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ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅

本日、第86回アカデミー賞が発表されました。
ボクは作品賞は『ゼロ・グラビティ』だと確信してたけど、
対抗馬の『それでも夜は明ける』がオスカー受賞となりました。
まぁ『それでも夜は明ける』は日本公開前だし、
出来栄えで比較することはできないから予想も難しいけど、
白人の選考委員が多いアカデミー賞で、黒人差別を描いた映画が
オスカーを受賞するのは無理かなと踏んでいたのですが、
今はそんな時代でもなくなったんですかね。
でもやっぱり主演男優賞を黒人俳優に獲らせないという伝統は残っていて、
『それでも夜は明ける』のキウェテル・イジョフォーではなく、
『ダラス・バイヤーズクラブ』のマシュー・マコノヒー主演男優賞受賞でしたが、
ボクも同作は観て、彼は相応しいと思ったので、これは予想通りの結果です。
同作からはジャレッド・レトが助演男優賞を受賞しましたが、これも納得です。

ジャレッド・レトは黒人俳優ですが、助演女優賞も黒人女優が受賞しています。
『それでも夜は明ける』のルピタ・ニョンゴです。
同賞は予想が難しかったですが、消去法で彼女な気はしてました。
主演女優賞は『ゼロ・グラビティ』のサンドラ・ブロックで
間違いないと確信していたのですが、いざ蓋を開けてみたら、
『ブルージャスミン』のケイト・ブランシェットでしたね。
『ブルージャスミン』は作品賞にノミネートもされてなかったから、
全くノーマークでしたが、彼女はゴールデングローブ賞も獲ってるみたいで、
マシュー・マコノヒー同様、大本命が順当に受賞したみたいです。

ボクが応援していた『ゼロ・グラビティ』は、作品賞を逃すも監督賞を受賞。
他の主要部門では脚本賞を『her/世界でひとつの彼女』が獲りましたが、
この作品も公開前で観れてないけど、概要を聞いただけでも面白そうな脚本で、
予想通りの結果だったと思います。
一方、脚色賞はまたしても『それでも夜は明ける』ですが、
ボクの予想では『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でした。
主人公のモデルの人物を怒らせるほどの脚色だったと話題にもなったし…。
とりあえず今週末公開の『それでも夜は明ける』は主要部門三冠なので、
今まで以上に公開が待ち遠しくなりました。
この公開日にしたってことは、配給会社もオスカーに自信があったんでしょうね。

ということで、今日は6部門ノミネートも無冠だった映画の感想です。

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅
Nebraska.jpg

2014年2月28日日本公開。
アレクサンダー・ペイン監督によるモノクロ映画。

100万ドルが当たったという通知を受け取ったウディ(ブルース・ダーン)。それはどう見てもインチキだったが、徒歩でもモンタナからネブラスカまで金を受け取ろうとするウディに息子のデイビッド(ウィル・フォーテ)が付き添うことに。こうして始まった父と息子の4州をまたぐ車での旅。途中、立ち寄った父の故郷で、デイビッドは父の意外な過去を知ることになる。(シネマトゥデイより)



アカデミー作品賞候補という理由だけで観に行った本作。
正直、全く期待していませんでした。
作品賞の候補になるだけでも大したものかもしれないけど、
アカデミー脚色賞を二度も獲得した名監督が撮っているのですが、
アカデミー賞は常連が大好きで、候補者はいつも同じ面子なので、
放っておいてもノミネートは間違いないと思っていたし、
作品の出来で候補になったのは言い切れないと思ったので…。
なにより期待できないのは、このご時世にモノクロ映画ってことです。
モノクロかつサイレントでオスカー受賞した『アーティスト』の例もあるので、
一概には言えないですが、モノクロ映画というのは内容に自信がないから、
あえて時代錯誤なモノクロ撮影で、気を衒おうとしていると思えるんですよね。
それに今だと『アーティスト』の二番煎じのような印象も受けますし。 
単純にボクはモノクロだと色がない分だけカラーより損した気分になるし、
なんだか辛気臭い印象を受けるので、モノクロ映画は苦手です。

本作を観に行ったのはアカデミー賞受賞式より前ですが、
万が一にもオスカー受賞の可能性があるから観に行ったけど、
もし今日までに観ていなかったら、無冠とわかった本作を、
わざわざ観に行ったかどうかは微妙なところでした。
いや、たぶん観に行ってない公算が強かったと思います。
本年度の作品賞候補の中でも最も期待してませんでしたが、
全米ボックスオフィスもベスト10圏外で、全くヒットしてないし、
面白そうだと思える材料は何もなかったので。
ところが、いざ観てみると、これがなかなか面白い作品でビックリ。
もし公開日が授賞式後だったら、これを見逃していたかもしれないなんて、
本当に危ないところで、授賞式の4日前に公開されたのはラッキーでした。

ストーリーがとても素晴らしかったので楽しめましたが、
それでもモノクロだったことには納得していません。
別にカラーでも同様に楽しめたように思えます。
てっきりモノクロで撮ったのはノスタルジーの演出で、
物語の舞台もモノクロ映画時代なのかと思っていましたが、
本作の時代背景は普通に現代のようで…。
それだといよいよモノクロである理由がわからなくなります。
なんでも監督曰く「象徴的で典型的な外観を生みたかった」ために、
モノクロ映画を採用したそうなのですが、
それってつまりは、やはり気を衒っただけってことですよね。
本作を配給したパラマウント・ヴァンテージは、
本作がモノクロで撮られることを強く懸念していたそうで、
それを受けて監督はカラー版も一応作ったらしいのです。
つまりカラーで撮って、編集でモノクロにしているわけです。
客にはカラーとモノクロを選べないので、
本当はどちらがいいのか比べることはできませんが、確実に言えることは、
本作がモノクロであるために避けた客は多いだろうということです。
賞レースではモノクロであることは目立つかもしれないが、
客が入ってナンボの配給会社が懸念を示すのは当たり前で、
ボクもせっかく素晴らしい物語なのに、モノクロを理由に避けられているなら、
それは非常に勿体ないことで、監督の判断が正しかったとは思えません。

でもモノクロかどうかなんていうのは、はじめの印象だけの問題で、
はじめは辛気臭いと思ったものの、暫く観れば慣れるものです。
そうなれば、あとは物語の出来だけの問題になります。
以下、ネタバレ注意です。

モンタナ州で暮らす老人ウディ宛に、ネブラスカ州の出版社から、
「100万ドル当選しました」という明らかに胡散臭い手紙が届きます。
普通ならそんな手紙を信用する人はいませんが、人を信用しやすく、
ちょっと認知症気味のウディは真に受けてしまい、賞金受け取りのため、
家を抜け出しフラフラとネブラスカ州まで歩いて行こうとするのです。
まったく、老人を騙すなんて酷い出版社ですが、それが詐欺かどうかは微妙で、
定期購読の情報などのアンケートを記入して返信したら、
賞金100万ドルの抽選に参加できるというものらしいです。
まぁほぼ間違いなく懸賞詐欺ですが、立件は難しいですね。
老人が歩いてネブラスカ州まで行けるはずもなく、
ハイウェイを歩いているところを警官に保護され、
家に戻されるのですが、また目を離すと出発してしまうのです。
しっかり者の妻ケイトは、ほとほと呆れて、ウディに小言ばかり言っています。
それを見兼ねた息子デイビッドは、父ウディも諦めが付くように、
出版社まで車で連れて行ってあげることにして、
親子2人のネブラスカ州までの旅が始まるのです。

車で旅を続けるロードムービーかと思っていましたが、
移動シーンは意外と少なかったです。
地理に弱くて、モンタナ州とネブラスカ州の位置関係がわからないけど、
それほど離れているわけでもないみたいで、すぐにネブラスカに着きます。
道中、サウスダコタ州のラシュモア山で大統領の彫像を観光しただけです。
途中で酒に酔ったウディが入れ歯を線路で落としたり、
コケて頭に何針も縫う怪我をしたりしたので足止めを食い、
スケジュールの変更を余儀なくされたため、途中でウディの故郷である
ネブラスカ州ホーソンの親戚(ウディの妹)の家に寄ることになります。
ついでに週末には親戚一同集まることになり、
妻ケイトや長男ロスもモンタナ州からやってきます。

故郷で旧友のエドと再会したウディは、ついつい賞金当選の話をしてしまい、
ウディが百万長者になったという噂は、小さな町中に広がり、
彼は一躍町の有名人になるのです。
みんな簡単に信じてしまうから驚きですが、困ったのはデイビッド。
ウディの賞金を狙って、ユスリやタカリが寄ってくるのです。
特に酷いのが旧友のエドで、彼はウディに昔金を貸したと嘘をつき、
デイビッドに対して借金の返済を要求するのです。
更には妻ケイトとの仲を取り持ったのも自分だから、
最低でも1万ドルよこせと強請ってきます。
デイビッドはアホではないので突っぱねますが、
そもそも賞金なんて当たってませんから突っぱねる他ないですね。
そんな他人だけではなく、親戚たちも何かと理由を付けて、
デイビッドに金の無心をしてくるのです。
宝くじが当たった途端に親戚が増えるなんて話があるけど、
それを地で行く話で、何だかリアルで嫌ですね。
ボクも昨日グリーンジャンボ買ったけど、もし高額当選しても、
家族以外には絶対に秘密にしようと思いました。
それにしてもタカってくる親戚を一喝する妻ケイトには痺れました。

ケイトは非常にしっかりした奥さんですが、時折話す下ネタが強烈です。
ホーソンは彼女の故郷でもあるのですが、
エドのことを「あの男は私のブルマーの中を狙っていたのよ」とか、
息子としては知りたくない昔話をどんどんデイビッドに教えてくれます。
でも若い頃ビッチだったわけでもないようで、むしろ身持ちが固く、
ウディは彼女とヤリたいから結婚したらしいです。
今の外見からは想像も付かないが、モテモテだったのは本当みたいですね。
ウディ曰く、ケイトとは愛よりも性欲だけで結婚したので、
結婚後の尻に敷かれる生活に嫌気が差し、アル中になってしまったとのこと。
その話を聞いた息子デイビッドはショックを受けますが、
実はウディがアル中になったのには別の理由がありました。

ウディが有名になり、地元紙から取材依頼をされますが、
デイビッドはそれを断りに新聞社を訪れます。
そこの女性経営者は他の住人とは違い物分かりのいい人で、
当選が誤解であるとすぐに理解してくれるのです。
というのも、彼女はウディの元恋人で、ウディの性格を知っていたのです。
デイビッドは彼女から、昔の父の話を教えてもらいますが、
なんでもウディは朝鮮戦争の時に戦闘機のパイロットをしており、
その時の辛い経験から深酒をするようになったそうなのです。
たぶん妻ケイトとの結婚を後悔しているという話も嘘なのでしょうね。
それをキッカケにデイビッドは父の見方が少し変わるのです。

デイビッドは家族を連れて、ウディの生家を見に行きます。
その帰りに、最低な旧友エドの家に立ち寄り、
昔エドがウディから借りパクしたコンプレッサーを、
彼の家の納屋から勝手に奪い返してしまうのです。
デイビッドの兄ロスもノリノリで協力してくれますが、
序盤ではちょっといけ好かないやつだと思ったけど、
なかなかノリのいいやつですね。(車のセンスは最低だけど。)
でも実はその家は他人の家だったみたいで、慌てて返しに戻るのですが…。
その夜、路上で2人組の目出し帽の男に襲われ、
当選通知の手紙を盗まれますが、デイビッドは犯人が誰かすぐにわかります。
こんなアホなことをするのは、アホの従兄弟しかいません。
デイビッドがアホの従兄弟を問い詰めると、アホはすぐに口を滑らしますが、
その手紙がインチキだと気付いたみたいで、路上で捨ててしまったそうで…。
手紙を無くしたウディは酷く落ち込み、そんな父を見兼ねたデイビッドは、
夜の町で一緒に手紙を探して回ることにします。
手紙は旧友エドが拾ったようで、彼も手紙がインチキだと気付き、
バーで仲間らとウディを笑いものにして楽しんでいました。
それを見たデイビッドはエドの顔面に一発お見舞いします。

手紙を取り戻した父ウディに、デイビッドはなぜ賞金に固執するのか尋ねます。
ウディは当初から賞金で新車のピックアップトラックと、
エドに借りパクされたコンプレッサーを買いたいと言っていましたが、
実はそれ以外にも、残りの賞金で息子たちに何か残してやりたいと思い、
そのために賞金がどうしても必要だったと告白します。
それを聞いたデイビッドは深く心を打たれます。
話し合いの末、ウディも「出版社にはいかなくていい」と言います。
その後、ウディが急に体調を壊したため、病院に入院させるのですが、
翌朝、病室のベッドに父の姿がないことに気付いたデイビッドが探しに行くと、
ハイウェイを出版社のあるリンカーンに向かって歩いている父を発見し、
デイビッドは父を拾って、そのまま出版社に行くのです。

出版社に着くと、手紙を見た受付が、悪びれもせず「当選してません」と告げ、
記念品として「PRIZE WINNER」と書かれた帽子を渡されます。
ボクもなんだかんだで当選していて、笑いものにしたやつらを見返すような、
一発逆転の展開があるかもしれないと期待したけど、
そう甘くはなく、やっぱり手紙はインチキだったみたいです。
この受付も一発殴ってやればいいのにと思ったけど、
そんなことだろうと思っていたデイビッドはあっさり引き下がります。
見るからに意気消沈したウディの姿には、ボクも見ているだけで辛かったです。
これで物語が終わりなら、なんともやりきれない作品ですが、
本作が素晴らしいと思える作品になったのはここからの展開の秀逸さです。
落ち込む父を見たデイビッドは、中古車店でそこまで乗ってきた自分の車を売り、
新車同然のピックアップトラックを購入し、さらにホームセンターで、
コンプレッサーも購入し、トラックの荷台に積んで、帰路に着きます。
途中でホーソンを通るのですが、その間の運転を父ウディに任せるのです。
「PRIZE WINNER」と書かれた帽子を被ったウディが、
欲しがっていたコンプレッサーを積んだ真新しいトラックを運転しているのを見た
エドたちホーソンの住民は、「本当に当選していたのか」と驚きます。
あんな仕打ちをしたら、もう分け前は望めないし、エドも深く後悔したでしょう。
そのエドの姿を見て、ボクもとても痛快な気持ちになれました。
まぁウディの息子に何か残したいという望みは叶わなかったけど、
デイビッドにとっては最高の親孝行だし、とても心温まる物語でした。

モノクロは理解できませんでしたが、
オスカー候補に恥じない素晴らしい作品で、
すでに公開済みの本年度オスカー作品賞候補6本の中では、
個人的には『ゼロ・グラビティ』に次ぐ名作だったと思います。
(『ダラス・バイヤーズ・クラブ』と同率で。)
無冠ではありますが、是非みんなにオススメしたい作品です。

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