない町も発展するし、
「再生への唯一の道」を示してやっていると信じているのです。
彼自身、オハイオの田舎町出身らしく、祖父は農場を経営していたそうですが、
地元に誘致された大企業の工場が撤退したことで町が荒廃した経験があり、
大企業を誘致することは田舎町にとって非常に重要なことだという信念があるのです。
スティーヴの言葉巧みな交渉に農場主たちも次々と契約しますが、
ボクも彼が間違ったことを言っているとは思いません。
ロクな学校もなく、子どもにロクな教育も受けさせられないような町は問題で、
開発されることで学校が建ったりすることは大切なことですからね。
住民たちも大手エネルギー会社の社員として簡単に雇ってもらえるみたいだし、
一生田舎のままよりも幸せなんじゃないかと思います。

6割ちかい地権者とリース契約し、町の有力者である管理委員長も賄賂で抱き込み、
思いのほか簡単に事が運びそうだと思われましたが、住民との対話集会の際、
参加していたあるひとりの住民から開発反対を表明されるのです。
その住民は地元高校で科学を教える教師ですが、やたらエネルギー開発に詳しく、
彼の質問攻めにスティーヴもタジタジになります。
スティーヴは彼が環境保護団体の人間かと思うほどですが、それもそのはず、
彼はただの田舎の教師ではなく、MIT卒でボーイング社で働いていた超エリートでした。
教師は「シェールガスを採掘する水圧破砕法は完全ではなく環境汚染のリスクがある」
と開発の危険性を訴えて反対しますが、スティーヴもロクに言い返せず…。
結局、開発の是非は住民による投票で決められる運びになるのです。
水圧破砕法は高圧の水で頁岩を破砕して採掘する方法らしいけど、
その水の中に特殊な化学物質を添加するみたいで、地下水汚染の危険性があるとか。
たしかに何だかヤバそうで、そんな事実があると知ればボクも反対しちゃいますが、
開発に乗り気だった住民たちの気持ちも揺らぎ始めます。

でも住民のほとんどが反対に回るかと思えばそうでもなく、意外と開発賛成派も多くて、
投票日に向けて全戸を回る草の根キャンペーンを展開するスティーヴも楽観視します。
不完全な水圧破砕法でも、成功する可能性もあるみたいだし、
やはり環境よりも金銭と考える住民も多いんでしょうね。
しかしそこに「アテナ」なる環境保護団体の青年ダスティンが町を訪れ、
グローバル社のネガティブキャンペーンを始めるのです。
ダスティンはネブラスカの田舎町の酪農農場出身ですが、
グローバル社のエネルギー開発を認めたばかりに、土地が汚染され、
酪農が出来なくなったと住民に訴え、自身の農場で死んだ牛の写真を
チラシやポスターにして、町中にばら撒きます。
スティーヴの泊まるモーテルや車のフロントガラス一面にチラシを貼るなど、
かなり陰湿な嫌がらせにも思えますが、ダスティンは非常に好青年で、
住民たちの心をどんどん掌握し、スティーヴは一転不利な状況になります。
ボクは当然環境汚染には反対なので、スティーヴが正しいとは思わないが、
環境保護団体ってやつも大嫌いなので、ダスティンの肩を持つ気にもなれず、
ちょっと微妙な心境になりました。
でもダスティンの実家の話を聞けば、彼の憤りは理解できるし、
大義は彼にあるかなとも思うのですが、スティーヴはそのネブラスカの件は知らず、
彼の話に信憑性があるのかどうか疑問で、やはりドッチつかずです。

ダスティンを黙らせたいスティーヴは彼の団体に寄付、つまり賄賂を掴ませますが、
寄付を受け取っておきながらも、彼はネガキャンを止めようとはしません。
町にはどんどん反対派の住民が増え、スティーヴはこのままではまずいと一計を案じ、
町でグローバル社主催のお祭りを開催しようと計画します。
ボクにはお祭りなんかで賛成票が増えるとは到底思えませんが、
スティーヴはお祭りで「住民に金の味を教えることができる」と思っているみたいです。
その程度の娯楽もない田舎町だったということでしょうか。
この作戦にはダスティンも敵ながらに感心しますが、お祭り当日はドシャ降りに…。
運が悪いというか、もう自然の怒りに触れたんじゃないかって感じですね。

最後の切り札だったお祭り作戦も失敗し、敗色濃厚なスティーヴですが、
そんな折、会社から極秘の調査結果が送られてくるのです。
ダスティンのネブラスカの実家の話に懐疑的だったスティーヴは、
例の牛の死んでいる農場の写真の調査を会社に依頼していたみたいで、
その結果、写真に写っていたサイロ(農作物貯蔵庫)だと思われた建物が、
実は灯台だったことが判明するのです。
ネブラスカには海がないため、灯台が写り込むはずはなく、
その写真がルイジアナで撮られたものだと判明し、ダスティンの嘘がバレます。
ボクとしても、ダスティンの話の信憑性には疑問だったので想定した展開で、
嘘ついてまで妨害するなんて、やはり環境保護団体は最低だな、と思いましたが、
スティーヴがダスティンに詰問した際に、想定外の衝撃の真実が明らかになるのです。

なんとダスティンは環境保護団体などではなく、
あろうことかスティーヴと同じ、グローバル社の社員だったのです。
なぜグローバル社がスティーヴの邪魔をするのかですが、
どうやら投票に持ち込まれた彼にはこれ以上任せておけないと考えたみたいで、
投票自体を潰してしまおうと考えたみたいです。
偽の環境保護団体スティーヴが関与することで、本当の環境保護団体の関与を防ぎ、
更にスティーヴの話が嘘だと住民が知れば、環境保護団体の信用が失墜し、
投票に至ることなく同社が勝利することができるはずだと考えたのでしょう。
いやはや、まさかの展開で、とても感心しました。
でもスティーヴは小学校で水圧破砕法の危険性を子どもたちに教えたりと、
同社の採掘方法に対するネガキャンをしていたのは事実なので、
同社のイメージ低下に繋がりかねない危険な賭けで、現実的ではないかな。

ダスティンの話が嘘だったとわかるだけで十分だったスティーヴですが、
ダスティンがグローバル社の手の者だということまで気付いてしまい、
自社に対して強い不信感を持ちます。
次の日、集会でスティーヴはダスティンの話が嘘だったと公表し、
彼が自社の人間であることも伝え、自社の採掘法の危険性も認めるのです。
つまりスティーヴ自身、自社の開発に反対を表明したということでしょう。
これにより、投票でも反対多数で可決すると思われ、スティーヴはクビになるのです。
最後の最後に、スティーヴは開発は正しいという信念を覆したわけですが、
ある意味では自分の正しいと思うことをするという信念を貫いたわけです。
ただ、会社に騙されたことと、開発の是非は関係ないようにも思えるので、
会社への不信感で開発に反対したとすればちょっと違和感があり、
反対に至る動機をもう少し明確に描いてほしいと思いました。

でも本作は前述のように環境問題が要点ではないので、
ヒューマンドラマとしては会社への不信感だけでも明確な動機になるかもしれません。
集会の会場でレモネードを売る少女が、律儀にお釣りを返してくれて、
「こんな幼い少女でも誠実なのにウチの会社ときたら…」と恥ずかしく思ったのかも。
そもそも根が真面目なスティーヴは、高校教師との討論の時点で、
自社の開発に疑問を持っていたと思われます。
それでも必死に勝利を目指していたのは、自社や開発のためではなく、
意外とダスティンに対する対抗意識によるものかもしれません。
スティーブは町で出会った女性アリスに恋をするのですが、
アリスが好青年のダスティンと親密になったので嫉妬し、
なんとかダスティンの化けの皮を剥がしたいと思ったのかもしれません。
そもそもスティーヴにこの仕事が向いているのか疑問で、
グローバル社の幹部候補(土地管理部部長)だから凄腕のはずだけど、
集会の発言とかミスも多く、これなら助手のスーひとりで交渉した方が
簡単に町の採掘権を手に入れられたような気がします。

公開規模が小さいのが重ね重ね残念ですが、
なかなか面白い作品なので、機会があれば観て損はないです。

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