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アップサイドダウン 重力の恋人

2020年の東京オリンピックが決まったことについて、松井一郎大阪府知事が、
「これで僕が生きている間に大阪五輪はないので、そこは寂しい」と言っていましたが、
ボクもその気持ちはよくわかります。
ボクは関西人ですが、別に大阪でオリンピックを開催してほしいとは思わないものの、
日本の都市の中には東京以上にオリンピックを必要としているところは多いはず。
オリンピックが開催されると、莫大な経済効果があるし、インフラも整備されますが、
東京は財政面でもひとり勝ち状態だし、インフラだって日本一整っているので、
そんなところで折角のオリンピックを開催するのは勿体ないです。
これであと半世紀は日本の他の都市で夏季大会が開催される可能性もなくなったし…。
まぁ東京が当選したのは財政面が安定していることが大きな要因だったので、
他の都市では相手にもされなかったでしょうけどね。
これでまた東京と地方との格差が広がっちゃうのかな…。

ということで、今日は格差社会を描いたSF映画の感想です。

アップサイドダウン 重力の恋人
Upside Down

2013年9月7日日本公開。
ジム・スタージェス、キルステン・ダンストが主演のSFロマンス。

富裕層が暮らす星と貧困層が暮らす星が、上下で接近するように引き合っている世界。下の星で貧しい暮らしを送っていたアダム(ジム・スタージェス)は、とある山頂で上の星の住人であるエデン(キルステン・ダンスト)と出会って恋に落ちる。ロープを使って彼女を自分の世界に引き下ろそうとするアダムだったが、星の境を監視する警備隊に発見されてエデンは上の星へと落下してしまう。それから10年後、エデンは死んだと信じ込んでいたアダムだったが、彼女が生きていることを知って再会を誓う。(シネマトゥデイより)



本作は映像が物凄いからハリウッド映画かと勘違いしていましたが、
カナダとフランスの合作映画だったんですね。
二重引力という世界観が幻想的に描かれ、とても素晴らしい映像でした。
そんな二重引力の世界は初めて観る映像体験でしたが、
特に斬新な設定かといえば、そんなこともありません。
例えば今年11月9日公開予定の日本のアニメ映画『サカサマのパテマ』や、
第85回アカデミー賞短編アニメ部門にノミネートされた
イギリスのストップモーションアニメ『Head over Heels』なども、
本作同様に上下の二重引力の設定で描かれたロマンス映画で、
たぶん偶然の一致でしょうが、ちょっとした流行のネタと言えるかもしれませんね。

そんな二重引力ものの先陣を切って本作が日本公開されたため、斬新な印象を受けますが、
『サカサマのパテマ』は本来なら昨年にも公開されていたはずで、
制作の遅延により本作よりも公開が後になり、二番煎じ状態になったのが悔やまれます。
ボクも本作よりも『サカサマのパテマ』のことを先に知っていたので、
本作の予告編を初めて観た時に「まるで『サカサマのパテマ』の実写版だ」と思いましたが、
先に公開された本作を先に知った人にとっては、『サカサマのパテマ』の方を、
「まるで『アップサイドダウン』のアニメ版だ」と思ってしまうのかもしれません。
後発になったことで新鮮味は薄れるでしょうが、『サカサマのパテマ』も期待しています。
ちなみに『Head over Heels』は、一軒家で床に住む夫と天井に住む妻の老夫婦の物語で、
二重引力を家庭内別居のメタファーとして描いた傑作で、アニー賞も受賞しています。
短編アニメだし日本で大々的に公開はされませんが、YouTubeでも見ることができます。
ちょっと話がズレましたが、二重引力はそれほど魅力的な設定ということです。

本作はそんな二重引力の世界を実写で表現していることも評価したいです。
大掛かりなセットを逆さまに組んだりしなきゃいけなかっただろうし、
二重引力を実写で表現するのは、かなり手間がかかったはずです。
ただ本作の二重引力の世界設定は、無駄に懲りすぎているようにも思います。
その奇抜な世界観に説得力を持たすために凝った設定を設けているのですが、
SFなんていうのはリアリティを追求すれば逆に綻びが露わになるもので、
本作の世界観も微妙に納得できない設定になっています。
本作の舞台は、2つの惑星がぶつかりそうなほど接近しているその狭間の場所です。
各々の惑星に重力があるため、二重引力になるというのは納得できますが、
なぜ衝突しないのか、なぜ自転しないのかなど、天文学的にはあり得ない状態です。
これならば地球平面説を採用し、上下に並行する世界の方が単純でわかりやすいです。
ちなみに『サカサマのパテマ』は地球空洞説を採用しており、
いわば地球の重力と遠心力の二重引力なので、これも単純でわかりやすいです。
地球ではないどこかの惑星という本作の設定はイマイチですね。

それに更に凝った設定が3つあり、それが本作の冒頭で説明されます。
1つ、全ての物質はそれが生まれた世界の引力に従う。
1つ、反対の世界の物質は「逆物質」といい、上に落下する。
1つ、逆物質は長く触れていると燃え出す、という3つのルールです。
この1つ目、2つ目のルールは、二重引力を描く上で絶対条件ですが、
(このルールがないと、ただの2つの異なる世界になってしまうため。)
3つ目のルールは別に必要ないと思うし、そうなる理屈も全く理解できません。
いわば物語上、反対世界には長く滞在できないという設定が欲しかったために、
無理やりこじつけたルールですが、もっと別の単純なルールでも同様の設定は可能です。
この逆物質が燃えるという設定は、劇中でもそれほど活かされているわけでもなく、
むしろ新たな矛盾を沢山生んでしまっています。
例えば、反対世界の食べ物を食べても胃の中で燃えて火傷しないのかとか、
全ての物質が対象なら人体だって燃えるはずなのに、燃えるのは無機物ばかりだとかね。
まぁSF映画の設定に対して、理論的に突っ込むのは野暮というものですが、
二重引力の奇抜さを強調するためにも、他の設定はあまり奇抜にするべきではないです。

この二重引力世界では、上の世界に富裕層が住み、下の世界には貧困層が住んでいます。
下の世界の主人公アダムは、少年時代に両親を亡くし、叔母に面倒をみてもらってました。
叔母は「ピンクミツバチ」の秘密を代々受け継いでおり、アダムもそれを伝承します。
上の世界に接するほどの標高の「賢者の山」に生息するピンクミツバチは、
両方の世界から花粉を集めるため、そのハチミツには抗引力作用があります。
それを精製したピンクのパウダーを使えば、引力の影響を受けない画期的な製品が作れます。
アダムはそれを採取しに、よく賢者の山に登っていたのですが、
その頂で、上の世界の女の子エデンと出会い、恋に落ちます。
しかし反対世界との接触は禁止されているため、2人の関係は禁断の恋でした。
ある時、その逢瀬の現場を管理当局に見つかり、アダムは逮捕されてしまいます。

この世界には上と下の世界を股に欠ける「トランスワールド社」という巨大企業があります。
同社は下の世界から石油を搾取し発電した電力を下の世界に法外な値段で売る悪徳企業。
更に、反対世界で作られた製品はそのまま輸出すると燃えてしまうので、
反対世界でも使えるように適合させる事業もあり、全ての惑星間輸出を牛耳る独占企業です。
エデンと引き裂かれてから10年後、彼女がトランスワールド社で広報をしていると知り、
アダムは彼女に会うため同社に入社します。
そんな簡単に世界一の巨大企業に入社できるはずはありませんが、
アダムは秘伝のピンクパウダーの美容クリームを作り、それを売り込んで入社しました。
この美容クリームを使えば、たるんだ肌が抗引力作用で持ち上がり、若返って見えます。
唯一無二の抗引力物質であるピンクパウダーであれば、
もっと画期的なスゴイものでも作れそうなのに、美容クリームというのが可笑しいですね。
まぁ彼に伝授した叔母も、それを使って空飛ぶパンケーキしか作ってないし、
ピンクパウダーの秘密は、この一族にとっては完全に宝の持ち腐れな技術ですが、
女性の美への欲望は果てしなく、トランスワールド社も彼の美容クリームに飛び付きます。

まんまと入社したアダムは、上の世界の気のいい同僚ボブの協力で、
エデンに会う約束を取り付けますが、上の世界の住人でないと彼女に会うことはできません。
そこで彼は上の住人のフリをするため、逆物質を身に纏い、上の世界に侵入します。
逆物質は上に落下するため、それを重り(或いは浮き)にすれば反対世界にぶら下がれます。
でも逆物質は身に付ければ1時間ほどで燃え出すため、反対世界に長居はできません。
まぁ天井に逆にぶら下がっているようなものなので、頭に血が上るはずだし、
逆物質が燃えなくても、1時間もそんな状態で平然としてられるはずないと思うのですが、
なぜかアダムは全く平気そうな感じで、その状態で食事したりもするんですよね。
まぁSF映画なので、あまり細かいことを気にしても仕方ないですが…。
身に付けている逆物質を少し外せば、その分だけ下の世界の引力の影響を受けるので、
上の世界での跳躍力がアップしたりするのは、なかなか面白い展開でした。

アダムはエデンと再会し、いろいろあったものの再び恋が芽生え始めますが、
上の世界に侵入したのが会社にバレ、アダムは追われる身に…。
それでも例の賢者の山で逢瀬を重ねますが、またしても管理局に発見され、
アダムは絶対に上の世界に行けなくなり、二度とエデンに会えなくなります。
ところが元同僚のボブが、アダムにもらったピンクパウダーを研究し、
逆物質を身に付けなくても反対世界に行ける方策を発見します。
ピンクパウダーを体内に注射するという意外と簡単な方法です。
でもこの方法でも1時間しか効果がないため、効果が切れたら上に真っ逆さまなのかな?
ある意味、逆物質で重さを調節するよりも危険な方法ですね。
それにより、アダムは下の世界に来ることができるようになったエデンと再会しますが、
実はエデンはその時ピンクパウダーを使ってなかったようで…。
なんとアダムの子を妊娠したことで、体質が変わり、下の世界に留まれるようになったとか。
ちょっと理屈がわかりませんが、胎児が重りになっているという意味なのかな?
たぶん妊娠したのは、賢者の山での宙に浮きながらのロマンスの時だろうから、
空中で授かった胎児は、1つ目のルールではどのように適用されるんでしょうね?
ちなみにエデンを演じるキルステン・ダンストですが、彼女がヒロインに抜擢されたのは、
サム・ライミ版『スパイダーマン』のヒロインだったからに違いありません。
その作品で、逆さまのスパイダーマンとキスするロマンスシーンがあったので、
そのオマージュではないかと思われます。

ボブはトランスワールド社よりも早くピンクパウダーの美容クリームの特許を取りますが、
その儲けを下の世界に還元したためか、下の世界も急激に裕福になります。
たかが美容クリームと侮っていましたが、それほどの利益を生むなんて、
人間の美への執念、恐るべしですね。
でも結局上の世界が衰退するわけでもなく、トランスワールド社も倒産してないようで、
貧困層のボクとしては、下の貧困層から搾取し続けていた上の富裕層の奴らには、
なんらかのしっぺ返しがあってもよかった気がします。
そんな展開にならなかったのは、本作のフアン・ソラナス監督が、
アルゼンチンの巨匠監督フェルナンド・E・ソラナスの息子で、
自身がボンボン育ちの富裕層だったからかもしれませんね。

ちょっと設定的に懲りすぎて、二重引力を活かしきれてないところがありましたが、
二重引力世界の幻想的な映像は最高で、かなり面白い映画だったと思います。
『サカサマのパテマ』も楽しみです。

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