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さよなら渓谷

フィギュアスケーターの安藤美姫選手が、4月に出産していたことが、
昨日の報道ステーションの独占インタビューで判明し、マスコミが騒然としています。
赤ちゃんの父親が誰か明かせない状態で、何か深い事情がありそうな気がしますが、
やはり未婚での妊娠・出産は社会通念上褒められたものではなく、
素直におめでたい話題だとは言えませんね。

ただ、妊娠も出産も下衆な芸能マスコミに全くバレなかったことは褒めたいです。
芸能レポーターなどは、今回の事に対して「全く知らなかった」と目を白黒させてますが、
まるで自分たちが芸能人やスポーツ選手の妊娠を把握できて当然のような反応です。
他人の妊娠状況を調べる仕事なんてキモチワルイですよ。
本人が秘密にしたいって言ってるのに、父親探しまで始めてるし、
その暴いた結果で彼女の子が将来傷つくようなことがあったらどうするつもりなのか…。
「父親候補が数人いた」なんて話を聞くだけでも、かなりショックを受けるはずです。
安藤選手には、その情報封鎖のノウハウを多くの有名人に教えてあげてほしいです。
そうすれば下衆どもの仕事がやり難くなり、世界が平和になるはずなので。

ということで、今日はマスコミによって隠したい経歴を穿り返された男女の物語の感想です。
本作のマスコミは芸能関係じゃないし、殺人事件の被疑者の経歴なので仕方ないかな。

さよなら渓谷
さよなら渓谷

2013年6月22日公開。
吉田修一の小説を大森立嗣監督が映画化した社会派サスペンス。

緑が生い茂る渓谷で幼児の殺害事件が発生し、容疑者として母親が逮捕される。隣の家に住んでいる尾崎俊介(大西信満)がその母親と不倫していたのではないかという疑惑が、俊介の妻かなこ(真木よう子)の証言によって浮かぶ。事件を取材する週刊誌の記者、渡辺(大森南朋)がさらに調査を進めていくうちに、尾崎夫妻をめぐる15年前の衝撃的な秘密にたどり着き……。(シネマトゥデイより)



本当は観る気が全くなく、スルーする気満々だった本作ですが、
先月29日に第35回モスクワ国際映画祭のコンペ部門で審査員特別賞を受賞したので、
映画ファンとしては見逃せなくなったので、近々観に行こうと思います。
…的なことを昨日の映画『欲望のバージニア』の感想記事に書きましたが、
居ても立ってもいられず、今日さっそく観に行きました。
本当は観る気がないどころか、その存在さえ忘れていた作品でしたが、
いざ観てみるとなかなか面白く、スルーしなくてよかったです。
存在に気付かせてくれたモスクワ映画祭には感謝したいです。

感想の前に、少しモスクワ国際映画祭のことを。
この映画祭はカンヌ、ベルリン、ベネチアと並び「四大国際映画祭」と言われています。
でもカンヌ、ベルリン、ベネチアだけでも「三大国際映画祭」と言われているので、
映画祭としての格は少し(どころじゃないくらい)下がります。
歴史は長いけど2年に1回しか開催されなかったので、開催回数もまだ少ないしね。
なにより本作が48年ぶりの審査員特別賞受賞だったことでもわかるように、
ちょっと日本映画と縁遠い印象もありました。
昨年100歳で亡くなった新藤兼人監督が過去3回ほど最高賞を受賞していますが、
どうも自国贔屓な傾向があり、国際映画祭としてはあまり信頼できません。
ボクにとっての四大映画祭は、三大映画祭とモントリオール世界映画祭かな。
三大映画祭とトロント国際映画祭でもいいけど、トロントは非コンペなので…。
で、何が言いたいかといえば、縁遠かったために今まで意識してなかったので、
モスクワ国際映画祭を意識して映画を観たのは本作が初めてだったし、
本作をキッカケに、今後はモスクワにも注目してみようかと思ったのでした。
ボクがモスクワをどう思おうと、本作は腐っても四大映画祭の審査員特別賞なので、
カンヌで審査員賞止まりだった『そして父になる』よりも、国際的評価は高いはずです。

受賞するまで全く意識してなかった作品なため、全く内容も知りませんでしたが、
いざ観てみると、マイ・フェイバリット・アクターの大森南朋が出ててビックリでした。
…って、よく調べたら本作って、大森南朋のお兄さん大森立嗣が監督なんですね。
ヒロイン役の真木よう子は、授賞式で泣いていたと報じられていたので知っていましたが、
他にも新井浩文や鶴田真由など、何気に豪華なキャストだし、
原作も『悪人』『横道世之介』などで知られる芥川賞作家・吉田修一の小説だから、
もうちょっと宣伝頑張って、大々的に劇場公開すればいいのに、と思いました。
ミニシアターに観に行ったのですが、まだ受賞直後なのでかなり混むかと思ったけど、
全然ガラガラで、モスクワ映画祭も本作も、これほど知られてないのかと驚きました。

『横道世之介』は新大久保駅乗客転落事故を題材にした物語でしたが、
本作も実際に社会問題になっている事件を元ネタにしているように思います。
ある田舎町で、児童が殺される事件が発生し、その母親が逮捕されます。
これは近年やたら多い、我が子を殺す母親の問題をネタにしているのでしょうが、
報道のモザイクがどうだとか、推定無罪の報道の在り方にも触れられているので、
2006年に世間を震撼させた秋田児童連続殺害事件が直接の元ネタでしょうね。
しかしその事件は本作の導入でしかありません。
警察は被害者の4歳の男の子のシングルマザー立花里見を逮捕しますが、
事情聴取で彼女が隣の家の旦那・尾崎俊介とデキていたのではないかという疑惑が浮上。
子供が邪魔だから殺させたのではという殺人教唆の疑いで、彼に取り調べを行います。
この事件を追っている週刊誌記者の渡辺は、尾崎の前歴を調べ、
彼が15年前にとんでもない事件の加害者だったことを知るのです。
その事件が本作の本題です。

尾崎は大学時代、野球部のピッチャーで、将来を嘱望される名選手でしたが、
野球部員3人と女子高生を輪姦す集団レイプ事件を起こして、大学を中退していたのです。
亜細亜大学野球部の事件か、北九州市立大学野球部の事件か、
運動部の集団レイプ事件は枚挙に暇がないので、直接の元ネタはわかりませんが、
作中で「運動部の記事は爽やかなものかレイプばかりで中間がない」と、
渡辺の同僚の女性記者がいみじくも言ってますが、
一部の運動部のモラルの低さは本当に問題だと思います。
甲子園に出場するようなトップクラスの高校野球部でさえレイプ事件起こすし、
やっぱりスポーツしかしてない奴はダメだなって思っちゃいます。
まぁ最近の運動部の不祥事は、部員よりも専ら指導者が起こしてますけど、
この日本のスポーツ界のモラルの低さは根が深そうです。
でも世界的には日本の選手ってフェアプレーを重んじる良いイメージがありますよね。
それだけに、こうして国際舞台で日本の恥部を描いた作品が賞を獲り、
注目されてしまったことはちょっと恥ずかしく思います。
運動部は選手にも指導者にも、競技のルールよりも先に社会のルールを教えないとね。

自身も社会人ラグビー部出身で、スポーツばかりやっていた渡辺は、
集団レイプ事件の加害者である尾崎に共感を覚えますが、
同僚記者が調べた、被害者の女子高生のその後を聞き驚愕します。
被害者の水谷夏美は、事件後転校するも事件のせいでイジメを受け、
卒業後就職し、職場の男性と婚約するも、事件のことがバレて破談になり退職。
その後違う男と結婚し、妊娠するも流産し、事件が原因で夫からDVを受け、
2回の自殺未遂の末、半年前に失踪してしまい、もう生きてはいないだろうとのこと…。
事件のせいで、まるで不幸のデパートのような人生です。(流産は事件と関係ないか?)
ところが、ほんの数か月前に水谷夏美の目撃情報があり、まだ生きている可能性が浮上。
そのことを知った渡辺にある直感が走ります。
水谷夏美は尾崎の内縁の妻・かなこではないかと…。

実際その直感は当たっており、その展開は読めましたが、
なんで被害者女性がレイプ犯と一緒に生活しているかが謎ですよね。
2人で家にいる時はほとんどセックスしてるんじゃないかってほど熱々ですが、
その反面、かなこは尾崎が立花容疑者とデキていると警察にタレコミます。
それは事実無根なのに、尾崎はかなこを怒りもせず、なんと自白してしまうのです。
なんとも不思議な関係の夫婦で、どんな経緯でそんなことになったのか気になります。
その経緯は終盤にちゃんと描かれるのですが、気になる点が解明されたのはよかったけど、
経緯を語るシーンが少々長すぎてダレてくるんですよね…。
物語的には水口夏美がかなこだったというのが本作最大のサプライズで、
その後に描かれる経緯はオマケみたいなものだと思うんですよ。
「ごく普通に見える夫婦。だがふたりは残酷な事件の被害者と加害者だった。」という、
ネタバレ全開のキャッチコピーなので、かなこの正体はサプライズではなく、
むしろ経緯の方が本題なのかもしれませんが…。

回想による経緯説明で、かなこの心境の変化が丁寧に描かれているのは興味深いですが、
それでも彼女の心境は大凡理解できるものではなく…。
罪滅ぼしのために「何でもする」という尾崎に、
かなこは「私の目の前で私より不幸になってほしい」と言いますが、
確かにそれなら一緒に暮らすのも理解できなくないけど、なんでセックスしちゃうかなぁ?

かなここと水口夏美を演じるのは真木よう子ですが、
冒頭から尾崎役の大西信満との生々しい濡れ場があり、かなり体を張った演技です。
乳首は見えないように撮影されていますが、露骨な正常位シーンとか、やたらエロいです。
ここまで体を張って全く評価されなかったら完全に脱ぎ損ですが、
作品が国際的な映画賞を貰えたことで報われたでしょうね。
そういう意味では、彼女が出演した『そして父になる』のカンヌ審査員賞よりも、
やっぱり本作のモスクワ審査員特別賞の方が、喜びもヒトシオだったでしょう。
まぁヌードは本作が初めてじゃなかったみたいだけど。

しかしかなこの心境以上に納得できないのは、その経緯を彼女から直接聞いた渡辺が、
別にオフレコでもなかったはずなのに、そのことを記事に書かなかったことです。
15年前の集団レイプ事件なんて蒸し返しても誰得と考えた懸命な判断にも思いますが、
それを記事にすれば、少なくとも児童殺害事件の尾崎の冤罪は晴れるはずで、
冤罪をミスミス見逃すなんて、ジャーナリストとしてダメしぎると思います。
まぁ尾崎の冤罪は、妻かなこが晴らしてあげたので、結局釈放されましたが…。
あと、尾崎と一緒に集団レイプした野球部員の処遇も納得できない、というか不愉快です。
許されるものではないが尾崎はかなり後悔し、人生を棒に振っているのに、
残りの部員のひとりなんて、父親の会社を継ぎ若社長として悠々自適に暮らし、
そのレイプ事件のことすらも笑い話にするほどアッケラカンとしています。
あいつはマジで一度殺されるべきですが、彼が作中で裁かれることはなく…。
かなこも尾崎以外の3人のことはどう思ってたんですかね?

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