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トランセンデンス

本作で今年劇場鑑賞した映画100本目となります。
ちょうど一年の折り返しで100本なので、今年は200本程度に抑えられそうです。
昨年は250本観て、さすがに観過ぎだと反省したし、
今年は消費増税や物価上昇もあり、節約のため遊興費を削る努力もしました。
それが少しは効果があったのかなと思います。
でも本当はもう少し抑えて、年150本で頑張りたいと思っていたのですが、
面白そうな映画がどんどん封切られるので、その誘惑に贖い切れません。
先週末も観たい映画が7本も封切られ、1本だけ諦めがついたのですが、
残る6本は全部観ることになりそうです。
現在公開が決まっている下半期の作品だけでも、観たい映画が60本を超えています。
この調子で夏や年末の公開ラッシュを乗り切り、本当に年200本に抑えられるのか…。

ということで、今日は2014年下半期1本目の映画の感想です。
鑑賞したのは昨日で、上半期最後に観た映画でした。

トランセンデンス
Transcendence.jpg

2014年6月28日日本公開。
ジョニー・デップが主演、クリストファー・ノーラン製作総指揮のSFサスペンス。

人工知能PINNの開発研究に没頭するも、反テクノロジーを叫ぶ過激派グループRIFTに銃撃されて命を落としてしまった科学者ウィル(ジョニー・デップ)。だが、妻エヴリン(レベッカ・ホール)の手によって彼の頭脳と意識は、死の間際にPINNへとアップロードされていた。ウィルと融合したPINNは超高速の処理能力を見せ始め、軍事機密、金融、政治、個人情報など、ありとあらゆるデータを手に入れていくようになる。やがて、その進化は人類の想像を超えるレベルにまで達してしまう。(シネマトゥデイより)



本作はジョニー・デップとクリストファー・ノーランのタッグによるSF超大作ですが、
この豪華な顔合わせで、まさかの全米4位デビューというかなり厳しい出足に…。
やっぱりアメリカの観客はシビアだと改めて実感する結果でした。
ボクもジョニデとクリス・ノーランは大好きですが、信頼感は少し揺らいでいます。
ジョニデは昨今の主演作の出来があまりよろしくなく、
少し厳しめの判定をすると『パイカリ4』以降の主演作は全て期待を下回りました。
クリス・ノーランは監督作にハズレは1本もなく、打率十割の信頼できる監督ですが、
製作総指揮に回った『マン・オブ・スティール』があまりにも期待を下回りすぎる出来で、
この人はメガホンを取ってこそなのだと思い知りましたが、
本作でも愛弟子ウォーリー・フィスターにメガホンを託して製作総指揮に回ってます。
彼は自信がある作品なら自分で撮りたがるはずなので、
本作も自分でメガホンを取るほど惹かれる作品ではなかったということでしょう。
アメリカの観客もジョニデの主演作の不調とノーランの製作総指揮の腕を疑問視し、
それがこの低調なスタートに繋がったのだと思われます。
ボクも本来なら何を置いても真っ先に観そうな作品ですが、悩んだ末、
同日公開の『渇き。』を初日に観ることにして、本作は後回しにしました。
(厳密には同日公開ではなく、本作は先行上映でしたが。)
結局『渇き。』が駄作で後悔することになったのですが、
それでも本作を選べばよかったとまでは思えないほど、
ジョニデ主演、ノーラン製作総指揮への不信は強かったです。

全米の最終興収もかなり低く、製作費の2割程度しか稼ぐことが出来ず、
興行的には失敗作だったと言っても過言ではないでしょう。
まぁジョニデの主演作なら、海外での稼働が見込めるので、なんとか元は取れるかな。
批評家からも酷評されますが、興収も悪すぎるので一般客のウケも悪かったのでしょう。
ボクもいざ観てみて、この内容であればその成績にも納得です。
…というと本作が駄作であると伝わるかもしれませんが、
そうではなく、ボク自身は悪くない作品だと思いました。
いや、けっこう面白い作品だったと言えるかもしれません。
要するに、観る人を選ぶ作品…、というのとはまた違うかもしれないが、
どこに注目するかによって印象が変わってしまう作品だと思うのです。
おそらくSF映画としての世界観や設定、ジョニデの演技に期待すると裏切られます。
本作の面白いところは映画としての構成にあるのではないでしょうか。
ボクも中盤までは「これはダメだな」と思い、楽しむことを諦めかけていたのですが、
それでも我慢強く最後まで観たら、観終わった後に構成の妙に感心させられました。
序盤から受けたダメな印象も実は計算の上だったのか、と。

上映前の予告編が終わり、映画泥棒も流れて、いよいよ本編が始まるかと思ったら、
「トランセンデンスの世界へようこそ」というナレーションと共に、
本作の簡単なナビのような映像が流され、「なんだこれ?」と思いました。
そのナレーションが日本語だったので、間違って吹替版に入ったのかと焦りましたよ。
"トランセンデンス"という言葉についての説明が主でしたが、
特に具体例が提示されるわけでもなく、あまり身のない映像で、
本当に何の必要があるのかと疑問でしたが、
「あなたにも起こりうる未来です」という締めの一言で理解しました。
トランセンデンスという事象が現実に起こりうることだと客に伝えたかったのでしょう。
トランセンデンスとは超越を意味し、一般的にはシンギュラリティ(特異点)と呼ばれ、
自我を持った人工知能が人類の知性を凌駕してしまう現象です。
40年以内には実現すると真面目に提唱されていて、IT関係者の間では、
その有用性や危険性が議論されている、…らしいです。(ボクはよく知りません。)
たぶん本作に対する最も多かった批判が、「荒唐無稽すぎる」ということだったので、
日本公開にあたって、客に「起こりうる未来だ」と先制パンチを出したのでしょう。
荒唐無稽なSFとして観るか、将来あり得る出来事として観るかでは、
その印象は全く違うし、本作は後者として観てほしいのでしょうね。
とはいえ、人工知能が自我らしきものを持つ可能性はボクも否定しませんが、
中盤以降のナノテクノロジーの進歩はちょっとぶっ飛びすぎな気がするので、
いくら前置きがあっても、荒唐無稽と思わずにはいられないかもしれませんが…。
以下、ネタバレ注意です。

人類と科学の対立により、大停電に見舞われ、荒廃した街の様子から始まる本作。
それからどうしてそんなことになったのか、5年前に遡って描かれます。
人類の進化を目指して人工知能「PINN」の研究を続けてきた科学者ウィルは、
反テクノロジーを訴える過激派テロ組織「RIFT」の凶弾に倒れてしまいます。
銃弾は掠っただけでしたが、塗られていたポロニウムで被曝し、余命僅かに。
死の間際、妻で科学者のエヴリンがウィルの意識をPINNにアップロードし、
ウィルは肉体を持たない人工知能として蘇るのだが…、という物語です。
夫ウィルが帰ってきたとエヴリンは喜びますが、
アップロード作業に協力した夫婦の親友の科学者マックスは、
その人工知能が本当にウィル本人の意識だと言えるのか懐疑的です。
マックスはもともとシンギュラリティの危険性も研究していたので、
その疑問も当然ですが、それならなぜ協力するのかと…。
本当にウィルの意識が人工知能で蘇っただけなら危険性はないと考えたのでしょうが、
ウィルの意識とは関係ない人工知能に自我が目覚めたと懸念したのかも。
なにしろその人工知能は、「ウォール街にアクセスしたいから私をネットに繋げて」なんて
明らかに怪しいことを喋りはじめますから、それも当然です。
たしかに人の思考回路は電気信号で機能していると聞いたことがあるので、
それをプログラムに変換すれば、意識を人工知能にできるかもしれませんが、
なんとなく自我を持つ人工知能を作ることの何倍も難しそうな気がするので、
ちょっと技術的に一足飛びになっちゃってる気はしました。

懐疑的な意見のせいで、エヴリンから絶交されたマックスは、
反テクノロジー組織RIFTに拉致監禁されます。
RIFTはエヴリンが自我を持つ人工知能を作ったことを嗅ぎ付けたようで、
ネットに接続される前に阻止したいと、マックスに協力を求めるのです。
しかし時すでに遅く、人工知能はネットに接続されて進化し、
ネット上の監視カメラを全て掌握し、世界中の反テクノロジー組織を監視し、
警察のコンピュータにハッキングして、その情報を提供。
ほとんどの反テクノロジー組織は警察に検挙されてしまうのです。
RIFTは爆弾テロで何の罪もない科学者を大勢殺したので、
やはり悪いテロリストという印象はありますが、この人工知能がネットを掌握した
サイバーパンクの果てに冒頭の荒廃した世界があると思われるので、
レジスタンスのようにも思え、徐々にその印象が強まってきます。
マックスもRIFTに協力するようになるが、本作の主人公はウィルではなく彼なので、
やはり彼の側が正義なので、人工知能は敵だと感じます。
ボクは人工知能が自我なのかウィルの意識なのか、つまり人類の敵か味方か、
終盤までは曖昧にしておいた方が面白いのではないかと思ったので、
冒頭で先に荒廃した世界を提示してしまう構成は拙いのではないかと思いました。
しかし一見拙いこの構成は、前述のようにあとあと利いてくるんですよね。

人工知能はウォール街をハッキングし、エヴリンの会社の株を高騰させ、
3800万ドルほど儲けさせ、彼女はその金で寂れた村ブライトウッドを買い占め、
そこに巨大な量子プロセッサのある地下研究所を建設し、
更に地表には膨大な電力を賄うためのソーラーパネルを敷き詰め、
その施設を人工知能の拠点にして、ナノテクノロジーの研究を始めるのです。
一方、監視から逃れるため人里離れたシエラネバダ山脈に拠点を移したRIFTは、
反撃のチャンスを窺い、ブライトウッドに伝単を仕掛けます。
それに呼応したのか、村の若者がソーラーパネルの建設作業員をリンチ、
半殺しされた作業員マーティンは研究所に運び込まれ、
人工知能からロボットアームで手術されて回復します。
手術といっても人工知能が開発したナノロボットを注入するだけ。
なんでもナノロボットは細胞を復元させることができるようで、
本来は自然環境を回復させるため枯れた植物の再生に使われたものですが、
それを応用して人間の怪我の回復にも使ったみたいです。
まるで魔法で非現実的ですが、今話題の多能性細胞の凄いやつみたいな感じか。
そういえば日本でも「ロボット手術室」の開発が始まったのも今話題ですが、
将来的には人工知能による手術も実現するかもしれませんね。
劇中のテクノロジーは、あながちあり得ないと言い切れるものではないのに、
なぜ本作だとこんなにも嘘くさく感じるのでしょうか。

そのナノロボットによる手術では、単に怪我を治すだけでなく、
肉体を強化することもでき、回復したマーティンは350kgの物でも持ち上げます。
怪我も治って超人化できるなんていいこと尽くめですが、ひとつ微妙なのは、
体内にナノロボットが入ることで、人工知能と意識が繋がるようになることです。
これにより人工知能は患者を意のままに操ることもできるようになります。
これにはさすがのエヴリンもドン引きですが、
それもそのはず、人工知能がマーティンの肉体を操って
「私はウィルだ、これで触れ合えるね」なんて話しかけてくるけど、
例え意識は夫だとしても肉体が全くの他人だなんて気味が悪いですよね。
ドン引きするエヴリンを余所に、人工知能はさらに手術を続け、
身体障害者を募って治療し、彼らにどんどん意識を繋げていきます。
うーん、たまに人工知能に肉体を貸さなきゃいけなくなるとはいえ、
障害を治してもらえると思えば背に腹は代えられないかもしれませんね。

FBIのブキャナン捜査官は、国立研究所のダガー博士と共にブライトウッドを視察。
彼らは意識を繋げられた強化人間「ハイブリッド」を目の当たりにして、
人工知能が軍隊を作っていると考え、ワシントンに報告。
政府もシンギュラリティの対策に乗り出すことになり、マックスとRIFTに協力要請。
マックスはRIFTと米軍を率いてブライトウッドを襲撃するのです。
マーティンらはハイブリッドに一斉掃射するのですが、彼らは死にません。
怪我すると地面から湧いてきたナノロボットによって即座に回復するからです。
ハイブリッドはいくら撃たれても向かってくるのですが、
いやはや、これはもう『ターミネーター』の世界ですね。
さしずめ人工知能はスカイネットといったところでしょうか。
よくわからないのはナノロボットはハイブリッドの治療だけではなく、
爆破で壊されたソーラーパネルも即座に修復してしまうのです。
細胞を復元させるものだと理解してたけど、無機物の修理もできるなんて…。
それができるなら作業員なんて必要ないだろって感じですよね。

マックスらはハイブリッドたちの手痛い反撃に遭いながらも、
銅製の網を使ってなんとか一体だけハイブリッドを捕獲します。
銅は電波を通さないらしく、人工知能とハイブリッドの繋がりを絶ち、
ナノロボットを無力化することができるようです。
マックスらはハイブリッドの体内からナノロボットを採取し、
人工知能のソースコードをゲットして、コンピュータウィルスを作る作戦です。
それをどうやって人工知能の防衛網を突破して感染させるかが難題ですが、
なんとその役目に名乗りを上げたのが、ウィルの妻エヴリンでした。
彼女はダガー博士に忠告され、ブライトウッドから逃げてきていたのです。
まぁ忠告されなくても、人工知能から「君をアップロードしたい」なんて言われたら、
自分も人工知能になるのかと思って逃げたくもなりますよね。
それにしても人工知能の言動は人工知能のくせに非合理的で矛盾に溢れています。
エヴリンが何を言われたら怖がるかくらい計算できそうなものですが…。

とにかく人工知能が積極的にアップロードしたがっているエヴリンは適材で、
彼女にウィルスを仕込み、ブライトウッドに送り返します。
しかし人工知能は急に「早くアップロードして」と言い出したエヴリンを不審に思い…。
この作戦は失敗だと判断したRIFTと米軍はブライトウッドに迫撃砲で爆撃を開始し、
その攻撃によりエヴリンが重傷を負ってしまうのです。
人工知能は彼女を助けるために地下研究所に運び、
ウィルス感染を承知の上で彼女をアップロードします。
ウィルスにより人工知能は停止し、人工知能と繋がっていた世界中のネットも停止。
そして冒頭で描かれていた大停電が起こったのでした。
つまり人類と科学の対立で起こったと語られた大停電ですが、
冒頭のシーンのために、客は人工知能が大停電を招く物語と思わされるけど、
実は科学(人工知能)のせいではなく、人類(RIFT側)のせいで起こったわけです。
いわゆる大どんでん返しですが、ボクもうまくミスリードされてしまいました。

もともとウィルの意識とは別物になったと思われた自我のある人工知能も、
人類の敵なんかではなく、本当にウィルの意識を甦らせただけのもので、
ウィルとは別人のようだった人工知能の不可解な言動も、
全てウィルの意思のもとに人類に対する善意で行われていたものでした。
ナノロボットを開発したのも、本当に地球環境を守りたかっただけのようで、
それは妻エヴリンがシンギュラティで実現させたかったことを、
人工知能のウィルが叶えようとしていただけだったのです。
ウィルの意識を持った人工知能は、実は何ひとつ悪さをしていませんが、
人類側が勝手に敵視し、悪いように解釈していただけです。
身体障害者の治療にしたって、ウィルは善意でやっていたのですが、
人類が勝手に軍隊を作っていると勘違いしただけだし、
エヴリンの会社を株で儲けさせたのも、データ改竄のような不正をした証拠はなく、
勝手にテクノロジーに敵意を持つRIFTが、不正だと判断しただけですからね。
もしウィルスなんて感染させず、ウィルのやることを見守っていれば、
地球はユートピアになったかもしれませんでした。

たしかに人工知能のウィルは劇中でも何も悪さをしてないにも関わらず、
シンギュラリティを懸念するマックスを実質的主人公に据え、人類側の視点で描き、
人工知能に立ち向かうような構図にしたことで、あたかも人類が正義で、
人工知能が悪者だという印象を持ってしまいます。
ウィルの意識ではなく人類に敵意のある自我を持つ人工知能だと誤解しますが、
それは全て最後の大どんでん返しで欺くための演出だったわけです。
シンギュラリティに対してネガティブな立場から描いた作品だと思ったら、
実はシンギュラリティをポジティブに捉えたラストだったのです。
たぶん初めから本作のシンギュラリティをポジティブなものとして捉えた観客なんて、
ほとんどいないと思いますが、自然な流れでネガティブな方向に
ミスリードさせるプロットが素晴らしく、巧妙な構成だったと感心しました。
ただやはりSF設定の荒唐無稽な印象は否めず、構成云々以前に、
「なんだこの無茶苦茶な物語は?」と思っちゃう観客も多いかもしれませんね。

オチも世界は大停電で荒廃しちゃったし、ウィルの人工知能も停止し、
エヴリンも死んじゃったので、一見バッドエンドのように見えますが、
最後に庭のヒマワリから落ちた水滴で水たまりが浄化されるシーンがあり、
ウィルスで全てのナノロボットが停止したわけではないとわかります。
ウィルの意識がプログラムされたソースコードが生きている証明でもあり、
再びポジティブなシンギュラリティが起こることを予感させる希望のあるラストです。
もしかすると死際にアップデートされたエヴリンの意識も残ってるかもしれず、
ウィルとエヴリンは人工知能の中で永遠に一緒になったのかもしれません。

ボクとしては比較的好意的に感じた本作ですが、
それでもやはりジョニデとノーランのタッグなのにこの程度かという気持ちも…。
ジョニデは脇役ばかりで暫く主演作はないみたいですが、
ノーランには久々の監督作『インターステラー』が11月に控えており、
監督作は打率十割なので期待できると思います。
本作のウォーリー・フィスター監督は本作がデビュー作でしたが、
この成績では次にお鉢が回ってくるのはかなり先になるかもね。

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