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魔女の宅急便

ハリウッド映画ファンとしては、アカデミー賞が終わると、
漸く2013年の映画生活に区切りがついたような気分になります。
今週末には日本アカデミー賞が控えていますが、
そちらは何の権威も認めていないので、正直どうでもいいけど、
今年ちょっと気になるのは、ビートたけしの予想、
というか断言が的中するのかどうかです。

ビートたけしが審査委員長を務める東京スポーツ映画大賞の授賞式で、
彼はキネ旬ベストテンをはじめ、他の映画賞を公然とインチキと言い放ち、
「日本アカデミー賞も交代で受賞している。次は松竹だ。」と予想しました。
ボクも日本アカデミー賞なんてインチキだとは思っていましたが、
東宝、東映、松竹、角川関係者の談合により決まることはわかってたけど、
まさか交代で受賞しているとまでは思っていなかったので、
この度のビートたけしの発言には非常に興味が湧きました。
ただ彼もちょっと卑怯だと思うのは、本年度の最優秀作品賞は、
交代で受賞しているかどうかは別にしても、松竹が受賞するのは確実です。
候補(優秀作品賞)の中では松竹(とアスミックエース)の『舟を編む』が、
誰が考えたって頭一つ抜けた存在だと思うし、
こんな状況なら「次は松竹」と予想することなんて容易いですからね。
それに松竹は2年前に『八日目の蟬』で最優秀作品賞を受賞しているので、
交代で受賞するとしても順番が回ってくるのが早すぎるので、
ビートたけしは配給会社ではなく候補作品を見て予想していると思われます。

ということで、今日は10年近く順番が回って来ない東映映画の感想です。

魔女の宅急便
魔女の宅急便

2014年3月1日公開。
角野栄子の児童文学『魔女の宅急便』を実写映画化。

魔女の家系である少女キキ(小芝風花)は、13歳になったのを機に魔女になるための修行をすることに。それは見知らぬ町で、1年間だけ生活するというものだった。黒猫ジジと空飛ぶホウキに乗って旅に出た彼女は、海辺の町コリコへとたどり着く。やがて、パン屋の女主人おソノ(尾野真千子)の家に居候し、宅急便屋を開業する。つらい出来事があっても、母コキリ(宮沢りえ)に言われた笑顔を忘れずに働く中、空を飛びたいと願う少年とんぼ(広田亮平)と出会う。(シネマトゥデイより)



児童小説『魔女の宅急便』は宮崎駿によってアニメ映画化もされ、
そのアニメ版『魔女の宅急便』は誰もが知ってる人気作ですが、
実写版『魔女の宅急便』である本作はアニメ版の実写映画化ではなく、
あくまで原作小説の再映画化というスタンスを取っています。
だからジブリ及び宮崎駿も非公認で、アニメ版とは全く無関係な作品。
…という建前です。
しかし実際は、アニメ版の人気に便乗して製作されたものなのは間違いなく、
もりアニメ版の実写リメイクを謳えば権利関係が面倒になるため、
原作の再映画化という建前を取るしかなかったのが実情でしょう。
ジブリアニメがメディアミックスされたなんて話はほとんど聞いたことがなく、
『おもひでぽろぽろ』がミュージカル化されたくらいじゃないかな?
(『もののけ姫』が英国で舞台化されるらしいけど…。)
それだけジブリは権利関係に厳しいということなのでしょう。

あくまで原作小説の映画化と言い張るつもりなら、それも構わないけど、
それなら本当に原作小説の内容を実写化すべきだと思います。
ところが本作は原作小説とも別物なほど内容を脚色しすぎです。
まぁそんな別物になっちゃう実写化作品は珍しくもないけど、
本作の場合、原作の設定は無視するくせに、
全く関係ないはずのアニメ版のオリジナル設定を踏襲しちゃってるんですよね。
たとえば主人公の魔女キキがショートカットだったりだとか、
友達トンボが自転車で人力飛行機を作っているのは、アニメ版の設定です。
非公式で踏襲してしまうことを世間では「パクリ」と言います。
百歩譲って「オマージュ」とも言うけど、本作の経緯を鑑みれば、
アニメ版を踏襲し、便乗することは、極力避けるべきだったと思います。

その一方で、アニメ版との差別化を図るのにも必死で、
たとえば先輩魔女に出会う場面や、画家に出会う場面など、
原作にあるがアニメ版で使われてしまったエピソードは避け、
クリーニング屋で洗濯物の連凧をする場面など、
アニメ版未使用のエピソードから構成しようとしている印象を受けます。
小説版は全6巻ですが、アニメ版は2巻発行前に製作されたので、
1巻のいいエピソードはすでに使用済みのため、
本作は主に2巻のエピソードから構成されているみたいです。
黒い手紙や病気のカバのエピソードが2巻収録分のようですね。
ボクは子供の頃に1巻を読んだことがあるだけなので、2巻は知りませんが…。
とにかく、アニメ版を意識しすぎてエピソードを選んでしまっている時点で、
原作小説をちゃんと実写映画化したとは言えない状況ですが、
そのくせにキキが箒で空を飛べなくなるという、
アニメ版にはあるが原作にはないエピソードを拝借しちゃってるんですよね。
ここまでパクるなら大金を積んででもジブリにリメイクの許可を取るべきです。

ただ、ボクは『風立ちぬ』に幻滅して以来、宮崎駿が大嫌いになったので、
宮崎駿非公認の本作がアニメ版を凌駕する出来で、
宮崎駿の鼻をへし折れたらいいのにと、淡い期待も持っていました。
でもアニメ版は名作と認めざるを得ない作品なので、
その期待が成就する可能性は極めて低いと覚悟していました。
しかしまさかここまでイマイチな作品になるとは予想外で…。
宮崎駿も鼻をへし折られるどころか鼻で笑っていることでしょう。
以下、ネタバレ注意です。

13歳になった魔女見習いのキキは、魔女の掟に従って、
一人前の魔女になるため修行をしなければなりません。
親元を離れ魔女のいない見知らぬ町で1年間生活するのです。
黒猫ジジと一緒に旅立ったキキは、港町コリコにたどり着き、
パン屋で居候し、空飛ぶお届け屋を始めることになります。
舞台は「東洋のある町」ということになっているけど、
別に日本でも問題なかったんじゃないかと思うんですよね。
原作やアニメ版だと舞台はヨーロッパな印象を受けますが、
海外ロケはできないし、キャストも東洋人にするしかないので、
無国籍感を演出するための苦肉の策だったのでしょう。
そのわりにコリコの町には銭湯とか日本的な床屋とかあって、
日本以上に日本ぽい、昭和レトロな街並みになってるんですよね…。
(コリコの町のロケ地は小豆島だそうです。)
ちなみにヤマト運輸のクロネコヤマトの看板があったりしますが、
これは「宅急便」がヤマトの登録商標だからで、その絡みでしょう。
この世界に宅急便がなかったら、キキも「魔女の宅急便」なんて店名を
思いつくはずもありませんからね。
しかしむしろ理解に苦しかったのは、キキの実家のある町で、
なぜか崖の岩肌に作られているんですよね…。
まさに魔女の棲家て感じで不気味な場所ですが、
原作でも普通の田舎だったし、オリジナリティを出しすぎです。

パン屋の片隅で「魔女の宅急便」を開店したキキですが、全く客が来ません。
暫くしてやっと一人目の客が現れますが、その初めての客がトンボです。
飛行力学に興味がある彼は何かを配達してほしいのではなく、
魔女の飛ぶスピードを計測したかっただけで、
配達の初仕事だと思って喜んだキキはガッカリして怒ります。
本作のトンボはアニメ版とも原作とも違い、魔女に対して好意的ではなく、
キキに対し「魔法なんてインチキだ」とまで言うのです。
これが本作のアニメ版との最大の差別化ポイントだと思われますが、
トンボのみならず、コリコの町には魔女に対して否定的な住民が沢山います。
特に強烈なのが動物園の飼育員の男で、
「なんでそこまで?」と思うほど魔女を毛嫌いしています。

ある時、サキという少女が「友達に手紙を届けてほしい」と来店しますが、
キキが手紙を届けると、受取人の少女が「呪いの手紙だ」と逃げ出すのです。
サキもその少女への嫌がらせのために魔女であるキキを利用したのです。
「魔女が呪いを運んでいる」と噂になり、今まで運んだ荷物も返品され、
キキは魔女をやめてしまおうと思うようになるのです。
空を飛ぶ魔法しか使えないキキは、もちろん呪いなんて使えませんが、
まぁ魔女は元来悪いイメージの言葉だから、そう噂されても当然か。
店名を「魔女の宅急便」ではなく「魔法少女の宅急便」にしたらいいのにね。
なんだか違う需要が生まれてしまいそうですが…。

それにしても呪いの手紙なんて都市伝説染みた話が出てくるとは意外でしたが、
逆に監督のことを鑑みれば、当然の展開のようにも思えます。
なにしろ監督は『呪怨』シリーズでお馴染みの清水崇ですからね。
呪いやら怨みやらの展開はお手のものでしょう。
まぁもちろん、そんなホラーチックな演出はしませんけどね。
…いや、ちょっとしてたかもしれませんね。
キキがタカミ・カラという歌手にパンを届けに不気味な館に行く話がありますが、
屋敷の中で、カラの幼い姪サリが登場するところなんて、
まるでホラー映画で子どもの怨霊が登場するような演出になっていました。
階段の手すりの隙間からキキを見下ろすサリの様子なんて、
『呪怨』の俊雄くんみたいでしたよね。
カラの姉は魔女だったみたいで、姉が飛行中に事故死したことがショックで、
彼女は歌を唄えなくなってしまい、屋敷に引き籠っているのですが、
その姉の子供がサリであり、この子も魔女の血筋なわけですが、
意図的に魔女を不気味に描いているのかもしれません。
しかし、このエピソードが原作にあるのかどうかは知らないけど、
死が絡むようなこんな重いエピソードは作品に似つかわしくない気がします。
清水崇監督はホラーでは才能のある監督ですが、
彼に本作のオファーをするのは人選ミスじゃないですかね?

悪い噂に落ち込んで、魔女をやめて実家に帰ろうと考えるキキですが、
魔法は魔女の心情が影響を及ぼすため、キキは飛ぶことが出来なくなります。
(でもアニメ版とは違い、黒猫ジジとの会話はできるみたいです。)
そんな時、飛行実験中のトンボの落下現場に遭遇したキキは、
母オキノが持たせてくれた魔法の薬で大怪我している彼を救います。
(原作だとオキノはそんな強力な薬は作れないはずですが…。)
それがキッカケで打ち解けたキキとトンボ。
トンボはキキに自転車の乗り方を教えて、「魔女をやめるな」と説得します。
自転車は一度乗れたら一生乗れるから、箒もまた乗れるはずってことですね。

ある日、町を「海坊主風」(台風みたいなもの?)が襲います。
そんな時、まだ飛ぶことができないキキに、配達の依頼が来るのです。
動物園の園長の依頼で、原因不明の病気の仔カバ・マルコを
イイナ島に滞在する獣医・イシ医師に診せに行ってほしいという内容です。
魔女嫌いな例の飼育員は猛反対し、自分が連れて行くと直談判しますが、
園長は海が大荒れで危ないからダメだと許可せず、キキに依頼します。
でも、そんなに危ない嵐の中を13歳の女の子に行かせる方が鬼畜の所業ですよね。
しかも園長はキキが飛べないのを知っているのに、それでもなお彼女に頼ります。
もう理解不能な展開ですが、キキは仔カバを助けたい一心で再び飛べるようになり、
ゴムボートに仔カバを乗せて、ボートを箒に吊り下げ、離陸します。
いくら仔カバでも体重は1トンちかくにはなるはずですが、
まさかそんな重いものを持ち上げられるなんて、ちょっと考えにくいです。
せっかくボートに乗せてるんだから、海に浮かべて引っ張ればいいのでは?
まぁ高波でそれも危ないとは思いますが、暴風雨の空を飛ぶよりはマシでしょ。
それか仔カバより軽い獣医を連れて戻ってくる方が簡単ですね。

やはり無理がたたり、キキは飛行中に意識を失いかけますが、
どこからか聴こえてくるカバ、…ではなくカラの歌声を聞き励まされるのです。
このカラの行動に関しては、ツッコミどころが多すぎて、
逆にツッコんだら負けな気がするので、あえてスルーしますが、
これがボケじゃないなら制作サイドの正気を疑ってしまいます。
あるいはカラを演じたYURIという歌手のプロモーションとも考えられますが、
もしそうなら、物語上無用(むしろ邪魔)なステマをぶち込む
制作サイドの姿勢は、不誠実で正気を失っているよりも性質が悪いです。

何とかイイナ島に到着し、茶の魔法使いみたいな生活をしている獣医に会い、
仔カバを診てもらいますが、治療は尻尾に懐中時計をぶら下げただけ…。
それで仔カバは元気になるのですが、そんな簡単な治療のために、
命懸けで荒れ狂う海を渡って来たなんて、馬鹿らしいです。
そもそも仔カバはライオンに尻尾を食べられて、心身の中心が定まらない
「中心点不明病」という病気にかかっていたらしく、
尻尾の代わりを与えてあげたらバランスが取れて治ったわけだけど、
動物園でライオンがカバの尻尾に噛みつくチャンスなんてあるのかと…。
どんな『マダガスカル』だよって感じですよね。
原作にある話らしいので、そのまま映像化しただけかもしれないが、
実写化するなら、ある程度リアリティのある脚色をするべきです。

町の人気者である仔カバを救ったキキは、悪い噂も払拭でき、
空も飛べるようになって、宅急便を再会することになります。
原作やアニメ版では、1年の修業を終え、最後に実家に帰るのですが、
本作は1年を終える前に幕を閉じてしまい、中途半端な印象を受けますが、
もし映画が成功すれば、続編でも製作するつもりだったのでしょう。
しかしこの出来では、そうは問屋が卸さないでしょうね。
昨年のアニメの実写化失敗作『ガッチャマン』のような、
後世に語り継がれるほどの駄作ではないけど、本作をいい教訓として、
今後ジブリ絡みの実写化企画はなくなるだろうと思います。

コメント

あまりおもしろくなかったとお見受けしますが、二巻の映画化と知って見たくなりました。
原作は一巻よりも二巻のほうがおもしろかったので。

  • 2014/03/06(木) 20:09:19 |
  • URL |
  • 名無し #-
  • [ 編集 ]

うーん、一巻より面白い二巻を映画化した本作が、
二巻より劣る一巻を映画化したアニメ版よりも劣るなんて、
なんだか皮肉な話です。
たぶん素直に二巻を映画化すれば面白かったのでしょうが、
アニメ版を意識しすぎたのが裏目に出たのでしょう。

二巻を読んでみたくなりました。

  • 2014/03/07(金) 21:44:23 |
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  • BLRPN #-
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