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蠢動

ハリウッド映画では西部劇に回帰する潮流があったりしますが、
日本映画はほとんど時代劇を作らなくなっちゃいましたね。
2010年には年間10本も観たのに、今年は『清須会議』と今日感想を書く作品の2本だけ。
強いて言えば『許されざる者』も時代劇に入るのかもしれないけど、とにかく少ないです。
正月映画がスタートする来月は『武士の献立』と『利休にたずねよ』があるけど、
『清須会議』も含めて、チャンバラ系の時代活劇はめっきり無くなりました。
サムライは日本の誇るべき文化だと思うのですが、それを曲がりなりにも描いているのが、
『ウルヴァリン:SAMURAI』や『47RONIN』など、ハリウッド映画だけなのは情けないです。
時代劇は金かかるのに、シニア料金のジジババしか観ないし、旨みが少ないのはわかるけど、
いいサムライ映画を作って、もっと世界にもアピールしてほしいと思います。

ということで、今日は国内にすらあまりアピールできていないサムライ映画の感想です。

蠢動 しゅんどう
蠢動

2013年10月19日公開。
三上康雄が自主製作した時代劇。

享保の大飢饉(ききん)から3年の月日が流れ、山陰の因幡藩は一見平静さを取り戻しているように見えた。だが、城代家老の荒木源義(若林豪)の耳に、幕府から派遣された剣術指南役の松宮十三(目黒祐樹)が不審な動きをしているという知らせが届く。荒木は用人の舟瀬太悟(中原丈雄)に申し付け、松宮の挙動に目を光らせるよう手配するが……。(シネマトゥデイより)



約1カ月前に公開された本作ですが、ボクも先月に観たのだけど、
地味な作品なので感想を書いてもあまり需要がないと思い、執筆を後回しにしていました。
でもそうこうするするうちにほぼ公開終了しちゃったみたいで、
いよいよ本当に需要がなくなっちゃった感じです。
そうなるともう感想を執筆するモチベーションも沸きませんが、
とにかく劇場で鑑賞した映画は全て感想を書くというのがウチのルールなので、
誰からも読んでもらえないのは覚悟で、チャチャっと書いてアップしちゃいます。
鑑賞から時間も経って記憶も消え始めてるし、すごく薄い感想になると思います。

本作は1982年の同名時代劇映画のリメイク作品だそうです。
リメイクされるほどの作品であれば、オリジナル版も有名なはずですが、
『蠢動』なんて作品は全く聞いたことがありませんでした。
それもそのはず、本作はそのセルフリメイクだったのです。
セルフリメイク、つまり監督が自身の過去の監督作を自分でリメイクすることですが、
映画のセルフリメイクは、全くないわけではないけど、珍しいことだと思います。
ウチのブログでこれまで扱った1100本以上の映画の中でも、
たぶんティム・バートンの『フランケンウィニー』だけだった気がします。
それもセルフリメイクというよりは、短編映画を長編化したものでしたが。
なぜセルフリメイクが少ないかと言えば、たぶんカッコ悪いからです。
「傑作なのに誰もリメイクしてくれないから自分でやっちゃいました」的な、
自意識過剰な印象があるからでしょう。

ボクも本作を観る前にセルフリメイク作だと知り、「監督、カッコ悪っ」と思いましたが、
そもそも三上康雄なんて監督は聞いたことがないと思って、ちょっと調べたらビックリ。
彼の本業は建設資材メーカーの社長で、素人映画監督だったんですね。
いや、監督経験はあるので素人と言ってしまうのは語弊があるけど、
イメージとしては時代劇好きの社長さんが道楽で映画を撮っているような印象です。
オリジナル版も自主製作でしたが、本作も自主製作のようで、
なんと製作費の数千万円を自腹で賄ったのだそうです。
いくら社長とはいえ、よくそんな大金を趣味に使えるものだなと思ったら、
なんと彼は映画を撮るために、親から引き継いだ会社を売却したそうで…。
その金で映画製作事務所を立ち上げ、その第一回作品が本作のようです。
うーん、ここまでの映画バカはなかなかいませんよ。
もはやカッコ悪いとは思えず、ちょっと怖いくらいです。

会社を手放してまでセルフリメイクしたかった作品だから、よほどの自信があったはず。
もちろん脚本も三上康雄元社長ですが、たしかに骨太なザッツ時代劇で、
武家社会の悲哀や理不尽を描いた、藤沢周平作品を彷彿とさせる、
時代劇ファンの素人にしてはかなり上出来な物語だったのではないかと思います。
しかし如何せん直球すぎる気がします。
『清須会議』なんかもそうなのでしょうが、変化球な時代劇映画が多いのに嫌気が差し、
「自分の観たい時代劇映画はなから自分で撮る」と思ったらしいですが、
とにかく全体的に地味なんですよね。

直球の時代劇を地味にしないためには、華のあるキャストが必要不可欠です。
藤沢周平作品もいつも豪華キャストで撮られていますよね。
しかし本作は、ボクも全く知らない俳優ばかりで…。
他業界から飛び込んできた無名監督の自主製作映画なので、
名のある俳優が出演したがるわけはありませんが、それにしたって地味。
唯一、名前がわかるのはさとう珠緒くらいですが、彼女がヒロイン級の扱いって…。
主人公の行き遅れの姉を演じますが、いくらなんでも行き遅れすぎ。
実害としては、ほとんど無名同然の俳優ばかりであるため、
彼らにチョンマゲのカツラ被せて、同じような武士の服装をされると、
もう見分けがつかなくなっちゃって困りました。

享保の大飢饉から3年が経った享保20年。
山陰の因幡藩に御公儀から遣わされた剣術指南役の松宮十三がやってくる。
しかし、どうやら松宮は藩の台所事情を探っているようだと勘付いた城代家老の荒木源義は、
せっかく貯めた藩の余剰金を、吉宗の多摩川治水事業の助成金に持ってかれては困ると、
藩の剣術師範の原田大八郎に松宮の暗殺を命じ、その罪を若手藩士の香川廣樹に着せ、
逐電したように見せかけて討伐隊に口封じをさせる、という話です。
組織を守るために不祥事を末端の責任にして切り捨てる、
まるでどこぞの会社のような理不尽な話で、なかなかよくできていました。
下手人に仕立てられた香川の師であり、松宮殺しの実行犯である原田は、
なんだかんだで最後は香川に恩情をかけると思ったのですが、そうはならず、
道理に反すると思っても逆らえない組織の恐ろしさを感じますね。
(まぁ髻だけを持ち帰り、命までは奪わなかったのはせめてもの恩情かな?)
こういうところは、監督の会社経営者だった経験が活きているのかもしれません。
クライマックスの大雪原での香川と討伐隊の大殺陣はかなり見応えがありますが、
斬られた討伐隊がゾンビするのはリアリティに欠けます。
大人数のエキストラを雇えなかったための苦肉の策かもしれませんが…。
斬られて噴血したのは松宮の太鼓持ちの草加だけでしたが、
せっかく真っ白な大雪原なんだから、もっと血で染めたらインパクトを残せただろうけど、
そういうのが監督の嫌う変化球なのかもしれませんね。

面白いかどうかは別にしても、セルフリメイクということも、
自主映画が大手シネコンを含むこんな規模で上映されることも異例なので、
ちょっと珍しい映画として、興味深い作品ではありました。

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