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8月の家族たち

今日も映画の感想です。

8月の家族たち
August Osage County

2014年4月18日日本公開。
メリル・ストリープとジュリア・ロバーツ初共演で戯曲を映画化。

オクラホマの片田舎に住む母親バイオレット(メリル・ストリープ)と、父親がこつぜんと姿を消したことで集まった3姉妹。一癖ある母バイオレットは病を患い、長女のバーバラ(ジュリア・ロバーツ)は夫(ユアン・マクレガー)の浮気と娘(アビゲイル・ブレスリン)の反抗期に悩んでいた。一方、次女アイヴィー(ジュリアンヌ・ニコルソン)はひそかな恋に胸を躍らせており、三女カレン(ジュリエット・ルイス)は家族の危機に婚約者を伴い帰宅した。(シネマトゥデイより)



本作は第86回アカデミー賞で主演女優賞と助演女優賞の候補になった作品で、
主演女優賞はメリル・ストリープで、助演女優賞はジュリア・ロバーツが
オスカーにノミネートされました。
どちらもすでにオスカー女優で、演技力は折り紙付きですが、
もうメリル・ストリープの演技力は異常なほど凄すぎて、
リアルを超えてファンタジーすら感じます。
今回、ストリープを押さえてオスカーを受賞したのは、
『ブルージャスミン』のケイト・ブランシェットでしたが、
その作品がまだ日本公開になってないので比べられないけど、
たぶん彼女がストリープの演技を超える演技をしているとは思えません。
ストリープは凄すぎて、凄いのが当たり前になってしまっているので、
今更彼女にオスカーを受賞させようとは誰も思わないのだと思います。
演技に凄味がありすぎて、何だか怖いくらいですが、
彼女の登場シーンは何だか妙な緊張感が走りますね。
彼女の演技に引っ張られて、周りもかなりいい演技をしていました。
ロバーツもそのひとりで、助演女優賞ノミネートも納得の好演ですが、
今回はこの部門を黒人枠にしたみたいで、オスカーを受賞したのは
『それでも夜は明ける』のルピタ・ニョンゴになりました。
でも純粋に演技だけで判断すれば、ロバーツこそがオスカーに相応しかったです。

本作はその2つの演技部門でノミネートされましたが、
作品賞や監督賞、脚色賞などではノミネートには至りませんでした。
こんな演技部門だけでノミネートされるような作品は、
往々にして役者の演技合戦を見せることに重点が置かれ、
物語自体は地味で面白味の薄いものになる傾向があり、
ボクはあまり好きではないのですが、不思議と本作は面白かったです。
たしかに派手さがあるわけでもないんですが、
なんとも言えないピリピリした空気感が漂っていて、何が起こるのか、
どんな展開になるか全く読めず、最後まで飽きることなく観れました。
その空気感はやはり役者の演技によるところが大きいと思いますが、
ちょっとした会話でこんなにハラハラできるのは珍しいです。

本作はジャンルとしてはブラックコメディなのですが、
けっこうシリアスだし、あまりに緊迫していて、全く笑えません。
これに関してはちょっと予想外で、気楽な気持ちで観に行ったため、
若干しんどかったですが、それはそれでいい裏切りだったかも。
ブラックコメディとは言えども、家族を描いたコメディドラマなので、
なんだかんだで丸く収まる話だろうと思ってましたが、
そんなことはなく、全く予想外のオチだったので驚かされました。
なんだか妙な鑑賞後感の物語で、興味深かったです。

オクラホマ州の田舎町に長年連れ添った老夫婦がいました。
妻バイオレットは口腔癌を患って、処方された鎮静剤で薬物中毒になり、
いつも精神が不安定な状態で、夫婦関係もうまくいってません。
アルコール中毒の夫ベバリーは、そんな妻の代わりに家事をさせるため、
ネイティブ・アメリカンの家政婦ジョナを雇うのですが、
差別意識が強いバイオレットは、彼女をインディアンと蔑んでいます。
そんなある日、夫バベリーが突然失踪してしまいます。
困ったバイオレットは家族に連絡をして、家に呼びます。
それにより妹マティ・フェイ夫妻、長女バーバラ一家、
次女アイビーが駆け付けますが、数日後、近所の湖で夫の遺体が上がります。
彼はどうやら入水自殺したようで…。
そしてお葬式の日に、漸く三女カレンが婚約者を連れてやってきて、
マティ・フェイの息子リトル・チャールズも葬式の後に到着し、
皆で葬儀後のディナーを取ることになるのです。
しかし薬物によりハイになり、攻撃的になったバイオレットは、
その席で家族を酷く罵りはじめ、ディナーは大荒れに…。
…というような物語です。

ストリープ演じるバイオレットは簡単に言えば意地悪婆さんで、
普段から娘たちに不愉快なことばかり言います。
娘たちのことは愛してるし頼りにもしているのですが、
自分が子供の頃に苦労した経験から、何不自由なく育てた娘が、
大した大人になっていないことに不満を持っているみたいです。
そんな経験もあって、お金にもガメついところがあるようです。
その性格が薬物中毒によって増幅している感じですね。
同じ境遇で育った妹マティ・フェイとは仲が良いみたいですが、
マティ・フェイはバイオレットほど意地悪ではないけど、
やっぱり息子リトル・チャールズに対しては辛く当たります。
チャールズはかなりドジっ子で、葬式も寝坊で間に合いませんでしたが、
そのダメさが原因で仕事を解雇され現在無職なこともあり、
母親から不満を持たれても仕方がないところもありますが、
マティ・フェイの夫チャールズは、彼女の息子に対する態度に、
ちょっと思うところがあるみたいです。
リトル・チャールズを演じるのはベネディクト・カンバーバッチですが、
彼がこんなダメ青年役やるのは珍しいけど、なかなか嵌ってますね。

ロバーツが演じるのはバイオレットの長女バーバラ。
ストリープとロバーツが母娘役で共演するなんて、なんか凄いですね。
真面目でシッカリ者のバーバラですが、実は夫ビルと別居中。
原因はビルの浮気ですが、なぜか娘ジーンは父方で暮らしており、
彼女自身にも性格上の問題があるみたいですね。
まぁあのバイオレットの娘では仕方ないかもしれません。
バーバラの娘ジーンも困った少女で、若干14歳にしてタバコを吸っています。
また祖父の葬式より、テレビ番組を見る方が大事で、協調性に欠けます。
面白いのは彼女はベジタリアンなのですが、彼女が肉を食べないのは、
動物が殺される時、恐怖を感じる物質が分泌されるため、
肉を食べることは殺される動物の恐怖を食べることだから、と考えているためで、
いやー、考えてもみなかった面白い理論で興味深いです。
三女カレンは奔放でキャピキャピした性格で、父の死も特に悲しむでもなく、
婚約中の恋人と故郷に旅行できてラッキーくらいの気持ちです。
どうも母バイオレットも三人姉妹の中でもカレンはあまり好きじゃないようで、
もしかしたら彼女自身、両親にあまり思い入れがないのかもね。
むしろ彼女よりも彼女の婚約者スティーブがかなり困った奴で、
婚約者の姪であるジーンに、あわよくば手を出そうと考え、
マリファナをエサにジーンを釣ろうと考えています。

結局、バイオレット以外もいろいろ問題がある家族ですが、
その中でもまともかと思えたのが次女アイビーです。
40過ぎても独身でレズ疑惑もありますが、常識人だし優しくて、
姉と妹が実家を離れて両親と疎遠になっているのに対し、
彼女はわざわざ実家の近くに住み、両親の世話を焼いています。
それなのにバイオレットの一番のお気に入りは長女バーバラみたいで、
ちょっと報われない可哀想な娘ですね。
…ってくらいに初めは思ってたんですが、彼女もやはり普通ではなく、
なんと従姉弟であるリトル・チャールズと交際中なんですよね。
従姉弟同士は結婚もできるので、全くない関係ではないけど、
やっぱりちょっと珍しいし、ボク的にも完全にNGです。
近親婚だと、やっぱり生まれてくる子供が心配になりますが、
彼女は子宮頸癌で子供を産めないようなので、その点は問題ないのかな。
ですがこの関係は、後々とんでもないことになります。

件のディナーの席で、バイオレットに各個いろいろ罵られた家族ですが、
アイビーとリトル・チャールズが付き合っているという話になり、
それに対してバイオレットが文句を言いだしたところで、
バーバラがブチ切れ、バイオレットのこの酷い態度は薬物中毒のせいだと、
母に飛び掛かり、常用している鎮静剤を取り上げて、
更に家中に隠してある薬物を全て探し出して没収します。
これでたしかにバイオレットの精神状態はかなり治まり、
その夜、落ち着いたバイオレットと娘3人は穏やかに話し合い、
なぜ母がこんなに意地悪なのか原因もわかって、
母娘の絆は少し修復されたような感じがしました。
問題を抱えた家族が葬式や結婚式などのイベントで集まって、
いろいろトラブルを起こしながらも家族の絆が修復されるというのは、
よくある家族ドラマのパターンなので、本作もこのままハッピーエンドに向かう、
…と思いきや、本作では前述のように、そうは問屋が卸しません。
この後、更に悲惨なトラブルが巻き起こるのです。

息子リトル・チャールズと姪アイビーの関係を知ったマティ・フェイは猛反対。
そりゃ従姉弟同士で恋愛なんて、家族としては心配でしょうが、
そんな生易しい理由で反対するのではなく、なんと2人は異母姉弟だったのです。
リトル・チャールズはマティ・フェイとバイオレットの夫ベバリーとの間の子で、
ベバリーは妻の妹と不倫関係だったわけですね。
従姉弟同士でもかなりきついけど、異母姉弟の交際はかなりまずいですよね。
語弊があるかもしれないが、アイビーが不妊だったのは不幸中の幸いですよ。
その誰も知らない秘密を叔母マティ・フェイから聞かされたバーバラは、
アイビーに悟られないように2人を別れさせようとしますが、
夫が妹と浮気していたことに気付いていたバイオレットは、
2人が姉弟だとアイビーに話してしまうのです。
アイビーが自分を置いて駆け落ちしようとしていることに勘付いたのでしょうね。
まぁ結局アイビーはショックを受けて出て行ってしまうのですが…。
更に、カレンの婚約者スティーブが、ついにバーバラの娘ジーンに手を出し、
家政婦ジョナが気付いて事なきを得ますが、この出来事により、
バーバラとカレンの姉妹関係にも亀裂が生じ、カレンたちは出て行きます。
またジーンの育て方の問題で、バーバラと夫ビルの関係も完全に崩壊。
更に更に、バイオレットは本当は夫ベバリーの居所を知っていたのに、
貸金庫の財産を優先して、結果的に自殺を止めなかったことが判明し、
バーバラも完全に母に愛想を尽かして出て行ってしまいます。

家族の絆が修復されてハッピーエンドを迎えるかと思いきや、
当初に元通りどころか、完全に悪化してしまうオチは予想外でした。
それももう絶対に修復不可能なくらいに崩壊しちゃってます。
夫も失い、娘からも見放されたバイオレットに残されたのは、
軽蔑していたインディアンの家政婦ジョナだけで…。
それでもジョナはバイオレットに優しく接してくれていたので、
そこだけは少し救われたかなと思えます。

ハラハラした甲斐なく、結局バッドエンドな家族ドラマでしたが、
全く予想できない、なかなかハードな展開で楽しめました。
すでに痴呆症気味のバイオレットはなるようにしかならないだろうけど、
今後、三姉妹がどうなるのかとても気になりますね。
特にアイビーとリトル・チャールズの関係が…。

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