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スーサイド・ショップ

本日から日本公開が始まった『クロニクル』ですが、
ファウンド・フッテージと超能力スリラーを掛け合わせたSFアクション映画で、
全米初登場1位も獲得した話題のハリウッド映画ですが、
関西では公開されないようで、ボクは観ることができません。
全国順次公開として、地元で公開が遅れるのは毎度のことなのですが、
どうも今回は全国順次公開されるわけでもないようで、
首都圏(関東一都六県と山梨県)でのみ公開されるみたいなのです。
東京のミニシアターで単館上映されるというのであればまだ納得できるけど、
首都圏ではTOHOシネマズを中心に30館もの大規模公開となっており、
これは完全に地方差別されています。
ただでさえ地方の映画ファンは、日頃から順次公開で苦汁をなめさせられているのに、
順次公開すらもしてくれないなんて酷すぎます。
配給の20世紀フォックスがどういう戦略で地方公開を見限ったのか知らないけど、
二度とこんなことがないように、その目論みが失敗に終わることを祈ります。
全米1位の自社作品くらい責任もって全国一斉公開しろよ。

ということで、今日は関西では公開2週遅れの苦汁をなめた映画の感想です。
2週間も遅れると、感想書いても需要もないし、筆が重くなりますね。

スーサイド・ショップ
The Suicide Shop

2013年9月7日日本公開。
フランスでベストセラーとなった小説『ようこそ、自殺用品店へ』アニメを映画化。

どんよりとした雰囲気が漂い、人々が生きる意欲を持てずにいる大都市。その片隅で、首つりロープ、腹切りセット、毒リンゴといった、自殺するのに便利なアイテムを販売する自殺用品専門店を開いているトゥヴァシュ一家。そんな商売をしているせいか、父ミシマ、母ルクレス、長女マリリン、長男ヴァンサンと、家族の誰もが一度たりともほほ笑んだことがなかった。人生を楽しもうとしない彼らだったが、無邪気な赤ちゃんが生まれたことで家庭内の雰囲気が少しずつ変わり始め……。(シネマトゥデイより)



ストーリー、ビジュアル、音楽、メッセージ性、とにかく観るべきところの多い作品で、
独創的なスタイルで素晴らしいアニメーション映画だと思いました。
本作を撮ったのはフランスの国民的監督であるパリトス・ルコント監督ですが、
なんと彼自身初のアニメーション作品だというから驚きです。
実写の監督は実写ばかり、アニメの監督はアニメばかり撮るのが普通ですが、
本当に才能がある監督は、内容に合わせて表現手段を変えられる人だと思います。
本作はファンタジー色が強いのでアニメという手段を用いたのでしょうが、
アニメ専属監督が撮った凡百のアニメ映画よりも断然面白いものに仕上がっており、
彼のような天才監督は実写でもアニメでも関係なく面白いものが撮れるのですね。
どんなアニメ向きじゃない内容の作品でもアニメしか撮れない
(最近引退した)日本の某国民的監督なんて彼に比べれば凡人ですね。
本作はミュージカル仕立てになっているのですが、原作は小説なので、
歌パートは本作のオリジナルなわけだけど、その歌詞も監督自身が手掛けており、
やはり本物の天才というのは多才なんだなと感心します。
グラフィックノベル的な絵柄の本作ですが、監督はもともとバンド・デシネの作家なので、
その経験はキャラデザなどビジュアル面でも活かされているかもしれませんね。

絶望的な雰囲気が蔓延し、生きる意欲や希望を見出せず、自殺者が続出する大都会。
自殺したいと考えている人は多いけど、公共の場所での自殺は禁止され、
更に自殺に失敗でもしようものなら罰金を取られてしまうため、
自殺志願者は確実に死ねる方法を求めています。
そんな自殺志願者たちの強い味方がトゥヴァシュ家が経営する自殺用品専門店。
首吊り用ロープから毒薬、毒ガス、拳銃に至るまで、あらゆる自殺グッツが揃えられ、
しかも万が一、自殺に失敗すれば返金までしてくれる良心的なお店です。
そんな店、明らかに自殺幇助だと思うけど、この世界では犯罪ではないみたいですね。
自殺自体も禁止されておらず、他人の迷惑になる自殺が禁止されているだけかな。
公共の場で自殺した人に警察が事務的に違反切符を切るのが笑えました。

大繁盛しているトゥヴァシュ家の自殺用品専門店ですが、
実際にあったら本当に結構繁盛しちゃうかもしれませんね。
特に鬱大国で自殺大国の日本だと、月曜の朝なんて満員になるかも。
ボクもちょっと鬱傾向があるので、通勤途中にこんな店があったらヤバイです。
本作も基本的には明るいタッチのポジティブな作品なのですが、
序盤の自殺志願者たちのナガティブな様子を観ていると、
ちょっと気持ちが不安定になってきてヤバかったです。
まぁ首吊り用のロープくらいなら、自殺専門店なんてなくても、
近所のホームセンターでも買えますが、そんな苦しそうな自殺はしたくないかな。
商品の中では3秒で死ねる毒薬なんていいかもしれませんね。
そんな毒薬がたったの58ユーロだなんてなかなかお値打ちです。
でもそんな毒薬とか拳銃とか販売したら自殺よりも犯罪に使われそうな気がしますが、
この世界では人を殺したいと思う前に自分が死にたいと思う人が多いだろうから、
他殺のためにそれらを使おうなんて発想はないのでしょう。

そんな自殺用品店を経営するトゥヴァシュ家も超ネガティブ思考な家族で、
クスリとも笑ったことがありません。(けっこう営業スマイルはしてますが。)
ある日、そんなネガティブな一家に男の子が生まれます。
アランと名付けられたその子は、家族とは逆に陽気で無邪気で超ポジティブな性格で、
成長するに従い、自殺が蔓延する世の中に疑問を感じるようになります。
アランは店の商品を客が死ねないように細工しはじめ、店は経営の危機に…。
でも実は家族も自殺用品を売ることに良心の呵責を感じてるんですよね。
その心労やネガティブ思考で本人たちも自殺したいと思っているのですが、
10代続く老舗を守り、人々に確実な自殺を提供することに使命感があるため、
家族は自殺を自主的に禁止しています。
そんな家族は、アランのポジティブな行動に徐々に感化され始めます。

最初にその兆候が現れたのは、アランの姉マリリンで、
家族でも最も自殺したいと考えていた女の子ですが、
彼女の誕生日に、アランが陽気な音楽CDとシルクのスカーフを贈ります。
するとその夜、彼女はそれらを使って自室でベリーダンス(?)に興じるのです。
なぜ暗い性格の彼女が急に陽気に踊り出したのかはわかりませんが、
アランに「お姉ちゃんは美人」と言われたことが、満更でもなかったのかな?
彼女は全裸で踊るのですが、ちょっと肥満すぎかなと思ってたけど、
脱ぐとなかなか豊満な感じで妙にセクシーでした。
さすがはマリリン・モンローから名前を拝借しているキャラだけのことはあります。
トゥヴァシュ家は彼女のように、全員実在した著名人から名前を拝借しています。
父のミシマは三島由紀夫、母ルクレスはルクレツィア・ボルジア、
兄ヴァンサンはフィンセント・ファン・ゴッホ、そしてアランはアラン・チューリングで、
その共通点は全員自殺した著名人ということです。
割腹自殺した三島由紀夫がモデルのミシマが、体育教師にオススメしたのが、
日本刀や袴など「ハラキリセット」でしたが、なかなか際どいブラックユーモアですね。

母や兄姉はアランに感化されますが、父ミシマだけはそう簡単にはいきません。
彼も死を売る商売に罪の意識はあり、自殺未遂をするほど葛藤していたのですが、
やはり大黒柱として、代々受け継いだ使命感の方が強いのでしょう。
そもそも彼は息子アランに消えてほしいと思っていたような素振りもあり、
アランに「体にいいから」と騙してタバコを吸わせたりしていました。
たぶん肺癌にでもなればいいと思っていたのでしょうが、
店で即効性のある毒薬を扱っている割に、タバコで肺癌を待つなんて悠長な方法ですね。
なので本当にミシマがアランに対してどう思っているのか掴みきれなかったのですが、
終盤、店内をぶち壊したアランにブチキレ、日本刀で斬りかかっていたので、
これは本当に殺意があったんだなと思いました。

ミシマに追われ、あるビルの屋上まで追い詰められたアランですが、
「もし笑わせることができたら許してほしい」と言い残し、ビルから飛び降ります。
目の前で息子が自殺したことにショックを受けるミシマ。
ボクもアランが父の目を覚まさせるため、自ら命を捨てたのかと思って、
なんて悲しい結末だと思いましたが、次の瞬間、アランが再びミシマの前に現れます。
なんとビルの下にトランポリンがあり、ポヨヨ~ンと跳ね返ってきたのです。
それを見て、ショックから一転し、生まれて初めて大笑いしたミシマは、
代々受け継いできた自殺用品店をたたむことを決意します。
あとで知ったのですが、原作ではアランは死んでしまうそうです。
本作ではラストを大胆に改変し、ハッピーエンドにしたみたいですね。
ベストセラーの結末を変えるなんて、なかなかできることじゃありませんが、
本作は見事に成功させ、とても鑑賞後感のいい作品に仕上がっていると思います。
あそこでアランに死なれていたら、とんだ鬱映画になってましたよ。

ハッピーエンドはよかったけど、最後の最後になってちょっと納得できない展開が…。
心を入れ替えて家族とクレープ屋をはじめたミシマですが、
自殺用品店でアランが細工した首吊り用ロープを買って自殺に失敗し、
再び店にやってきた客に対して、彼は青酸カリ入りのクレープをあげるのです。
自殺幇助が過ちだと気付いたはずなのに、ちょっと不可解な展開でした。
でも彼にとっては自殺志願者を確実に死なせてあげることも人助けなのかも。
自殺志願者が美味しいクレープを食べたからって救われるはずはないし、
(クレープ屋なんかに集まるのは自殺したいなんて考えないリア充だけです。)
世界が変わったわけでもないから自殺用品店を必要としている人は確実にいるわけで、
そんな人に青酸カリを無償であげるのは、彼の優しさなんじゃないかとも思います。
実際にこんなご時世では、生きてさえいればいいことがあるなんて嘘だし、
死んだ方が楽な人生だって珍しくないと思います。
アランは家族のことは救ったけど、別に社会に希望を与えたわけでもなく、
自殺用品店が一店舗閉店した程度では、社会としては何の解決にもなっていません。
自殺を防ぐことよりも、自殺したいと思う人を減らす社会にすることが大切です。

見事にアニメ映画でも成功したパリトス・ルコント監督ですが、
思いのほかアニメ映画の制作がお気に召したようで、
一本実写映画を挟んで、アニメ映画第二弾の制作もするみたいです。
音楽の禁止された世界を描いたファンタジーだそうで、かなり面白そうな予感です。
製作に3年ほどかかるそうですが、ぜひまた日本でも劇場公開してほしいと思います。

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