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小さいおうち

ソチオリンピック、女子フィギュアSPでの浅田選手ですが、残念な結果でした。
フリーで挽回しるには厳しすぎる成績で、メダルには届かないのはほぼ確実です。
ボクは朝のニュースで結果を知ったのですが、とても憂鬱な朝になりました。
今朝はそんな日本国民が多かったのではないでしょうか。
それというのも、マスコミが金メダルへの期待感を煽りすぎなためですよね。
オリンピック前から金メダル間違いなしのような報道で、
ボクも最悪でも表彰台は外さないだろうと思い込んでしまっていました。
ジャンプの葛西選手にしてもそうですが、本番前に金メダルへの期待煽りすぎで、
銀メダルという素晴らしい結果なのに、ちょっと残念な気持ちが残ります。
逆にスノボパラレル大回転の竹内選手は、マスコミの注目度も低く、
あまり期待してなかっただけに、同じ銀メダルでもかなり嬉しいです。
期待以上の結果だった時に人は喜ぶんだから、応援したい気持ちはわかるけど、
マスコミはあまり期待を煽らないようにしてほしいものです。
予期せぬ受賞が一番嬉しいものですからね。

ということで、今日は予期せず国際的な賞を受賞した日本映画の感想です。
個人的には世界三大映画祭での受賞は、金メダルより凄いと思うけど、
どうもこの話題はオリンピック報道の陰に隠れてしまいましたね。

小さいおうち
小さいおうち

2014年1月25日公開。
直木賞を受賞した中島京子の小説を、山田洋次監督が映画化。

健史(妻夫木聡)の親類であった、タキ(倍賞千恵子)が残した大学ノート。それは晩年の彼女がつづっていた自叙伝であった。昭和11年、田舎から出てきた若き日のタキ(黒木華)は、東京の外れに赤い三角屋根の小さくてモダンな屋敷を構える平井家のお手伝いさんとして働く。そこには、主人である雅樹(片岡孝太郎)と美しい年下の妻・時子(松たか子)、二人の間に生まれた男の子が暮らしていた。穏やかな彼らの生活を見つめていたタキだが、板倉(吉岡秀隆)という青年に時子の心が揺れていることに気付く。(シネマトゥデイより)



本作は、公開当初、観に行くつもりは全くありませんでした。
山田洋次監督の作品だし、ある程度の出来は保証されているとは思いましたが、
物価が高騰する中、遊興費節約のために、打率の低い日本映画は、
よほどの事情がない限り観ないようにしているので、
ちょっと面白そうだなと思ってもスルーしています。
ところが本作は公開4周目に、よほどの事情が発生しました。
そう、黒木華がベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀女優賞)を獲得したのです。
しかも最年少受賞だそうで、これはかなりの快挙であり、
映画ファンとしては見逃してはいけない作品となり、慌てて観に行きました。
公開4週目ともなれば上映規模も縮小されますが、銀熊賞効果でほぼ満席でした。
でも凄い賞を受賞したから観に行くというのは、権威主義的で格好悪く、
本当の映画ファンであれば、受賞前から目を付けておくべきですね。
コンペ部門に出品されていたんだから、なにか受賞する可能性はあったわけだし、
今までは三大映画祭のコンペに選ばれた作品は、絶対に観ていたのに、
どういうわけか山田洋次監督の作品はベルリンに呼ばれるのが当たり前すぎて、
ベルリンのコンペ部門選出も当たり前に思えて、全く注目しませんでした。
いやー、まさか銀熊賞に輝くとは…。
公開初日に観て、「これは何か受賞する」とか言いたかったです。

なんて思いましたが、たぶん受賞より先に本作を観ていても、
黒木華が銀熊賞を受賞するなんて微塵も思わなかったでしょう。
4年前にも寺島しのぶが『キャタピラー』で銀熊賞を受賞しましたが、
それはそれは壮絶な演技で、「これは銀熊賞も納得」と思ったものですが、
本作の黒木華の演技は、寺島しのぶの演技に比べると普通で…。
名前と違い華のない素朴な女優で、そこが彼女の魅力でもあるんだけど、
あまり目立たず、松たか子の方が印象に残るくらいだったので…。
彼女の出演映画3本は全て観ていますが、どれも彼女自身の印象は薄く、
主演作『シャニダールの花』ですら、相手役の印象しかありません。
しかしそれは作品に溶け込んでしまっているということで、
技術的にはすごいことかもしれませんね。
ボク程度では気付けないが、見る人が見ればその凄さがわかるのかも。
ベルリンの審査員は、それを見抜いたのかもしれません。
ただ、今回ベルリンで金熊賞と銀熊賞(最優秀男優賞)を受賞したのは
中国映画『白日焰火』で、なぜかアジア勢の活躍が顕著で、
たまたまオリエンタルな映画が好きな審査員が多かっただけかも。
他のコンペ部門出品作品はまだ一本も観てないので、比べようがありません。

黒木華の名前を「はな」だと思っていたほど、彼女に興味がなかったボクですが、
今回は受賞後に観たので、いつもは注目していなかった彼女の演技に、
必然的に注目して観ることなりました。
山田洋次作品は、良くも悪くも松竹人情喜劇で、
わかりやすいけど、ちょっと大げさな演技になりがちですが、
そんな中で彼女は、とても自然な演技をしていたと思います。
それでも浮くことなく雰囲気に溶け込んでいたのが不思議ですが、
彼女が演じたタキという役は、あまり動きのない役柄だったので、
大げさな演技を必要としなかっただけかも。
ただ悪く言えば起伏のない演技なので、そんな演技で銀熊賞受賞は考えにくく、
晩年のタキを演じた倍賞千恵子の演技も、彼女の評価に加算された気がします。
倍賞千恵子もかなり好演していたと思いますが、怒ったり泣き叫んだりと、
感情豊かな起伏のある演技で、黒木華演じる物静かなタキとは、
ちょっと同一人物とは思えない気がしました。

昭和11年、岩手から出てきた田舎娘タキは、
東京郊外に建つモダンな赤い三角屋根の小さな家で女中として働き始める。
旦那様、奥様、坊ちゃんと穏やかな日々を送っていましたが、
ある日、旦那様の部下の板倉という青年が現れ、奥様の心が彼へと傾いていく。
それから60数年後、晩年のタキが綴った自叙伝を読んだ又甥の健史は、
大叔母タキがずっと隠していた秘密を知る、…という話です。
奥様の不倫を家政婦は見た、みたいな物語なので、
なんだか昼ドラ的なドロドロした話かと思いきや、
やはり山田洋次監督らしい、人情喜劇となっていました。
主に支那事変から太平洋戦争、そして終戦までを舞台とした、
戦時中の日本を描いた作品ですが、反戦映画臭は多少あるものの、
戦争シーンはほぼないし、悲惨な描写や内容でもありません。
むしろ戦時中の日本が、こんなに穏やかなはずないと思ってしまうけど、
劇中の最近の大学生である健史も似たようなことを言ってましたが、
戦時中の日本は話に聞くほど悲惨な生活ではなかったのかもしれませんね。
ドロドロの愛憎劇や重苦しい反戦映画ではなく、
とても観やすい作品だったのはよかったです。

18歳で女中奉公のため東京に来たタキは、最初全く喋らなかったので、
そんなに人見知りが激しいのに女中なんてできるのかと思いましたが、
ただ訛りが恥ずかしかっただけみたいですね。
奥様・時子とはすぐに打ち解けるし、坊ちゃんの恭一からもすぐ慕われます。
言及されていないので断言はできないけど、タキは時子に対して、
敬意以上の感情を持っていたようにも見受けられます。
はっきり言えば、ちょっと百合っぽい感じです。
時子の親友の女性なんて、ほとんど男装で露骨に百合っぽいし、
時子は女性から好意を寄せられやすいタイプなのかもしれません。
でも時子自身は、全く百合っ気はないみたいで、普通に殿方が好き。
夫の部下の青年・板倉と許されない恋に落ちてしまいます。
吉岡秀隆演じる板倉は、ちょっとナヨナヨして頼りない印象なので、
なぜこんな男に惹かれるんだろうと思いましたが、
そんな草食系な男は当時珍しかったみたいで、魅力を感じたのでしょう。

タキも板倉に対してちょっと特別な感情がありそうな気もしましたが、
実際どうなのかはよくわかりませんでした。
タキは酒屋のオジサンに頬を触られた時なんて、すごく嫌そうだったし、
ちょっと男嫌いの印象も受けましたが、板倉には平気そうで…。
タキに旦那様の紹介で縁談の話が来た時も、泣くほど嫌がってたけど、
あれは男嫌い以前に、相手が50過ぎのオジサンだったからか…。
笹野高史演じる見合い相手は、オジサンといよりも爺さんです。
時子が「いくらなんでも図々しい」とその縁談を断りますが、
夫の上司を演じたラサール石井にも言ってやってほしいですね。

タキがそんな爺さんとの縁談を持ち掛けられたのも、
若い男は戦争に取られるため、年寄りの方が手堅いと判断されたからです。
戦時下だった当時、そんな特殊な結婚事情があったなんて、
思いもしなかったことだったので、興味深かったです。
板倉は気管支が弱く、目が悪かったため、兵役検査で丙種となり、
徴兵を免れていましたが、戦争に取られない若い男は貴重で、
見合いの話も引く手あまたです。
でも彼は時子のことが好きなので、見合いには関心がありません。
しかし旦那様は会社の政略結婚に板倉を利用しようと、
あろうことか時子に見合いのまとめ役を任せるのです。
はじめは戸惑う時子ですが、逢瀬をするにはいい口実で、
板倉の下宿先に足しげく通うようになります。
そのうち、奥様と板倉の関係が噂になり始め、
タキは奥様の浮気が旦那様や坊ちゃんにバレないかとハラハラ。
当時は下手すれば姦通罪に問われるかもしれません。

しかし、戦争は混迷を極め、丙種合格者でも徴兵されることになり、
ついに板倉の元にも召集令状が届きます。
明後日には出征すると板倉は、最後の別れを言いに訪れます。
次の日、板倉の下宿に向かおうとする時子をタキは止めます。
板倉がこちらに訪ねてくる分には問題ないが、
奥様が下宿に行けば不倫がばれるかもしれない。
「会いたいのでお出かけください」と手紙を書いてください。
それを私が下宿に届けます、とタキは時子を説得します。
時子は言われるままにしますが、ついに板倉は訪れず…。

実はタキは、時子から預かった手紙を板倉には届けず、
死ぬまで封も切らずに大事にしまっていたのです。
これが60年間隠されていたタキの秘密で、
タキの死後、又甥の健史が手紙を発見し、明らかになります。
ただ、なぜタキが板倉に手紙を届けなかったのかは明言されず、
ボクもタキの心境はいまいち理解できませんでした。
たしかに板倉が時子を訪ねてくる分には、
不倫はばれないので、それを心配したわけではなさそうです。
考えられるとすれば、時子のためではなく板倉のためだったのかも。
別れ際に「死ぬとしたら奥さんとタキちゃんを守るためだからね」と
板倉が言ったので、戦死を覚悟している彼が時子に会ってしまうと、
未練がなくなり、本当に帰還しなくなると思ったのかもしれません。

その後、女中は贅沢という風潮になり、タキは田舎に帰り、
戦後また東京に戻ってきますが、小さい家は空襲で焼け落ち、
時子は旦那様と庭の防空壕で抱き合って死んでいたとわかります。
どうせ会えなくなるのなら、最後に板倉と合わせるべきだったと、
タキは死ぬまで悔やみ続けるのです。
生涯結婚をしなかったのも、それが原因のようですが、
正直、手紙を届けなかったくらいで、そこまで悔やむほどのことかな?
戦後タキは時子の息子・恭一を探すも、見つけることはできませんでしたが、
帰還した板倉には会えたはずで、ひとりで思い悩むこともなかったはず。
タキの死後、健史が恭一に手紙を渡すため会いに行った時、
恭一から「タキちゃん、そんなに苦しまなくていいんだよ」
「君の小さな罪はとっくに許されていたんだからね」と言ってもらい、
タキの魂もちょっとは救われたような気がして、
なんだかハッピーエンド的な印象を受けますが、
あの優しいタキの最期が孤独死だったというのは、
何ともやりきれない気持ちになりますね。

黒木華の銀熊賞受賞が動機で観に行ったので、
内容には大して期待してませんでしたが、
それなりに楽しめたのでよかったと思います。
黒木華の今後にも期待だし、観るつもりは全くなかったけど、
来月公開の『銀の匙 Silver Spoon』も観に行こうかな?

コメント

質問です。

タキ(晩年の)の部屋に飾ってあった「赤い屋根の家の絵画」は、板倉の描いた絵でしょうか。
タキは戦後、板倉に会っていたという解釈でいいのでしょうか。
それならば、そこまで一人で背負い込まなくてもと。

  • 2014/05/06(火) 08:37:05 |
  • URL |
  • ヒロシ #-
  • [ 編集 ]

Re: 質問です。

ボクの解釈では、タキは板倉に会ってない気がします。
ヒロシさんの仰る通り、
会っていればひとりで背負い込んでいないはずなので。
でも絵は板倉の描いたものだと思います。
タキが個展か何かで買ったのではないでしょうか。

  • 2014/05/06(火) 18:40:13 |
  • URL |
  • BLRPN #-
  • [ 編集 ]

ありがとうございます

そうですね。「会っていない」方がしっくりきます。
「買う」という手段もありますね。
ありがとうございました。
いつも拝見しています。質問のときだけお邪魔してすみません。

  • 2014/05/07(水) 11:50:40 |
  • URL |
  • ヒロシ #-
  • [ 編集 ]

Re: ありがとうございます

いえいえ、こちらこそ今後ともよろしくおねがいします。

  • 2014/05/07(水) 21:36:50 |
  • URL |
  • BLRPN #-
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