ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

LIFE!

世間では三連休となる今週末は、新作映画の公開ラッシュで、
祝日の金曜日には注目作がドバッと封切られますが、
それに先んじること2日、なぜか昨日封切られた映画があります。
それが今日感想を書くハリウッド映画『LIFE!』なのですが、
そんな中途半端な日を初日にした理由が全くわからず、気になります。
内容に関連した日を公開日に定めたのかなとも思ったけど、
別にそんなわけでもなさそうで、本当に普通の平日水曜日です。
考えられることとすれば、本当は今週末公開予定だったけど、
他の注目作との競合を避ける形で先行公開したとか、
水曜日にレディースデイを設けている劇場が多いので、
女性客目当てでお得な水曜日を初日にしたってことくらいかな。

何でもない平日に映画が初日を迎えるのは珍しいので、違和感はあるけど、
ボクは映画を週末に一斉に封切る必要はないとも思っているので、
本作のような公開日の選定もありだと思います。
むしろボクは職業柄、平日の不定休で、週末が休日ではないので、
週末に公開されても観に行きやすいわけでもありませんし、
平日が公開日の方が、公開初日と休日が重なって嬉しかったりもします。
まぁ日本の映画チャートである週末興行成績ランキングは、
土日の興収しか集計しないので、平日初日の作品は不利を受けるため、
ランキングを重視するなら週末が初日の方がいいでしょうけど、
ハリウッド映画は日本のランキングなんてどうでもいいはず。
全米1位に釣られる日本人は多いけど、日本1位に釣られる外国人はいないし、
そもそもハリウッド映画の公開は、世界で日本がドン尻の場合が多いです。
本作も世界で最も遅い公開日だったみたいですが、
それを少しでも早めるために2日前倒ししたとか?

ということで、今日は『LIFE!』の感想です。

LIFE!
The Secret Life of Walter Mitty

2014年3月19日日本公開。
ジェームズ・サーバーの短編小説をベン・スティラーの監督・主演で再映画化。

雑誌「LIFE」の写真管理部で働くウォルター・ミティ(ベン・スティラー)は、思いを寄せる女性と会話もできない臆病者。唯一の特技は妄想することだった。ある日、「LIFE」表紙に使用する写真のネガが見当たらない気付いたウォルターはカメラマンを捜す旅へ出る。ニューヨークからグリーンランド、アイスランド、ヒマラヤへと奇想天外な旅がウォルターの人生を変えていく。(シネマトゥデイより)



本作は全米では昨年の12月25日に公開になりましたが、
その時期はホリデーシーズンでもあるけど、
アカデミー賞候補の駆け込み公開時期でもあるので、
本作も意外とオスカー狙ってたのかもしれません。
なんとなくアカデミー賞が好きそうな人間賛歌ですが、
なぜかアカデミー賞の候補にはカスリもしませんでした。
前哨戦のNBR賞のトップ・テンには輝いたのに、ちょっと不思議です。
ボクとしても本作はかなりの佳作だと思ったので…。
(もしや『ベンジャミン・バトン』のおふざけがヒンシュクを買った?)

なんでも本作は1947年の映画『虹を掴む男』の再映画化だそうです。
山田洋次監督の日本映画『虹をつかむ男』は何か見た記憶があるけど、
ダニー・ケイ主演の旧作『虹を掴む男』のことは全く知りませんでした。
もともと原作は短編小説だそうで、それを膨らまして映画化しているため、
ほとんどオリジナル脚本の作品だったそうですが、
本作も旧作のリメイクではなく、短編小説の再映画化の趣向が強く、
旧作とは別物といっても過言ではないようなので、
特に再映画化を意識して観る必要はなさそうです。
旧作の主人公ウォルターはパルプ誌の編集者だったみたいですが、
本作のウォルターは由緒正しいグラフ雑誌『LIFE』誌の編集者です。
その『LIFE』誌は2007年に休刊となり、ウェブ事業に移行したそうですが、
本作はそんな事情も盛り込まれた、ちょっとタイムリーなネタになってます。
でも別に事実を基にした作品というわけではないみたいですけど、
実在した雑誌を題材にすることで、物語にリアリティが増し、
主人公ウォルターに親しみを感じやすくなっていると思いました。
まぁボクにはグラフ雑誌を眺める趣味はないので、
『LIFE』誌も名前くらいしか知らないんですが…。

たしかに親しみを感じる主人公ですが、本作の宣伝ではやたらと、
「この映画の主人公はあなたです」や「あなたのための映画です」など、
「共感」というメッセージを推しています。
一般試写会でのアンケートでは共感率が95%以上もあったそうで、
実際に共感できる人も多いのかもしれませんが、ボクはそうでもなかったかな。
臆病で不器用な男が、ひょんなことから人生変える旅に出る姿を描いた物語で、
平凡な主人公の物語であることが共感を呼んだと考えられますが、
ボクとしては彼の人生は端から平凡といえるものではなかったからです。
なにしろ伝統的な雑誌『LIFE』を作っている人ですからね。
メディアでの仕事なんて、絶対に一般的な仕事よりも刺激的なはずです。
なにしろ本作のヒロインなんて、大手食品メーカーのナビスコから、
変化に富んだ仕事がしたいと『LIFE』編集者に転職したくらいですからね。
これを平凡な人生と言うには、ちょっと無理があります。
それに主人公は、勇気を出して一歩踏み出し、壮大な冒険に出るのですが、
一歩踏み出すにもそれなりの経済力がないと無理ですけど、
なかなかそんなに余裕のある人はいませんよね。
普通の人はもし彼に共感しても、彼のように実行するのは難しいです。
たぶんこの強烈な「共感」推しは、世界でも日本での宣伝だけだと思うけど、
本当に「共感」を売りにしたいなら、吹替版声優を岡村隆史にしちゃダメでしょ。
芸人なんて言う特殊な人種が脳裏に過ると、共感も吹っ飛びますからね。
まぁ本作を日本語吹替版で観る人は相当変わり者なので、
その時点で平凡な人とはいえないでしょうけどね。

主人公に共感できるかは別にしても、主演のベン・スティラーは好きだし、
なかなか面白い作品なのは間違いありません。
基本的にはコメディドラマですが、妄想癖のある主人公の頭の中が映像化され、
大迫力のアクションシーンや、奇抜なファンタジーシーンもあり、
とても楽しい映像になっていますが、特に最も素晴らしいのは、
まるでネイチャードキュメンタリーのような、大自然の壮大な風景映像ですよね。
大自然だけではなく、人工物だらけの大都会NYの風景も、なんだかお洒落で、
さすがはグラフ雑誌を題材にするだけあって、画のセンスが半端ないです。
物語的にも、ちょっとしたロマンスがあるのもよかったけど、
写真から謎を解くミステリー的な展開もあって、どんどん引き込まれ、
全く退屈することなく最後までワクワクできました。
以下、ネタバレ注意です。

グラフ雑誌『LIFE』誌でネガの管理をしているウォルターは、
写真部の同僚シェリルに片想いしており、妄想の中ではラブラブですが、
現実には奥手で声を掛けることもできません。
ある日、会社が買収され大規模な人員整理による再編が行われることに。
更に『LIFE』誌もウェブ版に移行することになり、紙媒体は次が最終号で休刊。
その最終号の表紙用に、看板カメラマンのショーンから、
「人生の神髄」とまで自画自賛する最高傑作の写真が送られてきますが、
そのフィルムロールから表紙に指定された写真のネガが抜け落ちており、
ネガ管理の責任者ウォルターが、そのネガを探すことになりますが、
おそらくまだシェーンが持っていると思われます。
しかしシェーンは携帯も待たずに撮影で世界を飛び回っていて、
彼に連絡を取ることもできず、居所も掴めません。
そこで彼は抜け落ちた前後のネガをヒントに、ショーンを探そうとするのです。
前後のネガには誰かの親指のアップや、海か何かの水面、
カーブを描いた何かの一部が写ってますが、全く手掛かりになりそうもなく、
こんな写真からショーンの居所を探すなんて、かなりの難問です。
一体その写真にどんな秘密があるのか、とても興味が惹かれます。
そしてショーンの最高傑作がどんな写真なのかも気になりますね。

水面の写真をよく見てみると、水面に文字が反射しているのがわかり、
どうやらそれはグリーンランドのド田舎ヌークの漁船の名前のようです。
ウォルターは意を決して、ひとりでヌークまで飛びます。
ヌークに着くも、ショーンはすでに漁船で出発したと聞きますが、
そこのカラオケバーで、偶然にも写真の親指の男に出会います。
男はヘリ便のパイロットで、ちょうどその漁船に無線部品を届けるそうで、
ついでに連れて行ってやると言いますが、臆病なウォルターは、
悪天候の中を泥酔したパイロットのヘリで飛ぶこと恐れ、断ります。
ところがそこに憧れのシェリルの幻覚が現れて、
デヴィッド・ボウイの『スペイス・オディティ(トム少佐)』を熱唱。
その歌に勇気づけられたウォルターはヘリに飛び乗るのです。
ボクはその歌をあまり知らないので、なぜ急に心変わりしたのか謎ですが、
彼の厄介な妄想癖がポジティブに働いたのは意外でした。
妄想以上の冒険を繰り広げることで、妄想癖が治っていく展開だけど、
いい妄想もあるなら、別に治らなくてもいい気がしますね。

ヘリで漁船に追いついたウォルターを待っていたのは、
妄想どころではない超デンジャラスな現実です。
なんと彼は漁船に飛び移るのに失敗し海に転落し、サメに襲われるのです。
あんな都合よく人食いザメが現れるなんて、これも妄想かと思ったけど、
現実だったみたいで、ちょっと出来すぎな気がしますね。
船員に助け上げられて、漁船に乗り込みますが、
肝心のショーンは1時間前に漁船を離れて、アイスランドに行ったそうで…。
漁船でショーンの残したケーキを貰った彼は、そのケーキの包み紙が、
ショーンの訪問地のリストになっていることに気が付き、
どうやらアイスランドの火山に行ったようだとわかるのです。
水面の写真の文字もそうだったけど、その包み紙の文字は英語ではないので、
観客やウォルターにとってはまるで暗号みたいなものですが、
そんなミステリー感がますますワクワクを煽りますね。

アイスランドに着いたウォルターは現地の子供が持っていたスケボーを、
たまたま持っていたストレッチアームストロング人形と交換してもらいます。
あんなヘンテコな人形とスケボーを交換する子がいるとは思えませんが…。
ウォルターは昔スケボー少年だったみたいで、スケボーの腕はかなりのもので、
それに乗って、ショーンがいるらしい火山の谷間の飛行場を目指します。
スケボーを移動手段に使うなんて、まるで江戸川コナンみたいだけど、
あんな山の中に、スケボーに最適の舗装された道路があるのも不思議です。
空港に着いたウォルターを襲ったのは、なんと火山の大噴火。
ショーンともう一歩で会えそうでしたが、ここは逃げるしかないです。
手掛かりを失ってしまったウォルターに、写真管理部の同僚から
「大至急戻れ」とのメールが届き、彼は一度帰国することになります。

会社に帰った彼は再編担当の新しい上司に、ネガ紛失の責任で解雇され、
最終号の表紙の写真も違うものに差し替えると告げられます。
憧れのシェリルも解雇されたようで、彼女に会いに自宅に行くと、
そこには旦那らしき男がいて、ウォルターは大ショックで帰宅。
もうどうでもよくなった彼は、シェーンからネガと一緒に贈られた財布まで
ゴミ箱に捨ててしまうのですが、自宅にある母のピアノを見てビックリ。
例のフィルムロールの中に、そのピアノのネガがあったのです。
どうやら何故かショーンはウォルターの自宅を訪れて、
彼の母親とウォルターの仕事について話したそうなのです。
ウォルターが漁船で食べたシェーンのケーキも、
実は彼の母親がショーンに持たせたものだったみたいです。
そうえば「母親のケーキと同じ味」みたいなこと言ってましたよね。
まさに灯台下暗しな展開で、ウォルターは母親から、
ショーンがユキヒョウを撮るために、ヒマラヤ高地に行ったと聞きます。

アフガニスタンに飛び、ヒマラヤを登山したウォルターは、
標高5500メートル以上の高地で、ついにショーンを見つけます。
一口にヒマラヤといっても広いだろうに、意外とあっさり見つけましたね。
それにしてもショーン・ペンが演じるカメラマンのショーンですが、
なんだかめちゃめちゃ渋くてカッコいいです。
ウォルターが彼に憧れるのもわかりますね。
抜け落ちていたネガのことを聞くと、彼は「財布の中にあるよ」と…。
ちょっとした遊び心で、ウォルターをビックリさせてやろうと、
一緒に贈った財布の中に忍ばせていたようなのです。
財布はもう捨てちゃっていたウォルターは愕然とします。
でもショーン探しの旅は、彼にとって何よりも得難い経験だったでしょうね。
ボクはてっきり、ショーンがウォルターを冒険に誘い出すために、
わざとネガを抜いて、他のネガや漁船のケーキの包み紙に、
自分の居所のヒントを残したのだと思ったけど、
彼にはそんな意図は全くなかったことが意外でした。
それなら、なんで親指とか水面とか意味の分からない写真を、
プロのカメラマンの彼が撮ったのか謎です。
まぁ逆にヒントだったとしても、かなり運が良くないと見つけられないので、
それはそれで謎は残るんですけどね。

帰国したウォルターが自宅に戻ると、
母親が捨てたはずの財布を拾ってくれていたようで、
奇跡的にショーンの最高傑作のネガを取り戻すことができました。
彼は会社に乗り込み、このネガを最終号の表紙を差し替えろと突き付けます。
でも何故かウォルター自身ではネガの中身は確認しなかったようで、
どんな表紙になるかは完成してからのお楽しみです。
解雇手当を受け取った日は、ちょうど最終号の発売日で、
シェリルと一緒にその表紙を見た彼はビックリ。
なんとシェーンの最高傑作は、ウォルターを隠し撮りした写真で、
その煽り文には「これを作った人に捧げる」と書かれていたのです。
どんな美しい大自然の瞬間よりも、最終号の表紙は彼が相応しいということで、
シェーンの『LIFE』誌の編集者に対する最大の敬意の表われで、
とても感動的なラストだったと思います。

ただ不思議だったのは、よくこれを現経営陣が表紙にしたなということ。
解雇したばかりの男を表紙にするなんて、ちょっと考えにくいし、
ある意味では雑誌を休刊させた現経営陣に対するショーンからの批判なのにね。
それにショーンが編集者の中で、ウォルターに目を付けたのも不思議かも。
彼はネガの管理者ですが、ネガを管理したり現像するのが仕事で、
雑誌に載せる写真を選んでいるのは、たぶん写真部なので、
彼の仕事は『LIFE』誌の出来に貢献する部分は少ないです。
たしかに愛社精神は人一倍で、雑誌のコンセプトも誰よりも理解してるけど、
「冒険こそ人生」的なコンセプトを最も実践してなかった人ですからね。
まぁショーンは雑誌に関わった全ての編集者に敬意を示したわけで、
実は誰でもよかったけど、撮れたのがたまたまウォルターだっただけかも。
結果的にウォルターは雑誌のコンセプトを地で行くような冒険をして、
表紙を飾るのに相応しい人物になりましたけどね。
なんにしても、とても感動できたのでよかったです。

まず誰も体験できないような冒険を経験したウォルターですが、
最後はシェリルとの平凡な幸せを手に入れるという帰着もよかったです。
冒険には憧れるけど、冒険だけが人生の神髄じゃないですからね。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/1255-c279a723
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad