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終戦のエンペラー

先日、公開延期されていたハリウッド映画『47 Ronin』の予告編がお披露目されました。
真田広之や柴咲コウが出演し、日本の『忠臣蔵』をモチーフに描かれた作品ですが、
その予告編が「全く忠臣蔵じゃない」と話題になっています。
怪物や妖術が出てくるアクション・ファンタジー超大作で、
どちらかと言えばネガティブな意見が多いですが、ボクはそれでいいと思います。
『忠臣蔵』の実写化と謳うなら問題あるけど、モチーフにしただけだし、
もともとファンタジーとして製作されることは告知されていたので想定内です。
むしろ懸念は超大作すぎるというところで、多少のヒットでは製作費が回収できなさそう。
日本人俳優を沢山起用してますが、ハリウッドスターは主演のキアヌ・リーブスくらいで、
アメリカやその他の国でヒットする見込みはかなり薄いです。
もうこの映画の成功は日本頼みですが、日本人までもネガティブな意見ばかりで…。
日本人は、ハリウッドの日本に対する理解のなさを嘆くよりも、
ハリウッドが日本を理解したいと思えるような環境にする努力をする必要がです。
そのためには日本人はハリウッド映画をもっと観て、日本市場の魅力を示し、
俳優や裏方など映画関係者も、もっとハリウッドに進出するべきです。
何も発信しないで相手が勝手に理解してくれるはずなんてありませんからね。

ということで、今日は日本人プロデューサーによるハリウッド映画の感想です。
ハリウッド映画だって、ちゃんと日本人が製作に関わることができれば、
こんなにまともな日本が描けるということの証明のような作品です。

終戦のエンペラー
Emperor.jpg

2013年7月27日日本公開。
岡本嗣郎のノンフィクション小説を原作にした歴史サスペンス。

1945年8月30日、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の司令官としてダグラス・マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)が日本に上陸。彼は日本文化に精通している部下ボナー・フェラーズ(マシュー・フォックス)に、太平洋戦争の真の責任者を探し出すという極秘任務を下す。わずか10日間という期限の中、懸命な調査で日本国民ですら知らなかった太平洋戦争にまつわる事実を暴き出していくボナー。ついに最大ともいうべき国家機密に近づくが、彼と敵対するGHQのグループや日本人たちの一団が立ちはだかる。(シネマトゥデイより)



岡本嗣郎のノンフィクション『陛下をお救いなさいまし 河井道とボナー・フェラーズ』を
ハリウッドで映画化した本作ですが、アメリカではヒットしませんでした。
まぁインディペンデント映画で公開館数も少なかったみたいだし、
出演者も西田敏行や故・夏八木勲など、日本の大御所俳優は多数出演しているものの、
トミー・リー・ジョーンズ以外は国際知名度が低く地味なので仕方ないです。
(主演のマシュー・フォックスも映画初主演では?)
やっぱり内容的にも、アメリカ人の関心を惹くようなものではないかもしれませんね。
太平洋戦争直後の日本とアメリカの史実をもとに描いた戦争映画ですが、
アメリカ人は核兵器を使用してしまったことに引け目を感じているのか、
第二次世界大戦ネタはOKでも、太平洋戦争ネタはあまりお好きではないようです。

しかも本作は日米双方の視点から比較的中立に描かれていますが、
当時の敵国である日本側の視点で描かれた物語なんて、観たいとは思わないでしょうね。
『硫黄島からの手紙』が『父親たちの星条旗』の興収の半分にも満たないのがいい例です。
(日本では逆に『硫黄島からの手紙』が3倍の興収を稼ぎました。)
当事者であるアメリカですら興味を示さない映画に、他国が興味を示すはずもなく、
(中国とか韓国はある意味興味を示すかもしれないが上映されるはずないし、)
興行面で成功するかどうかは完全に日本市場頼みのハリウッド映画です。
中国が第二位の映画消費国になり、ハリウッドは日本市場を軽んじ始めていますが、
本作を日本で大ヒットさせ、興行的に成功させることができれば、
ハリウッドに対して日本市場の魅力を強くアピールできるチャンスです。
ハリウッドがもっと日本を題材にした映画を作り易い環境になるように、
是非本作はみんなで成功させましょう。

まぁそんな思惑は別にしても、本作は日本人にとってかなり興味深い内容なので、
きっと楽しめるはずだと思うし、是非観てほしいオススメ作品です。
ハリウッド映画にも拘わらず、当時の日本人のメンタリティがちゃんと描かれて、
『パールハーバー』のような無茶苦茶な日本像でもないし、
逆に日本映画でもないので偏った自虐史観や自由主義史観でもなく、
これほど公正中立に太平洋戦争が描かれている映画は観たことがありません。
(特に『風立ちぬ』に辟易とした人にはマストでしょう。)
実際には戦争映画ではなく、戦後処理映画とも言うべき内容で、
アメリカが日本の復興にどれほど貢献してくれたのか、日米の友好を描いた映画です。
尤も東京裁判での日本の処遇など実際の戦後処理にはいろいろ問題もありましたが、
本作は日本がアメリカに負けたのは不幸中の幸いだったというか、
戦後の日本を占領統治したのがアメリカでよかったと思わずにはいられない内容です。
アメリカ人も観れば誇らしい気持ちになったはずだし、もっと観てほしかったです。
本作は戦争を乗り越えて築かれた今の友好な日米関係があるから実現できたのであり、
他の戦争が題材だったら、こんな友好的な作品は絶対作れませんよね。

1945年8月、原爆を搭載し離陸するエノラ・ゲイのシーンから始まる本作。
広島・長崎に原爆投下され、14日、ついにポツダム宣言を受諾し降伏した日本に、
GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が進駐し、皇居添いの第一生命ビルを本部とし、
30日、厚木飛行場から最高司令官ダグラス・マッカーサー元帥が日本に降り立ちます。
マッカーサーを演じるのは、トミー・リー・ジョーンズです。
オスカー俳優であり大御所ハリウッドスターである彼が、
アメリカでヒットする見込みゼロのこんなインディペンデント映画に出演してくれたのは、
彼が親日家だからに他ならないと思います。
本作のマッカーサーはあまり偉人的には描かれず、どちらかと言えば俗物で、
それほどいい役柄とは言えませんが、やはりひとりでも大スターがいるだけで、
作品としてビシッっと引き締まったような気がしますし、
日本の俳優を含め、他の俳優にもいい影響があったように思います。

マッカーサーは元首相・東條英機ら約30名のA級戦犯の逮捕を指示。
一方で腹心の部下に、昭和天皇の戦争責任について調査するように命じます。
アメリカ世論は天皇が処刑されることが総意だったみたいですが、
マッカーサーは、日本国民が天皇逮捕を引き金に反乱を起こす可能性や、
天皇を失えば日本に共産主義者が台頭することも懸念されるため、
できるなら天皇の責任は問わず、天皇制は維持しておきたい考えのようです。
更に日本を平和的に統治した実績を得て、大統領選に出馬しようとの目論みも…。
しかしマッカーサーは結果的に共和党の予備選挙で惨敗したみたいです。
落選の経緯は知りませんが、天皇の責任を問わないなんて民意と逆のことをすれば、
日本国民から支持されてもアメリカの大統領選で有利になるとは思えませんが…。
彼はその大統領選で勝利したトルーマンから、朝鮮戦争中に最高司令官を解任されます。
トルーマンといえばレイシストで、原爆投下を承認した忌まわしい大統領です。
もしマッカーサーが大統領になっていたら、戦後の日米はもっと友好的だったかも?

目論みはどうあれ、天皇の戦争責任を問わないという調査報告がほしいので、
その調査に当たらせる人物が反日思想では困ります。
そこで選ばれたのが知日家のフェラーズ准将でした。
彼は戦前から日本人と親交があり、来日したりと日本に理解がある人物で、
戦後処理において彼の活躍がなければ、日本の処遇は悲惨だったかもしれません。
後に勲二等瑞宝章を受けるほど貢献してくれた日本の大恩人ですが、
ボクは恥ずかしながら彼のことを全く知りませんでした…。
GHQにこんな人物がいたとは、日本にとって何たる幸運でしょうか。
マッカーサーと並べて歴史の教科書に載せるべき重要人物ですよ。

フェラーズが知日家になる背景として、日本人女性とのロマンスが描かれます。
フェラーズは、大学時代に日本人留学生のアヤと交際しますが、
彼女は父親が危篤になり突然帰国してしまい、彼女を追って彼も来日します。
静岡で英語教員をしていたアヤと再会し、日本で再び交際するのですが、
フェラーズが「日本兵の心理」という論文を書いているのを知った彼女は、
その手助けになればと、叔父の鹿島大将を彼に紹介します。
鹿島から日本人の宗教観や価値観を学び、フェラーズは日本人への理解を深めるのです。
しかし開戦が差し迫り、軍が国内のアメリカ人を逮捕し始めたため、
フェラーズはアヤと別れて帰国し、陸軍省に入局し日本と戦います。
日本が降伏しマッカーサーの腹心として再び来日した彼は、GHQの任務を遂行しながら、
運転手兼通訳の高橋にこっそりと元恋人アヤの行方を調べるように頼みます。
フェラーズはアヤと再会できるのか、ロマンス映画の側面もある本作ですが、
ロマンス部分に関しては本作のオリジナルの展開で、史実とは異なるようです。
たしかに実在のフェラーズは戦前から日本人との親交はあったようですが、
恋人となるアヤは架空の人物で、こんなロマンスはありませんでした。
(なんでも戦後来日したフェラーズには祖国に妻も娘もいたらしいです。)
なので取って付けたような、展開的にちょっと無理がある気もします。
天皇の戦争責任の調査なんて超重要な命令の遂行中に、
元恋人探しに奔走するなんて、ちょっと考えられない行動ですよね。
でもロマンス要素を入れることで観易くなっているのも事実だと思います。
単なる伝記映画では興行的にも難しいでしょうしね。

それに恋愛関係ではなかったにせよ、フェラーズの日本人との個人的な関係が、
両国の友好関係に大きく寄与したのは間違いないと思います。
アヤの叔父である鹿島大将ももちろん架空の人物ですが、モデルとなった人物はいます。
フェラーズに日本人のメンタリティを説いた日本人で、おそらく小泉八雲でしょう。
(まぁ小泉八雲を日本人と言っていいのかは微妙なところですが…。)
正確には小泉八雲の文献を読んだフェラーズが知日家に目覚めたわけですが、
本作ではその重要な役割を鹿島という架空の人物に置き換えドラマチックにしています。
日本人のメンタリティというのは特殊で、なかなか外国人には理解し難いものですが、
正直、生粋の日本人であるボクでも、当時の日本人のメンタリティは測りかねます。
しかし鹿島の説明はとても明瞭で、そこには我々今の日本人のメンタリティと地続きで、
武士道精神にも通じる「信奉」が説かれており、とても納得させられました。
ロマンス自体は無理がある展開ですが、そこに絡めて日本人の価値感が無理なく描かれ、
全体としてはとてもよく出来た演出で感心しました。

フェラーズは天皇の戦争責任に関しての証言を集めるため、元首相・東條英機に会います。
A級戦犯の東條は自宅にGHQが踏み込んできた時に自害しようとしますが未遂に終わり、
逮捕されて巣鴨拘置所に収監され、絞首刑を待つ身でした。
天皇を救うための証人を選ぶように諭された東條は、近衛文麿を紹介します。
近衛文麿は東條の前の代の首相ですが、開戦前に内閣総辞職しています。
開戦前に近衛首相は米国大統領と接触し、日米の戦争回避を望んでいましたが、
当時陸相だった東條の開戦論を抑えきれず総辞職してしまったようです。
その後、真珠湾攻撃が起こり日米は太平洋戦争に突入しますが、
天皇が真珠湾攻撃を承認したかどうかが戦争責任の重要なポイントです。
しかし近衛は「白黒はっきりする問題ではない」と証言を拒否し、
日本の中国などへの植民地支配についても「英米の領土を奪っただけ」
「植民地政策はあなた方をお手本にした」「日米双方有罪」と主張します。
なんで欧米諸国もやってるのに、日本の植民地支配だけ非難するのかという話で、
全くもってその通りの主張ですが、知日家のフェラーズ相手だからよかったものの、
この期に及んでアメリカを逆撫でする発言は危ないですよね。
橋下徹大阪市長の「他の国もしていたこと」という慰安婦発言に通じるものがあり、
主張は正論だが、この場で言うことではないだろ、…みたいな。

近衛はフェラーズに天皇の相談役である内大臣、木戸幸一を紹介します。
しかし木戸は逮捕されると思い、面会をドタキャンし、調査は行き詰まります。
そこでフェラーズは、マッカーサーの命令書を携え、皇居にアポなしで乗り込み、
木戸の部下である関屋貞三郎宮内次官と面会し、話を聞きます。
真珠湾攻撃直前の御前会議で天皇が何をしたのか問い詰めますが、
関屋次官は「天皇が御製の短歌を朗読された」と証言するに留まります。
平和を願い戦争を憂う短歌ですが、フェラーズは「何の説得力もない」と感じ…。
関屋次官は本作の製作を主導したプロデューサー奈良橋陽子の祖父だそうです。
完全に手詰まりとなり、元恋人アヤの行方も依然つかめず、イライラが募る中、
フェラーズはうどん屋でジャップから暴行を受けプッツン。
「天皇の戦争責任は不可避である」との調査報告を執筆します。
あのうどん屋のジャップのシーンは、日本人として苦々しかったですね。
でも当時は鬼畜米兵に占領されたことをよく思わない日本人がいるのも当然かな。
むしろそこまでフェラーズが日本を見放さなかったのが不思議なくらいで、
戦前の来日時も、アヤの勤める学校の生徒に石をぶつけられて流血してたし…。

しかしその報告書を提出する前に、雲隠れしていた木戸内大臣が訪ねてきます。
木戸はポツダム宣言受諾直前の最高戦争指導会議のことを話します。
木戸曰く、首相や陸相などが参加する御前会議で、降伏するか否かが話し合われ、
意見は3対3に分かれたが、臨席した天皇の「連合国を信じる」という鶴の一声で、
日本は降伏したのだと主張し、天皇の聖断のお陰で戦争は終結したと主張。
更に玉音放送のための録音盤を狙って、降伏に反対する陸軍の狂信者が皇居を襲撃する、
いわゆる宮城事件があり、天皇の命も狙われる事態にもなったが、
天皇は自ら戦争に終止符を打つため軍国主義者に立ち向かったと擁護します。
しかし決起した将校たちは皆自害し、反乱を鎮圧した田中静壱大将も自害。
御前会議の証拠も宮城事件の証拠も残ってないとのこと…。
その後、鹿島大将と再会したフェラーズは、アヤが静岡空襲で死んだことを告げられ、
彼女が遺した自分宛ての手紙を渡され、それを読んだ彼はある決心をします。
天皇は日本の武装解除の重責を担い、多くの米兵の命を救ったとする、
天皇の戦争責任を問わない旨の調査報告書をマッカーサーに提出するのです。
真珠湾攻撃の承認など天皇の戦争への介入度は永遠に謎という結論で、
推定無罪って感じですが、降伏に貢献した功績だけを評価したわけですね。
まぁ実際は天皇が戦争を承諾したのは間違いないと思いますが、
木戸が言うように当時の天皇は役職も形だけだったのは本当で、
現人神として東條ら軍部のプロパガンダに利用されていたのは明白です。

フェラーズから調査報告を受けたマッカーサーは「推論だけで証拠がない」と困惑。
とりあえず天皇に直接面会しようということになり、天皇を呼びだそうとします。
でも天皇が呼ばれてホイホイ出てくるはずもなく…。
しかし「立場上GHQ本部には行けないが公邸なら…」という関屋次官の入れ知恵で、
アメリカ大使館のマッカーサーの公邸で面会することになります。
天皇謁見に当たり、関屋次官がマッカーサーに礼儀作法をレクチャーします。
「天皇の体に触るな」とか「天皇の目を見るな」とか最低限の作法ですが、
彼は天皇に会うなり教えられた作法を即行無視し、ガン見で握手を求めるのです。
しかし天皇はその無礼に動じることもなく、朗らかに握手に応じます。
その後、通訳以外を退席させ、2人で会談するのですが、
通訳を使って日本語で話すということになっていたのに、
天皇は英語で「戦争の責任は自分にあり、一切の懲罰を受ける」と発言。
てっきり自らの戦争責任を否定するものだと思っていたのに、
マッカーサーはまさかの発言にとても感銘を受け、
「懲罰なんてとんでもない、日本の再建に手を貸してほしい」と伝え、
これにより天皇の戦争責任を問わないことが決定的になりました。

その会見の折に撮られたマッカーサーと天皇のツーショット写真が、
正装の天皇に対し、マッカーサーはラフな格好で傲然たる態度で写っていたことは、
当時の日本国民に衝撃を与え「無礼極まりない」と批判されたそうですが、
もし会見後に写真撮影をしていたら、もう少しマシな態度だったかもしれませんね。
まぁそもそも実際の写真が会見前なのか後なのかは知りませんけど…。

フィクションが交えてあるとはいえ、日本の戦後処理がいかに綱渡りで、
その結果が奇跡的なものであるかがよく描かれており、
その奇跡の延長線上にある現在の日米関係も愛おしく感じてしまうような作品で、
自虐や対立を煽らない、とても素晴らしい友好的な戦争映画だったと思います。
きっと日米の双方の観客に誇らしさを感じさせてくれる映画ですね。
まぁ第三国にしてみれば不愉快極まりない内容だと思われますが、
(親米反中韓に)右傾化しているボクとしては、そう思われるのも痛快です。

コメント

同感です。

本日鑑賞してきました。全く同感です。

  • 2013/08/08(木) 21:44:58 |
  • URL |
  • とおりすがり #-
  • [ 編集 ]

ありがとうございます。

  • 2013/08/10(土) 23:09:49 |
  • URL |
  • BLRPN #-
  • [ 編集 ]

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