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インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌

先達て、第67回カンヌ映画祭の授賞式が行われました。
日本からコンペ部門に参加した河瀬直美監督の『2つ目の窓』は、
各所で絶賛されながらも、受賞を逃しましたが、正直ボクは安心しました。
やっぱり映画ファンとしては、三大映画祭の受賞作くらいは観ておくべきですが、
あまり『2つ目の窓』は観たくなかったので…。
でも『2つ目の窓』が受賞しなくても、当然他に受賞作があるわけで、
そちらの方が面白くない可能性だってあります。
今回のパルムドールはトルコ映画でしたが、面白いかどうかは別にしても、
懸念を感じずにはいられないのは、3時間を超える上映時間です。
昨年のパルムドール『アデル、ブルーは熱い色』も3時間弱の作品でしたが、
内容もつまらなくて、本当に苦行のような時間でした。
すでに「楽しむには忍耐力のいる映画」なんて話も聞こえてくるし、
映画ファン失格だとしても、観に行きたくないかも…。
なお、審査員特別グランプリは女性監督の作品でしたが、
女性の審査委員長が女性監督の作品が少ないことを嘆いていたので、
女性監督の作品というだけで選ばれたのではないかという噂もあるほど
特筆すべきところのない作品だったようで、こちらも観たくないです。
それならまだ河瀬直美監督の『2つ目の窓』に受賞してもらった方がよかったかも。

ということで、今日は前回の審査員特別グランプリ受賞作の感想です。

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌
Inside Llewyn Davis

2014年5月30日日本公開。
コーエン兄弟によるヒューマンドラマ。

1960年代のニューヨーク、冬。若い世代のアートやカルチャーが花開いていたエリア、グリニッジビレッジのライブハウスでフォークソングを歌い続けるシンガー・ソングライターのルーウィン・デイヴィス(オスカー・アイザック)。熱心に音楽に取り組む彼だったが、なかなかレコードは売れない。それゆえに音楽で食べていくのを諦めようとする彼だが、何かと友人たちに手を差し伸べられ……。(シネマトゥデイより)



本作はオスカー監督であるコーエン兄弟の久々の新作です。
なので楽しみに観に行ったのですが、あまりに久々だったので、
ボクはコーエン兄弟がどんなタイプの監督だったかを忘れていたみたいで…。
2011年日本公開だった前作『トゥルー・グリット』は正統派な西部劇だったので、
そのイメージは残っていたのですが、本来の彼らはナンセンス・コメディを得意とし、
観客を煙に巻くような掴みどころのない展開が売り(?)の監督です。
特にオチには「え、これで終わりなの?」と毎度ポカーンとさせられていました。
そして本作も、その作風を踏襲したコメディドラマとなっていて、
オチにはやっぱりポカーンとさせられました。

オチは正直よくわかりませんでしたが、物語は難解なわけでもなく、
鑑賞中は楽しく見れるのですが、オチがオチているのかわからないというか、
物語の結論が描かれていないように感じるので、テーマが不明瞭で、
いったい何を描きたかったのかが全くわかりません。
ただ60年代のひとりのフォーク歌手の日常の一コマを切り取っただけで、
個々のエピソードとして笑えるところもあるにはあるが、
全体としては何が面白いのか全く理解できないんですよね。
これでは総評として「つまらなかった」というしかありません。
でも批評家の評価は高く、多くの映画賞を受賞、または候補になり、
第66回カンヌ国際映画祭でも審査員特別グランプリを受賞しています。
そんなに高評価なのが不思議な反面、だからこそ面白くないとも思えます。
毎度パルムドールと審査員特別グランプリ受賞作は、
ポピュラリティに難があり、玄人ウケするが一般ウケしない作品揃いで、
ボク程度の映画好きではかなり厳しいものがあります。
本作も見事にそのメソッドに当てはまってしまいました。
以下、ネタバレ注意です。

1961年、ニューヨークを拠点に活動するフォーク歌手ルーヴィン・デイヴィスは、
人気デュオ「ティムリン&デイヴィス」として活躍していましたが、
今はソロ活動しているものの、レコードは全く売れず…。
ルーヴィンから元相方マイクに対して何か遺恨がありそうな印象を受けましたが、
物語中盤で、どうやらマイクは橋から身投げし死んでいたようです。
なぜマイクが自殺したのかについて、劇中で一切語られず、とても気になります。
相方に死なれたルーヴィンが、相方の死を克服し、ソロとして頑張る話かと思いきや、
そんな展開もなく、ずっと相方の死を引きずったままで、何も解決しません。
レコードが売れず、金も家もないルーヴィンは、知人の家を泊まり歩きます。
よく歌手仲間のバーキー夫妻の家に厄介になるのですが、
なんと奥さんジーンと過去に関係を持ってしまったようで、
ジーンは妊娠していますが、それが旦那ジムの子かルーヴィンの子かわからず、
旦那に妊娠を知られる前に中絶することにし、その費用をルーヴィンに要求します。
てっきりそれをキッカケに2人がデキちゃう展開になると思いましたが、
そうもならず、結局ジーンは中絶することになるのです。
なんだか中絶なんてされたら後味悪いですが、結局中絶する日までは描かれず、
その後彼女がどうしたのかもわからないまま終わり、モヤモヤします。

中絶費用を出さなきゃいけないルーヴィンですが、全くお金がありません。
そんな折、ジムのレコーディングで欠員が出たため、彼に声がかかります。
そのギャラとして200ドル払われるが、印税は全くもらえないそうだけど、
お金が必要な彼はその契約を了承します。
ところが後に、そのレコードはかなり売れそうだという評判を聞きます。
でも劇中では、そのレコードが実際に売れたかどうかも描かれません。
お金が入った彼は、馴染みの産婦人科へ行きます。
彼は以前にも、ダイアンという女性を妊娠させ、ここで中絶を依頼したそうです。
ところが医者は、「中絶の費用は払わなくていい」と言うのです。
なんでも前回、ダイアンは中絶せずに出産することにしたそうで、
その時に払われた分を今回に回すと…。
ダイアンが自分の子を産んでいたと知らなかったルーヴィンは驚きます。
これはルーヴィンが息子に会いに行く展開になったりするだろうと思いきや、
それもなく、息子の住む町のそばを通るも、素通りしちゃうんですよね。

ルーヴィンはオーディションのため、シカゴに向かいますが、
大御所歌手らしきターナーとその付き人の車に同乗します。
しかし、途中のレストランのトイレで、ターナーが卒倒します。
なぜか付き人は救急車も呼ばずに、そのまま車に乗せて出発しますが、
なぜターナーが倒れたのかもよくわかりません。(薬物中毒かな?)
高速道路の道端に停車し、休憩していると、警察がやってきて付き人を職質。
付き人はそのまま連行されるのですが、車のキーを持って行ってしまい…。
ルーヴィンは意識が戻らないターナーを後部座席に残したまま、
ヒッチハイクでシカゴを目指しますが、ターナーと付き人のその後も描かれません。
シカゴでオーディションを受けたルーヴィンですが、
「君はソロ向きじゃない」と一蹴され、あっさりニューヨークに戻るのです。
もう何のためにシカゴまで行ったのやら…。
そして、その道中のエピソードは必要があったのか…。

ニューヨークに戻ったルーヴィンは、あっさり歌手を諦め、金を稼ぐため、
商船の船員に戻ろうとしますが、滞納していた組合費として148ドルも取られます。
その後、疎遠だった元船員の父に会いに行く展開があったりしたので、
てっきりバカにしていた船員の仕事を自分もすることになり、
親子関係が修復されるような展開になるかと思いきや、
紛失した船員免許の再発行費85ドルを払うことができず、
船員になるのも諦めることになるのです。
もう物語がどこを目指しているのか全くわかりません。

そんな折、彼に馴染みのカフェで歌う仕事が舞い込みます。
船員になれなかった彼は仕事を受けますが、
出演前日にカフェに行った時に、店長がジーンから枕営業を受けたと言われ、
ムシャクシャした彼は、その日の出演者のおばさん歌手に野次を飛ばします。
単なる八つ当たりですが、本当に酷すぎる野次で、すごく不愉快な気分に…。
こんな終盤で、まさか主人公をこんなに嫌いになるとは思いませんでした。
その日は、つまみ出されたルーヴィンですが、
翌日普通に出演し、何事もなくステージは終了します。
しかし、ステージから降りた後、カフェの裏に呼び出され、
待っていたおばさん歌手の旦那からぶん殴られるのです。
そこで本作は終わるのですが、「これで終わりなの?」と拍子抜けしました。
この最後の一連のシーンは、冒頭でも描かれていたのですが、
その演出の意味も全くわからず、いったい何をしたかったのか…。

相方の自殺、ジーンの妊娠と中絶、ダイアンと息子、父親との関係、
フォーク歌手の仕事、船員の仕事、いろいろ問題を抱えたルーヴィンですが、
何ひとつ解決しないまま幕を下ろすなんて、ドラマとして成立してないと思います。
曖昧なまま終わるのは、いつものコーエン兄弟のパターンではありますが、
本作はいつものコーエン兄弟の作品よりも、作風が暗かったこともあり、
笑える部分も少な目で、いつも以上に退屈な印象を受けました。
でも、そんな中でもよかったと思えたところは歌のシーンかな。
特にレコーディングのシーンのコミックソング「プリーズ・ピスター・ケネディ」は、
聴いてるだけで楽しくなる曲でよかったと思います。

あとネコが可愛かったのもよかったです。
ネコとルーヴィンのツーショットは、それだけでほのぼのできたので、
もし彼がずっとネコを連れ歩けば、もう少し楽しめたかもしれません。
なのでシカゴに向かう時、ターナーと一緒にネコを置き去りにしたのは残念でした。
そういえば、ニューヨークに戻る時に、ネコを轢いたように見えたのですが、
轢かれたネコは結局どうなったのかな?
全て曖昧なまま幕を下ろしてしまう、本当にモヤモヤする作品です。

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