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フルートベール駅で

今月から消費増税に加え、地球温暖化対策税まで上乗せされたので、
ガソリン代が1リットルあたり5円以上も値上がりしてしまい、
なかなか自動車を使いづらい状況になってしまいました。
ボクもたまには車も使うけど、幸いにも交通の便がいい場所に住んでいるので、
ガソリン代値上げは影響ないが、消費増税による電車賃の値上げは痛いです。
梅田や難波や三宮によく遊びに行くのですが、どこも10円程度値上がり…。
ガソリンに比べれば、かわいい値上げですが、往復20円アップは地味に痛いです。
一応、増税前に回数券を買っておいたので、まだ暫くは大丈夫ですが、
それが尽きれば大阪や神戸に行く回数も減るかもしれません。
まぁ地元のシネコンでは上映してない映画も多いので、
それを観るために電車で都会まで行かざるを得ないこともあるけど、
電車の使用回数を減らすために、数本ハシゴすることが増えるかも。
だいたい週一本くらい地元で上映しない観たい作品があるけど、
公開週に拘らないで、2~3本貯まってから観に行くようになるのかな。

ということで、今日は電車絡みの映画の感想です。
作中で改札機を飛び越えて無賃乗車している人がいましたが、
それは犯罪だけど、ちょっと羨ましいような気も…。

フルートベール駅で
Fruitvale Station

2014年3月21日日本公開。
実際の死亡事件を基にしたヒューマンドラマ。

2009年、新年を迎えたサンフランシスコのフルートベール駅。多くの人が入り乱れるホームで、22歳の黒人青年オスカー・グラント(マイケル・B・ジョーダン)が銃で撃たれてこの世を去る。命を失ったオスカーにとって、母の誕生日を祝い、娘と遊び、家族や友人と過ごしたいつもの日常が、悲しいことに最後の日となってしまった。(シネマトゥデイより)



サンダンス映画祭の作品賞と観客賞など、様々な映画賞を受賞、
或いはノミネートされた注目作である本作ですが、
カンヌ映画祭ある視点部門の第一回作品賞を受賞したことでもわかるように、
本作の監督ライアン・クーグラーにとっては初監督作品だったわけですが、
若干27歳なのに素晴らしい才能ですね。
しかし、本作は題材となった実際の殺人事件が衝撃的だったため、
それを映画化したというだけでも、それなりに注目されたであろう作品です。

本作は2009年の元日に実際に起きた、
サンフランシスコのフルートベール駅のホームで、
22歳の黒人青年が警官に銃殺された事件の経緯を描いています。
事件について詳しくは知らなかったものの、
そんなことがあったということは、なんとなく覚えていたので、
日本でも多少なり報道された事件だったのかもしれません。
本作の冒頭では、その事件の様子を捕えた、
野次馬(?)が撮った映像が流されます。
実際に人が殺されるシーンがスクリーンに流れるわけで、
それだけでも衝撃的な作品ですよね。
(被害者は撃たれてすぐに亡くなるわけではないけど。)
事件の一部始終を捕えているので、その映像を見れば、
被害者がなぜ撃たれたのかわかりそうなものだけど、
実際はその映像だけでは全くわかりません。
ただただ理不尽に、警察によって黒人青年が撃ち殺されているだけで、
一体その時、野次馬のカメラでも映せなかったところで何があったのか、
とても気になる状態で本編が始まりました。

ただ結論から言ってしまえば、
本編中には彼が撃たれた実際の理由は描かれていません。
やっぱり何の脈絡もなく、理不尽に撃たれる様子が描かれるだけです。
しかしエンドロール前に流された事件後の動きを説明するテロップで、
彼を撃った警官の「テーザー銃と間違えた」という証言が出てきます。
なるほど、それはあり得る話だ、と納得したものの、
拳銃とテーザー銃を取り違えるなんて、あり得る話だからこそ怖いですよね。
もちろんうっかりミスだからといって許されるはずはなく、
その警官は業務上過失致死で懲役2年を求刑されるも、
なんとたった11カ月で釈放されてしまうのです。
誰にでも起こりうるミスで、情状酌量の余地があると判断されたのでしょうが、
不当に軽すぎる罰で、間違いで殺された方は堪ったものではありませんよね。
これには市民からも抗議するデモや暴動が起きて、
鉄道や警察の幹部が総辞職する事態になったみたいですが、
やはり重い責任を取るべきなのは撃った張本人の警官です。
調べたところによると、彼は警察を辞職したようですが、
釈放後も命の危険を感じ、何度も引っ越しを繰り返しているそうです。
そのうち誰かからテーザー銃と間違えて拳銃で撃たれるかもしれませんね。

本作が撃ち間違えの経緯について、詳しく描かなかったのは、
自身も黒人である監督が、人種差別というテーマで描きたかったからでしょう。
被害者の黒人青年が撃たれた背景には、白人警官の黒人差別意識があったと、
観客に印象付ける目的があったものだと思われます。
サンフランシスコでそこまで強い黒人差別があるかは疑問ですが、
その警官に差別意識がなかったとは言い切れません。
その警察はいわゆる鉄道警察で、電車内でケンカが発生したとの通報を受け、
出動したのですが、本作を観る限りでは、
被害者の黒人青年のケンカ相手である白人の男は捕まっていません。
というか、その場にいた黒人青年たちを問答無用で取り押さえた感じで、
「悪さをするのは黒人に決まっている」という意識を感じます。
それに白人を捕まえたとしても、たぶんテーザー銃は使わないでしょうね。
もっと言えば、白人警官が11カ月で釈放されてしまったのも、
被害者が黒人だったからという印象も否めません。

ただ被害者の黒人青年が清廉潔白な若者かといえば、そうでもなく、
テーザー銃くらいなら使われても仕方ない経歴なんですよね。
なにしろ元売人で、1年前は刑務所に入っていた人物ですから。
まぁ彼が売ってたのは大麻だし、刑務所も自首して入ったようなので、
そこまでゴリゴリの悪党というわけではありませんが、
弱冠22歳なのに、あまり感心できる経歴ではありませんよね。
なんというか、典型的な黒人像を地で行くキャラ設定に思えますが、
ちょっと調べた限りでは、実際の被害者も、
そんな汚れた経歴の持ち主だったかは不明です。
ただ本作は、彼の家族の綿密なリサーチと協力のもとに撮られているので、
本当にムショ上がりの売人だったかもしれません。
もしそうでも、その経歴は隠して映画化した方が、
悲劇度が増すのでいい気がするのですが、監督としては、
生活のために売人をせざるを得ない黒人青年の境遇というのも、
人種差別のテーマの一部として描きたかったのかもしれませんね。

ボクとしては、現だろうが元だろうが、売人なんて死ねと思っちゃいますが、
この事件の被害者オスカーに対しては、そこまで酷くは思えません。
やっぱりそれは、彼が3歳の娘の父親だからかもしれませんね。
彼が勝手に死ぬ分には構わないけど、その幼い娘が可哀想なので…。
それに母親想いの息子というのもポイント高いかな。
ちょうど事件の前日の大晦日は、彼の母親の誕生日で、
お祝いの食事会のあとに事件に遭っているのですが、
彼の母親もそんな日に息子を失うなんて、とても気の毒です。
最期に家族で食事できただけでも幸せだったかもしれないけど、
図らずも彼が事件に巻き込まれる発端を作ったのも母親でした。
ヘイワードに住んでいるオスカーは、年明けに行われる
サンフランシスコの花火見物に仲間と出かける予定でしたが、
母親は車で出かけようとする息子の飲酒運転を心配して、
「電車で行きなさい」と言うのです。
そして花火見物の帰りの電車で、ケンカに巻き込まれて、
それが原因で殺人事件になってしまったので、
きっと母親の自責の念は相当なものだろうと思われます。
まぁ「電車で行きなさい」というアドバイス自体は正しいことで、
本来なら責任を感じるべきことじゃないですが…。
そういえば序盤で、彼女は運転中の携帯電話の使用にも小言を言ってましたね。
きっと道路交通法に対する遵法心の高い人なのでしょう。

本作で描かれているのは、主にオスカーの最期の一日です。
翌日未明に死んでしまうことがわかっている人の最期の一日なので、
それだけでも胸が詰まりそうになります。
もちろんオスカー本人は自分がもうすぐ死ぬとは思ってないので、
普通の大晦日の一日を過ごしているわけですが、
面白いといったら語弊があるかもしれないけど、興味深かったのは、
最期の一日に、彼の運命を示唆するような出来事が起きていることです。
娘を妻(未婚)の姉に預けて花火見物に行くのですが、別れる時に、
「行っちゃイヤ、怖い」と娘が何かを察したように言うのです。
虫の知らせってやつでしょうか。
更に興味深いのは、ちょうどその日に、オスカーは犬のひき逃げに遭遇し、
その犬は彼の腕の中で死んじゃうんですよね。
これは完全にオスカーの死を暗示している出来事です。
まぁ実際にそんな出来事があったとは思えず、本作の創作だとは思いますが、
観客の緊張感を煽る、興味深い演出だったと思います。

なかなかいい映画でした。

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