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バーニー みんなが愛した殺人者

最近巷では広島少女遺棄事件が話題ですね。
ボクはあまり殺人事件のニュースには興味が湧かないのですが、
世間を賑わせた殺人事件というのは、作家にインスパイアを与えるので、
後にその事件を題材にした小説や映画が作られることがあります。
人が亡くなっているのに不謹慎なことは承知していますが、
事件のことを覚えておくと、映画を観る上で後々役に立つことがあるかもしれません。

ということで、今日は実際の殺人事件を題材にした映画の感想です。

バーニー みんなが愛した殺人者
Bernie.jpg

2013年7月13日日本公開。
ジャック・ブラック主演のブラックコメディ。

テキサス州の片田舎で葬儀屋を経営するバーニー(ジャック・ブラック)は、誠実な人柄で町の誰からも愛されていた。やがて彼は、金持ちの未亡人マージョリー(シャーリー・マクレーン)と仲良くなり、いつしか銀行口座の管理を任されるほど信頼されるように。しかし、ふとしたことで彼女を殺害してしまったバーニーは、その後もマージョリーが生きているかのように振る舞い……。(シネマトゥデイより)



ボクの生涯ベストとも言える映画は『スクール・オブ・ロック』です。
以来、主演のジャック・ブラックが大好きになり、出演作は欠かさず観ています。
でもなかなか『スクーロ・オブ・ロック』に迫る作品には出会えませんでした。
なので『スクール・オブ・ロック』のリチャード・リンクレイター監督と
ジャック・ブラックが8年ぶりの再タッグとなる本作への期待は相当高かったです。
でもその期待は見事に打ち破られてしまいました。

…いや、本作もかなり興味深い作品ではあります。
全米ボックスオフィスのトップ10に入りませんでしたが、
インディペンデント映画で公開館数が少なかったからで、
1スクリーン当たりの動員数では全米ナンバー1だったそうです。
批評家連中からも絶賛を受け、ジャック・ブラックは本作で、
第70回ゴールデン・グローブ主演男優賞(コメディ部門)候補にもなりました。
彼がGG賞候補になるのは『スクール・オブ・ロック』以来です。
それだけに期待も高くなったのですが、ちょっと期待しすぎちゃったようで、
「なんだ、この程度なのか」と思ってしまったんですよね。
もちろんボクの評価は『スクール・オブ・ロック』の足元にも及びません。

何が気に入らないかって、本作の演出方法ですよね。
本作は1996年に実際にテキサスの小さい町で起こった殺人事件を題材にしたもので、
本作のストーリーの多くは、その町の住民によるインタビュー映像となっています。
その住民たちは、実際の住民本人だったり、役者を起用したりしていますが、
インタビュー内容は取材に基づいたもので、ドキュメンタリー的な構成です。
インタビューの合間にジャック・ブラックによる再現映像が挿入される感じでしょうか。
これはちょっと珍しい演出ではあるものの、あまり映画的ではありませんよね。
本当に殺人事件のドキュメンタリーを観ているようで、展開が平坦で退屈に感じます。
事件そのものは興味深いものなので、普通にドラマとして描いていれば、
もっと娯楽的な面白いブラックコメディになったように思います。
それにボクとしては、単純にジャック・ブラックの出演シーンが少なくなるのが不満。
誰だかわからない住民のインタビューシーンなんて見せられても全く楽しくないです。

たしかに演出としては興味深いもので、批評家ウケがいいのもわかります。
住民のインタビューでストーリーを構成することで、
ジャック・ブラック演じる殺人事件の犯人バーニー・ティーディが、
実際のバーニーではなく、あくまで住民の印象で語られたバーニー像となり、
本作が単に実際の殺人事件の顛末とは違う可能性も高いけど、
それが逆に作品の面白味となる凝った演出だと思います。
バーニーについて「彼はゲイだ」という証言をする住民もいれば、
「敬虔なクリスチャンでゲイなはずない」と証言する住民もいて、
我々観客もバーニーの性格や考えなど彼の全容を捉え切れませんが、
観客によってバーニー像が微妙に違うというのも、面白い演出だったかもしれませんね。
住民の多くはバーニーのことを「あんな善人は他にいない」と証言しますが、
被害者の投資管理者と地方検事ダニーは「彼は金目当ての偽善者」と言い、
実は浪費家であるなど、必ずしも善人とは言い切れない面もちゃんと提示されます。
ボクもバーニーが単なる善人だとは思えませんが、ダニー検事の言うように、
単に金目当ての犯行と考えるのも矛盾を感じて、結局どんな男なのか掴めないままです。

バーニー・ティーディは、葬儀ディレクターの助手として働いています。
遺体の処理や納棺をする所謂「おくりびと」的な人ですが、
葬儀を進行したり讃美歌を唄ったり、棺桶のセールスまでする葬儀のプロですね。
その仕事ぶりは完璧で、上司やお客さんから絶大な支持を得ています。
更に町の美化活動や地域ラジオの出演、短大の演劇部の舞台を演出するなど、
市民活動への参加や住民との交流にも積極的で、住民からの信頼も厚いです。
日本だと葬儀屋は遺体に接するので「穢れている」と忌み嫌われがちな職業で、
葬儀屋が町の人気者になるなんてことはまず考えられませんが、
アメリカは葬儀に対する考え方が、ちょっと違うのかもしれませんね。
バーニーは州立大学で葬儀学の準学士号を取得しているみたいですが、
エンバーミングを大学で教えたりすることに驚きです。
日本でも学問として確立させて、葬儀屋を士業にでもしちゃえば、
医者と同じように葬儀屋が忌み嫌われる職業ではなくなるかもしれませんね。

それにしてもバーニーは葬儀屋にしておくのは惜しい多才な男です。
彼くらいの接客力や経営力があったら、他の職種でも引く手数多でしょう。
特に歌唱力はプロ並で、様々な楽器も演奏できる上に、カントリーからゴスペルまで、
どんな曲のリクエストにも対応できる、まさに人間ジュークボックスです。
実際に彼はボランティアでミュージカルの音楽監督を務め、舞台を成功させています。
ボクだったら葬儀屋なんて目指さず、音楽業界や演劇業界を志すと思いますが、
葬儀屋するにしても雇ってもらうのではなく、起業できる力は十分あるはずです。
それなのに葬儀ディレクターの助手になっている彼に、何か後ろ暗さを感じます。

ある日、石油で巨万の富を築いたニュージェント氏が亡くなり、
バーニーはその葬儀で未亡人のマージョリー・ニュージェントと出会います。
彼女は夫の後を継ぎ銀行を経営してますが、金持ちだけど寄付なんて絶対しないし、
貸し渋りが趣味というケチな意地悪ばあさんで、住民からかなり嫌われています。
アフターケアも万全の葬儀のプロであるバーニーは、未亡人を励ますのも日課で、
マージョリーの家にも足しげく通うようになり、気難しい彼女からも信頼を得ます。
一緒に遊びに行ったり、年間20万ドルもの海外旅行に同伴するような仲になり、
やがて彼女から銀行の代理権まで任され、彼女の財産を自由に使えるようになります。
うーん、いくら完璧な心配りとは言っても、アフターケアの域を超えてますよね。
しかも葬儀屋までやめて、世話係として彼女の家の執事になっちゃうし…。
ゲイ疑惑があるので2人に男女関係があったのかはわかりませんが、
恋人でもない女性から12000万ドルのロレックスを贈られたら断るはずで、
やっぱり普通に考えれば、金目当てで寂しい老人をたらしこんだような感じです。
まぁそれでも住民は、彼が善意からマージョリーの世話をしていると疑いません。
いくら町一番の人気者のバーニーでも、町一番の嫌われ者と付き合っていたら、
住民から少し嫌われそうなものですが、そうはならないのが不思議です。

傍目には金持ちに寵愛され、オイシイ思いをしてそうなバーニーですが、
マージョリーの彼に対する独占欲がエスカレートし、
彼は自由に住民と交流することも出来なくなります。
我儘に付き合わされ、愛情の裏返しで束縛されたり無茶ブリされたりする日が続き、
バーニーは彼女の所有物扱いされることで心神耗弱状態に陥り、
ある日ついに、アルマジロ退治用のライフルで背後から彼女を撃ち殺してしまいます。
彼はすぐに後悔しましたが、マージョリーの遺体をガレージの冷凍庫に隠し、
彼女への面会要求を全て断り、彼女が生きているように見せかけ、
彼女の親戚には「彼女は脳卒中で入院している」と嘘をつき、事件を隠蔽します。
はっきり言って本作は、事件発生までの経緯が長すぎるように思います。
でもインタビューで構成されているので、住民の推論での経緯でしかなく、
長いのにバーニーの心境の変化も描かていなくて、前半はちょっと退屈でした。
でも事件発生してからは急転直下の展開で面白くなってきます。

更にマージョリーの財産を自由に使えるようになったバーニーは、
教会に礼拝堂建設の寄付をしたり、いろんな事業に投資したり、
住民に新車など高価な贈り物をしたりと、ますます地域社会に貢献し、
これまで以上に町の重要人物として住民の信頼を得ます。
しかしマージョリーの死から9ヶ月後、投資会社の彼女の担当者が、
彼女が姿を見せないことを不審に思い、ダニー検事に通報し、
警察による家宅捜索が行われ、彼女の遺体が発見されてしまいます。
すぐに殺害容疑を認めたバーニーですが、住民は口を揃えて彼を擁護し、
逆に被害者を「悪魔のような女」「殺されて当然」と罵ります。
神に仕える牧師までが殺人犯を擁護するんだから、彼の人気の絶大さがわかりますね。
いや、マージョリーの絶大な嫌われ方のなせる業かも?
いずれにしても、日頃の行いが如何に大切か思い知らされます。

この事件はもちろん陪審員裁判で裁かれますが、この町では人気者の容疑者だけに、
彼を凶悪犯に仕立てて自分の手柄にしたいダニー検事としては不利な状況です。
ダニー検事は遠く離れた別の裁判所での裁判を希望し、裁判所もそれを認め、
70キロ以上も離れた別の町の裁判所で裁かれることになります。
異例の措置で校正な裁判ができないという理由ですが、
陪審員裁判なんて真実の追求よりも端から心証で決する制度だし、
これでは検事に有利すぎだし容疑者に不利すぎて逆に校正とはいえませんよね。

バーニーの無罪を求める住民の声も届かず、結局裁判は有罪判決となります。
しかも第1級殺人で終身刑が言い渡されるのですが、1人殺して終身刑は重すぎる気が…。
いや、人殺しを擁護する気はないけど、この事件の場合は情状酌量の余地は多いはず。
まぁバーニーを全く知らない町の陪審員だから、上手くダニー検事の口車に乗せられ、
「金を横領の発覚を恐れて雇主を殺した上に、死体を隠して横領量を続けた凶悪犯」
…という風に解釈したのでしょう。それなら終身刑も当然です。
ボクはと言えば、バーニーが金目当てで被害者に近づいたかは判断できませんが、
彼のような有能な男が、その気があればそんな下手な殺人をするとは思えず、
殺害行為自体は気の迷いによる過ちだったように思います。
プロの葬儀屋で遺体の扱いに慣れた彼なら、遺体ももっと上手く処分できそうなのに、
わざわざ彼女の自宅に隠すというのは、犯行を本気で隠す気はなかったようにも…。
少なくともダニー検事が言うほどの凶悪犯ではなかったように思います。
むしろ凶悪だと思ったのは、裁判所ですよ。
彼の逮捕後、彼が寄付した礼拝堂や基金、住民への贈り物を差し押さえてしまうのですが、
教会や住民は善意の第三者なのに、ちょっと横暴だと思いました。

結局終身刑で投獄されたバーニー、模範囚でも50年は仮釈放されないそうです。
バーニーの場合、仮釈放される頃には80歳を超えるみたいで…。
そんなの人生終わったの同然だけど、なんか終身刑って死刑より辛い罪な気がしますね。
社会復帰しない囚人を養うなんて税金も勿体ないし…。
まぁバーニーは刑務所内でも持ち前の音楽の才能を活かし、
囚人による聖歌隊の指導をしているみたいで、本人はそれなりに楽しいのかも。
もちろん今も服役中の本物のバーニーですが、未だに住民は彼の助命運動をしているとか。
心神耗弱説を唱える本作も公開されたし、もしかしたら助命運動が実って、
もっと早く仮釈放されることがあるかもしれませんね。
一方でマージョリーの遺族からは不法死亡訴訟を起こされているみたいですが…。

期待が高すぎたので、ちょっと期待ハズレな気がしましたが、
なかなか興味深いブラックコメディなので、期待しなければ十分楽しめるはずです。
インディペンデント映画なので、日本で公開してくれただけでも良しとします。

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