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オール・イズ・ロスト 最後の手紙

今日も映画の感想です。

オール・イズ・ロスト 最後の手紙
All Is Lost

2014年3月14日日本公開。
ロバート・レッドフォード主演の人間ドラマ。

自家製ヨットでインド洋を航海中の男(ロバート・レッドフォード)。突然、海上の浮遊物がヨットに衝突したことから、気まま旅が一転する。浸水や無線のトラブル、さらには天候悪化に見舞われ、自然の脅威、飢えや乾き、孤独との闘いを強いられる。そして、男は自分自身の気持ちと向き合い、大切な人に向けて手紙を書く。(シネマトゥデイより)



名優ロバート・レッドフォードが、スマトラ沖1700海里で遭難した男の演じた
海洋サバイバル映画の本作ですが、監督と脚本を務めたのは、
2年前のアカデミー賞で、初監督作『マージン・コール』が脚本賞候補になった
J・C・チャンダー監督です。
『マージン・コール』は日本では劇場公開されなかったので観てませんが、
脚本賞候補者の作品であれば、きっと面白いはずだと本作を観に行きました。
本作自体はアカデミー賞の主要部門の候補にはなれませんでしたが、
アカデミー音響編集賞の候補にはなりました。
前哨戦のゴールデングローブ賞では作曲賞を受賞しています。
ボクはあまり関心がない分野なのでよくわかりませんが、
どうやらサウンド面が高く評価されている作品のようですね。
ボクには少しBGM過多に思えたのですが…。
あと、本作の唯一の出演者であり主演のロバート・レッドフォードは、
ゴールデングローブ賞では主演男優賞(ドラマ部門)の候補になっています。
2時間ちかい上映時間の間、ずっと出突っ張りのひとり芝居を続けており、
まさに彼の芝居が最大の売りともいえる作品なので、候補になるのは当然、
というか、端から主演男優賞狙いの作品のようなものです。
残念ながら大本命のアカデミー賞の方では候補にすらなりませんでしたが、
レッドフォードのリアルな演技がすごいです。

ただ、リアルな演技がすごいとは思うけど、映画を含め演劇においては、
リアルであることが必ずしもいいことだとは言えないような気がします。
リアルな演技である前に、ちゃんと客に伝わる演技であることが重要です。
見渡す限り海のインド洋の真ん中で、小さなヨットで遭難した男の物語なので、
主人公はずっと一人きりのため会話をする必要がなく、
本作にはセリフがほとんどありません。
セリフがあったのは導入部分の家族に向けた手紙の朗読と、
ラジオ無線が繋がりそうになった時に救助要請するシーンと、
近くにタンカーが通りかかった時に「ヘルプ!」と叫ぶシーン。
ひとりごとは真水を入れたポリタンクに海水が混じっていると気付いた時に
「ファァァァァァァァァァック!!」の叫んだセリフのみです。
字幕翻訳者にとってこれほど楽チンな仕事はなかっただろうなと思うほど、
とにかくセリフが少ない作品ですが、そのために主人公の心境説明や
状況説明のセリフも一切ないので、主人公が今何を考えて、
何をやろうとしているのかがわからないところがいくつかあります。

例えば、ヨットが漂流する貨物コンテナに衝突し、船体に穴が開き、
浸水して電子機器が使えなくなったのが原因で遭難するのですが、
それらの電子機器が一体何に使用するものなのか、イマイチわかりません。
ボクはヨットなんて持ってないので、積んである機材のことは全く知らないし、
なんとなく通信機器だろうことは予想できるのですが、確信が持てません。
また機材が壊れているとわかった後に、マストを登り始めた主人公が、
天辺で外れているリード線を挿し直すのですが、
何の説明もないのでその行動の意味もわかりません。
そのあとに無線が回復するとか、何か状況に変化があれば、
「あぁアンテナリードだったのか」とかわかりそうなものだけど、
別に何の状況の変化も起こってませんし、一体何をしたのやら…。
浸水した船室で探し物をする時も、何を探しているかわからないままなので、
見つかるかどうかハラハラすることもできません。
リアリティに欠けて、ちょっと嘘くさくなってしまうかもしれないけど、
ひとりごとで「救急箱は何処だっけ?」とか状況説明してくれたら、
客としてはもっと主人公の気持ちに寄り添える気がします。
客もドキュメンタリーとして観ているわけじゃないんだから、
わかりやすくするために、ちょっとくらいの嘘は必要だと思います。
どうせフィクションには変わりないんだしね。

というか、そもそもひとりごとすら言わない状態が嘘くさいですよ。
密閉系シチュエーションスリラーなんかでも、
ひとりで閉じ込められた主人公は、不安を吐露してしまったり、
落ち着くためにブツブツひとりごとを言ったりするものです。
ボクも家にいる時や、仕事でひとりで作業している時は、
よくブツブツひとりごと言ったり、鼻歌を唄ってしまうので、
本作のように黙々と行動できる心理が理解できません。
たぶん一人の時は全く喋らない人もいると思いますが、
遭難という極限の状況下なのにあんなに静かだと、やけに落ち着いて見え、
「この人には焦りや恐怖はないのか」と思えて、感情移入できないし、
その極限なはずの状況も、大したことないような印象を受けます。
(呑気に寝てるシーンも多いしね。しかも浸水中でも…。)
ここまで喋らないのは、ちょっと現実味に欠ける気がします。
逆に本当は不安で堪らないけど、気丈に振る舞っているようにも見えますが、
それはそれで、自分しかいないのに気丈に振る舞う理由なんてないから、
やっぱり現実味に欠けますよね。
それに8日間も遭難しているのに、服を何パターンも着替えるのは変だし、
髭剃りも欠かさないので、まるで撮影でもされているような印象です。

あと、心境説明が全くないので、冒頭の短い手紙(遺言)でしか、
彼のバックヤードを知ることができないのも、
感情移入しにくい要因のひとつとなっています。
その手紙から読み取れるのは、どうやら妻子がいるようですが、
あまり家庭を顧みない身勝手な夫だったらしいということくらいですが、
それだけ伝えられたら、逆に主人公に対して反感しか持てませんよ。
きっと妻子を無視して、勝手にヨット遊びに繰り出して、
遭難してしまったんだろうと思いますが、それだともはや自業自得で、
彼に生還してほしいとも思えませんでした。
主人公がダメ人間なら、遭難中に心境の変化を描き、
改心したことをちゃんと伝えるべきですが、セリフがないために、
彼に心境の変化を窺い知ることはとても難しいです。
応援できない主人公のサバイバル映画ほど退屈なものはないです。

サバイバル映画としての展開もちょっと微妙で、
舟で遭難する海洋サバイバル映画の展開といえば、
主に食糧の確保の問題や、人食いサメ、あと嵐が定番パターンですが、
本作もそのパターンを踏襲しています。
というか、海での危機的展開なんて、もともとそれくらいしかありませんよね。
一緒にトラでも乗ってれば、また違う危機も描けるでしょうが、
どうしてもワンパターンになりがちなジャンルです。
本作は特に工夫もなく、そのワンパターンな展開を繰り返すだけですが、
更に悪いのは、嵐に2度も遭遇するということです。
ただでさえワンパターンなのに、同じ危機を2度も見せられたら飽きますよ。
アカデミー脚本賞に絡んだ監督の撮った作品だとは思えない陳腐な脚本です。
でも嵐を2度も描くだけあって、よほど嵐のシーンに自信があるのか、
たしかに嵐のシーンのスペクタクル感はかなりのもので、
その表現力は他の海洋サバイバル映画とは一線を画すもので、
ちょっと感心しちゃいましたが…。

見るべきところが全くないわけでもなかったけど、
総じて退屈な映画だったと思います。

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