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アンコール!!

今年から始めた四半期ごとの映画の総括を、2回目にしてすっかり忘れていました。
本来なら6月末の記事で書くはずだったのに、完全に失念して…。
なのでちょっと遅れましたが、第二四半期の総括は今書きたいと思います。
総括といっても、第二四半期に観た映画のベスト3を発表するだけですけど。

今年4月から6月に劇場鑑賞した映画は邦画22本、洋画32本の計54本でした。
第一四半期は64本鑑賞したので、少し減りましたが、意図的に控えました。
鑑賞する作品選びのハードルを上げて、駄作を避けるようにしたのですが、
その成果が出たのか、かなり質の高い映画が多かったように思います。
特に素晴らしかった作品が7本もあり、そこから3本絞るのは至難の業でしたが、
バランスを取って、日本映画1本、ハリウッド映画1本、その他1本の3本を選びました。
他の4本も高いレベルで拮抗しており、ベスト3から外すのは忍びなかったです。

2013年第二四半期映画ベスト3(順不同)
『はじまりのみち』…天才アニメ監督である原恵一が初めて実写で撮った日本映画。
『インポッシブル』…実際の津波被害を描いた、日本人にはマストなハリウッド映画。
『きっと、うまくいく』…歌って踊るだけじゃない、インド映画の傑作。
どれもまだギリギリ上映しているかもしれないので、まだの人は是非観てください。

ということで、今日は第三四半期ベスト3候補の映画の感想です。
6月末公開なので前季の対象ですが、関西で公開が遅れたので今季の対象に…。

アンコール!!
Song for Marion

2013年6月28日日本公開。
テレンス・スタンプ主演のヒューマン・コメディ。

寡黙でとっつきにくい性格が災いし、周囲から筋金入りの頑固おじさんとして扱われ、息子とも溝ができてしまっているアーサー(テレンス・スタンプ)。そんな彼が愛してやまない、性格の明るい妻マリオン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)のガンが再発してしまう。そんな中、彼女が在籍するロックやポップスの名曲を歌う合唱団「年金ズ」が国際コンクールの選考大会に出場することに。治療などで練習に参加できないマリオンの代理で「年金ズ」のメンバーになるアーサーだが、個性豊かなメンバーや慣れない合唱に面食らってしまう。(シネマトゥデイより)



予告編で面白そうな映画だとは思っていましたが、予想以上でした。
後期高齢者が主人公の音楽ものなので、『カルテット!』のような内容かと思ったけど、
その作品の数倍、本作の方が面白かったです。
公式ではシニア版『glee』なんて謳ってるけど、たしかに雰囲気は近いかも。
けっこう明るいノリのコメディで、シニア映画にしてはかなり観やすいのに、
めちゃめちゃ泣けてしまう、楽しくて感動的なミュージック映画です。

主人公は無口で気難しい頑固ジジイのアーサー(推定72歳)。
でも妻マリオンとはラブラブで、とても仲のいい夫婦です。
しかし人前ではずっとムスっとしていて、横柄な態度を取ります。…ツンデレですね。
アーサーを演じるのはイギリスの名優テレンス・スタンプですが、
彼はこの役で、英国インディペンデント映画賞の最優秀主演男優賞候補になりました。
残念ながらその時は候補止まりでしたが、とても素晴らしい演技だったと思います。
あ、北京国際映画賞では最優秀男優賞を受賞したみたいですが、
聞いたこともない映画祭なので、その賞にあまり価値はなさそうです。

明るい性格で人気者の妻マリオンは公民館のシニア向け合唱教室に通っています。
その合唱団が「年金ズ(OAP'z)」というグループ名で、
合唱コンクール出場を目指すことになるのですが、
気難しいアーサーは「人前で唄うなんて恥をかくだけ」と合唱に否定的です。
その合唱の練習の最中、妻が病気(癌?)を再発して、倒れてしまいます。
その時は大事には至りませんでしたが、医者から余命数カ月と診断され…。
…出ました、死別フラグ。シニア映画はこれがあるから気が気じゃないです。

苦痛を伴う科学療法を諦め、自宅で闘病することになったマリオンですが、
合唱団を辞めるつもりはなく、コンクールにも出る気満々です。
しかし体調が優れず練習に参加できない時は、嫌がる夫アーサーに、
「練習の様子を見てきてほしい」とお願いします。
渋々公民館に行くアーサーですが、その合唱団は超個性的で…。
まぁ見た目は普通のシニア合唱団なのですが、若い先生のエリザベスが少し変わり者で、
彼女のコンクール用の選曲が、ちょっと普通じゃないんですよね。

まずヘビメタのナンバー、モーターヘッドの「Ace Of Spades」。
お年寄りにヘビメタ唄わすなんてまさかの選曲ですが、ピアノの伴奏じゃ生ぬるいと、
メンバーにベースやドラムをやらせ、ギターも連れてくる徹底ぶりです。
ステージ衣装もかなりパンクなものを用意します。
しかし極めつけは、ヒップホップのナンバー「Let's Talk About Sex」ですよ。
お年寄りがラップするってだけでもシュールですが、リリックがタイトル通り、
「セックスについて話そう」みたいな内容で、かなり奇抜な選曲です。
もはや性機能不全だろうと思える高齢者に、わざわざセックスの歌を唄わせるなんて、
ナンセンスを通り越して、ちょっと嫌がらせなんじゃないかと思えますね。
そもそも合唱団のグループ名を「年金ズ」なんて命名する時点で、悪ふざけですよ。
でもエリザベスには悪気が全くなく、そんな天然なところが面白いです。
彼女の本職は学校の音楽教師ですが、学校の先生って世間ズレしてますもんね。
後にお年寄りにロボットダンスまで仕込み、負傷者まで出してしまいますが…。

合唱団のメンバーがその選曲に疑問を持たないのは不思議ですが、
部外者のアーサーは「なんだコイツら。頭大丈夫か?」と驚きます。
まぁこれが正常な反応ですよね。
ところがこの選曲、実はかなり計算されたものかもしれません。
とにかくインパクトだけは半端なく、コンクール予選では観客に大ウケし、
審査員も雰囲気に飲まれて、年金ズの本大会出場を認めてしまいました。
ただ、観客のほとんどは彼らの家族だと思うのですが、
孫か曾孫か幼い子供たちも沢山応援に来ているのに、セックスの歌はちょっとね…。
ボクが子供の時に祖父母が人前でそんな歌を唄ってたら、トラウマになったかも…。
ただ、終わりよければ全てよしで、予選最後の3曲目は普通に素晴らしい歌で、
さすがに奇抜さだけでは予選通過はできなかったでしょう。

その最後の歌、シンディー・ローパーの「True Colors」を唄ったのが妻マリオンです。
彼女のソロでしたが、なぜ病気で練習に参加できなかったのにソロを任されたかといえば、
本大会には出られない可能性が高い彼女に、エリザベス先生が華を持たせたのです。
つまり彼女の余命はもう僅かで、予選の最後の曲どころか、彼女の最期の曲なのです。
歌詞の良さもさることながら、それを思うと泣けて泣けて…。
しかもその歌は、最愛の夫アーサーのために唄っているので、
彼女自身よりも、アーサーの心境が如何許りかと思いやれて、涙が止まりませんでした。
『レ・ミゼラブル』の「夢やぶれて」でもあまり泣けなかったのに、
映画の劇中歌でこんなに泣けたのは初めてかも。

やはりそのシーンはマリオンのクライマックスで、彼女はその後間もなく亡くなります。
その後、紆余曲折あって、アーサーが妻の意思を引き継ぎ、合唱団に入るのですが、
合唱団での交流を通じて、妻を亡くした悲しみから立ち直る、…的な展開であれば、
やはり単なるシニア向け映画になってしまうので、ボクはそこまで楽しめなかったかも。
たしかに合唱団に入る動機は、「亡き妻のため」だったとは思いますが、
合唱コンクール本大会の出場に至る過程に描かれていたのは、
アーサーと彼の息子ジェームズとの父子の物語です。

ツンデレなアーサーは妻にはデレまくりますが、息子に対しては当たりが強いです。
内心では「いい息子だ」と思っているのですが、それを態度に出すのが苦手なようで…。
それでも今までは妻が鎹になって、そこそこマトモな父子関係だったのですが、
葬式でアーサーは息子に「合わない方がお互いのため」なんて言ってしまいます。
ひとりになって息子に気を使われるのが耐えられなかったのかもしれませんが、
ジェームズはその言葉にかなりショックを受け、2人は絶縁状態になります。
そんな生き難い性格のアーサーが、合唱団やエリザベス先生との交流を通じて、
自分の生き方を改め、父子関係を修復しようとする展開で、彼の本大会出場も、
亡き妻のためより、どちらかといえば息子のためだったと思えました。
序盤は夫婦愛を描き、中盤から終盤にかけて父子愛に流れる展開だったわけですが、
ここが本作の素晴らしいところで、まだシニア世代には感情移入し難い若い世代でも、
ジャームズに感情移入し、アーサーやマリオンを自分の両親と重ねて見ることが出来、
感動できるのだろうと思います。
案の定、本作の客層はかなり高齢でしたが、若い人も観ないと勿体ないです。
まぁ若い人といっても、ジェームズに近い30代くらいからになりますけど…。

息子ジェームズにコンクールを見に来てほしいと誘うも、拒否されるアーサー。
うーん、一方的に絶縁され怒ってるとはいえ、ジェームズも頑固さも父譲りですね。
それにより本大会に出場する意欲が失せるアーサーですが、
あることがキッカケでやっぱり出場することにします。
そのキッカケもマリオンの力は偉大だったと思う展開で少し感動しました。

ところが本大会の「第8回シャドーソング国際合唱コンクール」は、
予想外に格調高い大会で、他の出場組は本気のシニア合唱団ばかりで、年金ズは場違い…。
奇抜な選曲も通用せず、サウンドチェックの段階で審査員から出場除外通告されます。
予選で彼らを通した審査員は本大会の審査員に大目玉でしょうね。
年金ズを外して大会は始まりますが、アーサーは「絶対にあの歌を唄いたい」と、
皆を引き連れ強引に壇上に上がり、運営側も阻止しきれず、年金ズは出場することに…。
1曲目「Love Shack」を唄いますが、意外と普通なロックナンバーで、
予選のヘビメタやヒップホップに比べると、かなりインパクトは弱い気が…。
しかし他の組が讃美歌とかなので、客はロックでも新鮮味があったようで大盛り上がり、
そして最後の曲は、アーサーのソロ、ビリー・ジョエルの「Lullabye」です。

人前でひとりで唄うのが初めてなアーサーは、伴奏が流れても固まったまま…。
そこに客席から「お爺ちゃん、頑張って」と声がかかります。
それは孫娘ジェニファーの声で、彼女は父ジェームズと一緒に応援に来ていたのです。
孫娘の声援を聞いたアーサーは唄い始めるのですが、それでも感動的ではあるけど、
父子の物語だと考えると、そこで声を出すのはジェームズの方がよかったような…。
画的には幼い女の子の声援の方が見栄えはすると思いますけど…。
まぁアーサーも孫娘の声を聞いたことで客席に息子がいるとわかったから唄ったのかな?
そこもけっこう泣けましたが、予選のマリオンの歌ほどではなかったです。
合唱教室で練習もしてない曲なのに、年金ズがコーラスできるのも変だと思ったし、
展開的に違和感があったので、それが感涙を阻害したのかも…。
とはいえ、総合的にはかなり素晴らしい作品で、絶対オススメです!

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