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ダラス・バイヤーズクラブ

『X-MEN』シリーズのキティ役でお馴染みの女優エレン・ペイジが、
同性愛をカミングアウトしたことが話題になっています。
ボクもビックリしましたが、ちょっといかにもな印象もありますね。
ただ、少し残念な気持ちにもなりました。
別にレズビアンに対して嫌悪感があるわけでもないけど、
特殊な性的趣向を知ってしまうと、そのイメージが強すぎて、
演技の邪魔になる気がするんですよね。
もう普通のロマンス映画に出演されても、ちゃんと楽しめないかもしれません。
そのカミングアウトを前に、エレン・ペイジがジュリアン・ムーアと
レズビアンカップルを演じる映画『フリーヘルド』の製作が発表されました。
このカミングアウトはこの映画だと逆にリアリズムを生むことになるでしょうが、
なんだか映画の製作発表とカミングアウトのタイミングが重なりすぎて、
カミングアウトが映画の宣伝みたいに思えてしまい、少し眉唾な気も…。
まぁ宣伝だったら公開前の方が効果的だし、今回のカミングアウトは、
ロシアの同性愛宣伝禁止法がキッカケと考えるのが自然かな。

ということで、今日は同性愛絡みの映画の感想です。

ダラス・バイヤーズクラブ
Dallas Buyers Club

2014年2月22日日本公開。
マシュー・マコノヒー主演の伝記ドラマ。

1985年、電気工でロデオカウボーイのロン・ウッドルーフ(マシュー・マコノヒー)は、HIV陽性と診断され余命が30日だと言い渡される。アメリカには認可治療薬が少ないことを知った彼は代替薬を探すためメキシコへ向かい、本国への密輸を試みる。偶然出会った性同一性障害でエイズを患うレイヨン(ジャレッド・レトー)と一緒に、国内未承認の薬を販売する「ダラス・バイヤーズクラブ」を設立するが……。(シネマトゥデイより)



第86回アカデミー賞で、作品賞を含め6部門にノミネートされた、
オスカー候補の本作ですが、すでに前哨戦のゴールデングローブ賞では、
主演男優賞(ドラマ部門)と助演男優賞を受賞した注目作です。
同部門ではオスカー受賞の可能性も高いのではないでしょうか。
でも作品賞でのオスカー受賞までは難しいかもしれませんね。
ゲイ映画が作品賞候補に選ばれることは珍しくありませんが、
実際に受賞した試しはありませんから。
ゴールデングローブ賞でも作品賞の候補には選ばれておらず、
「演技は素晴らしいが内容は…」と思われているのでしょう。
なのでボクも、作品としての面白さはあまり期待していませんでした。
それにオスカー候補だから映画ファンとして仕方なく観るものの、
ボクはゲイ映画が苦手なので、できればあまり観たくない作品でした。
しかもゲイ映画な上に難病ものなので、なんだかしんどそうだし…。

ところが、いざ本作を観てみて、それが間違いだったとわかりました。
本作はかなり面白く、オスカー作品賞候補も納得の作品です。
ゲイ映画ですが、主人公はゲイではないし、難病もの特有の悲壮感もなく、
ちょっと社会派でありながら、娯楽的なクライム映画な側面もある、
とても興味深くて観易い作品です。
他候補が強いので、やっぱり作品賞受賞は無理だと思うけど、
普通に面白い映画として、誰にでもオススメできる一本です。
以下、ネタバレ注意。

1985年、ダラスで電気技師をしているロイは、仕事中に感電し、
病院に運び込まれますが、血液検査の結果、HIV陽性だと判明します。
T細胞の数値が異常に低く、医者から30日の余命宣告を受けるのです。
当時エイズは同性愛者の病気だと考えられており、
保守的なカウボーイ気質の彼もホモフォビア(同性愛嫌悪者)で、
自分がゲイの病気だと診断されたことに激高し、病院を飛び出します。
しかし仲間のカウボーイからも「ゲイ野郎」と罵られ、仲間外れに…。
当時は「触れられただけで感染る」など、HIVの誤解も酷かったようです。
しかし誰よりもゲイを差別していたのはロイ自身で、
そんな自分がゲイの病気であるHIVだと診断されたことが信じられず、
彼は図書館でHIVについて調べ始めるのです。
HIVは薬物の静脈注射や、避妊しない性交渉でも感染するとわかり、
薬物中毒でセックス中毒の彼には思い当たる節が沢山あり、
現実を受け止めて、HIVの治療法を独学で学び始めるのです。
ロイってかなりヤンチャな男なのに、意外にも真面目ですよね。
彼みたいな男が余命宣告を受けたら、自暴自棄になり無茶苦茶しそうですが、
診断を受けて以降は大好きなセックスも絶っており、
相手を思いやることもできる、なかなかいい男です。

独学で調べた結果、「AZT」という抗ウイルス剤がHIVに効くと知りますが、
FDA(食品医薬品局)未承認の新薬で、手に入れることはできません。
他にも効果のありそうな外国製の新薬はいくつかありますが、
FDAの承認には8~12年も掛かるそうで、余命宣告を受けた患者としては、
そんなに悠長には待ってられません。
ロイが診断を受けた病院では、AZTのプラセボ対照試験が行われており、
彼は看護師に賄賂を渡して、AZTを横流ししてもらい、服用します。
しかし余命宣告から28日後、ロイは気を失い、再び病院に担ぎ込まれます。
AZTはHIVに効果はあるものの、副作用の毒性に体を蝕まれるようです。

ロイと病院で同室になったゲイのレイヨンは、AZTの臨床実験被験者で、
彼は自分に処方されたAZTの一部を5000ドルでゲイ仲間に譲っていました。
それを知ったロイは、未承認のHIVの薬は需要があると考え、
メキシコの闇医者から「ペプチドT」や「ddC」などの
未承認の薬を密輸し、ゲイたちに売ろうと企てるのです。
もちろんAZTに幻滅したため、自分も服用するつもりです。
そんな未承認薬が簡単に国内に持ち込めるはずありませんが、
彼は聖職者の格好をして、税関をスルーしようとします。
普段は怪しさ抜群の風体の彼ですが、馬子にも衣裳とはこのことで、
神父の格好をしただけでも、それなりに見えてしまうものですね。
…と思いきや、やっぱり怪しまれて取り調べを受けることに…。
これは薬の没収は免れないだろう、と思いきや、
未承認薬を売買するのは違法だけど、個人使用は問題ないみたいで、
3000錠の薬をダラスに持ち帰るのに成功します。
ロイは無骨な男に見えて、なかなか機智的な演技派です。
演技派といえば、ロイ演じるマシュー・マコノヒーですが、
本作でHIV患者を演じるために21キロもの減量をしたのだとか。
ほんの数日前にも彼の主演作『MUD』を観たばかりですが、
その時の健康的な感じとは全く違い、凄いプロ根性の役作りです。
これはゴールデングローブ賞の主演男優賞も納得です。

ハッテン場に赴き、ゲイに売り込みをかけるロイですが、
根っからのホモフォビアなので、商売がなかなかうまく行きません。
そこで偶然再会したのが、病院で同室だったゲイのレイヨン。
ロイはレイヨンに協力を仰ぎ、仲間のゲイに薬を売ってもらうのです。
ゲイもカウボーイが売ってる薬なんて怪しくて買わないだろうけど、
同じ組合の人が売ってる薬なら信用して買うのかもしれません。
ゲイとホモフォビアのビジネスパートナーってのも面白いです。
この商売は好調で、彼らはモーテルの一室を借り、会社を設立します。
ただの違法な売人ではなく法人化するわけですが、未承認薬の売買は違法。
そこでロイは会員権を売って、会員には薬を無料で提供することで、
薬の売買はしていないという建前で、法の穴を掻い潜るのです。
いやー、うまい脱法方法で、ロイってホントに頭がいいですね。
この会社が「ダラス・バイヤーズクラブ」です。

会費は月400ドルと高額ですが、モーテルに行列ができるほどの大盛況。
面白いのはロイは薬を提供するだけでなく、ドラッグはやめろとか、
ヘルシーな食事をしろとか、HIVを悪化させないための助言も行うのです。
自堕落な生活を送ってたHIV発覚前の彼とは別人のような健康志向で、
病気になったのに逆に健康的になったんじゃないかって感じで面白いです。
レイヨンと仕事をしたり、ゲイを相手に商売をするようになって、
ホモフォビアだった彼のゲイに対する意識も変わってきます。
レイヨンと買い出し中に昔のカウボーイ仲間に会った時も、
そいつがレイヨンに侮辱的な行為をして、ロイが激怒します。
それを見たレイヨンも、ロイにときめいちゃったりします。
とはいえロイはホモフォビアではなくなってもストレートですからね。
やっぱり女が好きで、女性のHIV患者の客が訪れたら、
トイレに連れ込んで一発ヤッたりもします。
やっぱりHIV患者はゲイの男が多いようで、女性は珍しいみたいです。
でもロイが本当に好きなのは、病院で自分の主治医だった女医イブです。
だけど彼女に感染させたくはないので、ロイはプラトニックを貫きます。
なんだか切ないですが、ロイって本当にいい人ですよね。
序盤のロイはふてぶてしいホモフォビアのジャンキーだったので、
こんなやつ、HIVが発症して死んでも自業自得だと思ってたけど、
どんどん彼のことが好きになっちゃいました。(同性愛的な意味ではなく。)

日々勉強して、HIVの専門医も顔負けの知識を身に着けたロイは、
新たな未承認新薬を求めて、世界を飛び回ります。
アムステルダムや中国でも新薬を買い付けますが、
やはり興味深いのは、日本に買い付けに訪れたシーンですね。
なぜか日本人研究者がカタコトだったりするのはご愛嬌です。
「インターフェロン」とい強力な抗ウイルス薬を買いに来ますが、
ちょっと強力すぎたようで、空港で自分に投与したロイはまた気絶。
結局インターフェロンの密輸は失敗したみたいです。
まぁ用法用量を守らないと危険な薬だと自ら実証したわけで、
もし密輸できても、彼ならそんな危険な薬は売らなかったでしょう。
そもそも彼の商売はAZTの副作用に幻滅したところから始まってます。
彼は辛い副作用でHIVを治療することよりも、副作用のない薬で、
HIVが治らなくても少しでも延命できればいいという方針のようです。
AZTは承認されたようですが、使用しても1年以内に96%が死ぬらしく、
ロイはペプチドTなど副作用のない薬はなかなか承認しないくせに、
大手製薬会社のAZTだけ承認した政府やFDAに怒りを感じています。
実際に政治的なことで、承認の是非が決まることは、
HIVの薬に限らず、けっこうあるみたいですよね。
スタップ細胞の発見はすごいと思うけど、そんな先進医療が承認され、
保険が適用されて、ボクのような貧乏人が受けれるようになるには、
あと何十年かかるのやら…。

病院でAZTで治療を受けていた患者たちも、どんどんの会員になり、
病院もダラス・バイヤーズクラブを看過できなくなり、
IRS(国内国歳入庁)を使って、ロイの薬を押収するのです。
そしてついに処方箋なしに薬を提供してはいけないと法律で決まり、
ダラス・バイヤーズクラブは違法となってしまうのです。
ロイは処方箋を偽造する医者の買収費用などの捻出に苦心します。
そんな彼のため疎遠の父にまで金の無心をして金策するレイヨンですが、
未承認薬が入手できなくなったためか、体調が悪化し死んでしまいます。
レイヨンの金でメキシコから「フルコナゾール」という新薬を買い付け、
帰国したロイは、彼の死を知り深く悲しみ、病院に怒鳴り込みます。
もともと彼の大嫌いなゲイだったレイヨンですが、
いつの間にか彼にとっても掛け替えのない人物になっていて、
その熱い友情に感動させられました。
ロイはFDAを相手取り連邦地裁で裁判を起こしますが、
判事も未承認薬は違法だという一点張りで、彼は敗訴します。
しかし立派に戦った彼はゲイたちから喝采を受けるのです。
もともとホモフォビアだった彼が、まさかゲイのヒーローになるとはね。

その時は敗訴したものの、彼の努力が実を結び、
FDAはペプチドTの個人使用を許可することになります。
そしてロイは1992年にエイズで亡くなります。
結局HIVのせいで死んでしまうけど、余命30日の宣告を受けた彼が、
宣告から2557日後(約7年後)まで生きることができたわけで、
これはハッピーエンドだと言ってもいいでしょう。
単なるゲイ映画ではなく、実話を基に医療問題を描いた社会派ドラマで、
ちょっと考えさせられる興味深い内容だと思いました。
それでいて堅苦しくなく、ロイやレイヨンのキャラクターも面白く、
けっこう笑えるところもある娯楽性もあり、とても観易いです。
これは主演男優賞や助演男優賞だけではなく、脚本賞の可能性も?

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