ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

鑑定士と顔のない依頼人

例年は避けていたのですが、来年は福袋を買ってみようかと思っています。
なんでもヨドバシカメラの福袋は、かなりいいと評判なので、
早朝から並んでノートパソコンの福袋でも買おうかなと考えています。
消費税が上がる前にノートパソコンを買い替えるつもりだったので、丁度いい機会です。
でも何が入ってるかわからないというのは、やはりちょっと怖いですね。
一応国内メーカーのノートパソコンにするつもりなので、
そんな酷い品が当たるということはないと思うけど、VAIOだったら少し嫌かも。
SONY製品では嫌な目に遭うことが多いので、いつも警戒してしまいます。
でもボクはパソコンでインターネットとオフィスソフトくらいしか使わないし、
パソコンについて全く詳しくないので、パソコンの価値なんてわからないんですよね。
パソコンに限らず、物の価値をほとんど理解してないので、
福袋を買っても、中身が当たりかハズレかなんて判別できないんですよね…。

ということで、今日は物の価値を見極める鑑定士の物語の感想です。

鑑定士と顔のない依頼人
The Best Offer

2013年12月13日日本公開。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督、ジェフリー・ラッシュ主演のミステリー。

天才的な審美眼を誇る美術鑑定士ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、資産家の両親が遺(のこ)した美術品を査定してほしいという依頼を受ける。屋敷を訪ねるも依頼人の女性クレア(シルヴィア・フークス)は決して姿を現さず不信感を抱くヴァージルだったが、歴史的価値を持つ美術品の一部を見つける。その調査と共に依頼人の身辺を探る彼は……。(シネマトゥデイより)



イタリアのアカデミー賞と称されるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞を受賞した本作。
『ニュー・シネマ・パラダイス』のイタリアの巨匠ジュゼッペ・トルナトーレの最新作で、
イタリア映画なのですが、全編英語で撮られています。
欧州映画が母国語ではなく英語で撮られるのはよくあることですが、
母国語じゃない映画が国内最高の映画賞を受賞するというのは、
日本では絶対にそんなことが起きないので、ちょっと不思議ですね。
でも英語で撮れば北米をはじめ海外での興行は絶対に有利になるので、
日本映画でもやってみればいいと思います。
もちろん日本人俳優が英語台詞だと変なので、外国人を起用して撮ることになりますが。
本作のキャストもほぼ英語圏の俳優で、主演は『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの
バルボッサでお馴染みのハリウッド俳優、ジェフリー・ラッシュです。
外国人俳優ばかりの映画が、国内最高賞を受賞するというのも不思議ですが、
それだけ出来がいいということで、期待も高まるといいものです。
懸念があるとすれば、前年のダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の受賞作品
『塀の中のジュリアス・シーザー』が退屈な作品だったことくらいかな。

天才的な審美眼を誇る鑑定士で競売人のバージル・オールドマンは、
資産家の両親が残した絵画や家具を査定してほしいという依頼を受け、ある屋敷を訪れます。
しかし、依頼人の女性クレアは屋敷内の隠し部屋に籠ったまま姿を現しません。
本作は予告編など宣伝段階で「結末を知ると、物語の構図は一転する。」と明言し、
本作が最後にどんでん返しのあるミステリーであることを示唆しています。
こんな宣伝方法に対して毎度思うのですが、どんでん返しは予告しちゃダメです。
騙されるとわかってて騙される人なんて、そんなにいませんからね。
客としてもちゃんと騙されて、どんでん返しがあったことに驚きたいのに、
なんで先に予告しちゃうのか、もうちょっと観客のことも考えて宣伝してほしいです。

とりあえず、鑑賞前からどんでん返しがあることはわかっていました。
となれば、あとはどんな真相でどんでん返しを仕掛けてくるかがポイントです。
予告編で「彼女は何者なのか、全ての謎が解ける時、衝撃は切ない涙に変わる。」と、
宣伝されていたので、依頼人の女性クレアの正体が関係しているのもわかります。
なので観る前から、いろいろと予想をしてしまうのですが、
結果的にその予想は外れており、どんでん返しを予告された作品のわりには、
意外と意外な展開だったと思います。
ボクの当初の予想では「クレアが姿を見せない理由に何か秘密があるのでは」と考えました。
例えば容姿的に大きな問題を抱えていたり、実はバージルの知り合いだったりとかね。
ところが意外にも、物語が中盤に差し掛かったあたりで、彼女が姿を現してしまうのです。
どうしても彼女を一目見たかったバージルが、退出したと見せかけて物陰に隠れ、
隠し部屋から出てくる彼女を覗き見するのですが、普通に美人な若い女性で、
特に姿を隠さなくちゃいけない理由はありませんでした。
まぁたしかに、27歳の美女が下腹部丸出しの無防備な姿は衝撃的でしたが…。
鑑賞前から中盤までは姿を見せないクレアに関心が惹かれ、
ミスリードさせられますが、姿を現わせばそれもそこまで。
そこに謎はないとわかれば、真相に気付くのは容易いです。

というのも、彼女の他にも明らかに怪しい人物がひとりいたからで、
その人物に疑いが向いてしまうと、もう真相はわかったも同然です。
もちろんクレアの素性も、真相に大きく関わってくるのですが、
どんでん返しとしては、その人物の素性の方が重要なポイントでした。
クレアのミスリードにより、はじめは全く疑いを感じなかった人物なので、
もしどんでん返し予告がなければ、たぶん最後まで彼を疑わなかったと思われ、
どんでん返しで大いに驚くことができたはずなので残念です。
クレアが姿を現わしてからは、バージルと彼女のロマンス的な展開になるのですが、
それも実際は真相を隠すためのミスディレクションだったのですが、
どんでん返しを予告されては、そのロマンスに裏があるのは想像に難くなく、
そのミスディレクションに引っ掛かりようがないです。
もしどんでん返し予告がなければ、騙されながらロマンスも楽しめたはず…。
そして楽しんだ分だけ最後に明かされる真相で感動もできたはずなのです。
本作の内容自体はとても面白いミステリーだったので、
それを製作者の意図しない宣伝方法で台無しにするなんて、本当に勿体ないと思います。

どんでん返し予告だけでも十分なネタバレなのですが、以下、ネタバレ注意です。

クレアが姿を現したことで、疑いを持った人物と言うのは、
バージルの知り合いの修理屋の青年ロバートです。
なぜ怪しいと思ったかと言えば、彼がどうにも場違いに感じたからです。
還暦ちかく著名な鑑定士であるバージルが、なぜか20代の彼を異様に懇意にしており、
クレアに対する秘めた恋心まで彼にだけ打ち明ける、親友のような関係ですが、
年齢的にも立場的にも、この二人が親友なんて不釣り合いすぎて、
ロバートには絶対に何か裏があるはずだと思わずにはいられません。
バージルには同年代の相棒で親友のビリーもいるのに、なぜ若造の修理屋に入り浸るのか…。
たしかにロバートは美術品の修理もお手の物の修理屋のようで、
美術品収集家でもあるバージルならお世話になることもあるでしょうが、
あまりに若すぎるので、バージルならもっと熟練の修理屋を知ってるはずだと思えます。
ロバートがバージルとクレアの歳の差の離れ過ぎた恋を応援する意図は何なのか、
それを考えれば自ずと真相が見えてくるというものです。

そうです、ロバートとクレアはグルなんですね。
裕福な老人をハニートラップに嵌めて、何を企んでいるかと言えば、
そんなの財産を奪おうとしているに決まっています。
美術品収集家のバージルの財産と言えば、美術品のコレクションに決まっており、
彼がクレアを自宅に招待した時点で、もうオチの予想は確信に変わり、
「あー、やっぱりか…」と思ってしまいました。
とはいえ、その真相には「まさか」と思う部分も…。
というのも、このロバートとクレアの計画は、不確定要素の多い綱渡りなもので、
実際に成功する確率はかなり低いように思うからです。
まずロバートとクレアの表面上の繋がりが、「バージルの知り合い」ということだけなので、
もしバージルがクレアとの恋愛相談をロバートではなく親友ビリーにしたとしたら、
その時点でこの計画は不可能になってしまいます。
屋敷は向かいのカフェのサヴァン症候群の女性に無償で借りたものだとしても、
かなり金のかかっている計画なのは間違いなく、そんな甘い策で挑むにはリスキーすぎます。

それ以前に、バージルがクレアに惚れるなんて保証はどこにもないしね。
クレアは本当に美女なので、男なら十中八九ハニートラップに引っ掛かりそうなもんだけど、
バージルは超変人で、女性恐怖症なのか若い女性とは目を合わせることもできません。
競売にかけられた女性の肖像画をビリーに落札してもらっては、家に飾り、
それを愛でるのが唯一の楽しみなある種のアガルマトフィリアで、
金持ちだから誘惑も多いはずだけど、60歳ちかいこの歳まで童貞だったような男です。
そんな彼をクレアが落とせるなんて保証はどこにもないです。
なのでこのオチは予想できても「まさかそんな拙い展開はありえないだろう」とも思いました。

でも、予想できたしリアリティに欠けるオチではありますが、このオチは好きです。
大好きだった女性に裏切られて、大切な女性の肖像画を全て奪われたので、
かなり悲惨なオチではありますが、晩年にあんな美女を相手に初恋して初体験して、
あのままでは知らずに人生を終えるかもしれなかったセックスの喜びを知れたのだから、
これ以上貴重な経験なんてなかなかないと思え、ある意味ハッピーエンドだったのかも。
悲惨なのにハッピーエンドに思える、妙な鑑賞後感の作品で、興味深いです。
1枚800万ポンドにもなる肖像画を含む何十枚もの絵画を盗まれたのだから、
騙された勉強代としては高額すぎますが、金なんて墓場に持って行けるわけでもないし、
人生の最後に愛を知ることができたことの方が彼には幸せなことだと思います。
審美眼まで盗まれたわけじゃなし、まだ余生に必要なお金は十分以上に稼げるでしょう。
でも美術品を見極める力は超一流でも、人間を見極める力には欠けていたのは皮肉ですし、
最愛のクレアが去ったのは、コレクションが盗まれる以上のショックでしょうけど…。

結局、かなり楽しめた作品だったのですが、何気に物足りなく感じたのは、
完成したオートマタ(からくり人形)がショボかったことです。
当初、姿も見せない依頼人クレアの無礼さに、依頼を断ろうと考えていたバージルですが、
屋敷で古い何かの歯車を発見して、修理屋ロバートに見せると、
有名な18世紀の発明家ジャック・ド・ヴォーカンソンのオートマタの部品とわかり、
その貴重なオートマタの復元をロバートに依頼して、自分は残りの部品を探すため、
屋敷を出入りできるように、クレアの依頼を受けるのです。
ヴォーカンソンのことは知りませんが、かなり精巧な等身大のオートマタになりそうで、
一体どんな面白いからくりがあるのだろうと期待しました。
『ヒューゴの不思議な発明』の絵を描くオートマタような、
すごい秘密が隠されたものになるのではと想像したのに、
出来あがったオートマタは、ただカクカクと意味のない動きをするだけで…。
おそらくはヴォーカンソンというのも嘘で、ロバートが適当に作ったものだから、
そのショボさも当然と言えるのですが、完成品をみてとにかくガッカリしました。
もしかしたらこのオートマタも、単なるミスディレクションの道具だったのかも…。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/1194-d86d3160
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad