ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

セブン・サイコパス

ロサンゼルスで行われたアメリカ中国映画サミットで、中国電影合作制作公司の社長は、
ハリウッド映画での中国人は犯罪者のケースが多すぎると指摘し、
「中国人を肯定的に描いてくれ」とハリウッドの映画製作者に注文をつけたそうです。
世界第二位の映画消費国である中国からの注文では、ハリウッドも無視できないでしょう。
でも世界の嫌われ者の中国人を肯定的に描いた物語なんて、リアリティがなくなります。
中国人の描き方の改善を求める前に、なぜ否定的に描かれてきたのか考えるべきです。

アメリカの同盟国で、長年世界第二位の映画消費国だった日本ですら、
まともな日本人像なんて描かれた試しはありませんよね。
当然ハリウッド映画はアメリカ人が観たがる内容にしますから、
ハリウッド映画で日本人を描く時も、日本人が観たら違和感を覚えるような、
アメリカ人がこうあってほしいと思うステレオタイプな日本人像が描かれます。
欧米人が好む日本人像と言えば、男はサムライ、女はゲイシャ、悪者はヤクザです。
これは黒澤明監督の時代劇映画や高倉健主演の任侠映画が海外で注目された影響かな?

ということで、今日は日本映画の影響を受けたと思われる外国映画の感想です。
ハリウッド映画ではなく、イギリス映画ですけど。

セブン・サイコパス
Seven Psychopaths

2013年11月2日日本公開。
マーティン・マクドナー監督、コリン・ファレル主演のクライムコメディ。

脚本家のマーティ(コリン・ファレル)は、新作『セブン・サイコパス』の執筆に行き詰まっていた。 親友のビリー(サム・ロックウェル)は脚本執筆の手助けをしようと、マーティに事前に相談することなく、ネタ集めのためにサイコパス募集の広告を出す。その後、ウサギを持つ殺人犯、犬をこよなく愛するマフィア、殺し屋が集まるのだが……。(シネマトゥデイより)



全米初登場9位だった本作。
イギリス映画なので、その成績は一概に低いとは言えませんが、
コリン・ファレルやサム・ロックウェルなどハリウッドスターの共演作だし、
公開館数はハリウッド映画級だったようなので、やはり期待ハズレな結果かな。
成績は悪くても、映画批評家からはまずまずの好評を得ているみたいですが、
近年『アーティスト』や『アルゴ』がオスカー受賞したことでもわかるように、
映画作りを題材にした本作のような作品は、批評家など業界人ウケはいいものなので、
ボクら一般人にとっては、あまり参考にはなりません。
(ちなみに『アルゴ』は本作と同日に全米公開で初登場2位でした。)
成績面だけで考えれば、かなり地雷臭い映画なので、観るのを躊躇いますが、
「七人の侍」ならぬ「七人のサイコパス」なんて、なんとも面白そうな概要ですよね。
劇中で北野武監督の『その男、凶暴につき』の一部が使用されていますが、
本作の監督は日本映画も好きなようなので、
本作の発想の原点は本当に『七人の侍』だったのかもしれません。
まぁ本作の主な舞台は荒野なので、『荒野の七人』の方かもしれませんが。
とりあえず、そんな監督が撮った作品だし、アメリカでは全くヒットしなくても、
日本人の感性には合う作品かもしれないという期待もありました。
しかしいざ観てみると、そんな期待は無残にも打ち砕かれ…。

本作は不条理ブラックコメディであり、作風はタランティーノ映画に近いです。
でもタランティーのほど娯楽性はなく、坦々としていて好き嫌いは分かれそう。
そういう意味では、監督も好きな北野武映画に近い印象かもしれません。
ボクとしては、あまり性に合わなかったのか、かなり退屈に思えました。
「七人のサイコパス」という題材なら、もっと面白いものが作れそうな気がして、
なんだか非常に勿体なさも感じて、やりきれない気持ちになります。

そもそも本作は、宣伝時の内容と実際の内容が違いすぎるんですよね。
宣伝の内容が本当に面白そうだったため、全く期待ハズレな内容に落胆します。
例えばウチで引用させてもらっている、上記のシネマトゥデイさんのあらすじも、
とても面白そうな印象ですが、本作の内容を正確に伝えているとは言えません。
サイコパスを題材にした新作映画の執筆で悩む脚本家マーティのために、
友人のビリーが、ネタ集めのためにサイコパスを募集する広告を出し、
個性豊かなサイコパスたちがマーティの元に集まってくる。
…というのが本作の一般的な宣伝内容です。
こんなあらすじだと、募集広告で集まった7人のサイコパスが騒動を巻き起こす
ハチャメチャなコメディかと想像しますよね。
たしかにビリーはサイコパスを募集しますが、実際それを見てやってきたのは1人だけ。
しかも別に騒動を起こすこともなく、脚本のネタにと自分の体験談を話して帰るだけです。

そもそも本作にはサイコパスは7人も登場しません。
それに登場するサイコパスも、ステレオタイプな精神病質者の印象とは違い、
単なる殺人犯という感じの人物もチラホラいます。
以下、ネタバレを含みます。

最初に登場する1人目のサイコパスは、中堅以上のマフィアを殺し、
現場にトランプのダイヤのジャックを残す目出し帽の男です。
サイコパスというか自警活動とか義賊っぽい印象を受けますが、
その正体はビリーで、彼は友人マーティのネタ作りの参考になればと、
サイコパスとして世間を騒がせ、その事件をモデルに脚本を書いてもらおうと考えます。
そういう意味では、たしかに異常すぎる行動で、ビリーはサイコパスだと思いますが、
もともと知り合いなので、募集広告で集まったわけではないですね。
2人目のサイコパスも、ビリーの裏稼業である犬泥棒の相棒ハンスで、
彼もマーティとも面識があり、募集とは関係ありません。
ハンスはクエイカー(キリスト友会の信者)で、過去に娘を殺した男を自殺に追い込み、
自分も首を切り割いて自殺しようとしたものの未遂に終わり、
その経験談は匿名でビリーからマーティに映画のネタとして提供されます。
彼も別に危険人物ではないし、ボクの尺度ではサイコパスとは言えないかな。

3人目のサイコパスは愛犬家のギャング、チャーリーです。
彼の大事なシーズー犬が、犬泥棒のビリーとハンスに盗まれ、
それを奪い返し、復讐するために彼らを探しています。
そのためにはハンスの妻の殺害も辞さない非常な男で、
たかが犬のために人を殺すところがサイコパスだと言いたいのかもしれませんが、
愛犬家であればペットは家族同然で、犯人を殺したいほど憎むのは当然。
それに殺しが日常茶飯事なギャングだから、別にサイコパスではありません。
「七人の侍」でも「荒野の七人」でも、集まった7人は仲間になるので、
本作の7人も当然そうなると思ってましたが、チャーリーは明確に敵で、
7人のサイコパスがみんなで何かを成し遂げる話だと期待していたので残念でした。
しかし最も残念なのは、4人目のサイコパスのベトナム人僧侶です。
彼はベトナム戦争に報復するため、アメリカで爆弾テロを企てます。
これも単なるテロリストでサイコパスとはちょっと違うと思いますが、
それ以前に、彼はマーティの空想上の人物で実在すらしないのです。
なので当然7人が集まったりできるはずもなく…。

募集広告で唯一やってきたのが、5人目のサイコパスであるザカリアです。
彼は映画のネタにと、自分の若い頃の話をマーティに提供します。
昔のザカリアと彼の妻は旅をしながら人を猟奇的に殺すシリアルキラーで、
やっとサイコパスらしいサイコパスが登場したと思いました。
ある時、ヒッピーを焼き殺そうとしますが、なぜかザカリアはそれを躊躇ったため、
シリアルキラーの妻は愛想を尽し、彼の元から去ります。
ザカリアは逃げた妻を探すため、自分の経験談を提供して映画化してもらい、
その見返りにエンドロールに自分の連絡先を載せてもらおうと募集に応じたのです。
ちなみにその妻が6人目のサイコパスということになります。
たぶん現在の彼女は、ハンスの妻マイラですよね?
ちなみに予告編で紹介された6人目のサイコパスはシーズー犬でした。
ネタバレ防止のためなのかはわかりませんが、内容の改変はよくないです。
犬のサイコパスって一体どんなのだろうと、めちゃめちゃ期待しちゃったじゃないですか。

そして最後の7人目のサイコパスは、またビリーなのです。
ビリーは1人目と7人目のサイコパスを兼任してるんですね。
予想外の展開ではありますが、多様なサイコパスが見れると期待していただけに、
意表を衝かれて驚いたというよりは、唖然としてしまいました。
ビリーが兼任したため、本作にサイコパスは7人もいないということになります。
ベトナム人僧侶も想像上の人物だし、ザカリアや彼の妻も過去のサイコパスなので、
実際に邂逅することができるサイコパスはたったの3人だけということになります。
これでは宣伝内容にも看板(タイトル)にも偽りありです。
その見聞きしたサイコパスの話をモデルに、マーティは7人のサイコパスが登場する
新作映画『セブン・サイコパス』の脚本を執筆し、公開されたようですが、
本作なんかよりも、マーティの描いた劇中の映画『セブン・サイコパス』の方が、
ボクが想像していた内容に近くて面白そうだと思えます。
個々のサイコパスの経験談なんかは、それなりに刺激的なところもあるのに、
枠物語である犬泥棒の顛末を描いた本筋が退屈すぎます。

「七人のサイコパス」という題材は本当に秀逸で魅力的だと思うし、
そのまま映画化したらよかったのに、ちょっと捻り過ぎちゃった感じです。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/1152-4ccaae61
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad