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謝罪の王様

大人気だった朝ドラ『あまちゃん』が終了してしまったことで、
毎朝(昼)の楽しみにしていたドラマファンが喪失感を覚える
「あまロス症候群」なるものが流行しているそうです。
ボクも『あまちゃん』が大好きなので、「あまロス症候群」になる懸念はありましたが、
最終回を見ても、意外と大丈夫だったことに自分でも驚きました。
まぁボクは毎日見ていたわけではなく、土曜日の夜に1週間分まとめてみていたので、
最終回翌週の土曜日となる今週末に発症するかもしれません。
シーズン2やSPドラマとして続編の話もあるそうで、もし実現するなら嬉しいけど、
脚本の宮藤官九郎が乗り気ではないそうですね。
『あまちゃん』大成功の立役者はやはり宮藤官九郎だと思うので、
彼が消極的ならいいものにはならないし、続編はやめといた方がいいような気もします。
けっこう当たり外れが激しい脚本家だし、今回はたまたま当たっただけかもしれないし、
続編を外してケチが付くくらいなら、このまま有終の美でいいと思います。
ちょっと寂しいですけどね。

ということで、今日は宮藤官九郎脚本の映画の感想です。

謝罪の王様
謝罪の王様

2013年9月28日公開。
水田伸生監督、宮藤官九郎脚本、阿部サダヲ主演のコメディ。

依頼者たちに代わって謝ることで、彼らが抱える多種多彩なトラブルを収束する東京謝罪センター所長、黒島譲(阿部サダヲ)。ヤクザの車と追突事故を起こし、法外な賠償金の支払いを迫られていた帰国子女・典子(井上真央)は、彼に助けられたのがきっかけでセンターのアシスタントとなる。二人は、セクハラで窮地に陥った下着メーカー社員の沼田(岡田将生)、あるエキストラの起用で外交問題を起こしてしまった映画プロデューサー・和田(荒川良々)など、さまざまな顧客に降り掛かる問題を謝罪で解決していく。(シネマトゥデイより)



序文でも書いたように宮藤官九郎は当たり外れの激しい脚本家です。
というか、彼のテレビドラマは概ね面白いものの、
映画になるとほぼ全て外れって感じの印象があります。
『あまちゃん』人気の中封切られた彼の監督作『中学生円山』もかなり微妙で、
過去の作品からも監督としての才能は疑問視していましたが、
本作の監督は水田伸生で、彼は脚本のみの参加なので、監督作よりは期待できます。
ただ、水田監督(と主演の阿部サダヲ)とは3度目のタッグとなりますが、
過去二作『舞妓Haaaan!!!』と『なくもんか』も微妙な出来だったんですよね…。
けっきょく彼の脚本は連ドラ向き(というかシットコム向き)で、
2時間前後で完結する映画サイズでは活きないのだと思います。
とは言っても、予想外に朝ドラという特殊な形式で順応してみせた彼だけに、
そのうち映画でもコツを掴めるのではないかという期待感もあり、
本作にも懸念はあったものの、やっぱり観に行くことにしました。
…で、いざ観て思ったのは、やっぱり映画向きじゃないなってことです。

本作は6本のエピソードからなるオムニバス的な構成となっていますが、
うち5本は、クライマックスとなる1本の前振りのようなもので、
5本の各エピソードに少しずつ伏線を張っておいて、
クライマックスで一気に回収することでカタルシスを感じさせようという演出です。
それはとても映画的で、上手くいけば非常にウェルメイドな作品になるのですが、
前振りエピソードの5本が、本当に伏線のためだけに作られたような内容で、
いまいち面白味に欠けるため、全体的にかなり停滞感を覚えてしまいます。
メインの1本のオチから逆算して、伏線を張るため無理やり作られているため、
5本の各エピソードはかなり強引な展開となり、どうにも腑に落ちない点も多いです。
気付かないくらい自然に張られてある伏線が回収されたなら感心に繋がると思いますが、
強引に張られた見え見えの伏線なんて回収されても予定調和としか思えず、
感心もできなければカタルシスも感じません。
よって5本を前振りにしたメインの1本すらも、いまいち盛り上がらないんですよね。

とはいえ数打てば当たるもので、6本全てがダメというわけでもないです。
玉石混淆…、というほど玉らしいエピソードもなかったですが、
比較的マシなエピソードはありました。
とりあえずオムニバスなので、各エピソードの感想を書きたいと思います。

ケース1「倉持典子」
初っ端のエピソードなので、主人公のキャラクター設定の説明のような内容です。
本作の主人公である黒島の経営する「東京謝罪センター」の業務内容が、
司法書士志望の倉持典子という依頼主の事件解決を通して説明される感じです。
典子は運転中、ヤクザの車に接触してしまい、400万円の借金を背負わされ、
大阪でデリヘルをさせられそうになり、東京謝罪センターに泣き付きます。
所長の黒島は彼女の兄のフリをして、ヤクザの元に出向き、
組長に謝罪したり媚び諂ったりして、何とか示談に持ち込みます。
それにより、典子は諸経費や報酬など40万円を黒島に払うだけで済むのです。
わざと怪我をして、血を流しながら謝罪することで、同情してもらう作戦ですが、
うーん、ヤクザが怪我させたならまだしも、事故で怪我をしたという理由では、
ヤクザが同情したり態度を軟化させてくれると思えませんが…。
それに黒島も謝罪のプロというわりには、最上級の謝罪である土下座を、
わずか39秒で使ってしまうんですよね…。
土下座は早い方が効果的だかららしいけど、なんだか謝罪の引き出しが少なそうです。
その事件解決以降、典子は黒島の助手として働くことになります。
彼女曰く、黒島といると司法書士の勉強になりそうということだけど、
謝罪は法で争うのを避けるための手段だから、全く勉強にならなそうな…。
まぁ示談には役に立つのかな?

ケース2「沼田卓也」
下着メーカーで働く沼田卓也は、飲み会で酔って女性社員に抱き付いてしまい、
セクハラで訴えられてしまい、示談にできないかと東京謝罪センターに依頼します。
黒島から誠意が伝わるように見える謝罪方法を伝授してもらい実行しますが、
あまりに常識知らずな沼田は事態を悪化させる一方で…。
相手方の弁護士・箕輪から「120%示談はない」と言われてしまいます。
黒島は「それなら150%の謝罪をすればいい」と一計を案じます。
彼はセクハラ訴訟を苦に自殺した幽霊のフリをして女性社員の前に現れ、
もし訴訟になれば沼田も自殺するかもしれないと彼女に思わせるのです。
幽霊のフリは突飛すぎるけど、自殺を匂わせるのは上手い手だと思いました。
でも一種の脅しには違いなく、被害者に対する誠意が全く感じられません。
後のエピソードを見る限りでは、黒島が上辺だけの謝意を良しとするとは思えないし、
そもそもこれは謝罪ですらないので、謝罪のプロとしてはどうなんでしょうね。
そのことで沼田の身を案じた女性社員は、彼の謝罪を受け入れるばかりか、
彼をお茶に誘ったりもして、何だかいい雰囲気になります。
沼田演じるのは岡田将生なので、けっきょくセクハラも「ただイケ」な印象です。

ケース3「南部哲郎、壇乃はる香」
俳優の南部哲郎と女優の壇乃はる香の息子で俳優の英里人が傷害事件を起こし逮捕され、
南部と壇乃が謝罪会見を開くため、謝罪のプロである東京謝罪センターを訪れます。
黒島から「頭の角度は100度で20秒下げるのが統計上最もいい」など、
謝罪会見のレクチャーを受けるも、妙に芝居臭かったり謝罪会見で宣伝したりしてしまい、
ことごとく失敗し、2人は何度も何度も謝罪会見と釈明会見を繰り返すことになります。
そんな中、ふと典子が「なぜテレビで謝罪する必要があるのか」と疑問を感じ、
謝罪すべきなのは世間に対してではなく被害者に対してだろうという話になります。
これはボクも日頃から疑問に思っていたことだったので、ちょっと興味深かったです。
犯罪や反社会的な行為をした芸能人がテレビに出演してはいけないのは当たり前で、
別に彼らから謝罪してほしいなんて全く思いませんからね。
息子の日テレ社員が窃盗で逮捕されたり、女子アナにセクハラするような某司会者は、
例え何百回謝罪会見を開いたとしても、一生テレビに出るべきではないです。
ただ、本作の傷害事件に関しては、被害者側に非があったことが判明し、
南部と壇乃は逆に被害者から謝罪を受けることになる展開も興味深いです。
一般人と事件を起こせば、一方的に芸能人が叩かれる、有名税というやつですね。
この件に関しては、黒島が一切役にも立っていなかったような気がします。

ケース4「箕輪正臣」
ケース2で女性社員の弁護士になった箕輪ですが、実は典子の父親でした。
娘が幼い頃から別居しているので、典子はそのことに気付いていません。
箕輪は典子が3歳半の時に、一度だけ手を上げてしまったことを後悔しており、
そのことを相談しに東京謝罪センターを訪れます。
このエピソードは丸々ケース5の伏線であり、黒島も全く活躍しません。

ケース5「和田耕作」
本作のメインとなるエピソードで、途中でケース6を挟みクライマックスとなります。
映画プロデューサーの和田が製作した映画の背景にマンタン王国の皇太子が映っており、
肖像権の侵害だとマンタン王国から訴えられてしまいます。
このままでは映画のお蔵入りはもちろん、王国の刑法で懲役90年に処されてしまうため、
和田は監督らと共に王国に謝罪に行くことになりますが、この件で王国は反日ムード…。
東京謝罪センターに助けを求めた彼らに、黒島は「お土産を持って行け」と助言。
しかし彼らが持って行ったコケシは、マンタン王国の国民にとって侮辱的な形で、
事態は更に悪化してしまい、国際問題に発展してしまいます。
うーん、なんだかこの件に関わらず、黒島の助言って大概事態を悪化させてますよね。
国王は日本政府に正式に謝罪を要求し、国王の知人である文科大臣が出張りますが、
彼が皇太子のご子息の頭を撫でたことが国辱に当たるとして事態をまた更に悪化させ、
綿花の世界三位の生産国であるマンタン王国は、日本との貿易を中止し、
日本はオイルショックならぬコットンショックで大混乱に陥ります。
文科大臣に代わり、今度は外務大臣が出向くことになりますが、
黒島は土下座のプロとしてケース3の俳優、南部も同行させます。
南部はマンタン王国の舞台にした『ビルマの竪琴』のパクリ映画で主演経験があり、
マンタン王国では英雄的な超人気者だったのです。
国民から大歓迎される南部ですが、彼が土下座をした途端、国民の態度が一変。
土下座の格好はマンタン王国では最大の侮辱的なジェスチャーであり、
またまた更に事態は悪化し、ついに総理大臣が謝罪に出向くことになります。

それにしても、コケシも侮辱、頭撫でるのも侮辱、土下座も侮辱なんて、
マンタン王国って文化の違いに全く理解がない狭小な国ですね。
そもそもオタクの皇太子が、アイドルのイベントのためにお忍びで日本を訪れて、
たまたま映画のワンシーンに映っただけのことなのに…。
こんな国とは国交断絶しちゃってもいいくらい身勝手な国ですが、
「幸せ納得度世界一」のマンタン王国のモデルは、
「幸福度世界一」のブータン王国なのは間違いなく、
世界有数の親日国であるブータンに対し、こんなパロディをするなんて、
それこそ侮辱的で、謝罪ものの非礼ではないでしょうか。
数年前に劇団ひとりがコントでブータン国王の真似をして侮辱した時に、
けっこうな大騒ぎになったことを宮藤官九郎は覚えてないんでしょうか?
いや、むしろ本作はその出来事に対するパロディなのかもしれませんが、
ちょっと悪ふざけが過ぎると思います。
こんな作品は絶対に海外に出してはいけないと思いましたが、時すでに遅く、
先月ニューヨーク・プレミアを行ったそうで…。

ケース6「黒島譲」
ケース5の途中に挿入されるエピソードで、
黒島が東京謝罪センターを始めた切欠が描かれます。
数年前、黒島は行列のできるラーメン屋に入りますが、
有名店にありがちな自己満足なサービス態度に不愉快さを感じます。
彼は店員の船木が湯きりで飛ばした熱湯に当たり、ついに堪忍袋の緒が切れ、
船木に謝罪を要求しますが、船木は一切謝らず、次の日退職してしまいます。
かわりに店長やチェーンの社長、親会社の営業部長が謝りに訪れますが、
船木本人に謝ってほしい黒島は、謝罪やお見舞い金を一切突っぱね、
許してもらえず過剰な再発防止を始めたラーメン店は潰れてしまい…。
ただ一言本人に謝ってもらえたらそれで済む話だったのに…、と考えた黒島は、
謝罪することの大切さを痛感し、東京謝罪センターを立ち上げたのです。
クレームひとつで店が潰れるなんて、ちょっと極端な話ですけど、
謝罪の大切さというテーマでは、なかなか興味深い内容です。
しかし、あれほど本人の謝罪に拘った黒島が、ケース1では典子の代わりに謝罪し、
ケース5では発端となった映画関係者ではなく、閣僚に謝罪に行かせるのは、
筋が通らないし、どうも腑に落ちない気がします。

そして物語は再びケース5に戻ります。
黒島は土下座が通用しないマンタン王国にどう謝罪すればいいかわからず悩みます。
日頃から「土下座を超える謝罪がある」なんて強がってましたが、
実は彼にとっても土下座が最上級の謝罪であり、もう打つ手がありません。
でもここで今までの伏線が回収され、彼らは土下座を超える謝罪に辿りつくのです。
それがどんなものかは伏せておきますが、それほど驚くべきことではないかな。
日本で土下座が最上級の謝罪であるように、マンタン王国でも最上級の謝罪方法があり、
それを実行しただけのことで、実際には土下座を超えているわけではないです。
そのマンタンでは最上級の謝罪の他にも「ワチャワチャ」という謝罪の言葉もあるけど、
土下座が侮辱であるなら、「ワチャワチャ」でも十分土下座を超えてますもんね。
序盤から言及される「土下座を超える謝罪」がどんなものか気になっていたので、
マンタンなんて架空の国でしか通用しない謝罪がオチだったのは肩透かしでした。
でもケース2の自殺示唆なんて、効果的には土下座を超えてるし、
謝罪とは言えないものの、相手を宥めるのには究極の方法だった気がするし、
その時点ではこれが「土下座を超える謝罪」なんだと勘違いしてました。

マンタン式最上級謝罪でハッピーエンドになりますが、ラストにケース7として、
なぜかEXILEとその妹分E-girlsが歌って踊るエンディングが始まります。
なんだか露骨にプロモーション的で、ちょっと不愉快な気持ちになりました。
客演のバーバルの影響もあるのか妙にK-POPぽい雰囲気で、嫌いなタイプの曲です。
今やAKB商法より酷いと言われるLDHですが、本当にプロモーションも強引ですね。
それを受け入れてしまう水田監督ら映画制作サイドにも問題があると思うけど。
仏の顔も三度まで、もう水田伸生×宮藤官九郎映画は観ないと思います。
でも三池崇史×宮藤官九郎の『土竜の唄』(2014年公開)は観に行こうかな。
宮藤官九郎もそろそろ映画で1本くらい当てないと、
せっかく『あまちゃん』で得た名声も、あっという間に地に落ちてしまいますよ。

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