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夢と狂気の王国

『魔法少女まどか☆マギカ』上映中のあるシネコンが、劇場のツイッターアカウントで、
「チケットを購入して入プレ貰ってそのまま出口から出て次の回を待つのは
映画的に本末転倒ですし、一個人のファンとして不快です。」と苦言を呈し、
一部ファンからクレームが殺到して、アカウント停止に追い込まれたそうです。
このシネコンの発言には「金を払っているんだから問題ない」という批判的な意見や、
「正論だ」という同情的な意見がありますが、ボクは配慮を欠いた発言だと思うかな。
「映画的に本末転倒」なのは間違いないですが、それは客の行為の問題ではなく、
こんなリピーター商法をしている映画会社に問題です。
映画ではなく特典を売ってるようなものだから、映画会社として本末転倒ですよ。
それをリピーター商法の被害者である客に対し、「不快です」なんて筋違いですよね。

ボクは入場者特典だけ貰って帰ったことはありませんが、
入場者特典が貰えたらやっぱり嬉しいので、先着特典のある映画は早めに観に行きます。
『魔法少女まどか☆マギカ』でも、初回先着特典の「ミニ色紙」を1枚貰いました。
でも映画が目当てなので、特典が貰えなかったとしても別に構いません。
そんな人ってけっこういると思うので、特典だけが欲しい人は、
特典いらない人に座席券を譲って、特典だけ返してもらえばいいです。
ネットとかで募集したら、けっこう集まるんじゃないかな?
これなら劇場スタッフから筋違いな苦言を呈されることもないはず。
劇場側も特典だけ貰って出て行かれるのが嫌なら、上映終了後に渡せばいいだけですね。
映画会社は特典を何種類も用意するようなアコギな商売しないで、
1つで満足できる素敵な特典を考えてほしいものです。
リピーターは特典ではなく、作品の出来で呼べるように努力しましょう。

ということで、今日は入場者特典が1種類の映画の感想です。
特典は『かぐや姫の物語』のプロローグが収録されているらしいDB/DVDでした。
貰っただけで満足したので、内容はまだ見てませんが…。

夢と狂気の王国
夢と狂気の王国

2013年11月16日公開。
『エンディングノート』の砂田麻美監督がスタジオジブリの秘密に迫ったドキュメンタリー。

国民的アニメーションスタジオ、スタジオジブリは数々の名作を世に送り出し、世界中のファンをはじめ、映画人やアニメーターに多大な影響を与え続けてきた。2013年、ジブリの中核を担う宮崎駿監督、高畑勲監督、鈴木敏夫プロデューサーの制作現場に密着。数十年にわたり苦楽を共にしてきた三人の人間関係や、話題作を次々に生み出す現場の秘密に迫る。(シネマトゥデイより)



今年の興行成績、ダントツの1位である宮崎駿監督の引退作『風立ちぬ』ですが、
この作品には賛否両論あるものの、ボクは圧倒的に「否」だと思っており、
宮崎駿作品の中では最後にして最悪、ジブリ作品の中でも屈指の駄作だと思っています。
以前は宮崎駿を手放しに称賛していたし、ジブリ作品も特別視してましたが、
『風立ちぬ』以降はかなり懐疑的になってしまい、ジブリに対する期待も失せました。
ところが、ジブリ最新作で高畑勲監督の『かぐや姫の物語』には妙に惹かれます。
予告編を見ただけでも意欲作なのは伝わるし、めちゃめちゃ面白そう。
宮崎駿信仰は失ったものの、ジブリに対する信頼はまだ燻っていたみたいです。

本作はそんなジブリに2012年秋から密着取材したドキュメンタリー映画です。
ジブリに潜入するドキュメンタリーは、NHKなど地上波でもことあるごとにやってるし、
(ボクはあまり見たことがないのですが、)それほど珍しいものではないです。
そのせいか、お客さんの入りはかなり悪かったように思われました。
『風立ちぬ』の観客動員数は1000万人を超えるような、超人気アニメスタジオなのに、
その密着ドキュメンタリーがここまで集客できないものかと驚きました。
はじめはボク同様『風立ちぬ』でガッカリした人が多かったのかなと思いましたが、
よく考えたら次週末にはジブリ最新作『かぐや姫の物語』が公開になるんだし、
映画なんてたまに観に行く人が多いんだし、そんな人たちはどうせ観に行くなら、
ジブリ関連作の本作よりも、普通にジブリ最新作を選びますよね。
本作は『かぐや姫の物語』の公開時期に便乗したつもりかもしれないけど、
できればもう少し早く公開しておいた方が集客もできたでしょうし、
集客できれば『かぐや姫の物語』への相乗効果も期待できたと思います。

でも本作は映画なので、テレビで流されるジブリのドキュメンタリーとはワケが違います。
時期的には『風立ちぬ』の制作が佳境の頃から撮影を開始しているので、
その制作風景が中心で、ジブリのドキュメンタリーといいながらも、
ほとんど宮崎駿にベッタリなわけですが、制作が思うように行かないストレスからか、
彼もかなりピリピリしてたりして、結構ビックリするような暴言も連発します。
こんなの事なかれ主義のテレビでは流すことはできません。
左翼的な政治的発言もバンバン飛び出し、NHKでの放送は無理です。
(日テレとジブリの蜜月関係も描かれているので、NHKでは絶対無理ですね。)
いや、普通なら映画でもここまでぶっちゃけたりしないと思いますが、
宮崎駿も「もう引退するし、どう思われてもいいや」とでも思っているのかな?
それとも密着した「マミちゃん」こと砂田麻美が、若くて美人な女流監督だから、
ジジイのスケベ心で、ついつい口が軽くなっちゃったとか?
何にしても、ここまで宮崎駿から本音を引き出したマミちゃんはグッジョブです。

でもマミちゃんも、宮崎駿以上に変人である高畑勲には近づけなかったのか、
はたまた近づきたくなかったのかわかりませんが、ずっと宮崎駿の方に密着していたため、
ボクの最も期待していた意欲作『かぐや姫の物語』の舞台裏については、
広報活動の苦労はちょっと描かれますが、制作のことは全く描かれていませんでした。
高畑勲、宮崎駿のジブリ両巨匠は、仕事場の場所も全く別のようなので、
本作にも高畑勲本人はほとんど出てきません。
彼が過去の映像や写真以外で出たシーンは、1シーンだけだったかも。
そのシーンは、彼と宮崎駿と鈴木敏夫プロデューサーとのスリーショットで、
ある意味とても貴重な映像だと思いましたけど。

先にあまり描かれなかった高畑勲と『かぐや姫の物語』のことについての感想を書きます。
本来なら『風立ちぬ』と同時公開になるはずだった『かぐや姫の物語』ですが、
高畑勲はとにかく筆の遅いようで、スケジュールが遅れまくり、
結局夏の同時公開は見送られ、『かぐや姫の物語』は秋まで公開延期になりました。
でも夏から秋になったくらいでは、それほど酷い延期って感じもしませんよね。
本作にも出演している庵野秀明なんて、今年公開予定だった『エヴァ』の最新作が、
11月半ばになっても未だに公開日未定で、来年公開されるかも怪しいですよ。
ただ『かぐや姫の物語』は、すでに制作に7年も費やしているようで、
前監督作『ホーホケキョ となりの山田くん』から実に13年ぶりの新作で、
いくら何でもちょっと寡作すぎますよね…。
宮崎駿も、元師匠である彼のことを「監督は無理」「性格破綻者」とボロクソに言ってます。
『かぐや姫の物語』の若手プロデューサーは高畑勲のことを、
「宮崎駿を見出したすごい人」と言ってますが、まぁ彼の立場ならそう言うよね。
でも久石譲と宮崎駿を引き合わせたのも高畑監督だったらしく、
たしかに彼がいなければ宮崎駿作品の大成功もなかったかもしれません。
なにより、結果的に『風立ちぬ』と同時公開にならなかったのはよかったんじゃないかな。
ライバル対決は盛り上がるかもしれないけど、同門同士で客の食い合いしたら、
ジブリとしても総興収は減るし、『風立ちぬ』も動員1000万人に届かなかったかも。

ジブリの監督は、宮崎駿と高畑勲だけではありません。
本作には過去2本のジブリ作品を手掛けた宮崎吾朗も登場します。
宮崎駿のご子息として、鈴木敏夫に抜擢されたものの、イマイチ結果を残せない彼ですが、
本作でもそんな彼の、なんとも情けない姿が撮られてしまっています。
監督作3本目となる新作の打ち合わせの風景が撮られているのですが、
吾朗は「僕は間違ってこの世界に入ったんだ」「僕に全て責任を負わせるな」と、
担当プロデューサーに泣きごと連発するのです。
その半泣きの姿は情けなく、これでは「彼の作品は面白くなくて当然だ」と感じます。
でもその主張は間違ってないと思うんですよね。
どうやらこの担当プロデューサーは、その新企画に距離をとっていたみたいで、
それはおそらく大物二世監督である吾朗の作品に自分が介入しない方がいいだろうと、
良かれと思い一歩引きましたが、吾朗は自分にかかる重圧に耐えられなかったのでしょう。
両巨匠のせいでジブリのアニメ制作は監督には誰も意見できないワンマン体制だったので、
ジブリではプロデューサーは監督の意向に立ち入らないのが普通なのでしょう。
それで作品が成立するのは監督に才能があるからですが、吾朗の場合は…。
企画段階で監督とプロデューサーが責任の擦り合いをするような作品では、
その出来は推して知れるというもので、残念ながら吾朗の3作目も期待できそうにないです。

その打ち合わせの場にいた鈴木敏夫は、企画に後ろ向きな吾朗に対し、
「『風立ちぬ』も『かぐや姫の物語』も監督はやりたがらなかった」と励まします。
どちらも鈴木敏夫が持ち込んだ企画だったみたいです。
鈴木敏夫が吾朗を親の七光りで抜擢したわけだけど、本人が「間違い」と言ってるんだし、
もう解放してあげた方が、彼にとってもジブリにとってもいい気がします。
しかしジブリのようなワンマン体制では、新しい監督が育つわけがないし、
吾朗でも担ぎ出すしかないのかもしれませんね。
それと同時に、この環境ではプロデューサーも育たないのは明白。
このままでは宮崎駿なき後のジブリは立ち行かないでしょう。

そんな現状に対し、宮崎駿も自分が引退後のジブリは「やっていけなくなる」と言います。
それはそうだと思うけど、まるで他人事のように言い放っており…。
ボクは巨匠を称される以上は、後塵をちゃんと育てるのも監督の役目だと思います。
一応、庵野秀明のことは彼が見出したと思うけど、ジブリ内にも後継者を作らないと…。
それにジブリでは監督だけじゃなく、アニメーターも育たないと思います。
とにかくアニメーターが巨匠に委縮しまくりで、言われたことしか出来ない状況ですが、
理想主義の宮崎駿の要求が高すぎて、潰れてしまう人も多いようで、ある意味ブラック。
ある男性アニメーターは、宮崎駿にゼロ戦の描き方について質問したそうですが、
イラッとされたようで、もう「障らぬ神に祟りなし」とばかりに仕事しています。
ある女性アニメーターも、「自分を守りたい人は監督に近づかない方がいい」と言うけど、
つまりここでは、アニメーターの独創性や個性は尊重されないということで、
ここで働いても絶対に成長できないと思います。
日本を代表するアニメ制作スタジオがそんな状況では、日本のアニメの未来も慮られますね。

たしかに宮崎駿には実績があるし、自信もあるだろうけど、
自分が絶対に正しいと思っている独善的な頑固ジジイです。
マミちゃんのインタビューで持論を展開する時も、
「あなたには想像もできないかもしれないけど」なんて言う必要ありますか?
72歳の自分のことは差し置いて「ヨボヨボになってまで長生きするのは見苦しい」
「早く死んだ方が…」なんて、高齢者を揶揄したり、
ミリタリー大好きな自分のことは差し置いて「何も学ばないのがオタクだ」
「私はオタクではない」と、オタクをバカにしたりします。
自分の映画を、どれだけの高齢者やオタクが観てくれてるかわかってるんですかね?
だから『風立ちぬ』みたいな独り善がりの作品を作るんですよ。
しかし最も驚いた発言は、声のキャストに対する暴言です。
『風立ちぬ』では演技は素人同然の庵野秀明が主演に抜擢されたことが
話題になりましたが、本作ではその理由が語られています。
ボクは奇をてらっただけだと思ってましたが、どうもそうではないらしく、
端から素人をキャスティングしたかったようです。
宮崎駿は声優嫌いで、ジブリ作品には役者をキャスティングするのは有名ですが、
今回は「役者も嫌になった。素人がやった方がいい。」と…。
彼曰く「役者の演技は皆同じ、相手を慮るフリをするだけ」だそうで、
今までのキャストや、『風立ちぬ』のキャストにもかなり失礼な暴言です。
別のシーンでも「現代劇は役者の我の張りでリアルじゃない」みたいなことも言ってます。
それは正論なのかもしれないが、公共の場で堂々と言える図太さには呆れます。
それにしても、主演を決める打ち合わせに同席していたスタッフたちが、
宮崎駿が「庵野がいい」と言った時に、何も言わず下を向いたのが印象的でした。
内心では「こいつ、マジで言ってんのか?」と思ったのでしょうが、
この狂気の王国では王様に意見することはできなかったのでしょう。

本作のほとんどは『風立ちぬ』の制作風景だったわけですが、
それを観たことで、ボクの『風立ちぬ』に対する理解も深まりました。
ボクはてっきり、この作品は堀越二郎に宮崎駿が自分を投影しているのだと思ってたけど、
実は投影しているのは自分ではなく、彼の父親だったみたいです。
彼の父親が飛行機の部品などを売る仕事をしていたのも初めて知りました。
そんな父に対し、彼は「親父は戦争協力者だ」と喰ってかかったこともあるそうで、
仕事をしていただけなのに、結果的に戦争に協力していた堀越二郎とも重なりますね。
宮崎駿は本作の試写会で「自分の作った作品で泣いたのは初めて」と言いましたが、
今まで全く理解できなかったけど、堀越二郎に父親を投影し、
家族愛補正がかかっていたとしたら、ちょっと理解できます。
ただその補正は自分自身にしかかからないので、観客には伝わりません。
つまり独り善がりな作品になるということで、本作がなぜ駄作なのかも理解できました。

『風立ちぬ』は自虐史観な反戦映画で、右寄りなボクには受け入れ難いものです。
宮崎駿に密着した本作にも、彼の左翼っぷりが存分に描かれています。
脱原発や護憲を熱弁する彼の姿には、百年の敬意も冷めます。
まぁボクも脱原発には賛成ですが、この極左っぷりにはドン引きですよ。
でも本作自体は、宮崎駿の思想を肯定も否定もせず、ただ彼に好き勝手に喋らせるだけ。
むしろ彼のそんな狂気を、シニカルに描いているとも思えます。
それを端的に表したのが、管直人元首相が街宣にくるシーンです。
管直人と言えば日本屈指の売国左翼ですが、ジブリ内に彼の演説に耳を貸すものはなく、
みんな完全無視で黙々と作業に当たるのです。
まぁ管直人は原発事故当時の首相であり、彼の事故対応にはかなり批判もあるほどの、
原発事故の戦犯のひとりなわけだから、脱原発を掲げるジブリから嫌われるのは当然。
しかし本作にはどこか「おまえもこのアホと同類の左翼だぞ」という目線が感じられます。
きっとこのアホもジブリを仲間だと思ったから街宣にやってきたのでしょう。
本作には左翼を揶揄する意図はないかもだけど、そのシーンのシュールさは笑えましたね。
左翼なジブリですが、韓国でのグッツの売り上げが原発事故前の半分だそうで、
左翼なのに中韓から嫌われるようでは世話はないです。

ジブリの凋落前夜を描いた作品で、正直ジブリファンは観ない方がいいかもしれないけど、
宮崎駿の無茶苦茶さは傍から見てると面白く、なかなか楽しめました。
それがなかったとしても、アニメ映画の制作現場を見るなんて機会はあまりないので、
映画ファンとしても興味深いものだったと思います。
まぁジブリの制作方法は特殊なので、どのアニメ現場もあんなではないでしょうが…。
ジブリ最後のヒット作になるかもしれない『かぐや姫の物語』も楽しみですが、
宮崎駿引退後のジブリがどうやって立ち直るのか、
はなまた宮崎駿の予言通りやっていけなくなるのか、
今後のジブリの動向も面白そうです。

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