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ばしゃ馬さんとビッグマウス

先週末公開になった映画『清須会議』ですが、評判がいいみたいですね。
ボクは楽しみにしていたけど諸事情でまだ観に行けてないのですが、
他の映画を観にシネコンに行った時に、『清須会議』のシアターから出てきたお客さんが、
「よく出来た脚本だったね」と話していたのを聞き、俄然期待が高まりました。
やっぱり(監督も務める)三谷幸喜は人気脚本家だけのことはあるのだろうと思います。

ボクは映画は監督や出演俳優で選ぶことが多く、脚本家が誰かなんて気にもしませんが、
脚本家が三谷幸喜か宮藤官九郎だと、それで選んでしまうことがあります。
というか、日本の脚本家の名前はその2人しか知らないかも…。
別に彼らの作品が毎回面白いかというとそうでもないんだけど、
今回はどんなことをしているのか、確認せずにはいられない2人です。
宮藤官九郎が三池崇史監督とタッグを組んだ『土竜の唄』が来年2月に公開になりますが、
三池崇史監督も毎回見逃せない好きな監督のひとりですが、
その作品に関してはむしろ宮藤官九郎の脚本ということに惹かれます。
うーん、でもオリジナル脚本じゃないのは少し不満かな。

ということで、今日は映画の脚本家を目指す人たちを題材にしたコメディ映画の感想です。
奇しくも同じく脚本家が主人公のコメディ映画『セブン・サイコパス』と同日公開でした。

ばしゃ馬さんとビッグマウス
ばしゃ馬さんとビッグマウス

2013年11月2日公開。
麻生久美子、安田章大(関ジャニ∞)共演のヒューマン・コメディ。

次々と脚本コンクールに応募するものの、一次審査すらも通らない34歳の馬淵みち代(麻生久美子)。そんな彼女と同じシナリオスクールに通う26歳の天童義美(安田章大)は、自分の作品をほとんど書いたことがない割には、常軌を逸した毒舌で他人のシナリオを酷評する。そんな彼らが出会ってしまい、何と天童がみち代にほれてしまう。嫌味な自信過剰男だと自分を嫌うみち代に認めてもらおうと、ついにシナリオを書くことを決意する天童。意外な彼の真摯(しんし)な姿に、みち代も心を開き始めるが……。(シネマトゥデイより)



ジャニーズでは今や嵐に次ぐ人気グループになったと思う関ジャニ∞ですが、
ボクとしてもジャニーズの中では最も好きなグループです。
それというのも、メンバーのひとりである錦戸亮が、最近映画の主演しまくりで、
映画ファンのボクとしては、彼の所属グループとして否応なく注目が高まっています。
その絡みで彼らが出演するバラエティ番組もたまに見ますが、
好きなグループなのに、依然として顔と名前が曖昧なメンバーが2人おり…。
そのひとりが本作の主演のひとり、安田章大です。
関ジャニ∞のファンの中での彼の人気はよく知りませんが、
知名度ではおそらく彼が7人中最下位なんじゃないかな?
ジャニーズ主演映画なんて、公開初週はランキング上位になるはずですが、
本作はトップ10にすら入れませんでした。(おそらく初登場15位です。)
宣伝不足もあるでしょうが、やっぱり主演の知名度が低すぎた気が…。
ボクも本作は麻生久美子主演作という意識が強かったし、
いざ観てみてやっと「あ、関ジャニ∞の人だ」と思ったくらいですから。
やはり天下のジャニーズと言えども、急に主演は無理があるのでしょう。

とはいえ、ランキングが低いのと作品の出来は比例するわけでもなく、
本作も全くヒットしてないわりには、なかなか面白い作品でした。
急に主演抜擢は無理があると思ったものの、安田章大も嵌り役で、
安田章大というタレントの持ち味を初めて認識できたような気がします。
仮にもアイドルなのに、あんな三枚目の役はなかなか出来ないですよ。
「こんなやつ、いるよね」って感じの親近感を覚えるいいキャラです。
キャストも物語も至って地味ですが、けっこう笑えるし、
主人公は映画などの脚本家を志望する男女なので、映画ファンなら楽しめるはず。
脚本の書き方や脚本家への工程なども描かれ、興味深くて勉強になりました。
本作の脚本を務めているのは、吉田恵輔監督ですが、
彼はこれまでオリジナル脚本で映画を撮ってきているだけに、
劇中で描かれている脚本家の姿も、けっこうリアルなんじゃないかと思えます。
ジャニーズファンよりも、映画ファンが観るべき映画です。

以下、ネタバレ注意です。

脚本家を目指す34歳独身の馬淵みち代は、
学生時代からコンクールに作品を応募し続けているが一次選考も通りません。
それでも夢を諦めきれない彼女は、シナリオスクールに通うことにします。
ボクも映画が大好きなので、脚本を書いてみたいなんて思ったこともあるし、
ミニシアターなどによく置いてあるシナリオスクールのチラシを見て、
脚本の描き方を教えるってどんな学校なんだろうと気になっていたので、
シナリオスクールを舞台にした本作には、俄然興味を惹かれました。
授業では物語の組み立て方を教えたり、映画が好きなら習うまでもない内容でしたが、
宿題で脚本を書いてくるのが大変そうで、ボクには無理だなと思わされました。

10年書き続けているみち代は、脚本の書き方なんて完全に把握していますが、
もしかしたら業界とのパイプが作れるかもしれないと、スクールに通い始めます。
大物司会者の息子というだけで、筆記試験0点でもテレビ局に採用されるご時世だし、
やっぱりスタッフだろうと出演者だろうと、業界はコネが大事ですからね。
むしろ本気で脚本家を目指すなら、スクールに通うのが遅すぎるくらいです。
(彼女は10年前にもシナリオ講座に通っていたみたいですが…。)
実際にそのスクールには、現役の映画監督と映画プロデューサーが招かれ、
生徒たちに講義をしてくれたりします。
みち代はそのチャンスを逃すまいと監督に猛アタックし、
監督から「脚本が出来たら読んであげると」と、約束を取り付けます。
しかも出来次第では、次の監督作に採用するかもしれないとのこと。
こんなのコンクールに応募するより何倍も手っ取り早いし、やっぱりコネが最強です。

監督の助言を受けて、老人ホームの物語を書くことにしたみち代は、
取材のため、元カレの介護士が務めるデイケアセンターでボランティアを始めます。
なかなかしんどい仕事ですが、いい脚本を書くためと頑張ったものの、
脚本の第一稿を監督に見せると「このご時勢に誰も暗い映画観たくない」と一蹴され…。
うーん、たしかに老人介護施設が題材の仕事もの映画なんて、ボクも観ないかな…。
(草なぎ剛主演の『任侠ヘルパー』は、暗くても面白かったけど。)
元カレの介護士からも「綺麗事で薄っぺらい」と酷評されてしまいます。
どんな内容なのかはわかりませんが、綺麗事なのに暗いとか、かなり最悪ですね。
更に仕事中に居眠りしてしまったのが原因で、半ばクビとなり、その脚本も断念します。
ボランティアで頑張ってたんだから、ちょっと居眠りしちゃうくらいの失敗で、
あんなに責めなくてもいいと思うんだけど…。
しかも元カレは「興味本位で取り上げるような題材じゃない」とまで酷評しますが、
それなら取材の許可なんか出しちゃダメですよね。
まぁ監督にボツにされたような脚本だし、早めに見切って正解かな。
とはいえ、この監督もどうも大したことない人物な気がします。
新作の公開初日の舞台挨拶の回でも、当日券が悠々と買えるみたいだし、
司会の人から失礼な質問されてるし、主演女優もエリカ様ばりの態度だし…。

みち代はスクールで26歳の青年、天童義美と出会い、一方的に懐かれます。
天道も脚本家志望ですが、脚本なんて一本も書いたことはないのに、
「自分は天才だ」「本気出したらスゴイ」と自意識過剰です。
「映画の歴史をオレが完結させてしまうかも」とまで言い張る天童は、
スクールでも他の生徒の書いた脚本に上からダメ出ししまくります。
みち代は「そんなに他人を批判するなら、キミのスゴイ脚本読ませなさいよ」と詰め寄るが、
天童はなんだかんだ言い訳を付けて、いつまで経っても執筆しません。
うーん、みち代の言い分もわかる気はするけど、
「脚本を書けなければ人の脚本を批判するな」なんて言われると、
こうして映画の感想を書いているボクとしては辛いものがありますね…。
みち代自身も天童のダメ出しは的を射ていると思っているようですが、
物語を作る才能と、物語を評価するセンスというのは、また別物だと思います。
天童は映画オタクを自負しており、文才はなくとも物語を見る目は確かなのかもしれません。
あ、ボクも映画オタクを自負してますが、映画を見る目があるなんて思ってませんよ。

当初はボクも天童のことを、書かないだけで書いたら本当にスゴイのかもとも思いました。
物語を書ける人って言うのは処女作から傑作を書けるという例も多いしね。
でも天童は本当に書けない人みたいで、実は書こうと頑張ってはいるんですよね。
形から入るタイプみたいで、近所の旅館に3泊し、缶詰めしたりもしますが、
すぐペイチャンネルが気になったりして、原稿は1ページも進みません。
でも実は彼の処女作はすでにあり、かなり大好評だったようです。
それは小学生の時にクラスの劇で書いた『桃太郎』だったのですが、
映画オタクの彼は、いろんな映画をパクリまくり、斬新な『桃太郎』を書き、
学校で大評判になった思い出が、彼が脚本化を目指す動機だったのです。
もしかしたら彼には脚本ではなく、脚色の才能があるのかもしれません。
脚色とは小説など原作を映画用に脚本に起こすことですが、『桃太郎』もまさにそれです。
みち代や天童たちスクールの生徒は、オリジナル脚本を書く勉強をしますが、
現在の日本映画はほとんど原作もので、オリジナル脚本の作品はほんの僅かです。
なぜかと言えば、オリジナル脚本である本作の例でもわかるように、
小説や漫画の実写化に比べ、オリジナル脚本でヒットさせるのは困難だからです。
それに本作もそうですが、オリジナル脚本の映画は脚本家が監督を兼任する場合が多く、
新人が書いたオリジナル脚本が映画化される余地なんてない気がします。
有名な映画監督は多いけど、有名な脚本家なんて数えるほどしかいない狭き門で、
自分の作った物語を映画化したいのならば、素直に映画監督を目指すか、
小説家になって映画化されるチャンスを待った方が近道な気がします。
シナリオコンクールにしたって、優勝したら本当に映像化されるものなの?

天童もみち代に触発され脚本を執筆し、コンクールに出しますが一次選考にも通らず、
初めての落選に相当凹んだ彼は、落選し続けても諦めないみち代を改めて尊敬し、
「馬淵さんのお陰で初めて書けた」と感謝を伝えます。
落ち込んでいたみち代も、天童に励まされ立ち直り、もう一度コンクールに応募することに。
「これで一次も通らなければ脚本家を諦める」と宣言し、渾身の脚本を執筆します。
天童も新たに全力で脚本を執筆し、同じコンクールに応募することになります。
奇しくも2人とも、自分の今の状況を題材にした物語を書くのですが、
「誰でも一本は傑作が書ける。それは自分の周囲のことを書くこと。」
なんて名言(うろ覚え)があるけど、やはり全力で書くと自分のことになるんですね。
ただ2人の場合は、傑作にはならなかったようで、やはり一次落ちでした。
でもコンクールに優勝したのは同じスクールに通うみち代の友達で、
彼女もやっぱり自分の経験を基にした脚本で優勝したみたいです。
脚本を採用すると映画プロデューサーに騙されて、一発やられた挙句、
脚本のギャラも払われないまま、映画の企画が消滅するという苦い経験を基にした作品で、
脚本家も使ってもらうためには枕営業もしなきゃいけないんですね…。

内容の詳細はわからないけど、天童の応募した脚本は面白そうだったけどなぁ…。
天童は母親が元ソープ嬢だったりと、けっこう波乱万丈な人生なので、
その経験を基にした物語なら一次くらいは通りそうな予感がします。
一方のみち代は、夢を捨てきれない凡人の物語のようですが、
そんな人は五万といるし、あまり面白味のない人生で、一次落ちするのも納得。
彼女の実家は旅館を経営しており、もし脚本家になれなくても家を継げばいいし、
器量もいいし、どう転んでも幸せな人生が待っていると思うので、
本当に人生を賭けて脚本に取り組んでいるようには思えず、面白いものが書けないのかも。
それに彼女は、誰が書いた脚本に対しても全て「面白かった」と言ってるんですよね。
そんなハードルの低い面白がりでは、誰もが面白いと思える脚本なんて書けないですよ。
一次に落ちたので、宣言通り彼女は脚本から足を洗い、実家に戻ります。

最後まで全くサクセスしない展開も、ちょっと予想外でしたが、
もっと予想外だったのは、みち子と天童のロマンスも全く進展しなかったことです。
仮にもジャニーズが主演だし、結局はラブコメだろうと思っていたので、
天童が最後までふられ続ける展開はかなり意外でした。
夢も恋も成就しませんが、実際の人生なんてそんなものだし、
ご都合主義すぎる展開よりは現実味があってよかったかもしれません。
不思議と鑑賞後感も爽やかで、なかなか満足な映画でした。
『セブン・サイコパス』との脚本家が主人公の映画、日米対決も本作の勝利です。

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