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ザ・イースト

「全聾の作曲家」佐村河内守氏のゴーストライター騒動が話題ですね。
なんでもここ18年くらい、彼が作曲したとされる楽曲は、
全て別人の手によるものだったというショッキングな話です。
といっても、ボクはこの人のことは今回の件で知っただけなので、
ショックなんて微塵も受けていませんが、もし以前から知っていたとしたら、
たぶん全聾で作曲なんて話自体、眉唾だと思ったんじゃないかな?
というか、ゴーストライター自身が暴露するまでの18年間、
誰も疑ってなかったということの方が驚きです。
やっぱり「身障者を疑ってはいけない」という、妙な社会通念があるのかも。
こんなゴーストライター騒動なら、もっと叩かれてもよさそうなものだけど、
まだマスコミも慎重に言葉を選んでいる気がしますし…。
でも、どうやら佐村河内守氏は全聾ですらないという噂もあり、
もしそれが証明された暁にはマスコミも一斉に牙を剥くでしょうね。

ということで、今日は全聾の人物も登場する映画の感想です。

ザ・イースト
The East

2014年1月31日日本公開。
ブリット・マーリング製作・脚本・主演のスパイスリラー。

健康被害や環境汚染の元凶とされる企業を敵視し、抗議活動を行う環境テロリスト集団のイースト。元FBIエージェントのサラ(ブリット・マーリング)は、テロ攻撃にさらされる恐れのある企業の依頼を受け、彼らのアジトへと潜入して捜査をすることに。企業に対する彼らの過激な姿勢の数々に怒りを覚えるサラだが、健康被害の実態を目の当たりにし、その根絶に挑むイーストの思想を理解するようになる。さらに、謎めいたリーダーのベンジー(アレキサンダー・スカルスガルド)に惹(ひ)かれ、心が激しく揺れ動く。(シネマトゥデイより)



先週末は怒涛の公開ラッシュで、金土あわせて観たい作品が7本も公開され、
全部観に行くのは時間的に不可能だったため、泣く泣く2本削ることに。
ボクは全米ボックスオフィスの成績で観る作品を選ぶことが多いので、
全米最高19位だった本作は、削る候補の1本でした。
でも少し思うところがあって、邦画から2本削ることにしたので、
本作は急遽繰り上げで鑑賞することになりました。
そんな経緯なので、それほど期待していた作品でもなかったのですが、
いざ観てみるとかなり面白い作品だったので、正しい判断でした。
危うくこんな面白い映画を見逃してしまうところでした。
全米でも小規模公開だったインディペンデント映画なので、
本来なら日本での劇場公開が見送られてもおかしくないところでしたが、
なんでもFOXサーチライト・ピクチャーズの創立20周年記念ということで、
本作と『セッションズ』が劇場公開される運びになったとか。
『セッションズ』は日本での公開規模が小さすぎて、観に行けませんでしたが、
本作はそこそこの公開規模だったので、容易に観れたのは助かりました。
全米ボックスオフィス重視のボクが言えた義理ではないけど、
成績に関わらず、いい作品を劇場公開してくれるのは有難いです。

テロ組織に潜入するようなスパイ映画は間々あるけど、
環境テロ組織となるとなかなか珍しく、ボクの知る限りでは本作が初めて。
しかも一概にテロ組織を悪者として描かず、中立な視点で描いているのが
とても興味深く、娯楽性の強い作品ですが少し考えさせられたりもしました。
日本も捕鯨問題において、グリンピースやシーシェパードなどの
環境テロ組織には迷惑を掛けられているので、あまりいい印象はないものの、
公害はホントに許し難いと思うし、自然保護も大切だと思うので、
場合によっては環境テロの理念に賛同したくなる時もあります。
本作のヒロインも、環境テロ組織にスパイを仕掛けるが、
逆に組織の理念に徐々に感化されてしまうものの、
組織を潰すために最後までスパイ活動も続けます。
完全に洗脳されて、反旗を翻す展開を予想していましたが、
この割り切れなさが、なかなかリアルでとてもよかったと思います。
なんでも本作のヒロイン役であり脚本も務めたブリット・マーリングは、
(たぶん環境テロ組織ではないが)無政府主義者集団と過ごした経験があり、
その時に感じた共感と矛盾が、本作に活かされているのでしょう。
以下、ネタバレ注意です。

タンカーのオイル漏れ事故で大西洋を汚染した石油王の自宅に侵入し、
重油をばら撒いた組織「ザ・イースト」。
別に誰かを殺したわけでも放火したわけでもないので、
この程度の悪戯で環境テロ組織と言えるかどうかは微妙ですが、
彼らは犯行声明で、今後3社を襲撃すると予告します。
それを知り、動き出したのが調査会社「ヒラー・ブルード社」。
同社は元FBI捜査官のジェーンを組織に潜入させ、
メンバーの身元や襲撃先企業がどこなのかを暴こうとします。
ヒラー・ブルード社は民間会社で、テロに怯える企業と契約し、
テロ組織を潜入調査して、テロ行為を未然に防ぐのが生業なので、
テロを許さない的な正義感ではなく、あくまで企業との契約金が目的です。
組織の襲撃先企業がわかれば、その企業と契約できる可能性があるので、
同社にとって環境テロ組織の出現はビジネスチャンスなんですね。
まぁ私立探偵みたいなものだけど、なぜ公的機関は動かないのかな?
元FBI捜査官ではなく、現FBI捜査官が潜入捜査をしてもよさそうなのにね。
やはり家に重油を撒かれた程度では悪戯も同然で、FBIの出る幕じゃない?

潜入調査役に抜擢されたジェーンですが、その覚悟と諜報力はかなりのもので、
彼女ほどの逸材がなぜFBIを辞めて民間の調査会社に入社したのか不思議。
むしろCIAに引き抜かれてもおかしくないほどですが、
やはり公務員だと給料が安いから転職したとか?
調査命令を受けた彼女は、組織に入りたい若者たちの流浪の旅に加わり、
その道中、組織のメンバーである青年ルカに出会います。
かなり用心深い彼でしたが、ジェーンは見事に取り入ることに成功し、
森の奥にある組織のアジトに連れて行ってもらうのです。
環境テロ組織というと、シーシェパードなどのように、
支援者や支援団体からの多額の寄付でテロ行為をしている感じで、
けっこう金持ってそうな印象があったけど、この組織は全く違い、
純粋に同志たちによる集団のようで、寄付とかも受けてなさそう。
もともとはゴミを漁って再利用するフリーガンの集まりみたいで、
廃墟を拠点に活動し、生ゴミを食べています。
まだ食べられる食品を廃棄する社会のシステムには問題を感じるし、
捨てられた食品を勿体ないと思うフリーガンの考えも理解はできるけど、
ゴミ箱から拾った残飯を食べるというのはハードル高いですね。
いくら給料がよくても、絶対にしたくない潜入調査です。

サラと名乗りアジトに入り込んだジェーン。
組織のメンバーである医師ドクや聾者イヴからは歓迎されるも、
リーダーのベンジーやその右腕イジーからは怪しまれます。
ルカの執り成しで、しばらく滞在することを許されますが、
調査しているところをイヴに発見されるも、彼女を咄嗟に組み伏せて、
潜入調査中だと明し、「終身刑になるわよ」と脅します。
その翌朝、イヴは「この家は安全じゃない」と書き残し、
組織を去ってしまうのですが、彼女が抜けたことで、
1社目のテロ計画に欠員が出てしまい、ベンジーは仕方なく、
ジェーンを組織に加わえ、テロ計画を手伝わせます。
イヴが気弱な子だったから助かったものの、
彼女に見つかったのはジェーンにしてはかなり迂闊でしたよね。
それにしても、組織のメンバーが秘密の会議でお面してたけど、
あれってもしかしてテロ計画のシュミレーションしてたのかな?
壮大な計画のわりには練習風景はちょっとバカっぽいですね。

1社目の襲撃先企業は製薬会社「マッケーブ・グレイ社」。
同社は新しい抗生物質デノキシンを作りましたが、
脳障害を起こす副作用の危険性を伏せて販売しています。
うーん、環境テロ組織だけど、こんな薬害問題も範疇なんですね。
というか、これは個人的な報復のようなもので、
メンバーの医師ドクはこの副作用の被害者らしく、
ケニアでマラリア予防のためにデノキシンを使ったら、
副作用の脳障害を起こして相貌失認を発症したようです。
(そのわりにはメンバーのことはしっかり見分けてましたが。)
他にも指先の震えなど、パーキンソン病に近い症状も見受けられます。
彼の妹は副作用に苦しみ自殺してしまいます。
彼らの報復方法は「目には目を」なので、同社のパーティに侵入し、
幹部たちのシャンパンにデノキシンを混入させるのです。
暫く後、幹部たちは副作用に犯され、大きく報道されます。
自社製品を飲んで薬害になるんだから自業自得だし、
組織の行為もテロではなく義賊的行為ですよね。
しかしちょっと疑問だったのは、その計画でのジェーンの役割です。
マッケーブ・グレイ社のCEOのバカ息子の気を惹くという任務ですが、
この計画の遂行のために必要だったとは思えませんし、
そんなハニートラップを、聾者のイブが実行できたとも思えず、
ジェーンが彼女の代役として組織に加わるという流れは少し不自然かも。

2社目の襲撃先は水質汚染をしている「ホークストーン鉱業」。
同社は石炭による発電をしていて、その排水をこっそり河川に垂れ流し、
近隣の家の生活用水からはヒ素や鉛が検出され、
子供たちがガンや脳腫瘍で死んでいます。
環境テロ組織ではなく公的機関が調査すべき悲惨な公害ですが、
公的機関は動かないので、ザ・イーストの出番です。
これは完全に環境問題なので彼らの範疇ですが、やはり私怨もあり、
なんとメンバーのイジーは、同社のCEOの娘だったのです。
イジーは娘として、父親が公害に加担している事実も許せないでしょうが、
どうやら家庭の事情(両親の離婚?)も絡んでいるような印象です。
イジーが父親を呼び出し拉致し、同社の工場が接する川岸まで連れて行き、
排水が行われる時刻に川に飛び込むように要求します。
結局、CEOは自らの行いを悔いて飛び込むのですが、
警備員が駆け付け、彼らに発砲し、イジーが被弾してしまい。
ドクとジェーンの懸命な手術も虚しく、彼女は死んでしまうのです。
その出来事を契機に、ジェーンとベンジーは恋に落ちますが、
イジーが死んだことで、彼女を好きだったルカが組織を去り、
中心メンバーを2人も失った組織は一時解散することになるのです。

ヒラー・ブルード社に戻ったジェーンは、組織のことを上司に報告。
上司は我が社だけでは手に負えないとFBIに協力を要請します。
そして3社目の襲撃が決まり、組織は再び集まります。
FBIの出動を知っているジェーンは、ベンジーに逃げるよう説得しますが、
彼は聞く耳を持たず、逆に襲撃先企業を教えると、彼女を車に乗せます。
車が付いた先は、なんとヒラー・ブルード社で、
どうやらベンジーはジェーンの正体に気付いていたようで、
彼女を二重スパイにして、調査員のリストを盗み出すように命令します。
調査員リストを公表して、他の環境テロ組織の潜入調査員を晒すことで、
ヒラー・ブルード社が活動できないようにするためです。
言われるがままにリストを盗み出したジェーンですが、
フリーガン染みた彼女の挙動に不信感を覚えた上司により、
リストを記録したケータイを没収されてしまいます。
ベンジーはジェーンを連れて国外逃亡しようとしますが、
ジェーンはそれを拒否し、彼はひとりで越境します。

その後の展開は、ちょっと断片的でわかり難かったのですが、
たぶんジェーンはリストが入ったSDメモリーを隠し持っていて、
そのリストを元に別の組織に派遣された潜入調査官たちと連絡を取り、
自分と同じように組織に感化された同僚を仲間にして、
襲撃先企業の不正を次々とリークしているようです。
環境テロ組織のようにテロ行為も行わないが、
ヒラー・ブルード社のように企業側にも立たない世直しを始めたわけですね。
テロ活動にも企業活動にも賛同しない中立な物語として、
素晴らしいバランスの落としどころだったと思います。
興味深い作品でしたが、やはり客入りはイマイチなため、
公開終了も早そうだし、お早目に観ることをオススメします。

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