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ある過去の行方

昨日はシネ・リーブル梅田のハッピーチューズデーだったので行ってきました。
映画館の多くが消費増税で会員料金も値上げする中、
テアトルさんは毎週火曜日と金曜日の会員料金(1000円)据え置きです。
とても良心的で有難く、今後はもっと利用したいと思います。
でもシネ・リーブル梅田に行ったのは久しぶりで…。

久しぶりだったから驚いたのですが、シネ・リーブル梅田って、
上の階の別の映画館だった梅田ガーデンシネマを吸収しちゃったんですね。
ネットで座席予約して劇場で発券したら、2スクリーンしかなかったはずなのに、
チケットに「スクリーン3」と書いてあって戸惑ってしまいました。
3月から梅田ガーデンシネマを吸収して4スクリーン体制になったようですが、
そのことに2カ月以上の気付かないとは、関西の映画ファンとして情けないです。
正直、娯楽作品の少ない梅田ガーデンシネマは利用する機会が少なく、
最後に観たのも昨年夏の『マジック・マイク』で、それ以降ご無沙汰でした。
撤退すると知っていたら最後にもう一度行きたかったですが、
施設はそのままシネ・リーブル梅田が使っているので、
梅田ガーデンシネマの頃とあまり変わりはなかったです。
でも3月以降もシネ・リーブル梅田には3度ほど行ったはずなんだけど、
いつもスクリーン1か2だったので、全く気付きませんでした。
これでテアトル梅田やシネ・リーブル神戸も合わせて、
阪神間にテアトルが9スクリーンになりましたが、
会員に優しいテアトルが拡大するのは、とても嬉しいです。

ということで、今日は初めてシネ・リーブル梅田スクリーン3で観た映画の感想。
そういえばこの監督の前作は梅田ガーデンシネマで観ましたが、
名称は変われど、同じスクリーンで観たのかもしれません。

ある過去の行方
The Past

2014年4月19日日本公開。
『別離』のアスガー・ファルハディ監督による人間ドラマ。

4年前に別れた妻マリー(ベレニス・ベジョ)と離婚手続きを行うため、イランから彼女のいるパリへと飛んだアーマド(アリ・モサファ)。かつて妻子と日々を過ごした家を訪れると、マリーと長女のリュシー(ポリーヌ・ビュルレ)が子連れの男サミール(タハール・ラヒム)と一緒に暮らしていた。マリーとサミールが再婚する予定だと聞かされるものの、彼らの間に漂う異様な空気を感じ取るアーマド。そんな中、マリーと確執のあるリュシーから衝撃の告白をされる。(シネマトゥデイより)



本作は、前作『別離』が第61回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した、
イラン人監督アスガル・ファルハーディーの最新作です。
『別離』は第84回アカデミー賞の外国語映画賞も受賞しましたが、
何より凄いのは、その時に脚本賞にもノミネートされたことです。
主にハリウッド映画の祭典であるアカデミー賞で、
外国語映画(しかもイラン映画)が主要部門にノミネートされるなんて、
ただならぬ事態ですが、言語の壁を超えるほど素晴らしい脚本ということです。
脚本を務めたのもアスガル・ファルハーディー監督自身で、
そんな鬼才の彼にはハリウッドからも声がかかったはずで、
近々ハリウッドデビューするに違いないと思いました。
本作は監督にとっては初めての国外製作作品となりますが、
今回はハリウッド映画ではなく、フランス映画となりました。

本作も第66回カンヌ国際映画祭で女優賞やエキュメニカル審査員賞を受賞し、
それなりに高い評価を受けていますが、ボクが観た限りでは、
この程度の評価は、まだこの作品に相応しくないと思います。
もっと評価されるべきで、パルムドールでもおかしくないし、
アカデミー外国語映画賞にもノミネートされるべきです。
まぁアカデミー外国語映画部門のオスカーを受賞したイタリア映画が、
まだ日本公開されていないので、その年のレベルは測れませんが、
少なくともパルムドールを争ったフランス映画『アデル、ブルーは熱い色』よりは
断然こちらも方が出来がよかったと思います。
女優賞だけでも獲れたので、まだマシだったと言えなくもないですが、
この年のカンヌは無茶苦茶で、なぜか『アデル』の主演女優2人が、
女優賞を飛び越えてパルムドールを受賞するという異例の事態となり、
本作が女優賞に繰り上げ当選したような印象を受けてしまい残念です。
とはいえ本作の魅力は、女優賞を獲得したベレニス・ベジョの演技よりも、
アスガル・ファルハーディーの脚本の面白さだと思うので、
そこをちゃんと評価してもらいたかったです。

しかし、やはり前作『別離』よりは多少劣るかも…。
離婚から派生した問題の真相に迫る物語ですが、その展開は『別離』も同じ。
監督の得意な設定なのかもしれませんが、見ようによっては芸がないかも…。
それに前作はあまり馴染みのないイラン映画だったので新鮮味があったけど、
本作は外国映画ではハリウッドに次いでよく観るフランス映画なので、
新鮮味も薄れる感は否めません。
しかしそんな不利な状況でもこれほど引き込まれる物語なのだから、
やはり相当素晴らしい脚本なのだろうと思います。

テヘラン在住のイラン人の夫アーマドが離婚手続きのために、
別居中のフランス人の妻マリーに呼び出されて、4年ぶりにパリの自宅を訪れ、
娘たちも一緒に暫くの間ひとつ屋根の下で生活するという展開で始まりますが、
それをキッカケにバラバラだった家族が再生する話なのかな、と思いきや、
娘の話を発端に、全く先が読めない上質なミステリーとなり、
どんどん話に引き込まれるんですよね。
正直、予告編を観た時は、退屈そうな人間ドラマだと思ったし、
いざ観始めたばかりの時も、面白くなるのか疑心暗鬼でしたが、
気付けば身を乗り出すようにして見入っていました。
それほど馴染みのあるスターも不在で、見た目は地味な映画ですが、
それだけに脚本力のすごさを感じさせられました。
ちなみに恥ずかしながら、マリー演じるベレニス・ベジョが
オスカー作品『アーティスト』のヒロインだったことは、
本作を観終わってから気が付きました…。
以下、ネタバレ注意です。

4年ぶりにパリの自宅に戻ったアーマドを出迎えたのは、下の娘のレア。
しかしそこにはフアッドという見慣れない男の子も…。
なんとその子は妻マリーが交際している男サミールの連れ子で、
マリーはアーマドとの離婚成立後、サミールとすぐ結婚する予定なので、
フアッドともすでに一緒に住んでいるみたいです。
妻に恋人がいることも知らなかったアーマドは、少しショックを受けます。
やっぱりあわよくばヨリを戻したいと思っていたのかも?
この男の子フアッドはヤンチャというかクソガキで、
悪戯をしてマリーから怒られると「お家へ帰る」と駄々をこねます。
レアとは子供同士で仲良しみたいですが、マリーのことは嫌いみたいで、
やはり子供としては親の再婚には抵抗があるのかな、と思いました。
フアッド以上に再婚に反対しているのは、年頃の上の娘リュシーです。
2カ月ほど前から、帰宅が遅くなり、ちょっとグレちゃった感じですが、
母の新しい男サミールを避けているのは明白です。
まぁ難しい年頃なので、それも仕方ないと思いますが、
実はアーマドもリュシーとレア姉妹の実父ではなく、継父だったみたいです。
そのわりにはアーマドにはよく懐いているので、少し不思議ですが、
リュシーがサミールに継父になってほしくないのには、重大な理由があります。
それは連れ子フアッドがマリーを嫌いな理由にも繋がります。

母マリーに頼まれて、反抗期の娘リュシーの話を聞くアーマド。
リュシー曰く、母とサミールの結婚に反対するのは、
彼に植物状態の妻がいるからだそうです。
サミールがそんな妻と別れて他の女と再婚しようなんて男なら、
娘としては反対して当然ですよね。
しかもサミールの妻セリーヌは、うつ病で自殺未遂をして植物状態になっており、
妻を自殺未遂させてしまうような男なんて信用できるはずはありません。
さすがにアーマドも、この再婚はやめさせるべきだと思ったでしょうが、
それを切り出す前に、マリーから驚きの告白が…。
なんとマリーはすでにサミールの子を妊娠しているというのです。
それを聞いたアーマドは動揺したまま、家裁で離婚手続きを終えてしまいます。
いやー、ボクも驚きました。
妊娠云々は別にしても、復縁する話だと思い込んでいたので、
離婚が成立しちゃったことは、とても意外でしたが、本作の焦点はそこではなく、
「なぜサミールの妻セリーヌが自殺未遂を起こしたか」であり、
アーマドがその真相に迫るミステリーとなっています。

アーマドは娘リュシーと一緒に、かつて務めていたイラン料理店に行き、
話をすると、彼女曰く妻セリーヌの自殺の原因は、
「夫が母と不倫していたのを知ったからだ」と言うのです。
そのことをマリーに話すと、彼女曰く、「妻はもともとうつ病だった」と…。
幼い息子フアッドを置いて自殺するのはおかしいと考えたアーマドは納得せず、
ついにサミールに話を聞きますが、彼曰く、
「不倫なんて関係ない、客との馬鹿な事件が原因だ」と…。
当時セリーヌは夫サミールのクリーニング店で働いていて、
客と何かモメ事を起こして、その5日後に自殺したそうです。
不倫を知ってしまったからか、単なるうつ病か、客とのモメ事が原因なのか、
皆の証言が食い違い、謎が謎を呼びます。
また、その自殺方法が異常で、なんと店で洗剤を飲んだみたいなのです。
なぜセリーヌがそんなことをしたのか、とても気になり、引き込まれます。

アーマドは真相を知るため、クリーニング店の従業員ナイマに話を聞くことに。
なんでも客のドレスにシミがついていたみたいで、
客から「店がシミをつけた」とクレームを受けたのですが、
セリーヌは「そんなはずはない」と客と口論になります。
客が警察を呼ぼうとすると、夫サミールが割って入り、
なんと妻セリーヌを解雇して、客にドレスを弁償するのです。
どうやら従業員ナイマがアルジェリアからの不法労働者だったみたいで、
警察を呼ばれると彼女が強制送還になるかもしれず、
サミールはそれだけは避けたかったみたいです。
これが自殺の原因だったとしても、サミールの言うように客とのモメ事ではなく、
夫が妻の自分よりも従業員を庇ったことのショックによるものですよね。
やはりサミールは夫としてはロクなもんじゃありません。

セリーヌがうつ病で心が弱いなら、そのモメ事での夫の態度だけでも、
自殺には十分な動機で、それが自殺の原因かなと思いましたが、
従業員ナイマの話を一緒に聞いていた娘リュシーは、
そのモメ事が自殺の5日前だと聞き、動揺します。
彼女は自殺の1日前に、母とサミールのメールを転送したと告白するのです。
なので直接の原因は、自分が転送したメールではないかと…。
ボクもこれはもう決定的だと思いました。
リュシーにしてみれば、自分が植物状態にした女性の夫と、
自分の母が再婚するなんて、辛すぎて絶対に無理ですよね。
再婚反対はサミールが嫌いなわけではなく、自分を守るためだったのです。
アーマドは娘リュシーの代わりに、そのことをマリーに話します。
マリーは「とんでもないことをしてくれた」と娘にブチ切れ、
家から追い出しますが、やはり非は浮気していたマリーにありますよね。
追い出されたリュシーは仕方なく不仲な実父の家に行こうとしますが、
アーマドから窘められて落ち着いたマリーから連れ戻されます。

なんとも悲しい真相で、リュシーが可哀想でしたが、物語はここから更に急展開。
リュシーが転送しようにも、彼女はセリーヌのアドレス知らないはずだと、
メールの転送が嘘である可能性が出てくるのです。
そのことをリュシーに問い質すと、「前日に店に電話して聞いた」と。
電話したのは本当かと更に問い詰めると、「彼女には訛りがあった」と。
そこまで具体的に説明できるなら、リュシーは嘘を言ってなさそうですが、
それを聞いたサミールは、妻はフランス人で訛りはないはずと考え、
電話を受けたのが従業員ナイマだと気付くのです。
ナイマになぜ妻のふりをしてアドレスを教えたのかと問い詰めると、
彼女はセリーヌから嫌われていたので、その腹いせにやったと…。
ナイマ曰く、セリーヌは私とサミールが不倫していると勘違いし、
モメ事でもわざと客のドレスにシミを付けて、警察沙汰にするつもりだったと…。
しかしきっとこれはナイマの勘違いで、セリーヌは夫の浮気を疑ってたけど、
相手が誰かまでは全くわかってなかったと思います。
モメ事の時にナイマを庇う夫を見た時に、ナイマが相手だと思ったはず。
このあたりは全く言及されておらず、客の想像にお任せ状態ですが、
ボクが思うにシミを付けたのは悪戯っ子のフアッドでしょう。
序盤のペンキの悪戯も、それを推測させるためのものでは?

まぁ何にしてもリュシーがセリーヌのアドレスを知ったのは間違いなく、
転送したのも事実なので、彼女の罪が消えることはなく、気の毒ですが、
…と思ったら、更にナイマから興味深い発言が…。
セリーヌがなぜ私のいる店で洗剤を飲んだのか、と。
つまりセリーヌは自殺未遂を起こす直前まで、
夫の不倫相手はナイマだと思い込んでいたという証拠で、
転送されたメールは読んでないのではないか、ということです。
これは確かにその通りで、もしメールを読んでいなければ、
リュシーは全く自殺の原因に関与していないことになるので朗報です。
結局真相は藪の中のまま終わりますが、これが真相で間違いない、
…と思いたいですね。

この件をキッカケに、マリーとサミールの再婚も破談になります、
決定的だったのは「妊娠は事故だった」というサミールの発言で、
彼は今でもセリーヌを愛しているのに、
出来婚で仕方なくマリーと結婚するつもりだったようです。
本当に最低な男なので、破断したのはよかったと思いますが、
マリーが中絶することになることには少し引っ掛かりますね。
でもこんな夫婦の間に生まれた子が、幸せかどうかは微妙だし、
それでよかったのかもしれません。
本作がカンヌで受賞したエキュメニカル審査員賞は、
キリスト教徒の審査員によって選ばれる独立賞ですが、
中絶に否定的なはずの彼らも、これは仕方ないと思えたから受賞したのでしょう。
ラストシーンは、匂いによる治療でセリーヌに回復の兆しが見えて終わります。
その展開はとてもハッピーエンドだと思うけど、
最低男のサミールにとってもハッピーエンドなのは少しムカつきますね。
あと、いろいろ頑張ったアーマドが何も報われなかったのも…。

とても面白くて、パルムドールを取るべき作品でしたが、
パルムドールは本当に面白い作品には贈られないのが通例なので仕方ないです。
たしか今月は第67回カンヌ国際映画祭が開催された気がしますが、
今年はどんな駄作がパルムドールを受賞するのか見ものです。
日本からは河瀨直美監督の『2つ目の窓』がコンペ部門に出品されてますが、
正直お情けノミネートみたいなものなので、話題にもならなそうです。

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