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シャニダールの花

第37回モントリオール世界映画祭まで1カ月を切りましたね。
日本からはワールド・コンペ部門に田中光敏監督の『利休にたずねよ』、
フォーカス・オン・ワールド・シネマ部門には白石和彌監督の『凶悪』、
タナダユキ監督の『四十九日のレシピ』、大森立嗣監督の『ぼっちゃん』、
そして石井岳龍監督の『シャニダールの花』と、5本が正式出品されるようです。
モントリオールは三大映画祭のヴェネチア国際映画祭と日程が一部重なり、
閉幕直後には同国でトロント国際映画祭が始まるという謎のスケジュールのため、
マスコミから注目されにくいけど、2008年の『おくりびと』のグランプリを筆頭に、
2009年『ヴィヨンの妻』監督賞、2010年『悪人』最優秀女優賞、
2011年『わが母の記』審査員特別賞、そして昨年『あなたへ』も審査員特別賞と、
近年、毎年のように日本映画に対して何らかの賞をくれる、
日本映画にとって与し易い国際映画祭なので、今年も期待しています。

ということで、今日はモントリオールに正式出品された日本映画の感想です。
本当は観るつもりなかったけど、何かを受賞したら見逃したことが悔やまれるので。
でも、もうすでに『ぼっちゃん』を見逃してるんですよね…。

シャニダールの花
シャニダールの花

2013年7月20日公開。
綾野剛と黒木華が主演の異色ファンタジー。

レアなケースだが女性の肌に植物の芽が出現し、この世のものとは思えないきれいな花が開花するという奇妙な現象が起きていた。満開時の花びらの持つ特殊な成分に目を留めた製薬会社は、探し出した花の提供者を「シャニダール」という特別な施設に集める。そこで働く研究者の大瀧(綾野剛)と新人の響子(黒木華)は、提供者たちのケアにあたる。(シネマトゥデイより)



序文で書いたように、モントリオール世界映画祭のために観に行ったようなものですが、
正直、本作は受賞を警戒するほどの作品ではなかったように思います。
全く面白くないわけではないけど、ちょっとSFなロマンス映画なので、
文化的な人間ドラマを好むモントリオール向きの作風ではないです。
ちなみにボクはファンタジーは好きだけど、もっと娯楽を求めてしまうので、
中途半端にアート系作品である本作は、ボクの好みでもありませんでした。
予告編を見る限りでは、SFメディカルスリラーな印象で少し期待したのですが、
ちょっと抽象的でかなり文学的な作品だったように思います。
オチなんてイマイチ意味が理解できないし…。

女性の体に咲く謎の花が発見され、大手製薬会社シンオウ製薬は、
その花弁から新薬開発のための成分が抽出できることを発見し、
花を宿した提供者を集め、花の成長をケアする特殊施設「シャニダール」を作ります。
その花は超高値で取引され、提供者にも謝礼として1億円が支払われます。
どんな効能のある成分なのかは明確にはされませんでしたが、
iPS細胞なんて目じゃないくらいの画期的な新薬になるんでしょうね。
提供者の女性の精神状態が花の育成に大きく影響するので、
施設には「ケアーズ」と呼ばれるセラピストが常駐し、彼女たちの世話をします。
本作の主人公は新人ケアーズの女性セラピストである美月響子と、
「シャニダール」で花の観察業務をする製薬会社の若手研究員・大瀧賢治です。
本作では花の謎に迫る展開と並行して、この2人のロマンスが描かれます。

大瀧賢治を演じるの最近飛ぶ鳥を落とす勢いの俳優・綾野剛ですが、
彼は短い期間に本当にイメージが変わっちゃいましたね。
もともと(特に長髪だった頃)はキワモノを演じる個性派俳優だったのに、
ちょっと見ないうちに正統派イケメン俳優扱いされるようになりました。
彼が世間に認知された出生作は朝ドラ『カーネーション』だったようで、
その時の役が正統派だったためか、世間的にはそっちの印象が浸透してますが、
その朝ドラは見てなくて、それ以前の映画での彼のイメージが強いボクには、
犯罪者とか吸血鬼とかを演じる悪役俳優だと思っていたのに、
(この前彼の出演作を観た時は、たしかゲイ役じゃなかったかな?)
急に向井理路線になっちゃうなんて、ちょっと違和感があります。
彼としては昔のままでは本作のように映画の主演なんて出来なかっただろうから、
キャリア的に正しい道を選択しているようにも思うのですが、
傍から見る分には映画の主演が出来る正統派俳優なんて珍しくもなく、
オンリーワンな個性派俳優がひとり減ってしまったような印象でちょっと残念…。
それに髪を切って普通の役をしている彼って、なんだかゼロ年代っぽい顔で、
鬱屈した印象というか、野暮ったいというか、あまり魅力を感じないのですが、
女性には大人気みたいで、本作のお客さんもほぼ女性でした。
まぁまた路線変更するかもしれないし、今後どう転ぶのか見守りたいと思いますが、
地雷臭い『ガッチャマン』でキャリアが台無しになりそうな気も…。
一方のヒロイン美月響子演じる黒木華ですが、彼女もあまり知らない若手女優でした。
昭和っぽい顔というか、ちょっと地味で素朴な佇まいがなかなかよかったです。

以下、ネタバレも。

謎の花ですが、てっきり製薬会社が提供者に苗を植え付けるんだと思ったら、
勝手に芽が生えてきた女性を、製薬会社が提供者になってくれないかオファーするみたい。
まぁ植え付けるなら、謝礼1億円も貰えるんだから志願者続出するでしょうね。
正確には花に寄生されるみたいなのですが、誰にでも寄生するわけでもなさそうで、
トラウマがあったり引き籠りだったりと、精神的に問題がある女性が宿主になるようです。
宿主の精神状態が花の成長にも影響しますが、花の成長も宿主の精神を蝕みます。
だから満開にするには心のケアが必要なわけです。
満開になったらすぐ採取してしまうので、満開後暫らく放っておいた事例は無いそうで、
そうするとどんなことが起こるのかは誰も知りません。
でもそうだとすれば、寄生された女性は製薬会社が全員スカウトしないとおかしく、
ちょっと無理がある設定だと思いました。
現に美月響子も寄生されていたのですが、製薬会社はそれを把握できていません。
つまり世間には彼女のように人知れず寄生され、人知れず花を咲かせてしまうか、
花の成長過程で心神耗弱になう女性が続出してないとおかしいはずですが、
普通こんな花が発見されたら、一製薬会社には任せず政府機関やWHOが動くはずですが、
花の存在は物語終盤までマスコミも気付かないという不可解な状況です。
この花、宿主の女性の胸に生え、一輪だけ大きな花を付けます。
一見バラのようにも見えますが、彼岸花のように葉はありません。
葉がなく寄生する花といえば…、もしかしてラフレシアの仲間なのかも?

製薬会社は提供者はもとより、シャニダールの職員にも隠しているのですが、
この花を採取する時、宿主の体に深刻な負荷を与えます。
それは命にかかわるほどの異常な負荷で、切除時に心停止するのは当たり前、
うまく蘇生できても、数日後には心筋梗塞などで死ぬケースも多いようです。
しかし製薬会社はその事実を隠蔽しており、賢治や響子も知りません。
ところがシャニダール館内で、自分の花が咲かないことを気に病んだ提供者ミクが、
他の提供者の花を引き千切ろうとする事件が発生し、それを止めるため、
彼女の友達である提供者ハルカが、自分の花を抜いて彼女にあげようとします。
しかしそれによってハルカは体に負荷を受け、倒れてしまうのです。
まだ花は成長段階だったので、負荷も満開時ほどではなく、気絶で済みましたが、
それを目の当たりにした賢治と響子は、会社が隠蔽していた事実に気付きます。

賢治は響子の花も蕾のうちに切除するべきだと言いますが、彼女は拒否し、
むしろ開花させても切除せずにそのまま咲かせ続けたいと言います。
そんなことは過去に例がなく、賢治は断固反対し、彼女が就寝中に勝手に切除。
それがキッカケで響子は彼の元を去ってしまうのですが、
その後、彼女の花は再生し、人知れず自分の望み通りに満開にしてしまうのです。
しかも受粉して種まで付けてしまいます。
しかし満開にした彼女はベッドから二度と起き上がることはできなくなります。
生きてはいるが一切動けず、文字通り植物人間になったのでしょうね。
そんな折、製薬会社の隠蔽も明るみに出て、会社は倒産します。
響子の状況を知り、解決方法はないか元所長を問い詰める賢治ですが、
元所長曰く、花は人類を絶滅させようとしているとのことです。
その花はネアンデルタール人の墓から化石で発見されたものだったのですが、
ネアンデルタール人もその花によって滅ぼされたというのです。
花は次にホモサピエンスを植物化して絶滅させるつもりということですね。
なかなか面白いトンデモ説だけど、そんなに開花が難しい花では、
絶滅させるほど繁殖するのは難しいと思いますけど。
ラストに虚実不明なシーンで、賢治も花になってしまうのですが、
「え、男も植物化するの?」って感じで、いまいちピンとこないオチでした。

うーん、結局、綾野剛ファン以外にはオススメ出来ない作品です。
とか言って、モントリオールで本作が何か受賞したら恥ずかしいですが…。

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