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オンリー・ゴッド

今日も映画の感想です。

オンリー・ゴッド
Only God Forgives

2014年1月25日日本公開。
ニコラス・W・レフン監督、ライアン・ゴズリング主演のクライム映画。

ビリー(トム・バーク)とジュリアン(ライアン・ゴズリング)兄弟は故郷アメリカから逃げ、タイのバンコクでボクシングジムを経営しながら、その裏でドラッグビジネスに手を染めていた。ある日、兄ビリーが若い娼婦(しょうふ)をなぶり殺しにした末、彼女の父親に殺害される。犯罪組織を仕切る兄弟の母親(クリスティン・スコット・トーマス)がアメリカから急行し……。(シネマトゥデイより)



第64回カンヌ国際映画祭の監督賞をはじめ、
第69回ゴーデングローブ賞にノミネートされるなど、
世界中で絶賛されたクライム映画『ドライヴ』の監督と主演が、
再びタッグを組んだ本作ですが、前作の国際的な評価とは一転して、
カンヌで上映された時は、その暴力的な内容に会場は騒然となったようです。
主演のライアン・ゴズリングも本作について、
「明らかに好き嫌いの分かれるパーソナルな映画」とコメントしていますが、
たしかに賛否両論、というか「否」の評価の方が多い印象です。
だいたい「好き嫌いが分かれる」「賛否両論」なんていう宣伝文句は、
客に理解してもらえなかった駄作の逃げ口上の場合が多いので、
地雷率が高く、ボクもちょっと警戒して観に行きましたが、
やっぱり地雷…、とまでは言わないものの、微妙な作品だったと思います。

てっきり本作の好き嫌いが分かれるポイントは、
過激な暴力描写の是非に対してだろうと思っていました。
その点では、ボクはかなり暴力描写への耐性が強くなっているので、
過激な暴力描写で嫌いになることはまずないと考え、
たぶん本作も楽しめるはずだと思っていました。
ところがいざ観てみると、本作の暴力描写は全く過激ではありません。
たしかに血まみれな内容ですが、切り株描写があるわけでもなく、
この程度の暴力描写なら、バイオレンス映画では並レベルです。
暴力描写に嫌気が差すどころか、ほとんど寸止めの温い演出に、
バイオレンス映画として観に行ったボクは拍子抜けさせられ、
それだけでもかなり期待外れな印象を受けてしまいました。
まぁたかが「R15+指定」ですから、過激な内容を期待するのが間違いですが、
この程度で過激だとか暴力的だとか吹聴しないでほしいです。

本作の本当に好き嫌いが分かれるポイントは、娯楽性の是非に対してです。
タイトルの通り、宗教的な内容の物語であり、かなり抽象的なところが多く、
そもそも本当に宗教的な内容なのかもわからないほど抽象的です。
虚実入り乱れるシーンもあり、一瞬混乱したりもしますが、
単純な話なので、物語を追うだけなら容易ですが、
そこに込められた監督のメッセージを汲み取ることができなければ、
全く意味のない、退屈な物語になってしまうのに、
そこを意図的に抽象的に描いてしまっているため、主題が見え難く、
普通に観るだけではなかなか楽しみにくいです。
アート系というほど気取った作品でもないですが、
端から好意的に観ないと楽しめないカルト系の作品で、娯楽性はかなり低く、
その点は好き嫌いが分かれるし、ボクも娯楽性の低い映画は嫌いです。
パーソナル(個人的)な映画なら、一般公開するなと思ってしまいます。

「タイトル通り」と書きましたが、邦題は原題よりも短くカットされ、
より抽象的なタイトルになっています。
原題は『Only God Forgives』で、ボクにはわかり易く意訳できないので、
直訳になりますが「神だけが赦す」みたいな意味だと思います。
本作はその原題の通り、神の裁きを描いた物語で、
劇中に登場するチャン警部補が神のメタファーであり、
そんな彼が犯罪者に無慈悲(?)な罰を執行するというものです。
でもチャン警部補が神のメタファーだなんて、
言われてみないと気付かない客も多いんじゃないかと思います。
ボクは途中で気付けましたが、それは原題を知っていたからで、
「赦し」を意味する「Forgives」が抜け落ちた邦題だけでは、
神の裁きを描いた作品だなんて気付けるかどうかは微妙でした。
有名なところでは『ノーカントリー』なんかもそうだけど、
意味の通じなくなるような邦題の短縮はやめていただきたいものです。
チャン警部補を始めから神だと理解して本作を観るのと、
無茶苦茶な暴力警官だと思って観るのでは全然印象が変わりますからね。

映像はタイのオリエンタルな雰囲気と、
『ドライヴ』以上に強烈なコントラストの色彩で、
なんだかオシャレな印象は受けますが、
観るべきところはそれくらいで、ストーリーは微妙です。
以下、ネタバレ注意です。

バンコクでムエタイクラブを経営し、裏では麻薬密売もしているジュリアン。
ある日、兄ビリーが惨殺され、母クリステルからジュリアンに復讐を命じられる。
しかし、そんなジュリアンの前に、チャン警部補が現れる、という物語です。
復讐劇のようではありますが、そんなに単純な復讐劇ではありません。
ジュリアンは兄ビリーを殺した男チェを早々に見つけて捕まえますが、
復讐を果たさず、赦してしまうのです。
というのも、兄ビリーは未成年者買春の常習者で、16歳の売春婦を買い、
行為中に殺してしまうのですが、その少女の父親がチェだったので、
ジュリアンは兄の死を「当然の報いだ」と考えたため、チェを解放するのです。
売春して殺される少女の方も自業自得だと思っちゃうけど、
生活のために未成年売春が横行するタイだけに、少女に同情の余地はあるのかも。
でも買春するような最低な男は殺されても当然で、ジュリアンもそう考えました。
あと、日頃から兄に対して劣等感を持っていたようなので、
そんな兄が殺されて嬉しいくらいなのかもしれません。
未成年買春するようなロリコンの兄のどこに劣等感を覚えるのか疑問ですが、
どうやらそれは彼の家庭環境に起因するようで、
その主な原因は母が兄ばかり依怙贔屓していたことのようです。
本作を復讐劇とするのであれば、兄を殺した犯人に対する復讐ではなく、
そんな母に対する復讐劇なのかもしれませんね。

ビリーを殺したチェですが、彼は好き好んで娘の復讐をしたわけではなく、
チャン警部補に嗾けられて、已むに已まれずビリーを殺します。
神であるチャン警部補の命令は絶対なのでしょうね。
その後、チャン警部補はチェの腕を鉈で切り落とします。
自分で復讐を強要しておいて、この警官は酷い奴だなと思いましたが、
チェの腕を切り落としたのは、ビリーを殺した私刑罪の罰ではなく、
未成年の娘に売春させていたことに対する罪だったみたいです。
ボクはこの時点ではまだチャン警部補を神だと気付いてなかったので、
逮捕も裁判もしないで腕を切るなんて、無茶苦茶な警官だと思いましたが、
周りの警官も何も言わないので、タイの警察はそんなもので、
実際に腕を切り落とすような処刑もあるのかなと思いました。
調べてみたら、一昔前は犯罪者の腕を切り落とす処刑はあったようだけど、
当たり前だけど今はさすがにないみたいです。
それにしても、チャン警部補はあんなに長い鉈をいつも携帯してるんですね。
忍者のように背中から抜きましたが、普段は鉈を背負っているようには見えず、
不思議に思ったのですが、彼は神なので何でもありなのでしょう。

兄ビリーの死体を引き取りに、母クリステルがタイにやってきますが、
彼女は犯人チェを捕まえながら解放したジュリアンに激怒し、
復讐を強要しようとしますが、彼が拒否したため、
自分の麻薬組織を使って息子の復讐を実行します。
さらに現場にはチャン警部補もいたとわかり、刺客を繰り出しますが、
刺客たちはチャン警部補に返り討ちにあい…。
チャン警部補も、チェを殺した犯人捜しをはじめ、
ジュリアンの母が捜査線上に浮上したため、彼に会いに来ます。
そして何故かジュリアンとチャン警部補はタイマンで戦うのです。
チャン警部補はチェ殺しとジュリアンが無関係なのは察しているし、
ジュリアンもチャン警部補と戦う理由はないので不可解です。
チャン警部補はメチャンコ強くて、ジュリアンはボコボコ…。
その途中で、その場に母クリステルがやってくるのですが、
お目当てのチェ殺しの犯人が現れたというのに、
なぜかチャン警部補は彼女を無視します。
もうことあたりの展開は全く理解できませんでした。

ボロ負けしたジュリアンは、母クリステルに少し優しくしてもらい、
気が変わったため、母の言う通り、チャン警部補に復讐することに。
母の遣わせた刺客チャーリーと2人でチャン警部補の自宅に侵入し、
チャン警部補を待ち伏せして殺そうとしますが、
チャーリーが家政婦を射殺し、チャン警部補の娘まで撃とうとしたので、
ジュリアンはチャーリーを射殺し、娘を助けます。
その頃、クリステルのもとを訪れていたチャン警部補は彼女を鉈で処刑。
その後、帰宅したジュリアンは母の死体を見つけ、
何故か死体の腹を鉈で切り、その中に手を突っ込みます。
その行為の意味がイマイチわかりませんが、
もしかしたら母の子宮の中に戻って全てをやり直したいみたいな、
「生まれてきてすみません」的な感情だったのかな?

その後の展開はさらに不可解で、ジュリアンはチャン警部補のもとを訪れ、
母の復讐のため再戦でも申し込むのかと思いきや、
「切り落としてくれ」とばかりに両腕を突き出すのです。
つまり自首したわけだけど、その心境は全く理解できませんでした。
チャン警部補もジュリアンの腕を切り落とすのですが、
彼は仮にも娘の命の恩人なのに、無慈悲にもほどがあります。
神としては恩よりも罪を罰することの方が重要だったということか…。
というか、ジュリアンは両腕を切り落とされるほど悪いことをしたかな?
チェも殺してないし、未成年買春もしてないし…。
チャーリーは殺したけど、チャン警部補の娘を助けるためだったし…。
あ、でもチャン警部補の自宅を警備する警官をひとり殺してたか。
ラストは処刑後恒例のチャン警部補のカラオケで終わります。
劇中で都合3度目のオンステージでしたが、
うまいのかどうかもわからないチャン警部補の唄を、
真剣に聞いている部下たちの様子がシュールで笑いを誘いますね。
でもタイ語の唄を長々と3曲も聞かされる観客の身にもなってほしいです。

好き嫌いが分かれる作品ですが、多くの人にとっては、
嫌いというよりも好きになれない作品だと思われるので、
避けた方が無難だと思われます。

-関連作の感想-
ドライヴ

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