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サケボム

中島哲也監督の『渇き。』の公開日が土壇場で今月27日に前倒しされました。
久しぶりに是非観たいと思っていた気になる邦画だったのですが、
当初の予定通り来月4日の公開のままにしてほしかったです。
というのも今月の最終週は『トランセンデンス』や『her』など注目の封切り作品が多く、
なるべく映画は公開週に観たいボクとしては、観に行くのが困難になるからです。
逆に来月の初週末は『オール・ユー・ニード・イズ・キル』や『マレフィセント』はあるものの
それくらいしか注目作がなく、比較的スケジュール調整が楽で観易かったのに…。
ファーストデーの恩恵を受けようと月末の公開にしたのでしょうが、
来月の1日は平日だし、それほど効果は見込めなさそうですが…。
今週末も何気に観たい作品が多くて、スケジュール的に厳しいですが、
来週末が更に厳しくなったので、ちゃんと消化しないと大変です。

ということで、今日は公開週から3週後に観た映画の感想です。
でも関西公開が3週遅れだったので、関西人のボクとしては公開週に観たつもりです。

サケボム
Sake-Bomb.jpg

2014年5月24日日本公開。
濱田岳主演の全編英語の日米合作青春ロードムービー。

老舗の酒蔵で働く青年ナオト(濱田岳)は、アメリカ人の恋人オリビアから一方的に別れを告げられた上に帰国されてしまう。いきなりの出来事にぼうぜんとする彼だったが、いとおしいオリビアと再会しようと人生で初めてアメリカへ飛ぶことに。無事に到着するものの右も左もわからない彼は、アメリカ人のいとこセバスチャン(ユージン・キム)とオリビアを追い掛ける旅を開始。ロサンゼルスからオリビアのいるサンフランシスコを目指すが……。(シネマトゥデイより)



本作はアメリカ在住のサキノジュンヤ監督って人が撮ったアメリカ映画ですが、
ちょっと情報が少なくて、その経緯や概要はよくわかりません。
とりあえずボクの好きな俳優である濱田岳の主演作ということで観に行きました。
「Sake-Bomb」とはジョッキのビールにショットの日本酒を落として作るカクテルで、
ボクとしてはあまりぞっとしませんが、アメリカではポピュラーな飲み方だそうです。
日本酒はそのままで飲む方が美味しいんじゃないかと思うんだけど…。
といっても、ボクはアルコールは全く飲まないんですけどね。
サケボムは西洋の酒であるビールに日本の酒を入れるカクテルですが、
それをタイトルにした本作も、西洋社会で暮らす日系人が題材です。
アメリカで暮らす日系アメリカ人のアイデンティティクライシスが描かれます。
でもビールといえばアメリカよりもドイツのイメージですよね。
まぁアメリカ発祥のお酒なんて知らないし仕方ないかな。

サキノ監督が日系アメリカ人だか在外日本人だか知りませんが、
脚本家のジェフ・ミズシマはたぶん日系アメリカ人だろうから、
そんなアメリカで活躍する彼らの葛藤が反映された物語なのでしょう。
でも日系人に限らず、国を問わずアメリカ移民の共通の問題も描かれ、
とても興味深い題材だと思います。
アメリカなんて移民の国だから、それほど問題なんてなさそうだけど、
やっぱり偏見とかいろいろ葛藤があるみたいですね。
その題材をもっと掘り下げて、もっと社会派な作品にしてもいいのに、
本作はコメディに仕立てられているため、観易いけどテーマ性が薄いです。
本当にアメリカ移民を題材に描くなら、アジア系アメリカ人に限定するとしても
最も多く430万人以上いる中国系アメリカ人を題材にした方が明確です。
日系アメリカ人なんて100万人強しかいませんからね。
まぁよりマイノリティの方がテーマが明確になることもあるかもしれませんが…。

なんでもテキサスで行われたSXSW映画祭でワールドプレミアを皮きりに、
ロスやサンディエゴのアジア映画祭で最優秀賞や最優秀脚本賞を受賞しており、
アメリカ人の客にもけっこうウケて、手応えがあったみたいです。
アメリカではアジア系が主人公の映画なんてまずヒットしないので、
その反応は意外な気もしますが、そもそも本作はあまり日本人向けではないかも。
日本人(日系人)に対する差別的エスニックジョークが頻出するので、
日本人客にはちょっと気分を害するところもあるかもしれません。
以下、ネタバレ注意です。

創業300年の老舗酒蔵で働く青年ナオトは、酒蔵を継ぐことになりますが、
社長から「一週間休みをやるから今のうちにバカしとけ」と言われ、
8か月前に急に帰国してしまった元恋人オリビアに会いに行くため、
アメリカ・ロサンゼルス在住の叔父を頼って、単身アメリカへと渡ります。
叔父の家で日系アメリカ人の従兄弟セバスチャンに会いますが、
彼がオリビア探しを手伝ってくれることになります。
ボクは濱田岳演じるナオトが主人公だと思ってましたが、
実はこのセバスチャンの方が主人公だったみたいでガッカリしました。
セバスチャンを演じるのはユージン・キムという俳優ですが、
名前を聞くまでもなくわかる朝鮮人顔で、実際に韓国系アメリカ人のようです。
正直、韓国系なんかに日本人や日系人の役はやってほしくないので不愉快ですが、
キャラ自体がかなり不愉快な役なので、そんな役に日本人が配役されなくて、
逆によかったかもしれません。
まぁ多人種の人には朝鮮人顔の判別は付かないだろうし、
彼らが本作を観て「これが日本人か」と思われることに懸念を感じますが…。

それにしても韓国系アメリカ人が日系人アメリカ人役を引き受けるなんて、
それこそアイディンティティクライシスのいい例ですよね。
『ウルヴァリン:SAMURAI』で原田剣一郎を演じたウィル・ユン・リーや、
『HEROES』で安藤を演じるジェームズ・キーソン・リーなど、
韓国系アメリカ人は日本人を演じるのに抵抗がないみたいですね。
(中国人役でも北朝鮮人役でも平気みたいです。)
その点、韓国人は日本人役を演じることに異常なほどの抵抗を示し、
『ニンジャ・アサシン』や『スピード・レーサー』のピとか、
『G.I.ジョー』シリーズのイ・ビョンホンなどは、本来は日本人役のところを、
必死に直訴して韓国人役に設定変更してもらってから演じています。
これがアイデンティティクライシスの差かもしれませんね。
もちろん後者の方が不愉快極まりなく、それに比べれば韓国系アメリカ人はマシ。
考えようによっては韓国籍を捨てた賢明な人々ですからね。

従兄弟のセバスチャンはアジア系アメリカ人への偏見に日々憤りを感じており、
そのせいで性格がねじ曲がってしまっています。
でも実際は周りからの偏見よりも、自分自身がアジア系に偏見を持ち、
白人コンプレックスから強い劣等感を持っているみたいです。
特に性的なことに対する「コンプレックスが強いようで、
アジア系は淡白で軟弱で性欲ゼロの短小という偏見に憤っていて、
(セバスチャンは性欲は強そうだけど短小みたいです。)
白人女優相手のアジア系AV男優ロング・ワンを英雄視しています。
彼の自虐的エスニックジョークは日本人として容認できないところもありますが、
ちょっと納得できるネタもあるんですよね。
例えば彼はセバスチャンという自分の白人的な名前にコンプレックスがあり、
なぜ黒人はマイクとか白人的な名前でも違和感を持たれないのに、
アジア系は違和感を持たれてしまうのか、とかは同感でした。
でもジャッキー・チェンとか香港スターは普通に英語名使ってますよね。
なのでセバスチャンの場合は「その顔でセバスチャンってwww」て思っちゃうので、
個人的な問題かもしれませんね。

セバスチャンは初対面(?)の従兄弟ナオトに対して、露骨に嫌な顔をします。
はじめは理由がわかりませんでしたが、たぶんあまりに日本人らしいナオトを見て、
同族嫌悪が強い彼は「ステレオタイプの日本人だな」と思ったんでしょうね。
ナオトに対し「和製ボラット」と言いますが、中東人の偏見を題材にしたコメディ映画
『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』からの揶揄です。
そこには「前時代的」というニュアンスも込められていますが、
ナオトがかなりの田舎者だったことも気に入らないみたいです。
しかし、ナオトの田舎者さ加減は酷すぎます。
セバスチャンのスマホを見て「ケータイにカメラが付いてるの?」と驚いたり、
ブログやタコスも知らないし、テレビ自体もあまり見たことがないようで…。
そんなナオトを生粋の日本人の代表として描いているので、
アメリカ在住の監督や脚本家は日本をよほどド田舎だと思ってるんでしょうね。

ナオトは土足OKは玄関先で靴を脱いだりとアメリカ文化を理解していない一方で、
英語はペラペラなんですよね。
なんでも英会話教室に通っていて、そこで英語教師のオリビアにも出会いますが、
なぜケータイ電話すら持ってないド田舎の酒蔵の跡継ぎが英会話なんて習うのか、
ナオトのグローバル感覚は無茶苦茶すぎて、荒唐無稽なキャラ設定です。
ちなみにセバスチャンは全く日本語が話せず、それもコンプレックスがあるようで、
ナオトが日本語で話すことをすごく嫌がります。
日本でも英語を話せないハーフの人はコンプレックスを感じる聞きますが、
それと似たようなもので、見た目は日本人なのに日本語も話せないというのも、
アイデンティティクライシスを感じるのかもしれませんね。
まぁそんなものは勉強すりゃ克服できるものですが。
そんなナオトを大嫌いなセバスチャンがオリビア探しの手助けをするのは、
父タカノリ(ナオトの叔父)に命令されたからです。
オリビアがいるサンフランシスコのペタルマまで車で連れて行くことになります。
同じ西海岸だけどロスからシスコまでなんてかなり遠いですよね。
休みは一週間しかないのに、ナオトも飛行機で行った方がいいのに…。

セバスチャンは途中でアジア系住民の多いアーバインという街に寄ります。
どうやら元恋人タミコがそこのパーティに参加しているそうで、
未練がある彼は彼女の様子を見に来たみたいです。
パーティに勝手に入り、白人青年を談笑するタミコに嫉妬するセバスチャン。
「アジア人よりも白人の方がいいのか」とまたしても劣等感を深めた彼は、
白人と交際している台湾系女子アニーに対して嫌味を言います。
セバスチャンがモテないのはアジア人だからではなく、
完全に性根が腐っているのが原因だと思わされるムカつく嫌味です。
でもアニーは「私のカレは白人じゃなくてユダヤ人だ」と言い返しますが、
これはセバスチャンの言うこともわかり、見分けなんて付きませんよね。
そもそもユダヤ人ってユダヤ教を信仰する人及びその子孫)だから、
アジア系から見たら白人であることに変わりはないと思うのだけど…。
それに白人男性に惹かれるアジア人女子の気持ちもわかります。
最近はハリウッド映画にやたらと中国人が出演するようになりましたが、
他の白人キャストと比べると外見的に見劣りするのは否めません。
(日本人キャストに対しては親しみがあるので客観的には見れませんが。)
でもセバスチャンだって、本当は白人女子の方が好きみたいだし、
だからこそAV男優ロング・ワンに憧れるわけで、パーティでもタミコよりも、
ポーランド系の白人女子ジョスリンに惹かれます。
ちなみにタミコと親しげだった白人青年マイケルはゲイで、
彼女の恋人ではありませんが、なぜかオリビア探しの旅に同行することになります。

そのパーティに無理やり連れて行かれたナオトですが、
彼が日本人だと気付いた黒人男性から、サケボムのお誘いを受けます。
ナオトははじめて見た(飲んだ)サケボムにすっかり夢中になりますが、
酒蔵の跡取りがそんな日本酒をオモチャにしたようなカクテルを気に入るかな?
職人として「日本酒を馬鹿にするな」くらい言ってほしいところですが…。
まぁ彼の場合は極端に酒に弱いみたいなので、味なんてわかってないかもしれません。
でもせっかく酒蔵の跡取りという珍しい設定なのだから、
日本酒の良さも海外に伝えるような展開も欲しかったですね。

オリビア探しの旅を続ける一行ですが、今度はマイケルの紹介で、
またしてもパーティに参加することになります。
ゲイのマイケルはオタクでもあり、今度のパーティはオタク仲間の集まる
コスプレパーティで、アニメキャラの格好をした人たちが参加しています。
彼らはアニメ大国から来た日本人のナオトを持て囃してくれますが、
セバスチャンは偽日本人と無視されてしまうのです。
日系であることに劣等感を覚える彼が、日本人としても認められないという、
アメリカ人扱いも日本人扱いも受けられない宙ぶらりんな状態で、
これこそまさに移民のアイデンティティクライシスですね。
そのパーティでナオトはロボットアニメのコスプレ女子イーディと親しくなり、
キスまでしちゃいますが、恋人オリビアを探す旅の途中で何してんだって感じです。
まぁかなり酔っていたみたいですけどね…。
イーディはメキシコ系アメリカ人ですが、彼女もスペイン語は話せず、
「先祖との繋がりが薄い」とアイデンティティクライシスを起こしているみたいで、
そういう悩みはアジア系移民だけのものではないのだと認識させられました。
ヒスパニックなんてアメリカで最も多い人種なのにね。

シスコに着いたナオトは、急にオリビアに会うことに躊躇しはじめます。
「女性と話すのが久しぶりだから」という、何を今更?な理由ですが、
セバスチャンはそれなら練習すればいいと、バーで彼にナンパさせることに。
「侮辱してから褒めるのが落とすコツ」だと教え、ブロンド美女にトライさせます。
真に受けたナオトは言われるままにしますが、侮辱した時点で女性は激怒。
彼女の強面の恋人まで現れて、あわやナオトはボコられそうに…。
そこにセバスチャンが割って入り「弟はアスペルガー症候群で…」と失礼を詫びます。
そのうえ、豚インフルで入院した親の見舞いに行く途中だと嘘をつき、
同情したカップルからお金まで受け取ってしまうのです。
セバスチャンのおかげ(?)で、その場は何とか切り抜けますが、
その後ナオトはセバスチャンを責めはじめるのです。
まぁ無理やりナンパさせられて殴られかけたら怒って当然だとは思いますが、
彼が怒ったのはセバスチャンが嘘でその場を切り抜けたからで、
「嘘つき」と責め立てるのですが、そこは普通感謝すべきところですよね。
ナオトはなぜか嘘を異常に嫌うのですが、その理由が描かれておらず…。

オリビアの家に着いた2人は、遠巻きに家を観察しますが、
家から出てきたオリビアは妊娠しており、どうも旦那もいるようで…。
諦めて帰国することにしたナオトですが、空港に向かい途中で、
スピード超過で警察に止められてしまいます。
「観光ビザで逮捕されたら一生入国できない」と焦るナオトですが、
そこもセバスチャンが日本人の真似をして警察を騙して切り抜けます。
しかし嘘の嫌いなナオトはまたしても激怒し、車を降りて去ってしまいます。
たしかにわざとカタコトの英語を話す似非日本人の真似はムカつきますが、
逮捕されるよりは何百倍もマシで、ここも彼の嘘に感謝すべきですよね。
この時ナオトは、なぜかセバスチャンのスマホを勝手に持ち去ってしまいます。

ナオトにも愛想を尽かされ、スマホまでなくして消沈するセバスチャンですが、
その後アーバインのパーティで知り合ったポーランド系のジョスリンと会います。
あわよくば彼女と一発ヤリたいと思っていたセバスチャンですが、
いざ彼女に迫られると、急に拒否してしまうのです。
どうも彼女は尻軽で、自分の性生活の自叙伝を執筆しているそうですが、
「はじめてのアジア人」として本のネタにされることに抵抗を感じたみたいです。
彼は短小だし、きっとセックスに自信がなかったのでしょうね。

そのことでコンプレックスが更に強まったセバスチャンは、ナオトを探しはじめ、
空港に徒歩で向かっている途中の彼を発見し、謝って仲直りします。
ナオトは歩きながらセバスチャンのスマホに録画されていた
例の警察とのやり取りをセバスチャンのSNSのネット動画にアップしており、
その動画が「差別警官」として100万人が視聴する大人気に。
フォロワーが数人だった自分の動画が大人気になったことで、
セバスチャンのコンプレックスが少し解消されます。
その警官は懲戒処分になりますが、あの動画が差別的と言えるかどうかは疑問。
警官は「俺はアジア人の区別が付かない」とか「カンフーやゴジラが面白い」とか
「『スピードレーサー』みたいに飛ばしちゃダメだぞ」とか言ってましたが、
別に差別的な発言はしてなかったように思うので…。
それに何よりの疑問はケータイも持ってなくてネットにも疎いナオトが、
スマホで動画の編集をして動画サイトにアップするなんて不可能でしょ。
いくらなんでも無茶苦茶な展開だと思いました。

ラストでは、仲直りした2人がダイニングで食事をしていると、
そこになんとオリビアが旦那と一緒に来店します。
セバスチャンはナオトに「旦那に日本での浮気をバラシてやれ」と嗾け、
ナオトは彼女の席に向かうのですが、旦那だけでなく7歳の息子も連れており、
彼は躊躇って、結局挨拶だけして別れてしまいます。
オリビアはナオトとの再会にかなり動揺していましたが、
そもそも日本にいる時はデートをしていただけで肉体関係もなかったようなので、
それが浮気と言えるかどうかは微妙なところだと思います。
それならデートというか英会話の課外レッスンみたいなものですよね。
それに動画の件でコンプレックスが緩和されたはずのセバスチャンが、
アジア人より白人の旦那を選んだオリビアを陥れようとするのは、
今までの展開を全て無駄にしてしまうラストのようにも思えます。
最後に空港で別れる時に、ナオトから「今度日本に遊びにおいでよ」と言われ、
当初は日本を見下していたセバスチャンは「それも悪くないかも」と言いますが、
彼は日本に来ない方がいいと思いますね。
たぶん日系人の日本での肩身の狭さは移民だらけのアメリカの比ではないし、
深刻なアイデンティティクライシスに見舞われると思うので。

題材としては興味深い作品でしたが、展開にはかなり難のある作品でした。

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